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ろくきせ恋愛手帖
作者: むう  (総ページ数: 113ページ)
関連タグ: 鬼滅 花子くん 2次創作 オリキャラあり 戦闘あり ろくきせシリーズ 
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*105*

 更新遅くなってごめんなさい。
 最近スランプに入っちゃって……。課題はバッチリ終わったんですが。申し訳ありません。
 不定期更新ですが頑張りますのでよろしくです。

 ****

 〈花寧々 寧々side〉


 ………ん?
 不意に視界が狭まり、私は無意識的に目をこする。
 ちょうど、向かい風が強くなってきたところだし、砂でも入ったのかしら。

 そしてもう一度目を開けて………絶句する。
 辺り一面、墨汁をこぼしたかのように闇闇闇。自分の顔すらまともにみえない暗がりの中に、一瞬のうちに迷い込んでしまっていることに困惑する。


 寧々「え………? な、なんで急に……。さっきまでお祭りだったのに……」
 花子「どうやら何者かの奇襲のようだね。ヤシロ、怪我はない?」

 すぐ横から響く花子くんの切迫した声。
 良かった、閉じ込められたのは一人じゃないみたい。

 寧々「うん、私は大丈夫だけど……。ど、どうする?」
 花子「うーん……あ、そうだ少年は?!」

 光くん! お祓い屋の家系の彼なら、きっとこの状況を打破できる策を持っているはずよね!
 沈んでいた気持ちが一気に明るくなり、その勢いのまま私は声を張り上げた。


 寧々「こうく―――――――ん!! いたら返事して――――――!」
 花子「しょー――ねー――――ん!!」


 二人でやまびこのように叫んでみたけれど。
「こうくーん こうくーん こうくーん……」と自分の声がこだまするだけで、返事はなかった。
 
 もしかしたら、光くんは違う敵の奇襲で、どこかに飛ばされて行ったのかもしれない。
 そしてその説を採用するならば、敵は一人ではないってことで……。
 この大正時代、こんなことができる人物は鬼ってことでいいのかしら? ああそうよね……六新鬼月がいなくなっただけでまだ鬼はいるもの……。


 あぁ、どうしよう!?
 助けを求めようと花子くんの方を振り返るも、彼は白杖代を宙に浮かせながら首を振るだけだった。


 と。
 タタタタタタっっと後ろの方から軽快な足音が聞こえて来た。
 運動靴でもない、スリッパでもない……スッスッという薄っぺらい何かが地面をこすれる音は、どんどんこちらに近づいてくる。

 敵!? 
 私は思わず肩に力を入れ。


 仁乃「はぁぁぁぁぁぁ良かったよおおぉぉぉ」
 寧々「………仁乃ちゃん!?」


 聞きなれた、澄んだ高い声に声を裏返らせた。
 いつも明るく、不安なんて吹き飛ばしてしまうかのように笑顔を絶やさない少女が、今では左右を往復して歩いている。オロオロと落ち着きがない。


 花子「胡桃沢!! あぁ良かった、知ってる人がいた……」
 仁乃「もう……もうね、何が何だか分かんなくて……取りあえずずっと暗闇を歩いてたの。むっくんもいないし誰とも会わないしで、ほんっと怖くて……」

 と言葉を続ける仁乃ちゃんの潤んだ瞳。私は彼女の背中をそっとさする。
 

 仁乃「ん、でも、みんなに会えたならもう大丈夫。みんなに会えたなら柱にも会えるよね」
 寧々「……え、えーっと、それはどう言う理屈で?」


 私や花子くんに会えたからといって、柱に会えるとは限らないんじゃ……。
 怪訝な顔つきをした私を見て、仁乃ちゃんは「ぷふっ」と小さく笑った。


 仁乃「おかしいでしょ。これ実は私の意見じゃなくて、この人の意見なの」
 花子「この人………?」


 実弥「よう、こんなところで地味ィに閉じ込められるなんてついてねえぜ」
 寧々「不死川さん!?」


 え、ということは、不死川さんはずっと仁乃ちゃんと一緒にいたってこと?
 誰とも会ってないってさっき言ったけど、それは仁乃ちゃんのブラフってことかしら?
 …………流石、恋人をいつでもからかってだけあるわね。


 不死川「しかし敵が俺らに姿を見せねぇってことは、よほど実力に自信があるみたいだな」
 仁乃「それか、単に殺されるのに臆している、とか」
 花子「……そいつ、ホントに強いの? もしかして俺らを閉じ込めてそれで満足したのかな?」


 三人「けっこう、おバカの鬼なのかも………」
 ??「黙ってれば言いたい放題言ってくれるわ。あんたら人の気持ちってもんも知らんの?」
 ??「布留(ふる)、落ち着きィや。わっちらはただ春俚(しゅんり)の言う通りにすればええ」


 パッと突如明かりがつき、視線は自動的に明かりの方へと注がれる。
 右手に和紙でできた提灯を構えて、不遜な顔つきをしている二人の女の鬼がいた。どちらも服装は黒髪のボブカットで、一人は青色、もう一人は赤色の着物を着ている。顔つきは驚くほどよく似ているから、おそらく双子……かしら。


 花子「一人称わっち!?? わっち!!??」
 布留「……なんなん? 俺の妹を悪う言ってなにか得するん?」
 花子「わっちに俺!! 今までにないパターン……」

 布留と呼ばれた青色の着物の女の子(の鬼)が肩眉をひそめる。どうやらかなりの個性派双子コンビらしい。
 彼女たちと戦いをしている未来がいまいち想像つかない。


 ??「まぁとにかくええやん布留。わっちらの術にとらわれて、こいつらは身動きも取れへんようやし」
 布留「まあ久留(くる)がそう言うなら別にええけど……どする? 戦いに持ち込む?」


 あ、あなたたちやっぱり戦いは苦手の裏方さんなのね……。
 春俚っていうのが誰だか分からないけど、多分この子達のボス的な存在かしら。
 といことはかなり敵の数は多いようね。ふふん、私もけっこう使えるじゃない!

 久留「そうやねぇ……あんまし戦いはしたくないけど、何もしないわけにもいかん……」
 布留「そこの幽霊の兄ちゃんあたり弱いんちゃう? あとその隣の足の太い女の子もあんま戦えへんはずや。残るはそっちの小っちゃな隊士と屈強な男やけど、こっちはもうすぐ来る面子に任せとこ」

 
 バリバリ大声で計画を練るあたり、この二人やっぱりおバカなのかもしれない。
 私たちに聞かれても大丈夫なのかしら。

 そして、足の太い女の子って誰……?
 そ、そんな人、ここにはいないですよね。ねえ!

 とりあえず彼女たちが狙うのは私と花子くんのようだから、仁乃ちゃんの後ろに隠れておく。


 仁乃「わかった。頑張って倒してあげるからね」
 不死川「つーことで行くぜェ」


 不死川さんの号令を合図に、花子くんは白杖代を振りかざし、仁乃ちゃんは刀身を鞘から抜きかけ………。



 ひゅんひゅんひゅんひゅんんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん


 お約束で、もう何回目かのゲーム音じみた転移術の効果音が、空間に響き渡った。
 


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