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*100*
【執筆コソコソ噂話】
そう言えば昨日はバレンタインデーでしたね。
皆さん如何お過ごしになられたでしょうか。
全国恋している皆さん、むうは応援してます。
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〈ういむいチーム 無一郎side〉
宵宮さんのことを知ったのは、半年前の臨時柱合会議にて。
六新鬼月を封じた陰陽師の子孫だと、お館様から説明があった。
なのでどんな子だろうと内心ドキドキしていた。
でも、僕の前に現れた少女は、ごくごく普通の同い年の女の子だった。
サラサラの白髪(はくはつ)に、伏し目がちの瞳。
顔も手足も小っちゃくて、お人形さんみたいだなぁと出会った時思った。
その小さな口かな放たれる言葉には若干の毒があったけれど、不思議と悪意は感じられない。
真っ直ぐなその言葉や姿勢に、どこか引かれるものがあった。
いつも虚勢を張っているという感じで、炭治郎たちと一緒にいるときもあんまりわらわない君。
それが今では言葉も柔らかくなって、はっきりこっちの目を見てくれる。
本当はずっと前から話してみたいと思っていた。
だなんて言ったら驚くだろうか。
無一郎「………おいしい? さっき買った揚げ餅」
有為「(もっち もっち )ふぁ?」
無一郎「確か人気商品って書かれてあったから、どうなのかなって思って」
有為「(もっち もっち)時透くんは買わなかったんですか?」
無一郎「………うん」
お餅ならこの前、柱全員の年越し会で嫌というほど頂いたし。
でも、横を歩く宵宮さんの、幸せそうな笑顔に食欲がそそられる。
あぁ、そんな顔もできるんだなあ……と僕は心の中で呟いた。
まあ、自分が言えることではないのだろうけれど。
有為「もしかして、食べたいとか思ったりしてます?」
無一郎「……………いや」
有為「時透くんが食べたいかなと思って、もう一つ買っておいたんですけど」
宵宮有為という陰陽師の少女は、年齢の割には結構頭の切れる子供だった。
この前炭治郎から聞いたが、なんでも彼女の過去がかなり残酷なものだったらしい。
その時の経験から、妙に卓越した自我を持っているのに驚かされる。
無一郎「………食べるなんて言ってない」
有為「そうですか。ならボクが食べます」
無一郎「………あ、」
二つ目の揚げ餅の箱の中から、カリカリに揚げたお餅がチラリと除く。
その一つをつまようじでとった宵宮さんは、お餅を口に運ぼうとして……。
さっきからお餅に目が留まっている僕に視線を移し、大きく息をついた。
呆れたように肩をすくめて、彼女は言う。
有為「なんですか? いるんですか、いらないんですか」
無一郎「…………………ありがとう」
有為「どうも」
話がなかなか続かないことに僕は焦りを感じる。
もともと忘れっぽい性質(たち)なので、人との会話が得意ではない。
柱の中にも同い年の子供はいないし、炭治郎たちはいつもかまぼこ隊で話しているから、いきなり自分が間に割り込むのも気が引ける。
宵宮さんは、かまぼこ隊と一緒に行動してはいるけれど……。
メンバーと一対一で話しているのはあまり見たことがない。
何だか自分と同じものを感じた。だから仲良くなりたい。
しかしどうすればいいか分からない。
無一郎「……(そうだ。さっきやったゲームとか、そういう遊びをやったりとかはどうだろう)」
有為「わぁ、綺麗な星空! 確かオリオン座ですよね。こう、砂時計みたいな形の」
月明かりに照らされた、彼女の横顔につい見とれてしまう自分がいる。
精神年齢は高いものの、そこを取ればただの年相応の女の子だった。
無一郎「……ねえ、ゲームをしない?」
有為「? はい、いいですよ。どんなゲームですか?」
無一郎「…………炙りカルビゲーム」
最初の人が『炙りカルビ』、次の人が『炙りカルビ+1』と交互に言っていく早口ゲームだ。
もちろん、噛んだら負け。
無一郎「……これに、負けた人が罰ゲームをつけて……」
有為「……なるほど。罰ゲームとはどのようなものでしょうか」
無一郎「…………た、例えば、宵宮さんが負けたら………」
さっき一瞬、胸の中に浮かんでは消えたセリフ。
これを今、口にしていいのだろうか。
横目でチラリと宵宮さんを見つめる。彼女は怪訝な顔つきのまま僕を見つめた。
無一郎「…………宵宮さんが負けたら、僕のことを『むいくん』……って言うのはどう?」
有為「……………ふぁっ??///」
瞬間、これまでずっと平静だった宵宮さんの肩が跳ね、顔にサッと朱が刺した。
僕も自分で言ってて恥ずかしくなり、慌てて下を向く。
無一郎「く、胡桃沢さんでさえそう呼んでるのに、君が呼べないってことはないよ……ね?」
有為「か、か、か、簡単に、い、言わないでください!!」
人が相手を呼び捨てで言うのにどれほど苦労してると思いますか!?と続ける宵宮さん。
興奮しているのか、早口でまくしたてる。
有為「そ、それに、そっちだけ罰ゲームを決めるのは不公平ですよっ」
無一郎「…………なら君も決めれば? 罰ゲーム」
有為「いいでしょう!! じゃあ時透くんが負ければ、………その……」
有為「ボクのことを『有為ちゃん』と呼んでください…………!!」
無一郎「…………うっ!?? ///」
人が相手を呼び捨てするのにどれほど苦労してるかだって?
こっちのセリフだよ。たかが一歳二歳年下の女の子も名前で呼べないし。
でも、だからって、そんな、人格ごと支配されるようなのは………。
有為「これが成立しなければそっちだけ有利です。さあ、呑みますか!?」
無一郎「…………う゛……………。わ、分かったよ……」
さすが……。
有為「じゃあ先行はゆずります。どうぞ」
無一郎「…………せーのっ、炙りカルビ」
有為「炙りカルビ、炙りカルビ(ふぅ)」
無一郎「…………あぶりかるび、あぶ…りかるび、あぶりかるびっ(危なっ)」
有為「ふぅ――。炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビっ」
無一郎「……(強っ!?)あぶりかるび、あぶりかぶりっ」
有為「……おや?」
無一郎「……………な、」
有為「噛んだのは時透くんですよね? 明らかに」
無一郎「……………さ、さあ………」
有為「じゃあ、罰ゲーム、行ってもらえますか」
な、なんで宵宮さんそんなに滑舌いいの……?
陰陽師の呪文を毎日唱えてるから??
さらさらと言ってのける彼女の態度に、僕の背中から冷たい汗が流れ落ちた。
無一郎「……………罰ゲームって、なんだったっけ……」
有為「とぼけないでください。ボクのことをチャン付で呼ぶことです」
無一郎「……………え―――っと」
有為「もしかして恥ずかしいんですか? 自分で乗ったのに怖気づくなんて……」
無一郎「う、うるさぁい!! い、言うもん!!」
有為「どうぞ?」
無一郎「…………………う………」
有為「う?」
無一郎「う、有為ちゃん…………」
有為「はいっ」
僕が照れながらも必死に言葉を絞り出す一方で、名前を呼ばれた宵宮さ……いや有為ちゃんはニッコリと満面の笑みを向けた。
その笑顔がとても眩しくて、明るくて、可愛いなと僕は思った。
そして、自分の本音をここまで引きずり出せる宵……有為ちゃんの存在に内心ビックリもした。
有為「誘ってくれてありがとう……むいくん」
無一郎「………え?」
今、聞き間違いでなければ、はっきりと『むいくん』と……。
思わずバッと振り向くと、有為ちゃんは恥ずかしそうにはにかんだ。
星空をバックに、小さな少女は力なく笑った。
有為「わたし……今とても楽しいです」
『ボク』ではなく『わたし』と自分を呼んだ彼女の真っ直ぐな言葉が、僕の胸にしみこんでいった。
思わず泣きそうになって下を向いた僕の前を、彼女は背中を伸ばして歩き始める。
宵宮有為という人間の記憶の片隅に、僕と言う存在を映し出せたこと、それがとても嬉しかった。
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(え、めっちゃいい感じやんういむい……試しに書いてみたけど想像以上!! v( ̄Д ̄)v イエイ)