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ろくきせ恋愛手帖
作者: むう  (総ページ数: 113ページ)
関連タグ: 鬼滅 花子くん 2次創作 オリキャラあり 戦闘あり ろくきせシリーズ 
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 お知らせです!
 今日、2月13日でろくきせシリーズ一周年!
 ということでイラスト掲示板にイラストをUPしました!
 良かったら見て見て下さいね(^▽^)/
 と言うことで続きです。

 ********


 〈炭カナチーム カナヲside〉


 やばい、どうしよう。
 今、私こと栗花落カナヲは、ドクドクと暴れまわる心臓を必死に抑えている。
 顔がほてって、呼吸が苦しい。脳がくらくらする。

 あ、アオイのせいだ。
 アオイが、「炭治郎さんが来るから誘ってみたら?」何て言わなければ良かったんだ。
 そしたら、こんな気持ちに振り回されることもなかったのに。
 

 炭治郎「カナヲ、どこに行きたい? 色んな屋台があるけど」
 カナヲ「えっ、えっと………ど、どこでもいいよ」
 炭治郎「そっか。いっぱいあると迷っちゃうからな。ゆっくり回ろうか」
 カナヲ「う、うん」


 炭治郎の笑顔を見るたび、胸が苦しくなる。
 けれど、久しぶりに会えただけで宙に浮く気持ちになったり、彼の声や仕草、一つ一つに視線を
 移してしまったり。


 この感情を何て言うか、私はやっと知ることが出来た。
 世間一般が「恋愛」と呼んでいるもの………だろう。


 でも私は、それこそ仁乃ちゃんのようにグイグイいけないし。
 仲良くなりたいけれど、炭治郎と会うのは彼が蝶屋敷に来た時だけで、あまり会えないし。
 だから久しぶりに会えた今、どんな風に接せばいいんだろう。


 炭治郎「カナヲ! こっちのべっこう飴、色んな形があるぞ。色もカラフルだ(飴屋発見)」
 カナヲ「そ、そうだね。炭治郎どれ食べる?」
 炭治郎「うーん、俺はこの、鳥型の奴を頼むよ。カナヲは?」
 カナヲ「この、ピンクの、桜型のやつ……かな」


 今頃みんな、上手くやってるのかな。

 師範も水柱さんと相変わらず話しているのかな。
 蛇柱さんと恋柱さんはもともとお似合いだし、睦彦と仁乃ちゃんは心配いらない。
 

 ああ、こんなときどうするのか聞けばよかったな……。
 

 店主「ご注文はお決まりですか?」
 炭治郎「あ、えっと、そこの鳥と桜を一つずつお願いします!」
 店主「はーい。ちょっと待ってね~」


 炭治郎「久しぶりだなカナヲ。元気にしてたか? 今日は誘ってくれてありがとな」
 カナヲ「っ………う、うん……///」


 ずるいなあ。そんな顔するの、本当にずるいなあ。
 炭治郎は出会った時から、とってもとってもずるいことを無意識にやっちゃうからなぁ。
 そういうところが、かっこいいなって、私は思ってるけどね……。


 店主「はーい。どうぞー」
 カナヲ「あ、ありがとうございます……(飴を受け取って)」
 炭治郎「そう言えば、このお祭りって『お宮祭り』って言うのに、なんで神社でしないんだろう」
 カナヲ「……(ぺろぺろ)確かに、ただの商店街のお祭りだもんね」

 店主「ああ、この近くに神社があるってことだけで、そう呼ばれてるの」
 炭治郎「そうなんですか。なるほどぉ」
 店主「ご利用ありがとうございました。また来てくださいね(ニッコリ)」


 買ったべっこう飴を二人で舐めながら、私たちはゆっくりと屋台を眺め歩いた。
 揚げ餅に、髪飾り、仕立て屋に、和菓子。
 色々なお店が軒を並べていて、沢山のお客さんが道を歩いている。

 
 炭治郎「人、増えて来たな」
 カナヲ「そ、そうだね………」
 炭治郎「迷子にならないように、手を繋がないといけないな。はい、カナヲ(手を差し出して)」


 えっ………///
 目の前に差し出された手を、まじまじと見つめると、炭治郎はキョトンと首を傾げた。



 炭治郎「どうしたんだ? 迷子になるぞ?」
 カナヲ「あ、ご、ごめん (ぎゅっ)」


 炭治郎からすれば、ごく当たり前のことかもしれない。
 でも私は違った。こんなふうに手を差し伸べられたのは、もうずいぶん昔のことだ。
 しのぶ姉さんとカナエ姉さんに出会った時以来で、なんだかとても懐かしい。

 炭治郎の手のぬくもりを改めて感じる。
 私より若干大きい、鍛え抜かれた分厚い手の温かさ。


 カナヲ「…………………・…………///」
 炭治郎「カナヲ?」
 カナヲ「だ、だって………初めて……男の子と手つなぐから……」


 そ、それに男の子と女の子でお店を回ったりするのを。
 未来ではその、「でえと」って言うんだよね? 寧々ちゃんが言ってた。
 でえと。これはでえとなのかな?


 と、おそるおそる炭治郎の顔色をうかがった私は、彼の顔が赤いことに気づいた。
 いや、顔だけじゃなくて耳まで赤かった。

 とたんに私は恥ずかしくなり、そっぽを向く。
 炭治郎も反対方向に視線をそらした。


 二人「……………・…………」



 そのまま静かな時間が流れる。ああ、こういう時はどうすればいいんだろう。
 違うお店回らない?って話題を変えればいいのかな。
 それとも、最近どうしてた?って聞いてみればいいのかな。



 炭治郎「……………緊張、するな。こういう感じ……」
 カナヲ「………うん。でも、楽しいよ」
 炭治郎「それは俺も同じだよ。良かった、カナヲと会えて」



 炭治郎が私の目を見てにっこりと笑う。
 その笑顔がとても眩しくて、私は大好きだった。
 そしてこの気持ちが嘘ではないことを改めて感じる。



 私はやっぱり、炭治郎が好きなんだ、って。
 私と出会ってくれて、ありがとうって。


 人間どうしようもなく辛い事があって、自分じゃどうにもできなくなったときでも。
 横に胡桃沢がいれば、それだけで幸せなんだ。


 前に睦彦がそう言ってたことを思い出す。


 あぁ、全くその通りだ。
 横にいる大切な人と見たこの景色に、なんという名前を付けようかと。
 私はずっと、頭の中で考えていた。
 満たされたこの気持ちを、胸から落とさないように注意しながら。
 


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