コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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Heart Break No Wing 第2章突入!!
日時: 2011/03/17 09:24
名前: 皐月凪 (ID: VozPDcE.)

〜各話リスト〜
一章『気になるあの子』

1話「それぞれの想い」
pt1>>1、pt2>>4、pt3>>5、pt4>>6、pt5>>7、pt6>>8、pt7>>9、pt8>>10、pt9>>11
2話「新人戦!!」
pt1>>12、pt2>>13、pt3>>14
3話「初めての女子校」
pt1>>15、pt2>>16、pt3>>17、pt4>>18、pt5>>19、pt6>>20
4話「全県新人!!」
pt1>>21、pt2>>22、pt3>>23、pt4>>24、pt5>>25、pt6>>26、pt7>>27、pt8>>28、pt9>>29、pt10>>30、pt11>>31、pt12>>32
5話「涙の向こうへ」
pt1>>33、pt2>>34、pt3>>35、pt4>>36、pt5>>38、pt6>>39

第2章『恩返し』

1話「後輩の責任」
pt1>>40、pt2>>41、pt3>>42、pt4>>43、pt5>>44、pt6>>45
2話「新入部員歓迎会」
pt1>>46

☆参照500突破記念☆
イメージソング『少年カミカゼ - WINDER〜ボクハココニイル〜』
>>37


〜登場人物(バドミントン部新入部員のみ)〜

・桜野 優羽(サクラノ ユウ)
咲崎南工業高校1年 工業化学科
まっすぐ前向きな性格で、「折れない心」の持ち主。
そのどこか抜けた顔から、よく不良に絡まれる。
中学時代は、バレーボール部の補欠アタッカー

・打矢 智宏 (ウチヤ トモヒロ)
咲崎南工業高校1年 工業化学科
高校に入学して、優羽が最初に友達になった。
坊ちゃんカットの髪に黒縁めがねとパッと見オタク...だが中身は、友達思いのいいやつで、シャイボーイ...ムッツリさん
中学時代は、バスケ部の補欠部員。

・岡見 隼人 (オカミ ハヤト)
咲崎南工業高校1年 建築科
普段はボーっとしていることが多く、適当なところが多い。
顔立ちは、普通の上くらいで悪くわない
やるときはやるタイプの人
スネが毛深いのがコンプレックス
中学時代はサッカー部所属。

・真嶋 浩輝(マジマ コウキ)
咲崎南工業高校1年 機械科
一言でいうと、真面目くん。
監督、先生の指示には忠実に従う。
頑張りやさん。中学時代は、剣道部所属

・佐藤 文耶 (サトウ フミヤ)
咲崎南工業高校1年 電気科
スラッとした背に細身の体。
天性のバドミントンセンスを持っており、高校でその力を発揮する。
クールな性格で、人の上に立つのは苦手...これは表向の彼で、本当にうち解け合った仲間の前では、頭にパンツをかぶり、奇声を発するなどアブノーマルなやつになる...これをみんなは、裏文耶と呼ぶ。

・武田 祥(タケダ ショウ)
咲崎南工業高校1年 電気科
バドミントン部に入部した一年の部員のなかで、唯一のバドミントン経験者(ジュニア)...
だが凄いのは、素振りだけで、実際に羽を打つとへたくそ...
そんな武田には、凄い兄さんがいる。

・山内 大輔(ヤマウチ ダイスケ)
咲崎南工業高校1年 電気科
ニックネーム(D輔)
部活に来たり、来なかったりする。
いわゆる幽霊部員

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Heart Break No Wing ( No.33 )
日時: 2011/01/24 14:18
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


____目が覚めた...


眩しい...

病室の窓から太陽の光が降り注ぐ...


枕元に今日の新聞があった...手に取って見てみる



日付を見、あの日から3日も経っていることに気が付いた...


...

....

.....えっ!?

新聞の一面を飾っていた記事を見て、思わず呼吸をするのも忘れてしまった......



『朱雀学院高等学校 不正入学発覚 バド部生徒32名入学取り消し』

...1989年当時から、裏金を使っての不正入学を奨励していた。
朱雀学院校長ら関係職員12名を解雇。
また、不正に入学したバド部32名を入学取り消し処分、過去に不正に入学した者の除名処分を教育連盟が今日決定した。
また、前バドミントン協会理事を務めていた大野 正一郎氏ら3名も解雇処分とした。
現バドミントン協会理事に就任した、金子 宣孝(現咲崎南工業高校教員 バドミントン部 監督)は、過去大会の朱雀高等学院の不正入学で入学した者の賞を取り消し、繰り上がりの対応を取ることを決定した。



金子監督がバドミントン協会の理事長になったって!?

なんで今更、こういう処分になったんだ?

...元々みんなバドの関係者は分かっていたのに...
地域の人だって、薄々気づいていただろうに...



「開けるよ〜」


声がして、カーテンが開けられた。

そこにいたのは、母さんだった。


「優羽、あんたどんだけ寝んのよ〜、丸3日も寝てたのよ〜」

あ〜、うるさい...
まったく、病室であまり騒がないでほしい....頭に響く


「母さん、それより新聞見た?」


「ええ、見たわ、まぁ当然でしょうね......よかったじゃない、あんた達団体戦優勝よ♪」


そうか...、朱雀の名前が消えるから、準優勝校が繰り上がって、結果的に俺らが優勝って訳か...


でも、月島、霧谷.......あいつらを倒せなかったことに変わりわない.....


「あら、もうこんな時間!!、母さんこれから仕事だからこれで行くわね、退院手続きもう済んでるから、今日中に病院出なさいよ〜、あと、周りに迷惑かけたんだから、ちゃんと部員のみんなとか、監督さんとか、学校に挨拶するのよ〜」


俺の着替えやら、なにやらを袋につめ片付け始める母。

まったく、言われなくても分かってるってのに......


「昨日だったかしら、とっても可愛い女の子がお見舞いに来てくれてたけど、もしかしてコレ?」


右手の小指を立てる母。



「うっせーなー、早く行けよ〜」



ん?、とっても可愛い女の子?........


一瞬、佐伯 志乃の顔が思い浮かんだが、あり得ない......

まぁ、母さんは女子全般を可愛いと言う癖がある....、でも女子なんて誰だったんだろう.......



母さんが病室を出た数分後、俺は病院を出た...

足に力が入らない...気を抜けば転びそうだ



一応聞いたが、病院に文耶の名前は無かった...



俺は、バスを経由して学校を目指した。

時刻は、昼過ぎ...みんな午後の授業を受けている頃だろう...



バスに乗り、25分ほどで「咲崎工業高校入り口」に着いた...

運賃を支払い、バスを降りる...


と、足の力が抜ける...


「痛ってぇぇぇぇぇー!!!」


転んだ拍子に、縁石に足を強打してしまった...



折れたかも......



「大丈夫かい?」

バスの運転手に心配されたが、ここは笑顔で大丈夫ですと言うほかないだろう


「だ、大丈夫です...」

精一杯の作り笑いでごまかした...のかは分からない...

苦笑いする運転手...



生徒玄関は施錠されているので、職員玄関から入り、そのまま職員室の金子監督の元へ向かった...


階段を登るのにも激痛が走る...




___そして職員室前...

「失礼します」

俺は、職員室の3つある扉の内、一番奥の扉を開けた。

その先には、電気科の職員の机が並んでおり、その一番奥に金子監督はいた...


監督は、チラっとだけこちらを向いたが、顔をパソコンに戻した...



俺は、金子監督の元へ歩みよる...


「あ、あの、監督、この度はご心配をおかけして申し訳ありませんでした...」


監督からの言葉はない...


俺は、職員室を立ち去ろうとした


「おい、お前、文耶のこと知ってるのかよ」

金子監督がやっと口を開いた。


「今さっき、総合病院を出たばかりでして、病院に文耶の名前も無かったですし........分からないです」


監督の表情は相変わらず重い


「文耶はなぁ.....都会の大きな病院にあの日の夜、緊急搬送された......肺をやられちまったらしい.....今は極度の疲労と大量出血で昏睡状態が続いているみたいだ......昏睡状態からもう3日....知ってるか?、1週間昏睡状態が続くと、脳や神経細胞、筋肉細胞に何らかの支障が出始めるとされている....」


監督がそこまでいいかけた瞬間俺は激怒した


「なんでだよ!!!!、なんでそばにいてあげねぇーんだよ!!!!!、あいつ今も一人で......孤独な闇の中で必死に生きようって、もがいてんじゃねぇーのかよ!!!!!!.......あいつの異変に俺は薄々気づいてはいたんだ.......試合前、あいつの息がいつもより荒かった、それに、試合でもミスるはずないとこでミスしてた.......でもあいつは笑顔でごまかした............................................『馬鹿野郎!!!!!、自分のことより他人を第一に想うなら、戻ってこいよ!!!!!』」


俺は職員室で号泣した...

言いたいこと全て監督にぶつけた...


監督は、無言で号泣する俺の前を通り過ぎ、職員室の扉の前で止まり、後ろを少し振り向いた


『........行くぞ、お前のパートナーのところに』


監督は泣いていた...



その涙は、午後の木漏れ日に照らされて眩しく輝いていた

Heart Break No Wing ( No.34 )
日時: 2011/02/02 08:31
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


____そして俺は今、金子監督の車の助手席に座っている


無言の車内。


俺は、昏睡している文耶が心配でもうそのことしか頭に無かった


きっと監督も同じなのだろう


職員室でついあんなことを言ってしまったが、監督だって文耶のことどれだけ心配していたか...

自分の受け持つ授業だってあるだろうに、監督だって授業が無ければまっすぐ文耶のもとへ向かったはずだ...


俺は監督の気持ちも考えないでなんであんなことを言ってしまったんだろう...



「監督、職員室で......監督の気持ちも考えないで、つい自分の気持ちを優先して言ってしまって申し訳なかったです...」


無言の車内で俺は監督に謝罪の言葉を述べた


「素直なのはいいことだ。自分の気持ちを誰かに正直に伝えることも大切だ。そしてお前は俺にもっと大切なことを気づかせてくれた、授業なんていつでも出来る。でもな、仕事よりハートの方が大事だってことをな......ありがとう優羽」

監督は、片手で自分の胸を指さし言う。



車は高速を抜け、3時間ほど進んだ...



そして、ようやく巨大な総合病院へと到着した。


すぐに文耶の病室を目指した




文耶の病室は、6階新館東側の3つある個室のうちの一番右の個室だった。


部屋に入ると、文耶の両親が付き添っていた。


監督の挨拶に続いて俺も頭を下げる



文耶の両親は、席をはずしてくれた...



文耶に近づき、表情を確認する..



酸素マスクを取り付けられた文耶は、寝ているのか死んでいるのか分からないような表情をしていた...



俺は、そっと文耶の右手を握って、心で念じた......





_____おい、いつまで寝てるんだよお前、俺ら団体優勝したんだぜ!!........でもよ、素直に喜べねぇんだよ............お前が、....お前がこんな状態だからな!!、戻ってこいよ文耶!!!、またバドしようぜ!!、俺のパートナーだろ!!文耶ぁぁぁぁーー!!!!!!!





っと、文耶の心と通じたような気がした......



_____うるせぇーなぁ、病人だぞ俺は......医者が言ってんの聞いたんだ、俺、肺に穴空いちまったらしい、もうスポーツ全般、過度な運動できないみたいなんだ......ゴメンな優羽、来てくれてありがと





文耶の目からは涙が流れていた



俺は、握っていた手を離し、文耶の涙を拭った。......自分の涙を拭うより先に



「監督、こいつ本当にバドが..........バドが出来なくなって.....」



「優羽、もう泣くな......もっと辛いのは、......親御さんだ...」




俺は、泣くなと言われても泣くことしか出来なかった

もう文耶ともうバドが出来ないということを考えると胸の奥が痛くなって、涙が止まらなかった





しばらくすると扉が開き、ご両親が入って来た。


「急に押し掛けてしまって申し訳ありませんでした、それで、文耶の病気のことなんですが.......その、やはり気胸でしたか...?」

金子監督が言う



「いえいえ、とんでもない、来ていただいてきっと文耶も喜んでると思います、.......はい、気胸だと医師に言われました。元々小学校の頃に喘息にかかりまして、あまり丈夫な子ではなかったんです」


母親が言う


「君が優羽くんだね、文耶のパートナーの、試合を影から見させてもらったよ......うちの文耶を、文耶の最後の試合.....文耶の望みを叶えてくれてありがとう、感謝している」


文耶の父さんが涙ながらに言う



「そんな、最後の試合だなんて.......俺は、例え文耶が試合出来なかったとしても、ずっと文耶のパートナーでいます!!」




Heart Break No Wing ( No.35 )
日時: 2011/02/03 14:36
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


___文耶のお見舞いに行った日から1週間が過ぎた。

相変わらず、授業にも練習にも集中できない。


「優羽、辛いのは俺らも一緒だ、でもいつまでもくよくよしてたって意味ねぇーぞ、ほい」

作業着姿の打矢は、指示薬メチルオレンジを俺に渡し言う。

今は、ものずくりコンテスト化学部門の課題である食酢の定量の練習の最中なのである


「わりーな打矢、分かってはいるんだけど.....」

俺は、指示薬をビーカーの溶液の中に2、3滴入れ言う






______そして今日も授業が終わる。


もうじき冬が来る、そんな季節だ。

俺は、実習棟の掃除を済ませ、教室で着替えを済ませ第二体育館へ向かう


第二体育館の扉を開け中に入る...

___体育館の独特の臭いがする



もうすでにみんな準備を始めていた。



文耶のいない第二体育館

文耶のいない練習

文耶のいない........



大事なことは大切なものを失ってから気づく......


文耶の存在がどれだけ大きかったのか今はそれが痛いほど分かる。


難なくこなしてきた練習メニューも、今はこなせない...


みんな同じ。



でも、今は前を見るしかないんだ。

前に進むしか道はない。






部活が終わり、午後7時45分......

俺は、日が落ちるのが早くなったのを感じながら、自転車小屋を目指す。


俺の自転車は、オートライト式だ。

入学式の日に両親が、長距離を走るには自家発電ではキツイだろうということで、少し高いがオートライト式の自転車を買ってくれたのだ。

バドミントンのラケットだって、シューズだって、バックだってなんでも買ってくれた。

親はそれだけ自分に期待してくれているんだ



___文耶の両親だってそうだと思う




なにより一番辛いのは文耶なんだ


俺がくじけてどうする?



負けたらだめだ




俺は駅に向かってひたすら自転車を漕ぐ。





駅に着いた。

もう辺りは真っ暗で駅周辺だけ明るかった。




8時49分発の電車には間に合ったみたいだ。

出発時刻までまだ20分近くもある.......

売店で立ち読みでもするか



っと、駅のバス待合い所の横で見るからにガラの悪そうな不良の集団が、お年寄りが椅子に座れないように陣どっているのが目についた。


俺は迷わず、近づいた


何で近づいたかは分からない、でも自分の中の何かがそうさせたんだろう


「あの、スミマセン席どけてもらえませんか?」

俺は、一番近くで陣取っていた金髪の男に声を掛ける


「ああ?、なんだオメー?ハハッ」

男は、凄い形相で睨み付けるがそんなこと関係ない


「おばあちゃんに席あけてもらえないでしょうか?」


「ああ、いいよ、私は大丈夫だから気にしないでおくれ」

おばあちゃんが、必死で杖にしがみつきながら言う


「お願いします!!」

俺は土下座してたのんだ


「こいつ土下座してるよ、マジうけるっアッハッハハハハ」


俺は立ち上がった

「お前ら、人間のクズだな」


「ああ?、ゴルァ?死ね!!」


俺は、囲まれた。


殴られた。


蹴られた。


俺はボコボコになりながらも耐えた。


不良は俺につばを吐きかけ、この場を去って行った



「だ、大丈夫かい、すまいねぇ...」

おばあちゃんが心配してくれる


「いいんですよ、では、電車が来ますので」



俺は、その場を後にホームへ向かおうと後ろを振り向いた...




________と、そこには佐伯 志乃がいた。



女子数人の輪の中にいて、佐伯だけ俺の方を見ていた。




その瞬間俺の中の時間が止まった...


俺は、散々蹴られた足を引きずりながら、佐伯志乃がいる方を目指す。


ゆっくりと、ゆっくりと...




佐伯志乃のすぐ近くまで来た。


周りの奴らは、ボロボロの俺を見て、寒い顔をしている


でも、佐伯志乃の表情は周りとは明らかに違った。






佐伯 志乃は




________泣いていた。




「どんだけお人好しなのよあんたは.......」


散々痛めつけられた俺の体を彼女は、優しく包んでくれた



周りの学生はみんな俺たちに注目している


なにせ、駅のど真ん中で抱き合っているんだ、注目されてもおかしくはない




「佐伯さん、見れてるよ......離れたら」

俺は、佐伯 志乃のこれからを気づかって言う



でも彼女は離れようとはしない


「本気で......本気で君のこと好きになっちゃったじゃない...」



え?、どういうことだ......

俺は、君、弱いね...って言われた印象しかない



「私ね、あの大会の日、団体戦の決勝で君を見て惚れたわ........パートナーが倒れても、仲間の為に自分が犠牲になっても戦うっていう精神、かっこよかった//......私後悔した、なんであの時、君に、弱いね...なんて言ったんだろうって......ごめんなさい、許してくれるかしら....」



「許す?、何言ってるんだよ、俺をあそこまで強くしてくれたのは君なんだよ!!、君の一言『君、弱いね....』その言葉は、正直大好きな人から言って欲しくはなかった。でも、その言葉のおかげで俺は強くなれたんだ!!、俺のほうこそ感謝してる、ありがとう。」




彼女は、立ち上がりとびきりの笑顔で言う




『私とお付き合いしてくれますか?//』

Heart Break No Wing ( No.36 )
日時: 2011/02/07 10:35
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


朝、窓からの木漏れ日で目を覚ます...


今日はいい目覚めだ。


佐伯 志乃に告白されてから6日が経った

今日は日曜日、志乃と初デートの日だ



彼女いない歴=年齢の俺にとっては、大きな一日であることに変わりはない。


何を着ていこうか、約束の時間に遅れないだろうか...

頭の中はパンク寸前だった



午前9時32分、とりあえず準備を済ませた俺は、家を後にした。



集合場所は、県立図書館前、10時



俺は約束時間の8分前に到着した。


......が、すでにそこには志乃の姿があった



最悪だ、初デートから彼女を待たせたなんて


「ゴメン!!、待った?」



「全然♪、まだ集合時間じゃないし......優羽、寝癖ついてる...フフッ」



しまった!!、家で鏡を見ていなかった!!


またもやってしまった....


もうほんと最悪だ



「ちょっとしゃがんで」



志乃に言われしゃがむと、志乃は俺の髪に何かを付け延ばし始める



「えっ?」


「どんな寝方してるか分かんないけど、寝癖ひどいから、ワックスで直しちゃうね」



苺のいいにおいがする


このまま時間が止まってしまえばいいのに......



「はい、こんなもんでしょ♪」



「あ、ありがと....」



「さっ、図書館行こ♪」



なんていい彼女なんだ...


今日のデートの日程は、午前が図書館、昼食をどこかでとり、午後は映画、カラオケ...と言う日程になっている。


この日程は全部志乃が立ててくれたものだ

第一デートに図書館なんて、志乃は本がよっぽど好きなんだな...



図書館の中に入り、窓側のテーブルに座る。

「なんかゴメンね、初デートに図書館なんて...」


「ううん、全然問題ないよ...俺、本とか滅多に読まないからよかったらなにかオススメの本教えてよ」



「本当にゴメンね......オススメかぁ〜、ちょっと待ってて」

志乃は、席を離れ、本を探しに奥の方へ歩いて行った。



___志乃は数分で戻って来た。

手には、数冊の本。



「オススメは沢山あるんだけど、ん〜〜〜〜〜、コレかな?」


差し出したのは、『都市伝説XX9』.........?


志乃は、こっち系なのか...



「志乃ってオカルトとか都市伝説とか好きなの?」



「うん、好き、だって夢あるじゃん!!、私はそう言うの信じないけど...」



なんか言ってること矛盾してねぇーか...


「へぇーそうなんだ、じゃ早速読んでみるよ」



最初の2、3ページは、カラーページになっていて、ネッシーやらモスマンやらフライングなんてらやら、訳のわからんイラストで埋めつくされていた。






________2時間が過ぎた。


ようやく俺は、膨大な量の都市伝説やら、未確認生物やらUMAやらのことを事細かに書いてある読み物を制覇した。

まぁ、途中途中飛ばしたところもあるが...



志乃はと言うと、まだ真剣に本を読んでいた。

題名を覗き見すると、『探偵Sは罪を犯す』と言うタイトルだった


推理小説か、サスペンスか分からないが、少なくとも都市伝説よりはまともな本であることは確かだ。


「あっ、もうこんな時間!、優羽はもう読み終わった?」


本から目を離し、俺に質問する志乃


「うん、読み終わった......なかなか興味深い内容だったよ...ハハ」


なんとか愛想笑いで誤魔化してみたりする


「よかった〜、じゃ本返してくるね」


本を戻しに行く志乃。




しばらくすると戻ってきた



「お昼どうする?」


志乃が聞いてくる...


こういう時は俺が提案するべきなんだろうか...

でもここ周辺で美味しい店と言うと...

最近出来たばかりの綺麗なイタリアンの店があるけど、高そうだしな...

ファストフード店じゃ、安いけどなんか雰囲気でないしなぁ〜



残るは、老舗のそば屋か、そこそこの味のラーメン屋、行ったこと無いけど気になっているパスタの店......



それだ!!!



「あのさ、前から行ってみたかった店あるんだけど、そこ行かない?」


始めて提案してみた


「行きたい♪、私この辺じゃ図書館ぐらいしか行かないから全然分かんないんだ」


そりゃそうだろう、この周辺は俺の地元。
志乃の駅はここの駅から6っつ目の駅、逆に俺は毎朝志乃の駅の方面に電車で向かうってことだ。


「それじゃ、行こうか」


目的のパスタの店は図書館から歩いて30分くらいだ。

なかなか距離があるが、店の近くには映画館やアミューズメント施設なんかもたくさん立ち並んでいる



俺は、志乃の隣を歩く...


目線は、志乃の空いた左手にいってしまう



思い切って手を繋いでみたいが、どうしよう...

タイミングが分からない...


俺の右手は、試合の時以上に嫌な汗をかいていた

さりげなく、ジーンズで拭う




はぁー、まだ時間はある、手を繋ぐのはまた今度にしよう



今、俺の隣に数ヶ月前まで電車で目も合わせられなかった人がいる...
それだけでも、奇跡なんだ

佐伯 志乃との出会いは、そもそもバドをやっていなければありえなかった。


そう、あの晴華の練習試合に行った時から物語りは始まっていたんだ




___っと、俺の右手が急に暖かくなった



俺の右手は、志乃の左手と繋がれていた



心臓が高鳴る


目線を上に上げられない.....


でも、上げてみたい



ゆっくり視線を志乃の顔の方に向ける




志乃の顔は赤くなって、横を向いていた


「さ、寒いね...///」


「そ、そうだね...//」


この空気の中、必死に探し当てた言葉を志乃は言った。

その言葉に対して今は頷くことしか出来なかった。



秋風を感じながら、お互いの手のぬくもりを感じながら、長い長い道を2人で歩いて行く........

Heart Break No Wing ☆イメソン☆ ( No.37 )
日時: 2011/02/07 18:34
名前: 皐月 凪 (ID: U8MSN2gK)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=Dzs1mT4tUVM


おかげさまで参照500を突破しました><//


この小説をクリックしてくださったお客様に感謝です


参照500を記念しまして、イメソンをUPしたいと思います(・σ・)//


よろしければ、一度聞いてみてください♪



亀更新になると思いますが更新頑張りますので、よろしければまたクリックしていただければ幸いです


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