コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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Heart Break No Wing 第2章突入!!
日時: 2011/03/17 09:24
名前: 皐月凪 (ID: VozPDcE.)

〜各話リスト〜
一章『気になるあの子』

1話「それぞれの想い」
pt1>>1、pt2>>4、pt3>>5、pt4>>6、pt5>>7、pt6>>8、pt7>>9、pt8>>10、pt9>>11
2話「新人戦!!」
pt1>>12、pt2>>13、pt3>>14
3話「初めての女子校」
pt1>>15、pt2>>16、pt3>>17、pt4>>18、pt5>>19、pt6>>20
4話「全県新人!!」
pt1>>21、pt2>>22、pt3>>23、pt4>>24、pt5>>25、pt6>>26、pt7>>27、pt8>>28、pt9>>29、pt10>>30、pt11>>31、pt12>>32
5話「涙の向こうへ」
pt1>>33、pt2>>34、pt3>>35、pt4>>36、pt5>>38、pt6>>39

第2章『恩返し』

1話「後輩の責任」
pt1>>40、pt2>>41、pt3>>42、pt4>>43、pt5>>44、pt6>>45
2話「新入部員歓迎会」
pt1>>46

☆参照500突破記念☆
イメージソング『少年カミカゼ - WINDER〜ボクハココニイル〜』
>>37


〜登場人物(バドミントン部新入部員のみ)〜

・桜野 優羽(サクラノ ユウ)
咲崎南工業高校1年 工業化学科
まっすぐ前向きな性格で、「折れない心」の持ち主。
そのどこか抜けた顔から、よく不良に絡まれる。
中学時代は、バレーボール部の補欠アタッカー

・打矢 智宏 (ウチヤ トモヒロ)
咲崎南工業高校1年 工業化学科
高校に入学して、優羽が最初に友達になった。
坊ちゃんカットの髪に黒縁めがねとパッと見オタク...だが中身は、友達思いのいいやつで、シャイボーイ...ムッツリさん
中学時代は、バスケ部の補欠部員。

・岡見 隼人 (オカミ ハヤト)
咲崎南工業高校1年 建築科
普段はボーっとしていることが多く、適当なところが多い。
顔立ちは、普通の上くらいで悪くわない
やるときはやるタイプの人
スネが毛深いのがコンプレックス
中学時代はサッカー部所属。

・真嶋 浩輝(マジマ コウキ)
咲崎南工業高校1年 機械科
一言でいうと、真面目くん。
監督、先生の指示には忠実に従う。
頑張りやさん。中学時代は、剣道部所属

・佐藤 文耶 (サトウ フミヤ)
咲崎南工業高校1年 電気科
スラッとした背に細身の体。
天性のバドミントンセンスを持っており、高校でその力を発揮する。
クールな性格で、人の上に立つのは苦手...これは表向の彼で、本当にうち解け合った仲間の前では、頭にパンツをかぶり、奇声を発するなどアブノーマルなやつになる...これをみんなは、裏文耶と呼ぶ。

・武田 祥(タケダ ショウ)
咲崎南工業高校1年 電気科
バドミントン部に入部した一年の部員のなかで、唯一のバドミントン経験者(ジュニア)...
だが凄いのは、素振りだけで、実際に羽を打つとへたくそ...
そんな武田には、凄い兄さんがいる。

・山内 大輔(ヤマウチ ダイスケ)
咲崎南工業高校1年 電気科
ニックネーム(D輔)
部活に来たり、来なかったりする。
いわゆる幽霊部員

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Re: Heart Break No Wing ( No.28 )
日時: 2011/01/11 17:11
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


与えられた時間は15分........


俺たち咲南は、まず手を揉みしびれをほぐすことから始めた...


春日富士は、念入りにストレッチを始める







________手を揉み始めてから10分近く経ちようやく手の感覚が戻って来た



ラケットを握る.......



自分がグリップを握るときの細かな癖の感じが伝わってくる........



戻った!!



「俺はもう大丈夫みたいだ、文耶はどうだ?」



一番心配なパートナーに尋ねる


「大丈夫だ.......」


文耶は、自分のラケットを握る...........


が落とす....


「.......ヘヘッ」

申し訳なさそうに苦笑いをする文耶..........



まったくこいつは........




俺は、パートナーの文耶を気遣い、マッサージをしてやる



「どうだ?、少しは楽になってきたか?」


「ああ、...........わりいな」

少し涙ぐむ文耶.......



今日の文耶、なんかおかしい........





「約束の15分が経過した、各校試合に入る!!」

主審が言い、俺と文耶は第一コートに、岡見と打矢は第二コートに入る




俺らの相手は逢坂&沓沢組、どちらも同じくらいの身長で真剣な表情だ......



春日富士に経験者(ジュニア)はいないらしいが、この真剣な顔つきに俺たちは威圧されていた




お互いにシャトルを打ち合い、いよいよゲーム開始!!


サーブ権はこちらにある


今回のサーブは文耶が打つ


文耶が放ったショートサーブは、綺麗な弧を描いて、センターラインギリギリに落ちる.........



そのシャトルをバックハンドで上空に上げる沓沢



上がったシャトルは、自コートのバックラインめがけて落下......



今の後衛は俺....



俺は、ラケットを見る........


金子監督から貰ったラケット..........



俺は、飛んだ..............




俺は体をひねり、音速越えスマッシュを放つ準備をした.....





____________俺は見逃さなかった......



上空でとらえた文耶の右手........



一瞬でよく分からなかったが震えていた......



まだしびれが残っているのだろう.......

さっきのサーブがかろうじて打てたんだとして、ここで俺が音速越えのスマッシュを放ち返された場合、文耶は多分反応できない.......




俺は、シャトルがラケットのスイートスポットにヒットする寸前で、体の勢いを殺し、カットスマッシュを放った........




まだ金子監督から教えて貰ったばかりのカットスマッシュ....



決まる可能性はきわめて低い...................




................でも、今、この状況では使うほかない.....






高速回転をかけられたシャトルは、ギュルギュル音をたてながら風を切り、鋭い角度をつけて相手コート右側端の3番に急降下していく...........




相手は、俺のフォームからして完璧、スマッシュか、落としかの2択しか頭に無かったのだろう棒立ちしている






_________決まった



奇跡だ、難易度の高いカットスマッシュに成功するなんて.....




監督は言う.........


10本打って1本入るミラクル球より、10本打って10本入る糞球を打て..................


どんなに下手な配球でも入らないよりはましだと言うことなんだろう.............





今の俺は、その言葉の本当の意味が分かった






______10本打って1本はいるミラクル球は、10本打って10本はいる糞球の中でしか生み出せない!!



自分のなかで、少しだけ勇気がでた気がした




「文耶、失敗したっていい..............失敗をためらって勝ち取った成功なんていらない................超攻撃型フォーメーション、いけるか?」


俺は、前衛で構える文耶に言う



「もちろん!!、.............優羽、心配かけたな」


文耶は笑顔で言う

Re: Heart Break No Wing ( No.29 )
日時: 2011/01/12 14:06
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)



_________試合は中盤にさしかかる


桜野&佐藤組 18-10 逢坂&沓沢組

岡見&打矢組 15-11 高野&梅沢組


隣のコートで同時進行で進められている岡見と打矢のダブルスも得点差4点と接戦を繰り広げていた..........



こいつらそこそこ強い........




だけど.........






_________そこまで強くもない.....





でも逢坂&沓沢ペアと試合していて、すっげ〜楽しい!!





こんなこと今まであっただろうか?............




いや、無かった..........




こいつら本当にバドが好きなんだ!!




こいつらの技術は決して高くはない.......................だけど、どの高校よりも真剣な表情、一球一球のシャトルにかける想い............







_______あいつら、心でシャトルを打ってる






なんで、地区新人優勝の俺たちが無名の高校にここまで得点をとられたか..................






_________やつらのバドにかける想いが強すぎるんだ!!






俺らはその想いに圧倒されている..........





俺たちだってバドに対する想いは、人並み以上にあるはずだ........


あいつらの想いの方がでかいって言うのか.....






俺は、隣で必死になってシャトルを追う文耶を見る.....






.........俺の脳裏で、入部したての時の地獄のトレーニング、夏の強化合宿、新人戦..........すべての場面がフラッシュバックする






俺は飛んだ................





高く、高く_____________





バドに対する想いは、お前ら以上だ!!!!!!!!!!!!!





上空でラケットを振り抜く.........




爆発音をたて、音速を越えたスマッシュは相手コートにめり込んだ






俺の想いはこんなもんじゃねぇ______






「優羽、いきなりどうした?」

文耶が尋ねる


「お前は感じないか?、やつらの........」



「今回俺たちのミスの回数は少ない、だけど無名の高校にここまで得点を入れられてる..................けど、すげー楽しいよ俺は」


そう言うと、サーブの構えをする文耶



やっぱこいつも俺と同じこと思ってる.........






_______試合は終わった




俺と文耶のダブルスと岡見、打矢のダブルス、真嶋のシングルが勝ったので咲南の勝利となった






試合の後、春日富士のメンバーに声をかけられた


「ちょっといいですか?」

逢坂が言う



「さっきの試合、感動しました!!あの配球、スピード..........あなた方はジュニアですか?」




「いやいや、全然そんなんじゃないですよ〜」

文耶は手を振り首を振り言う


「俺も感動した、今回初めてシャトルに気持ちを込めて打ったかもしれない..............沓沢たちのダブルスと試合できて本当に楽しかった、ありがとう」


俺は、改めて逢坂・沓沢ペアと握手を交わした



握手をした瞬間、逢坂と沓沢は泣き出した




「今の試合でバドって楽しいって思えた............俺、この部活に入ってよかった........」


号泣する2人................



..........に混じってもらい泣きする文耶



「お前も泣いてんじゃねぇ」

軽く文耶を叩く



............ん?



ユニフォームを脱ぎ出す文耶.......





「まずい、裏文耶だ!!!、優羽頼む!!!!」

同じく、自分のダブルスの相手と話しをしていた岡見が、異変をさっちしたのか、叫ぶ



俺は、文耶の延髄をぶん殴る






文耶は、体育館中央に倒れる..........



「沓沢、逢坂、文耶運ぶの手伝ってくれ」



「わ、分かった」

少々同様している沓沢たちは、文耶を体育館端へと運ぶ



「ふぅ〜、危機一髪だったなぁ〜」

駆けつけた岡見が言う



「えっと、なにがどうなって......?」

沓沢たち春日富士のみんなは混乱しているみたいだ




岡見が説明を始める............






____________10分ほどで裏文耶についてと、文耶の幼なじみのこと、成り行きまで岡見は話した




「そうなのか、..............こいつ面白れぇ」

逢坂が言い、両校一斉に爆笑





その瞬間、文耶が目覚める


「ん?.........ここは?」



「.........プッ、アハッアハハハハハハ」

文耶がぼけて起きた瞬間、またもやみんな爆笑




なんで笑ってるのか分からないのに、文耶まで笑い始めた.......






..............違う高校同士会話して、みんなで笑う







____________ありがとう、春日富士。





「あ〜、笑いすぎて腹いて〜や...........咲南次、決勝だろ、そろそろアップ始めた方がいいんじゃねーか?」

沓沢が言う



体育館ステージがわの大きな時計を見る........





...........げ、決勝戦まであと10分しかない!!


「みんな急げ!!、試合まで10分しかないぞ!!!」




「うわ!!、マジだ!!...........急いで基礎打ちやるぞ〜!!!」

時計を見た文耶が叫ぶ




「そう、焦りなさんな.........俺ら春日富士、5人しかいないけど、決勝でっけぇ声で応援すっから」

逢坂は言い、円陣を組むポーズをしている......



_____どんだけいいやつらなんだ





俺たち咲南と春日富士はみんなで円になって肩を組み、円陣を組んだ





「優羽、かけ声頼む」

文耶が言う.......




俺は、周りと目と目でアイコンタクトをとる



俺は大きく息を吸い込み体育館中央で叫ぶ



_______『絶対優勝!!!!!!!』



『おおーーーーー!!!!!!!!!!!!』


みんなも後に続く



いよいよ決勝だ!!

Re: Heart Break No Wing ( No.30 )
日時: 2011/01/12 15:27
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)



男子団体決勝.................


決勝であたる対戦相手は分かっていた...........



地区新人の前から................





決勝の相手、それは



__________朱雀学院高等学校。



県北地区に分類する朱雀学院は、バド部員が総勢45人........


軽く学級一クラスを上回る人数だ......


それに、バド大国インドネシアからの留学生が3人も入っている有様だ。



成績は聞くまでもない。


インターハイ全種目優勝。
国体ダブルス 優勝 月島&霧谷ペア
国体シングルス 優勝 東雲 明
世界インターナショナル選手権 ダブルスベスト4 バクバル&スンヌ ペア
世界インターナショナル選手権 シングルス3位 タウチ・ナギヤット


...........その他にも沢山の成績をの残している


去年の全県新人もその前も、ずっとずっと........

第2回大会から朱雀学院は優勝し続けている......


今年優勝すれば58連覇





ありえない数字だ.......


元々、朱雀学院はバドの強豪校で日本全国から強い選手のみを選りすぐって引き抜いて作った部活だ


選手一人にはらう月々の契約料も半端ないらしい




バドミントン連盟も、金を前には口出しも出来ない......





朱雀の連中は、金で釣られてバドして楽しいのだろうか?







__________自分の強さ、とてつもない努力で身につけた技術を金で買うなんてバカげてると思う。





今回の団体戦も朱雀学院はどの高校からも応援はされない





なぜなら、みんな朱雀を恨んでるから....



朱雀の試合の時は、みんな朱雀の相手の高校を応援する



朱雀の連覇を塗り替えろ!!って気持ちで





俺たちは、今日始めて朱雀学院の試合を見た

名前だけは知っていたが、実物を見るのは始めてだ



団体戦、朱雀学院は相手を下に見なし、股の下でシャトルを返すなどして遊んでいた.......



確かに、技術、体力は桁違いだ.........






でも、どんなに弱い高校だって、0.0001%でもある勝つ可能性を信じて、最後の最後まであきらめずに一生懸命プレーしてるんだ!!

そんな輝かしい高校を遊び半分でプレーするなんて.........






____相手がなんだろうと関係ない、遊ばれるなら、こっちが本気にさせるまでだ!!!!!





『行くぞみんな!!!!』


本日最後の試合。

体育館には、俺たち咲南と朱雀しかいない



整列し、ネットを挟んで握手を交わす........




『お願いします!!』

挨拶をしたのは俺たちだけ、すでに下に見られてるってことか.....




挨拶をした瞬間、2階観客席からそれはデカイ歓声があがる




会場全体ピンクの布に咲崎南工業高校の文字




俺たちに負けた学校、朱雀に負けた学校、もう試合の終わった女子までもが立ち上がり、応援している........






自分の目が熱くなるのが分かった.........



「すっ、すげ〜.......」

みんな感動している





手が震える.......



今までは、咲南のため、自分のため、チームのために試合をしていた






だけど、今回は





_________集まったすべての高校、朱雀学院に負けた歴代のすべての高校のために試合をするんだ!!






凄いプレッシャーだ、試合する前に押しつぶされてしまいそうだ....






『しっかりしろ〜〜〜!!!!!!!』

二階席の真正面から、俺の耳に声が届いた



声の主は.............


声を目で追う



________佐伯姉







_______________ドッックン!!!


俺の心臓が大きく脈を打った







______『君、弱いね.....』




______『君、弱いね.....』


____『君、弱.....』





俺の心の中で、大好きな人に言われた最初の言葉が響く






俺、あの時から何も変わってないじゃないか........






なにビビってんだよ俺...............









_____俺は弱い......





中学時代最後の大会で、監督に言われたときもこの言葉だった





「え〜、三年生は最後の大会になるので全員出してやろうと思う、では、大会メンバーを発表する..........鈴木、熊谷、加藤..............以上だ」




「監督、俺の名前がないんですけど.......」




「ん〜〜〜、桜野、お前は弱いからムリだ」









________俺は弱い.........



『ウォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




俺は、叫んだ




今の俺を変えたい!!



「文耶、行くぞ!!!!」




主審が試合開始の合図をする






「ファーストゲーム・ラボールプレー!!」

Re: Heart Break No Wing ( No.31 )
日時: 2011/01/13 11:56
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


霧谷のサーブ........


俺が受ける



霧谷が放ったショートサーブは、白帯すれすれ、センターライン中央ギリギリをついてきた



俺は、その球を上げる他なかった.........




次の配球を予想する................


おそらくスマッシュか、カットってとこだろう




俺はどちらが来てもいいように、グリップを若干軽めに握り、コート中央よりに構えた


文耶も同じだ




相手は上がったシャトルを捕らえた..............



瞬間シャトルが消えた!?




シャトルは自分のコートに落ちていた..........




早い........


早いっていう次元を越えてる...............




なんてスマッシュだ............これが国体優勝者のスマッシュなのか





そんなことを考えていたら次のサーブが放たれた



慌てて繋ぐが、またもやモンスタースマッシュ





あんな球目で追うどころか、ラケットにすら当てられない.......





とうとう、俺たちは、一点も決められないまま一セットをおとしてしまった.............





チェンジコート、2分間の時間が与えられる........



文耶の息が荒い....



「ハア、ハア、ハア...やつらの、ハア、ハア、スマッシュ半端ねえ」



「ああ、確かに早い.............けど、俺ら2人だけで戦ってんじゃねぇーんだ」



俺は横のコートでボロボロになりながらも試合する岡見と打矢、ベンチで見守る真嶋たち.............



そして、観客席で応援してくれているみんなを見る





「そうだったよな...........技術では俺たちの方が劣るけど、気持ちは負けてないってとこ見せてやろうぜ!!」


文耶は、俺の目の前に手のひらを向ける



「ああ、一セット取られたけど、立て直すぞ!!」



俺は、文耶の手のひらにハイタッチしコートに戻る






............一セット目はラブゲーム



でもただ点数を取られていた訳ではない





_____しっかり、相手の行動パターンを読んでいた





相手のショートサーブがくる........



俺は、同じように上げる.............




予想していたモンスタースマッシュ...........




シャトルは見えないが、シャトルがラケットに当たるまではハッキリ見えている、その一瞬で大体の球筋がわかる....


あとはラケットをシャトルに当てるタイミング..........

これはもう感覚に任せるしかない、だが、月島、霧谷とも、スマッシュスピードになんら変わりわないことは確かだ






_____上がったシャトルに月島のラケットが覆い被さる





ここだ!!!!!!!!!!!!



俺は、月島のラケットにシャトルがヒットした瞬間、素早くバックハンドに切り替え、ラケットを振った..........






__________当たった




返ったシャトルは、大きな弧を描いて、相手コートのバックラインギリギリに向かった




............続けてくるモンスタースマッシュ




今度のターゲットは文耶のようだ




文耶も学習していたのか、俺と同じタイミングでシャトルを返した



シャトルは、またもやバックラインへと上がる





またもモンスタースマッシュかと思いきや、今度は途中で失速するカットスマッシュだった........





_________そうか、こいつらにとっちゃ俺らが10本打って1本決まるミラクル球が10本打って10本決まるのか.........





モンスタースマッシュのことしか頭に無かった俺たちは、高速で回転しながら除々に速度を落とし、急激に降下するカットスマッシュに手が出なかった。



2セット目も先制点を与えてしまった




こうなりゃ、こっちもミラクル球で勝負するほかないってことか



「文耶、失敗を恐れず、俺らのパフォーマンス見せてこう」


俺は、構える文耶に呟く





__________そう、俺たちだってミラクル球は使ってないだけで色々持ってるんだ...............
失敗したっていい、奇跡を起こそうとしない限りミラクル球は生まれない.........


『奇跡は起こすから価値があるんだ!!!!』





サーブは俺が受ける


相変わらず百発百中の白帯すれすれセンターギリギリサーブを決めてきやがる.............


本当にやっかいだ........



俺は、フォアハンドでシャトルを上げるふりをして、フェイントをかけ、そのままシャトルをネットの白帯を這わせるようにして、クロスヘアピンを放った...


相手は若干下がりかけていたが、こちらにシャトルを上げさせたいのだろう、クロスヘアピンをもの凄い回転をかけて、スピンヘアピンで返してくる.........



前衛の俺が対応にまわる...........



高速回転を掛けられたシャトルは、もの凄い早さで急降下していく

回転がどっちにかけられているのか、その判断は一瞬でしなければならない.........

俺は、ネット前に高速ステップで移動しながら、シャトルの回転を見極める.........




『優羽、右回転!!!!!!!!』


後ろから声が聞こえた、文耶の声だ....



ここで天性のバドミントンセンス開花か!?


俺は、後ろの言葉を信じて、ラケットの面をネットに対して水平にねかせ、手首のスナップをきかせて左にスライドさせた



右回転のかかったシャトルは、左回転をかけたことによって、乱回転を起こし相手コートに落ちていく........



月島はそれをバックハンドで上げる..........



さすがにここまで乱回転がかかったシャトルでは上げる他ないか



上がったシャトルは、後衛の文耶の元へ飛んで行く



『Tスマッシュ!!』

文耶が叫ぶ

Re: Heart Break No Wing ( No.32 )
日時: 2011/01/13 14:01
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


『Tスマッシュ!!』

文耶が叫ぶ


『Tスマッシュ』、それは、地区新人前に文耶と遊びで考えたフォーメーションスマッシュ........


上がったシャトルを前衛が打つふりをして後衛が打つというスマッシュだ........


通称 トリックスマッシュ_______




このタイミングでTスマッシュ.........



もう、なるようにしかならない!!



俺は、高速バックステップでさがり、飛ぶ.........

そして、シャトルがラケットに当たる寸前でかわし、前衛に戻る


瞬間、俺の後ろで、俺とほぼ同時に飛び上がった文耶の音速越えスマッシュが炸裂した.....






________決まってくれ!!!!!!!





シャトルは、速度を増し、白帯にぶち当たって相手コートに落ちる.....






___________ブラットショットだって!?



しかも、文耶のやつ、それを狙って打ったのか!?




ブラットショットとは、白帯に絶妙な角度、力で当たらないと発動しない神レベルの難易度をもつ技だ.....

このショットが決まれば、相手はほぼ100%返すことは不可能......



それを文耶は、狙って打っただって......



俺は後ろを振り返る.......




「文耶、お前すげ〜.................文耶、文耶ぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!」


文耶は、コートに血を吐きながらコートに倒れていた.........




すぐに、大会関係者が近寄って来る......



「試合は中止!!、早く奥へ運べ!!!!!」

駆けつけた大会関係者の一人が言う




「.........やめ...........やめろ........」


文耶は、もうろうとする意識の中、一生懸命に話す



「文耶、もう試合はいい!!、早く病院行け!!!!!!死ぬな!!!!!!!」


俺はまだ状況がのみこめていなかったが、必死に叫んだ

大事な友を失いたくはない.........



「........バカ、死にぁしね〜よ...................俺よー、分かるんだ......................この試合で最後、もう二度とバドが出来ないって...................だからよ............」







____________『優羽、お前とダブルスがしたいんだ.........』





俺の目から涙が溢れる..........



「バカ言ってんじゃねぇ〜よ!!!!!!、いつもテメーは人のことばかり考えて.................ざまぁーみろ、バチが当たったんだ」



微笑む文耶

「........へへっ...........」



「.........だからよ、俺はお前に恩返しがしたかったんだ..........ずっとずっと......................待たせたな文耶」




俺は、大会関係者を押しのけ、文耶をコート後ろのバックラインに寝かせた...............



「.......テメーはそこで寝てろ....................文耶、あとは任せてくれ.............」



俺は、文耶の右手に握られていたラケットを借りて、左手に持つ......




________二刀流........





試合再開。




俺の体力も限界に近い..........


相手は2人、こっちが10体力を消費するとして、向こうはその間5しか体力を消費しない.........



不利なのは承知だ.............




例え俺の足がちぎれようと、ラケットがぶっ壊れようと......




________『文耶ぁ〜、安心しろ〜、これから来るシャトルは全て捕らえる!!!!、......................これが俺の本気だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




俺は、ユニフォームを引き裂き叫ぶ



ここからの記憶はうっすらとしかない



人間には、体にいくつも制御がかかっているらしい...........


多分その制御がいくつかはずれたのだろう






相手のモンスタースマッシュの嵐...........


俺はその一球一球を返した......


ただ返すだけ........それで精一杯






試合中俺の脳裏に時につらく、時に楽しかった日々の練習風景がフラッシュバックする.........




______俺さぁ、幼なじみがいたんだ.......そいつの余命は幼稚園のころから決まっていたんだ............




_______そいつの心の支えになっていた言葉........




_________『限界を作っちゃだめ』




________え〜、25㎞も走るんすかぁ〜........



________一番ビリ、ジュースおごりなぁー..........




__________よし、ここからゴールまでダッシュだ!!





________え〜、もう限界〜〜〜〜〜




..................おいおい、俺たちのモットーなんだっけ?






『限界を作らないこと』








_____________気づけば俺は、病院の一室で寝ていた




体中が痛い、のどの奥が切れているらしい、呼吸するのも痛い.....





...........文耶、文耶はどうなったんだろう?




俺は、動くこともできず、瞼を閉じた


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