コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- てんとう虫のパン屋さん
- 日時: 2013/08/14 21:30
- 名前: 紫水晶 (ID: h/hwr32G)
えと・・・初めてです。
凄い下手です。
それでも読める!ていう有り難い方は、読んで頂けると嬉しいです。
それでは・・・始まりです。
※え、と・・・凄い大きなミスに先程まで気付きませんでした。
少しずつ、訂正を入れているので・・・
余裕があれば、初めから読み直して頂きたいとか思います。
流してくれても、構いませんので・・・すみません、私如きが。
一応、縦に長くなってきたので簡単な人物紹介を。
【松前多高校生】
葛城 千春*カツラギチハル 主人公・天然ボケ&大食漢、♀、一年。
月詠 水氷*ツクヨミミズヒ 千春の友達・天邪鬼、♀、一年。
文月 佑哉*フミヅキユウヤ クラスメイト・水氷の知り合い・正直者、♂、一年。
浅雛 琉惟*アサヒナルイ クラスメイト・天使&悪魔の二重人格、♀、一年。
梨子地 由記*ナシジユキ クラスメイト・物忘れ野郎、♂、一年。
野崎 織花*ノザキオリバナ クラスメイト・服飾大好き、♀、一年。
【教員】
桃谷 春樹*モモヤハルキ 社会史教師・野球部顧問・暑苦しい、♂。
片岡 宮子*カタオカミヤコ 古典教師・メガネのオバチャン、♀。
【家族】
葛城 蓮水*カツラギハスミ 千春の母親、故人、♀。
葛城 佐夕季*カツラギサユキ 千春の姉・大和撫子・エスパー?、♀、大学3年生。
葛城 日本*カツラギヤマト 千春の父親・凄い働き者、♂。
月詠 水鏡*ツクヨミスイキョウ 水氷の父親・親馬鹿&おしゃべり、♂。
月詠 水樹*ツクヨミズキ 水氷の兄・シスコン&泣き上戸、♂。
月詠 水成*ツクヨミミナ 水氷の妹・水氷ラブ&笑い上戸、♀。
【町の人】
早坂 流輔*ハヤサカリュウスケ 千春の想い人・『パン屋のバイト』・明るい、♂、大学3年生。
成瀬 森羅*ナルセシンラ 流輔の友達&佐夕季の彼氏・超無口、♂、大学3年生。
成瀬 夜海*ナルセヤミ 森羅の妹&千春の同級生・無表情・趣味は人間観察、♀、高1。
店長*テンチョウ 本名不明の『パン屋』の店長、多分♂。
女の人*オンナノヒト 流輔の前に『パン屋』で働いていた女性・店長の知り合い、♀。
また更新します。
- Re: てんとう虫のパン屋さん ( No.26 )
- 日時: 2012/11/22 14:40
- 名前: 紫水晶 (ID: h/hwr32G)
「何から話したら良いかな・・・まぁ、まずは基本的なことよね。
私達のお母さんの名前は葛城蓮水。花の蓮に、水で蓮水。旧姓は二碕、この碕はいしへんの方よ。栗色の髪——千春はお父さんににて黒色だけど、私は生まれつき同じ栗色なの——で、くせ毛だからふわふわしてた。
お母さんは物心ついた時から関東の方の孤児院のある教会で、孤児としてシスターや司祭たちに育てられていたらしい。二碕って名字は、その院の院長(・・・まあ司祭だけど)の名前で、そこで育てられていた子供達は皆二碕を名乗っていたんだって。蓮水って名前は、お母さん自身が唯一覚えていたものみたいだけど・・・。
日本——お父さんはね、此処から近い実家の所で育って、世界を相手に仕事するような会社に勤めるようになった。今みたいに、色んなところに飛ばされて期間中は現地で仕事をしてたから、お母さんに出会ったのもそんな時。たまたま二碕の教会の近くにある支社に半年飛ばされていた頃だった。 私にはよく解らなかったけれど、二人は自分達の出会いを運命だと信じて疑わなかったそうなの。特にお母さんは、初恋だったって話よ。
その頃お母さんは18歳になっていて、本当なら院を出る年だったんだけど、親戚もいないからってシスターたちが住み込みでお手伝いの仕事をくれていたの。良い人たちでしょう?(きっとお母さん、そこの人達に影響されておっとりしていたんだと思う。)お母さんは、身寄りの無い自分を育ててくれた院の人達に恩返ししたいってずっと思ってたんじゃないかな。自分より年下の親のいない子供たちを本当の妹や弟のように世話していたって、日本父さんは言っていたわ。
日本父さん、鼻歌歌いながらスキップして子供たちと散歩してたお母さんに惚れちゃったんだって。凄く生真面目で誠実な人なのよ?そんな人が一目で惚れちゃうくらい、お母さんってば可愛かったのね。そして、お母さんの方も日本父さんに惹かれていた。
二人は自然と世間話や自分の近況を話したりするのも多くなって、時には一緒に散歩したり、日本父さんが教会に行って子供たちと遊んだり料理を作ってあげたりすることも増えていった。シスターたちも最初は無愛想だとか思ってたみたいだけれど、関わるうちに不器用だけど心の優しい良い人だって解ったのね、心を許してくれるようになったの。
そして、あっというまに数カ月たって・・・日本父さんの出張期間の半年が、もう直ぐ終わるっていう頃。
彼は、大阪に戻ってしまったら今度はいつ会えるのか判らない・・・そう思って、思い切ってお母さんに一緒に来てほしいと頼んだの。ふふ、水氷ちゃんこの意味解る?・・・えっ、本当?案外鈍いのかな・・・。
プロポーズ、よ。・・・フフフ、そんな顔赤くして。(彼氏くんがきっと悔しがるわね。)
日本父さんは断られるかもしれないっていうのも覚悟の内で、お母さんに申し込んだの。でもそれは杞憂で、お母さんは喜んで承諾したんだって。二人は院の人達に結婚して大阪へ行くことを話した。急な話だから反対されるかもと思ってたんだけど、みんな快く応援してくれたそうなの。司祭にとってはお母さんは自分の娘みたいなものだし、シスターや子供たちにとっても大切な存在だった。でも、同じくらい、お母さんの幸せを願ってもいたの。だから、みんなとても喜んで祝福してくれたんだって。相手が日本父さんだから、余計に安心したみたいね。信用できるし、傷つく心配も無いだろうって。
そうして二人は日本父さんの実家へ帰ってきた。あとは父さんの両親の説得だけ。だけどそれの方が大変だったみたい。
父さんの父親——私からしたら祖父なんだけど、その祖父や親戚は『何処の誰の子かも解らん、親族も何も居ないような娘・・・』なんて酷いこと言ったらしいんだけど、祖母の方が『この娘さんの親はその教会の者達だろう、何処の誰の子?日本の人間の子じゃないか。何をバカみたいなこと言いおって、私の息子の幸せの邪魔をする気か。』って言い返してくれたんだって。それはもう凄い迫力で、誰も逆らえなかったって笑って祖父が言ってた。しまいには『この、たわけがっ!』って怒鳴られたみたいよ。それに、最初は反対していた人達も、仲の良い二人を見てるうちにどうでもよくなったって聞いたわ。
そして、二人は見守られ、結婚した。
・・・と、これが、お母さんと日本父さんが結ばれるまでのお話。
ごめんね、ちょっと長くなるんだけど、時間大丈夫?」
- Re: てんとう虫のパン屋さん ( No.27 )
- 日時: 2012/11/11 14:38
- 名前: 紫水晶 (ID: h/hwr32G)
佐夕季さんが一気に喋る。
「——と、これが、お母さんと日本父さんが結ばれるまでのお話。
ごめんね、ちょっと長くなるんだけど、時間大丈夫?」
私は聞き入っていたので、突然振られて一瞬戸惑った。
「・・・あっ、はい、大丈夫です。」
「そう?じゃあ、ええと・・・」
再び佐夕季さんが話し始めようとした所で、私の耳は誰かが走る音を捉えた。
「・・・?あの佐夕季さん、何か聞こえませんか?」
「え?」
ガチャリと玄関の扉が開く音とともに、
「お姉ちゃん、ただいまー・・・」
!!!!
千春の声だ。とことこ歩く音。
「さ、佐夕季さん・・・っ」
「あらあら、ごめんね水氷ちゃん。続きはまた今度——」
言い終わる前に、ドアが開く。
「お客さんー?」
パタ。千春が固まった。私も固まった。佐夕季さんが微笑む気配。
そして。
「水氷ちゃん!!??此処に居たの!神社になかなか帰ってこないから、水鏡さんと心配してたんだよっ?」
真っ赤な顔で、私に抱きつく千春。
「事故とかじゃなくて良かったー・・・!自転車で探しに行こうとしてたの・・・」
「や、私図書室で勉強してたんだけど・・・」
「・・・あっ!そっか。で、でもね、もう7時なの!水氷ちゃん一人だったら危ないでしょ?」
「千春・・・」
千春の方がずっと危ないよ。
髪が風でかなり乱れてるし、息遣いも荒い。走ってきてくれたのか。
目もちょっと潤んでるし・・・
「ありがと。・・・さっきは怒鳴ってごめんね。」
「ううん、大丈夫。原因は私だし、怒ってる水氷ちゃんだって大好きだもん。それに、・・・勉強の時間省いて私の家に来てくれたんだよね。」
「うっ。」
どうして鋭いんだ、この姉妹は・・・!
私は図星だったので、言葉が詰まってしまう。だけど(本人は意識してないだろうけど)上目遣いに訊く千春はとても可愛かったから、自然と素直に答えれた。
「・・・うん。」
そんな私に千春は、暫し固まった。ポカンとしている。
けどすぐに溶けて、
「水氷ちゃんだいすきぃ〜〜〜」
ぎゅううぅぅと私に巻き付けた腕に力を込める千春。
「うん、私も。」
「嫌われたくないよ・・・水氷ちゃん、私に気なんて使わなくて良いんだから・・・」
「嫌わないよ。てかあたし千春に気遣った?」
「・・・・・・無理してないの?」
「何が。」
「本当に・・・?」
「だから何が。」
千春は少し黙って何か考えていたようだけど、今度は私から手を話して顔をあげて、
「ならいいや!」
と満面の笑みで返した。
何の事を言ってるのか時々よく解らんけど、私の性格や癖を知ってて尚私の傍に居てくれている千春は、本当に本当に大切な私の友達だ。
今度また今日みたいになってしまわないように、気を付けよう。
私達を見る佐夕季さんの目は温かくて、優しい目ってこういうのなんだろうな・・・って凄く思う。
千春のお母さんの話の続きも気になるけど、今は千春とわだかまりが残らなかったことを幸せに思うべきだって、私の弱っちい部分がギャーギャー言ってる。
だからそれはまた今度、だ。
・・・あ、佑に一応お礼言わなきゃな・・・。
- Re: てんとう虫のパン屋さん ( No.28 )
- 日時: 2012/11/20 15:48
- 名前: 紫水晶 (ID: h/hwr32G)
*3.5* 余談
ヴーヴー・・・
無機質な携帯のバイブに彼は目を覚ました。
「・・・んん・・・?」
手探りでその振動を止めようとする。
因みに、高速で進化する機械の変化について行けない彼の携帯は、数年後まではスライドのままである。
しかし——
ドスン!!という大きな音とともに、彼はベッドから床に落下した。
「・・・ってぇ・・・。」
打った頭を押さえながらも、彼はやっと携帯を手にする。
「誰だよ、こんな時間に。」
文句を言いながらもメールボックスを開いた。
そして目を見開くと、
「っ・・・・・・はぁ・・・。」
大きな溜息を吐いて、携帯を閉じた。
カタカタ・・・
着信音が五月蠅い。
・・・何故?自分はこんな鬱陶しい音を設定した記憶はない。
嫌々通話ボタンを押す。
「・・・もしもし。」
不承不承といった感じで、あくまで嫌そうに。
「寝てたんだよ。・・・否、夜更かしはしてないよ・・・・・・そんな事無いって。」
口の端が上がって居るのが解る。無意識だ。
「うん・・・やっぱり。そう。」
もう口調は軽くなっている。最初にちょっと意地悪っぽくしたのは、拗ねていたから。
けれど相手は全く気付いていないようで、もう意味も無いのでやめた。
正直に行こう。
自分は嘘を吐くのは苦手である。
「別に良いよ。・・・・・・大丈夫?・・・そっか。」
電話の向こう側から聞こえてくる声の方が、随分と照れ隠しをしているように思われる。
無愛想に、しかし何処か可愛げのある・・・。
「・・・解った。そうだね、じゃあもう少し寝るよ。・・・ちゃんと寝なよ?」
これは嘘。寝れる筈がない。
「うん、ばいばい・・・おやすみ。」
そっと囁くように声をかけて、通話は終了した。
まだ4時・・・いつもの起床時間までは1時間以上ある。
扨——残った時間をどうやって潰そうか。
まあ、考えている内に時間は過ぎそうだ。
カタカタ・・・
5/13 22:32
from:佐夕季
Sb:Re
————————————
特に二人とも風邪ひいてな
いから、心配要らないよ。
ちゃんと解ろうとしてくれ
る子がいたから、ちーちゃ
んも大丈夫。
そういえば、ちーちゃんも
もう直ぐお父さんの悲しむ
事に発展しそう。
でも安心してね。
結婚するのは私が先だから
。
それに、きっとお父さんの
気に入る人だよ。
成瀬くんの事だって、本当
は認めてくれてるんでしょ
う?
私の大事な人なんだよ。
お父さんと同じ気持ち、今
私成瀬くんに持ってるんだ
からね。
もしまた反対したら、お祖
母ちゃんに言うよ(笑)。
…あ、そうそう、お父さん。
月詠無神社って知ってる?
カタカタ・・・
「森よ。お前最近彼女ちゃんとどうなんや。」
「え、お前彼女居たのか。」
「父さん知らんかったんや!母さんも言ってないん?」
「母ちゃん俺のユニフォームしらね?」
「知るか!葉が聞いてこんから。」
「大地〜〜かみゆってぇ〜〜」
「あっ太陽泣いてる!!」
「ちょ・・・訊くも何も!」
「父さんソレ私のプリン、こっちが父さんのコーヒーゼリー。」
「ち・な・み・に!夜海ちゃんにもちゃんと居るよ、彼氏。」
「マジでか!・・・あれ、大地と朝海は?」
「「るっさい!!」」
「・・・・・・美味。」
「傷えぐんなやっ。」
「あっ、大地ゆがんだ!やりなおし〜〜」
「私は夜海ちゃんが良いも〜んだ。」
「・・・。」
「待て葉、あたしは変態は育ててない。」
「太陽わらってる〜〜月花ないてる〜〜大地のせいで〜〜〜!!」
「あーもう、森羅やってくれよ。」
「森にいやるくらいなら私がやったる。」
「や、やめろ、朝海はあかんやろ!」
「何でぇ?」
「やっ、夜海!月花の髪を守れ!!」
「・・・・・・手前でやれよ。」
「ええええええ」
「楪、このコーヒーゼリー美味いぞ。」
「あたしはコーヒー食べられんよ、葡萄のゼリーで良いわ。」
「じゃあ今日買っとくか・・・。」
「葉輔、私のプリンも買っといて。」
「はいはい。」
「夜海ちゃん、時間大丈夫?」
「・・・もう準備出来てるけど?」
「嘘っ、あたしが急がなきゃ。」
「わぁ〜い、夜海ちゃんいこ〜。」
「あ、ついでに月花にも。」
「えっ、今の何?」
「母ちゃんユニフォームーーー!!」
「うっさいわ!莫迦野郎!」
「なぁなぁ、何やって楪〜・・・!」
賑やかな朝。
「・・・・・・。」
沈黙を保つ者も居る。
「あ、森羅森羅。」
「?」
「また泣かせて無いやろな?」
「っ!!!」
「・・・・・・月花、行くよ。」
「は〜い。」
家では寡黙な彼の弱みを知っている妹は、侮れない。
「森、言い訳無しな。」
・・・因みに、母も知っている。
- Re: てんとう虫のパン屋さん ( No.29 )
- 日時: 2012/12/01 09:12
- 名前: 紫水晶 (ID: h/hwr32G)
*4* テスト勉強しよう。
「・・・お、おはようございます。」
「あっ、千春ちゃんおはよう!今日は何にする?」
「えと・・・ミルクティー風ロールと、ピロシキ醤油味とフルーツクリームでお願いします。」
「あれ、今日はカスタード食べないんだ。」
「あんまり甘いの食べてると友達が体調崩しちゃうので・・・。」
「へぇ〜。」
水氷ちゃんと無事に仲直り出来た次の日。
お姉ちゃんの作ってたフルーツタルトは無くなっちゃってたから、今日はフルーツクリームの気分だ。
これはカスタード程甘くなくて、酸味も効いてるから尚良い。(それでも水氷ちゃんは嫌になるかな?)
今日のは全部、甘さ控えめ。
流輔さんがそれぞれを袋に詰めながら、にっこり笑う。
「俺、結構覚えてきたよ!千春ちゃんのおかげ。」
「そ、そうですか?」
何だろ、凄く嬉しいな。
相変わらず急いでたのか、前髪はだら〜んだけど。
「うん。30種類くらいは覚えたかな・・・。」
「じゃあ、ちょうど半分ですね!」
途端に流輔さんの顔が青褪める。
「え!そ、そんなにあったっけ・・・?」
「はい。あー、でも・・・もう直ぐ夏限定メニューとかも出るんじゃないでしょうか?だったら追加で——」
「ちょ、ちょい待って。店長そんなに作ってんの?」
「いつもどれを選ぶか迷うくらいです・・・。」
「っっ。」
流輔さんはガクッと肩を落とした。
「まだまだだね・・・。はぁぁ・・・ちょっとは千春ちゃんびっくりさせられるかと思ったんだけど・・・『おすすめです!』とか言いたいし。」
何だか微笑ましい目標に、私は温かくなって。
「頑張ってください。」
「うん・・・。」
応援します。
リュックに袋を入れて、テーブルの用意のお手伝い。
今日はいつもより早起き出来たから来たのも早め。
つまり準備はまだ全然だし、テーブルもパラソルも出てない。
突然流輔さんが口を開いた。
「そういや千春ちゃん、もう直ぐテストの季節かな?」
何で知ってるんだろう?(私だってすっかり忘れてたのに・・・)
「よくファミレスとかで勉強してる子見るからさ。」
不思議そうな顔を私がしてたのか、流輔さんが訊く前に答えてくれた。
「来週末くらい・・・だったと思います。」
「近いね!俺も高校の時は頑張ったよ・・・」
「大学はテストじゃないんですか?」
「科目で色々あるからね。でも多分その内大変になるだろうな。・・・大丈夫かな、俺。」
「私も頑張らないとですね・・・。」
昨日まで忘れてのうのうとのんびりしてたことが急に恥ずかしくなって、私は俯く。その時、視界の端に、公園の掲示板に張られたカラフルなチラシが目に入った。
見出しには、大きな緑色の筆字で『葉桜祭りin門宮・月詠無神社』と書かれていた。
ここら辺は、春は綺麗な桜やら梅やらが満開で咲き乱れてて他の場所から人が沢山来るから賑やかだけど、この季節の葉桜の方が地元民には好かれてると思う。
お花見だと皆ゴミとかいっぱい落として行っちゃうけど、葉桜祭りは近くの住人達が開催して楽しんでるお祭りだから、自分達でゴミも残り物も全部掃除したり消費したりする。
(住んでる所をわざわざ汚したりしたくないもん。)
だから、綺麗さを保ったままで過ごせる。
もっと夏には『納涼!〜夏の終わりに〜』とか、秋には『秋と花火とお祭りと』とか、まあ色々お祭りごとは豊富な場所だけど、大体は門宮神社を元にやってる。
だけど『葉桜祭り』は門宮神社と月詠無神社(すごく近いんだよ?)が一緒にやってるし、門宮公園も使用してるから余計に楽しい。
そんなお祭りまで、あと2週間・・・。
「それね、店長が『うちも出店するぞ』って言ってたよ。」
私の視線に気づいて流輔さんが言った。
「わぁ、そうなんですかっ?」
「(あ、急にきらきら。嬉しそう。)うん、だから楽しみなんだ。結構小っさい頃から行ってたし・・・余計メニュー増えるけど。」
「・・・・・・じゃあ私、一番にこのお店に買いに来ますっ!」
「まじっ?ありがとー。」
「エリアは何処ですか?」
「それは今日、店長が籤引きに行くって。」
もっと楽しみになってしまった。
水氷ちゃん、一緒に回れるのかな・・・その時に、流輔さんだって言おうかな。
「あの。」
暫く葉桜祭りについて盛り上がっていると、お客さんの声がした。
ワゴンの中にある掛け時計に目を向けると、もう行かなきゃいけない時間。
「じゃ、じゃあ!」
「うん、行ってらっしゃい。」
私は慌てて流輔さんに挨拶をして、走って水氷ちゃんの所へ向かう。
にっこり笑ってくれたのが本当に素敵だと思ったんだけど・・・やっぱりまだ、知らない人は怖いみたい。
走りながら少し振り向くと、流輔さんが手を振っていた。
私は小さく振り返して、軽い会釈をした。(顔が赤くなっていないか不安。)
さっき来たお客さんも私の方を見てる事に気付く。
女の人だ・・・制服っぽいのを着てる。誰だろう??・・・普通のお客さんか。
とと、急がないと水氷ちゃんに怒られてしまう。
私は走るスピードを速めた。(遅いけどね。)
- Re: てんとう虫のパン屋さん ( No.30 )
- 日時: 2012/12/01 09:17
- 名前: 梨濡 ◆y/QF05x.fM (ID: 8NCeH/RA)
はじめまして。
梨濡と書いてりぬと読みます。
面白いですね!
梨濡はファンタジー系好きなので気にいりました(
頑張ってくださいね!
ついでに梨濡も、「ドM男とドM少女。」という駄作を書いています。
よろしければ見に来てくださいね←
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