コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました
日時: 2014/01/02 18:36
名前: 夕陽 (ID: PODBTIS5)

 はじめまして!
 小説を投稿するのは始めてなので、アドバイスなどをくれると嬉しいです。

目次
登場人物 天野あやめ・工藤里奈>>1
     秋山なずな>>14
     ブラックロード>>17
     佐野さくら>>27
プロローグ>>2
あやめ、里奈と会う!>>5
里奈、転校してくる!>>9
あやめ、里奈と出かける!>>11
あやめ、里奈と出かける!2>>12
あやめ、里奈となずなに昔の事を話す!>>13
あやめ、里奈となずなに昔の事を話す!2>>15
ボス、アヤメにお父さんについて話す!>>16
ボス、アヤメにお父さんについて話す!2>>18
あやめ、なずなと一緒の夏休み!>>20
なずな、あやめに昔の事を話す!>>21
なずな、あやめに昔の事を話す!2>>22
なずな、あやめに昔の事を話す!3>>23
あやめ、正義の味方の講習に行く!>>24
あやめ、正義の味方の講習に行く!2>>25
あやめ、正義の味方の講習に行く!3>>26
あやめ、なずなの父に会う!>>28
あやめ、皆と修学旅行に行く!>>30
あやめ、皆と修学旅行に行く!>>31
あやめ、里奈と一緒の冬休み!>>32 
あやめ、最後の決断をする!>>33
エピローグ>>34

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Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.30 )
日時: 2013/12/27 12:50
名前: 夕陽 (ID: QJG1DFOg)

十七話 あやめ、皆と修学旅行に行く!

「あやめ〜。今日は晴れだよっ。快晴だよっ」
 という里奈の言葉であやめは起こされた。いつもなら文句を言うが、今日は言わない。なぜなら、今日は楽しみにしていた修学旅行の日だからだ。
 起きた後はいつもより早く支度をすませ、集合場所に着いたのは集合時間の10分前だった。
「あやめ、今日は無駄に早いね……」
 と里奈があきれつつ言った。
「確かに少し早すぎたかもね」
 周りにはあやめと同じように少し早い時間に来てしまった人が数人いる。とりあえず残りの時間を里奈と話してつぶし、ついに出発のときになった。
 里奈となずなとは違うクラスなので一緒に行動は出来ない。修学旅行は二泊三日でそのうち、初日は学年全体で行動なので会うかもしれないが……。

〜修学旅行・初日〜
 午前中はほとんど移動だった。昼食も新幹線の中で食べた。
 しかし、午後は学年全体での観光だった。里奈となずなとも合流でき、写真を撮ったり、観光中にもしゃべったりした。
 そこで意外な事を聞いた。
 どうやら、“ホワイトクロス”の人と“ブラックロード”の人が来ているらしい。しかもあやめのことについて、“ホワイトクロス”の人が譲ってほしいと持ちかけたらしいという事をなずなから聞いた。
 会うと面倒な事になりそうだね、と里奈に言われて確かに、とあやめは納得した。
 しかし、今のところはそれらしき人に会ってはいない。後はホテルに行くだけなので大丈夫だろう、とあやめは納得してそのまま里奈たちと観光を続けた。

 ホテルはそこそこだった。部屋は2人もしくは3人だったが、余った人は違うクラスの人とも一緒の部屋になっていいので余ったあやめは里奈、なずなと一緒の部屋にした。
 夕食まで部屋にいて荷物の整理をしてなさいと先生に言われ、あやめは部屋に入った。案の定、そこには里奈となずながいた。
「ねえ、なずな。ちょっと訊きたい事があるんだけど……」
「はい、何でしょう?」
「さっき、2つの組織がここに来ているって言ったよね? でもさ、何でここに来ているの? 別にここに来なくてもいいよね」
「ああ、その事ですか。実は私は昨日、父上にあやめを“ホワイトクロス”に入れたいと言っていたのであやめとあやめが所属する組織の方に訊いて見たらいかがでしょう? と提案したら採用されてしまいました。しかもなるべく早く実行しようと言っていましたので、私は明日は修学旅行があると言ったところではそこに行こうとなったようです」
「なるほど……。全ての原因はなずなかっ!」
「はい、すみません……。なので明日あたりに連行されるかもしれません」
「まあ、もう言っちゃったことは仕方ないよ。とりあえず気をつけておかないと。連行されたくないし」
 あやめはため息をつき、そういうと里奈が横から
「じゃあさ、私たちと一緒に行動する? 先生達に頼んでさっ」
「それはいい案だと思うけど、いろいろ問題があると思うよ」
「まあ、確かにそれは少し実行が難しいですね……。とりあえずあやめに気をつけてもらうしか方法はないです」
 そんな会議をしているうちに夕食の時間になった。
 夕食は豪華とは言いがたいが、決して質素でもないものだった。

 夕食の後はお風呂に入ってからベッドに入った。
 そんなこんなで修学旅行の初日は過ぎた。

Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.31 )
日時: 2013/12/27 16:00
名前: 夕陽 (ID: QJG1DFOg)

十八話 あやめ、皆と修学旅行に行く!2

〜修学旅行・2日目〜
 2日目は主にクラスで観光だ。
 しかしあやめはあまり気乗りしなかった。なぜなら、あやめはこのクラスに親しい人はいないからだ。
 必要な事はしゃべるが、それ以外は話す友達がいないのである。なのでクラスでの観光は静かに見ていることが主だった。しかし、2つの組織に見つからないように気をつけつつ。
 午前の観光が終わり、昼食中。
 見慣れた人がいたような気がした。気のせいだろう、と思うが気のせいではなかった。
 “ブラックロード”と、“ホワイトロード”の人達だった。
 やがてその人達はあやめに近づいてきた。そしてレイが先生に
「あの、あやめに少し話があるので抜けさせてもらいませんか? 終わり次第合流させるので……」
「あやめさんのお母さんですか?」
「はい、だめでしょうか?」
「それはさすがに無理です」
 そりゃ、そうでしょ。とあやめは思ったが言わずに2人を見ていた。
「では、これをばらしてもいいの?」
 そういってレイはなにかの写真を見せた。そのとたん先生が
「いや、それはだめです。もうあやめさん連れて行っていいですからその事は黙って下さい! お願いします!」
「分かった。絶対他人に言わないから。あやめ、借りていくわね」
 いったい何を見せられたのだろう。あやめは気になったがレイに連行されるがごとく連れてかれたので聞くことが出来なかった。

 連れてかれたのはおんぼろマンションだった。
「ねえ、お母さん。ここ、借りたの?」
「うん、当たり前じゃない! 管理人さんは私の友達だからただで貸してくれたわ」
 きっと、孤児院時代の友達だろう。とりあえず入って、とレイがせかしてくるのであやめは中に入った。
 中は意外ときれいだった。ほこりや、カビがないに等しい部屋だった。きっと、この人達はここに泊まっていたんだろう。
「とりあえず話しは簡単だ。アヤメのことについてだが、アヤメの意見が聞きたい。アヤメ、ここに残るかそれともあっちに移動するか、どっちがいい?」
 ボスが単刀直入に聞いた。あやめは迷ったが、何か答えなくては話が進まないと思いこう答えた。
「私は、まだよく分かってません。どちらの組織も好きです。なので私が中3になってから決めたいです」
「なるほどな。ところでアキヤマ、お前もそれでいいか?」
「本当は今すぐにも入ってほしいんだが……無理に入っても意味がないからな。あやめさんの提案に従います」
「よし決まりだな。アヤメ、すまなかった。こんな事に呼んでしまい。レイ、アヤメを皆のところに合流させろ。俺はもう戻る」
「承知しました」
 とレイがいい、あやめに
「じゃあ、送っていくから車に乗って」
 と車に乗せた。

 皆と合流したあやめは始めは何があったのか聞いてきた人が何人かいたが、なんでもないよと答え続けなんとか普通の状態に戻った。

 ホテルに戻り、里奈となずなにこのことを話すと驚いていたが口々に感想を漏らした。
「あやめ、ご苦労様でしたっ!」
「またまた、父上が迷惑をかけてしまい、すみません」
「でも、これで後は大丈夫だね。3日目は何だっけ?」
「どうやら自由行動のようです。この3人でまわりませんか?」
「うん! それいいかも!」
「私ももちろん賛成だよ」
 3人は寝るまでそのことについて考えていた。

〜修学旅行・3日目〜
 修学旅行3日目は自由行動だ。(もちろん制限はあるが)
 あやめが一番楽しみにしていたのもこの自由行動である。
 ちなみに3人で話し合った結果、はじめに観光、次にお土産を買い、昼食を帰る前に食べる事にした。
 観光は前の2日で行けなかった所を中心に観光した。
 お土産は家族と組織の人たちに買っていくことにした。里奈、なずなもそんな感じだった。
 昼食はここの名物というものを食べた。ちなみにおいしくて、普段こんなものばかり食べているなずなでさえも大絶賛だった。
「もう修学旅行終わりだね」
 とあやめがしみじみといった。それに反応するように
「ほんとだよっ。もう少しいたかったなあ」
 と、里奈。
「私もまた行きたいです」
 と、なずな。
 そこであやめはもう集合時間だということを思い出し、3人で集合場所に走った。
 最後に、皆で記念写真を撮った。
 その中に写っている3人は今までのどんな笑顔よりも輝いて見えた。

Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.32 )
日時: 2013/12/28 14:07
名前: 夕陽 (ID: IuHi0dEW)

十九話 あやめ、里奈と一緒の冬休み!

「やっと冬休みだねっ!」
 私の隣でそういっているのは里奈だ。もうこの家に馴染んでしまった里奈はあやめよりもこの家を知っているのではないかというほどこの家に詳しい。最初は里奈がくるのに反対していたあやめも最近は里奈がいなかったら寂しいかもなとか思っている。
 あやめはそこまで考えて、あることに気付いた。
「そういえば里奈、両親は心配しないの? ここにいて」
 そう訊くと里奈はああ、そのこと! と納得し、
「大丈夫だよっ。私は家出してきたから!」
「そうかあ……、家出してきたんだ……。って家出!?」
「まあ、嘘だけど。普通に友達の家に長い間泊まるっていったら許してくれた。迷惑にならないようにって言われたけれどねっ」
「ふう、びっくりした。でも里奈、確か私を“ホワイトクロス”に誘うために来たんだよね? つまり私が入ったら里奈は自分の家に戻るってこと?」
「うーん、多分そんなことになるんじゃないかな? 親も心配しているかもしれないし」
 里奈はそう言ってあやめのほうを見た。
「まあ、住んでもいいならこっちに来ようかな。あっちはいろいろ言われるから」
 あやめはもしかしたら“ホワイトクロス”の事かもなと思いながらでも訊く必要はないと思い、
「話は変わるけど、部活ないの?」
 そういうと里奈は部活動予定表に目を落としつつ
「うーんと、来週はずっとあるかな。後はないよっ」
 それならちょうどいいとあやめは思い、
「じゃあさ、少し出かけない?」
「うん、いいよっ。でも珍しいね、あやめが私を誘うなんて」
  確かにあやめは里奈を誘った事があってから一度もなかった。これもある意味進歩したのかなとあやめは思った。
「確かに。でもたまにはいいでしょ? どこか行きたい所ある?」
 里奈は悩んでいたが、すぐに
「私の家に行こう!!」
 と言った。
「へ? 里奈の家?」
「そう、私の家。いいでしょ?」
「いいけど……。ここから近い?」
「うん、あやめの家の3つ隣だから」
「里奈の家近すぎでしょ!? あれ、でも前転校してきたよね?同じ学校だったんじゃないの?」
 そういうと里奈は、
「実は、昔はもっと遠い所だったんだけど私があやめの家に行くようになった時、親が心配してこっちに引っ越したみたい」
 里奈の家はすごいなあ、と地味に感心しながらあやめは
「じゃあ行くか」
 と玄関に移動して靴を履く。里奈が履いたのを確認して二階にいる綾菜に
「お姉ちゃん、今から少し出かけてくるね」
 と伝えて外に出た。
 そして3つ隣に行くと表札に“工藤”と書かれていた。
「本当だ……。何で今まで気付かなかったんだろう」
「まあ、私も親に聞くまでは知らなかったしね。とにかく入ろうよっ」
 そういって里奈はインターホンをならす。少し待つとインターホンから、
「はーい、どちらさまですかー?」
 里奈とは正反対の、のんびりした声が聞こえてきた。きっと里奈のお母さんだろう。
「お母さん? 私、里奈だよっ。今日あやめを連れてきたから早くあけてよっ。寒くて死にそうだよっ」
 あやめは死ぬほど寒くはないと思ったが寒いのは事実なので訂正はしなかった。数秒後、お母さんらしき人がドアを開けてくれた。
「あら〜、里奈おかえり。そしてあやめさんはじめまして」
「はじめまして。天野あやめです。これからよろしくお願いします」
「あやめ、そんなに硬くなんなくてもいいよっ。それより早く私の部屋に行こう。お母さん、引っ越しても私の荷物持ってきてるよね?」
「だいじょうぶよ〜。ただ、筆記用具は捨てちゃったかもしれないけどね」
 どうやらのんびりした性格だが、やるべきことはしっかりやる人らしい。
「ありがとっ、お母さん。じゃあ、あやめ私の部屋でゲームやろっ」
 そう言って里奈は自分の部屋があるほうへ向かい始めた。
「里奈、自分の部屋どこか分かるの?」
「もちろん! だって何度も来たもん」
 なるほど、とあやめは納得したがもう一つ疑問が浮かんだ。
「じゃあなんで荷物持ってきたか聞いたの? 分かってるはずだよね?」
「ああ、それは来たの遊園地行く前の一回だけだから。そのときまだ全部持ってきたかどうか分からなかったんだよね」
 あやめは、納得し
「で、里奈の部屋はどこ?」
 と問いかけると
「ここ」
 と短い返事が返ってきた。ドアを開けると多少散らかっていたものの、そこまで汚いわけではなかった。
「よしっ、じゃあゲームをやろう!」

 しかしそのとき、ドアが開いた音がした。
 振り返って見ると男の人が立っていた。少し顔がなずなに似いているが無表情で怖いとあやめは感じた。
「お父さん……」
 という里奈の言葉で里奈のお父さんだと分かった。
 里奈のお父さんは、里奈を見ると
「お前、“ホワイトロード”という組織はやめたのか?」
 と急に聞いてきた。里奈は
「そんなのお父さんには関係ないでしょ!」
 と言った。そんな里奈の表情は里奈のお父さんの無表情とは逆で怒りの表情を浮かべていた。そうすると里奈のお父さんは
「だったら家に来るな」
 と里奈とあやめを追い出した。

 その後2人はあやめの家に戻った。
 重い空気の中口火を切ったのはあやめだった。
「里奈、お父さんとなんかあったの?」
 そう訊くと里奈は
「“ホワイトクロス”にいること前から反対されてたんだよ。そんな余分な事はやめろってね」
 といつもよりも沈んだ声で答えた。
「ねえ、里奈。何で里奈は“ホワイトクロス”に入りたいって思ったの? そのことをお父さんに言えば分かってくれるんじゃない?」
「そのこと、話したよ……。お母さんは納得してくれたけどお父さんは無理だった」
 里奈はうつむきながら答えた。きっと泣くのを我慢しているのだろう。顔を隠しても、震えている声や背中で解る。
「じゃあ、もう一回説得しに行こう!」
 あやめは、早くいつもの里奈に戻ってほしいと思った。だったら原因であるお父さんを説得すればいい。
「意味ないよ。どうせ私の話なんか聞いてくれないよ」
 とつぶやいている里奈を無理やり連れ出した。
 本日2回目のインターホンを押した。今度はお父さんの声だった。
「どちらさまですか?」
 里奈は答えようとしないのであやめが代わりに答える。
「あやめです。お父さんと話し合いがしたいと思い訪れさせてもらいました。お願いですから、話し合わせて下さい」
「里奈と話す事など何もない。とっとと帰れ」
「なんでですか! 本当にあなた達は話し合ったのですか? 誤解しているかもしれないじゃないですか! それでけんかしているとしたら滑稽ですよ」
 あやめは失礼かもしれませんがと付け加え、更に
「もう一回、話し合わせてくれませんか?」
 と穏やかに訊いた。里奈のお父さんは
「なら一回だけだ。それ以上は認めない」
 と言ってくれた。
「よし里奈、後は自分の気持ちを伝えるだけだよ、がんばって」
「え? あやめは一緒に入ってくれないの?」
「うん、ここは親子で話し合ったほうがいいと思うんだ。私は自分の家で待ってるね」
 とあやめはいい、里奈が家に入ったのを確認して自分の家に戻った。
 自分の家に戻ったあやめは里奈のことが気になって仕方なく、何度も時計や里奈の家を見ていた。
 そして30分位たった時、里奈が帰ってきた。
 しかし里奈は泣いたままだった。
「おかえり、里奈。もしかしてだめだった?」
 あやめは声が沈みそうになるのを答えて訊いた。
 里奈は、ゆっくりとあやめの問いに答えを返した。
「あのね、お父さんと話し合ったら、お父さん解ってくれたよ」
 あやめはびっくりして
「ほんと?」
 と訊いたが
「本当に決まってるよっ」
 と返ってきた。しかも里奈の調子が戻ってきたようだ。
 なんとなく嬉しくなってあやめが笑うと里奈も笑った。

 冬休みから、あやめと里奈はときどき里奈の家に遊びに行くようになった。



 冬休みが終わって、数日後。
 あやめにこんな手紙が届いた。

あやめ様
もう冬休みも終わるころかと思います。
組織に関することはそろそろ決まったでしょうか?
中三になったら教えてくれると言ってましたが出来れば早めにこちらに来てほしいです。
              ——なずなの父、秋山 蒼太

Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.33 )
日時: 2013/12/28 18:54
名前: 夕陽 (ID: IuHi0dEW)

二十話 あやめ、最後の決断をする!

 冬休みが終わってからあっという間に春休みになった。
 春休みが終わったら、もう中学三年生、受験生だ。
 しかし、あやめは中学三年生になるという事は別の事実もついてくる。それは

——ついに“ブラックロード”と“ホワイトクロス”どちらに所属するかを決めるのだ。

 それを伝える日は、始業式の日にした。
 あやめの学校は始業式が午前中に行われ、入学式は午後に行われる。
 なので午後に“ホワイトクロス”の所であやめはどちらに所属するかを言うことになっている。
 そして、その始業式は明日に迫っている。

「そういえばあやめ」
 と里奈に呼びかけられてあやめは、はっとした。さっきまで明日の事を考えていたからだ。
「なに?」
「もうあやめ決めた? 明日のこと」
 里奈に言われてあやめは困った。どうするかはもう決まっているが、反対されてしまっては決心が揺らぎそうだから。あやめははぐらかすことにした。
「うーん、まだ決まってないんだ」
 というと里奈は
「なーんだ、でも早く決めないと。明日なんでしょ?」
「うん、そうだね」
 嘘をついたからかすごく居心地が悪い。そのとき、インターホンがなった。あやめは救われたと思いながらドアを開けると、
「こんにちは、あやめ。父上に言われて様子を見に来ました」
 なずなが立っていた。

「おお、なずなじゃんっ。やっぱりボスに言われてきたの?」
「はい、そうなんです。それであやめは決まりましたか?」
 やっぱりその話か、とあやめは思った。あやめが答えようとすると里奈が先に
「実は私もさっきまで訊いていたんだよっ。でもまだ決まってないんだって」
 と言った。なずなは
「本当にそうですか?」
 ときいてきた。やっぱり嘘ってばれたのかなとあやめは心配になった。
「父上はあやめがもうどちらか決めているだろうと言っていました。まあ、勘なのであまり当てにならないかもしれませんが……」
「まあ、ボスの勘はいっつも五分五分だからねっ」
 このあとは、なんとかあやめが話題をずらして追究はさけられた。


 始業式が終わって帰る時、あやめの足取りはひどく重かった。
 それもそのはず、あやめはお昼を食べてから、皆の前でずっと考えていた答えを言うのだから。
 始業式の前のクラス発表の時、そこまでは普通だった。しっかり自分のクラスも、里奈となずなと同じクラスだということも覚えている。
 しかし、始業式の時、急に思い出してしまい何も頭に入ってこなかった。
 里奈に始業式が終わったあと、
「あやめ、大丈夫? 午後の事で悩んでるの?」
 ときかれてしまった。あやめは、大丈夫と返すのが精一杯だった。

 それで今に戻る。
 今はもう、家についてしまった。あと、昼食を食べたらついに発表だ。
 昼食はチャーハンだった。しかしあやめには味がよくわからなかった。
 なんとか全部喉に通して昼食が終わった頃、インターホンがなった。
 どうやらなずなのようだ。もうなずなは車と共に待っている。もう、どっちに転んでもかまわないと開き直り車に乗った。

 ついに、答えを出す日が来た。里奈に正義の味方にならないかと誘われた日からずっと考えてきた答えを。
 もう、皆集まっていた。
 “ホワイトクロス”のなずなのお父さん、お母さん、なずな、里奈、さくら。
 “ブラックロード”のボス、レイ、ライ、ケイ、綾菜。
 そして、一番重要なあやめ。
「じゃあ、あやめさん、あなたの考えた事を、言ってください」
 となずなのお父さんが言った。
「私の考えた末に出た答えは……









 “ブラックロード”も“ホワイトクロス”にも、所属しません」
 周りの人皆驚いているそぶりを見せた。口火を切ったのは里奈だった。
「なんで? 私、あやめと一緒に“ホワイトクロス”にいたいのに……なんで?」
「実は高校に入ったらやりたいことがあるんだ。だからそのためにどっちも捨てる」
 あやめは里奈のほうを見ずに答えた。見たら決心が揺らぎそうだから。今度はさくらが質問してきた。
「高校に入ったらやりたいことってなんですか?」
「それは高校に入るまで、秘密。その代わり高校に合格したら教えるよ」
 今度はさくらのほうをしっかりと見た。約束するから、と目で伝えたかったから。そうすると他の人は特に質問がないみたいなのでボスがまとめに入った。
「俺的には“ブラックロード”に所属したままがよかったが、アヤメが決めたんだからしょうがない今日はここで解散しようか。な、ソウタ」
「そうですね……。でもあやめさん、いつでも“ホワイトクロス”にきてくれていいですからね」
 というと、レイが、
「“ブラックロード”も待ってるからね、あやめ。いつでも戻ってきなさいよ」
 と言ってくれた。
「とりあえず、解散だな」
 というケイの言葉でその場は解散となった。


 家に戻った時、一番最初に里奈が言った言葉は
「あやめ、今までありがとう」
 という感謝の言葉だった。
「どうしたの? 急に」
「もう、あやめ決めたじゃん? だから私もここにいる必要はないわけ。それにお父さんとの件も解消したしね。それに3軒隣だからすぐ会えるし」
 あやめは
「そうだね、それに学校も一緒だし」
 と言った。本当は寂しかった。けれど困らせてはいけないと思い、理解したふりをした。
 そこから引越しの準備をした。っといっても衣服や生活用品しか持っていくものがないのですぐに終わってしまった。しかし、今日ぐらいは泊まっていきなさいと言うお母さんの言葉で里奈は泊まっていく事になった。

 翌日、里奈は引っ越した。家の中がずいぶん寂しく見えたが仕方ない。
 それにしても全部終わったんだなと感じた。
 結局どちらの組織も裏切った形になってしまったがこれでいいんだと言い聞かせた。
 こうしてあやめの一年かかった一大事は幕を閉じた。
 

Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.34 )
日時: 2013/12/28 18:57
名前: 夕陽 (ID: IuHi0dEW)

 なんとかひと段落着きました。
 あと、この話は最後に後日談とちょっとした完結記念をやりたいと思います。
 最後まで見ていただけると嬉しいです。


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