コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 私の後ろの不良執事
- 日時: 2016/04/13 17:44
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
恋愛小説に不慣れな紅色ゆりはです。
★コメントどしどしお願いします。
★アドバイスをいただけたら嬉しいです。
★更新は不定期です。
★中学生から書き始め、今年度(h28)高校生になりました。
よろしくお願いします。
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.45 )
- 日時: 2016/04/13 17:39
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
どうも、紅色ゆりはです! 長いこと書き続けて、ついに私も
高校生になりました。中学時代(ほんの少ししかたってないけど)の
文を見ると、あまりの拙さに目が痛くなります……。ここまで読んでく
ださっている方、本当にありがとうございます!
これからものろのろ更新ですが、お付き合いいただければ幸いです。
第3章突入にあたり、あらすじと新キャラの簡単な説明です。↓
☆広瀬太一(ひろせ たいち)
宮門家で働くコック見習い。仕事挨拶共にしっかりしていて真面目、
柚穂曰く「好青年」。実家は漁村の中にある。まだ本編には出て
いないため、おそらくもう一度ほどキャラ紹介に出場予定……。
「太一」という名はmiruさんからです。ありがとうございます!
☆姫路憂弥(ひめじ ゆうみ)
芦田社長専属のクールな美人秘書。仕事も早く完璧そのものだが、
それが逆に扱いにくさの元となってしまっている。谷崎を小馬鹿に
してくるので、今現在の柚穂からの印象は良くない。
「憂弥」という名は杏莉さんからです。ありがとうございます!
☆簡単なあらすじ☆
日本古来の文化を極めた名家と有名企業の子息令嬢の婚姻によって
生まれた、名家宮門家令嬢・宮門柚穂。幼少期くらいはなるべく
普通の生活を、と当人が望んだために、地方の市立中学に通う柚穂は、
二年に進級したある日、後ろに座るクラスメイトが、執事評論会に
出るほどの「執事」であることを知る。令嬢であることを
黙っている代わりに仕事を要求された柚穂は、自分専属の執事として
執事・谷崎を自分の屋敷に招き入れたのだった。(第一章)
6月、臨海学校に行くことになった柚穂と谷崎。ごく普通に楽しむ
はずが、漁村が芦田リゾート経営者・芦田社長に、不正な方法で
建設予定地にされたのではと疑いを持った二人。谷崎の家の件や岡山
さんの件に不安を抱えつつも、柚穂は芦田社長へひとりでの面会を
挑むことに。結果まるくおさまったものの、どこか疑問を抱く柚穂
だった。(第二章)
以上です。これからもよろしくお願いします!
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.46 )
- 日時: 2016/07/29 14:16
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
第三章 1
「あやまらなくていいよ」
長くてさらさらの髪が、肩からするりと流れた。涙をぬぐう自分の手も、座り込む私の頭を撫でてくれる彼女の手も、まだふっくらとした幼い手だった。自分の感情を表現するほどの十分な語彙力のない、ほんの小さな小さなこころとからだ。それ故に、言葉はまっすぐだった。
「わざとだったんだよね」
いや、正確には『周りのほとんどの子は』まっすぐな言葉を使っていた、というのが正しい。
彼女は幼ながらに気遣いが上手で、その分周りより言葉を正しく使えていた。人を傷つけないように、争いが起きないように言葉を選ぶのがうまかった。私は、それが彼女の優しさからきている物だと思っていた。
違った。
本当に、彼女は『言葉を選ぶ』ことがうまかっただけだったのだ。
「いいよ。ゆづほちゃんはおじょーさまだもんね。なんでも頼めばやってくれる人がいていいなあ。あこがれちゃう。お家にいる人も、お父さんも……みーんなゆづほちゃんのために動いてくれるんでしょ」
「ちが、わた、わたしわざとじゃな……」
彼女の顔を見上げて、私は息をのんだ。
いつもの優しげな瞳とは似ても似つかない、鋭くとがれた剣先のような、全てを刺殺してしまいそうな迫力……。
「なにがちがうのかな」
口調はいつもと何ら変わらない。ただただ、瞳の温度だけが低かった。
「——は」
久しぶりに、嫌な夢を見た。
小学校低学年のころの、いつまでも消えないあの日の記憶。私が周りに家柄を隠すようになった、一番の原因——。
きっと発端は何でもないことだったのだ。彼女の瞳の記憶は鮮明に蘇るのに、そこは思い出せないのが何よりの証拠だ。きっと今の私が聞いたのなら、「なんだあ」で済ませられる程度だろう。
それでも、どうしても消えない記憶というのは、誰にでもあるんだと思う。
……谷崎も、執事をあの歳で目指すくらいだから、何かしらの消えない記憶を持っているんじゃないかと思う。
谷崎 留矢。私が数か月前屋敷に招き入れた、同い年の割と優秀な執事だ。もうあと数日で夏休みになるし、3か月以上は居ることになる。
「……うわ」
首筋の寝汗に、自分で引いた。時計を見てもまだ23時だけど、このままでは眠れそうにもない。
スリッパをつっかけて廊下へ出ると、使用人棟の方以外はほぼ真っ暗だった。飲み物でも貰おうかと思ったけど、やめておこうかな……。
「なあ」
「ひっ」
私が勢いよく振り返ると、そこには例のごとく寝巻用のジャージを着て、中履き用サンダルをつっかけた谷崎が立っていた。もう軽くパターン化しすぎて、驚きは小さいけれど。
「……なんなの。谷崎、あなた私を驚かれるのが好きなわけ? ねえ」
「いや、恒例のメイドとの鬼ごっこをしてたら、タイミングよく柚穂が出てきたもんだから」
「……鬼は何人?」
「さあ? 正確にはちょっとね。でも俺の視界に入っただけでも4人。で、お嬢様は何を?」
にやり、と谷崎が笑う。月明かりに照らされたその表情は、初めて正体を知った時を彷彿とさせる。臨海学校から帰ってきてから元気がなかったから、少し安心した。
「夢見が悪かったから、ミルクでも飲もうかと」
「……お供しましょうか?」
ほんの3か月の短い期間しか、私たちは同じ時を過ごしていない。そのはずなのに、こいつには大抵のことはお見通し……ずるいやつだ。
「……頼んだわ」
「はい、お嬢様」
谷崎はさも面白そうにほほ笑んだ。
1 おわり
続く
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.47 )
- 日時: 2016/07/29 16:24
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
どうも、紅色ゆりはです。章の途中なんですが、今日カキコを開いてみたところ、参照が4ケタになっていることに気が付きまして、この場を借りてお礼を言わせてください。皆さま、本当にありがとうございます!
また、感想などなどお待ちしてます! では本編へ!↓
第三章 2
クーラーの効いた寝室と比べると、廊下はかなりの温度差があった。もし今いつもの変装用メガネをかけていたなら、きっとレンズが曇ってしまっていたことだろう。
「あの、別にいいんだけど……この暑いのにミルク? 炭酸とかお冷とかは?」
「お冷じゃ物足りないし。炭酸は……どうだろう。私は好んで買ったりはあんまりしないから、多分ないんじゃない?」
「マジか……」
谷崎が少し驚いたような顔を見せる。普段、生徒の時の無表情顔と、執事の時のやたら気取った顔くらいしか見ていないから、逆に同い年の男子らしいところを見せられると、少し胸にぐっとくるものがある。
「俺は使用人用のでかい冷蔵庫に、炭酸飲料を常時2〜3本ストックしてるけどな。あと暑くなってきてからは、辻さんがフルーツ凍らせたやつおすそ分けしてくれたりする」
谷崎は少し嬉しそうに笑った。辻からもたびたび谷崎の話は聞くが、これは予想以上に仲がいいらしい。荻原も、二人が一緒に洗車をしているところを見かけたと言っていた覚えがある。
「仲がずいぶんいいようで何よりよ。きっとはたから見たらおじいさんと孫にでも見えるんじゃない?」
その時だった。
谷崎は感情を隠すのが、比較的人より長けている奴だ。執事で学生という肩書でも難なく物事をこなせるのは、この部分が一役かっている。その谷崎が、ふっ、と表情を曇らせた。
「……どうしたの? 私、何か気に障るようなことでも言った……?」
「……なんでもない。気にしなくていい」
谷崎は何事もなかったように会話を再開した。
しかし、谷崎が一瞬表情を曇らせたのは明らかだ。気にしなくていい、なんて言われれば余計気になってしまう。
なぜ隠すのかもわからない。私に言えないような、いや、むしろ言いたくないようなことなんだろうか。
——かなり前から、気になっていることがある。
谷崎が執事評論会に出ていたことは百歩譲って偶然だとしても、そこからとんとん拍子に執事への道が開けるものなんだろうか。確かに、宮門家に谷崎を招き入れたのは私だ。でも、結果的に親に話を聞きに行ったりなんだりと、最終的な許可を出したのはお父様だ。給料らしきものをもらっている素振りはないし、食費もろもろの援助を受けている様子もない。だから谷崎が執事の仕事を求めていたのは、貧乏だとかそういう「金銭的な問題」と考えるよりも、「執事という仕事そのものをやるため」と考えた方が筋が通る。
しかし、ではなぜその要望をお父様が聞き入れたのか、という疑問が生まれる。お父様のことだから、ただ単に「執事をやりたい」とかいう理由なら、今は勉学に励むときだのどうのこうの言い聞かせ、屋敷へ入れることはなかったはずだ。
そこで、臨海学校での芦田社長の言葉——「あそこの家も」「両家ばか真面目な家系」という発言を踏まえると、割と名の知れた、あるいは芦田社長とお父様に何らかの形で関係した家の子であり、しかもお父様も首を縦に振りざるを得ない事情を持っている、という考えに至る。
そこまで考えてみたものの、半分以上が想像で補われているうえに根拠がまるでない。だから今まで誰にも言わなかった。
でも今なら、誰も周りにいない今なら、問いただすことができるんじゃないだろうか。
「柚穂はミルクになんか入れるか?」
厨房のドアを開けながら、谷崎が訊いてきた。
思わず握りしめた拳に、汗がにじみ出た。
「谷崎、あの……」
「待て」
谷崎が私を手で制した。中の様子をうかがっているらしい。
「えっ……なに?」
警戒を解かぬまま、谷崎が言った。
「中に、誰かいる」
第三章 2 おわり
続く
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.48 )
- 日時: 2016/10/07 19:19
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
第三章 3
「誰かって……誰?」
おそるおそる自分でも覗き込もうとするが、谷崎にぐいっと押しのけられた。どうもあまり身を乗り出すなということらしい。ドアの隙間からわずかに光が漏れているが、厨房の電灯ではなく、何か別の小さな明かりのようだ。
「さあ。でも後ろめたいことがないなら、普通に電気をつけるんじゃないか?」
その何者かは厨房でなにやらごそごそと一つどころでうごめいているが、作業か何かに集中しているのか、こちらには全く気が付いていないようだった。
谷崎は廊下の角の観葉植物を指差すと、その物陰に隠れるよう促した。
「俺がちょっと見てくる。でも逃げられた時のことも考えて、柚穂はあそこから出てくるなよ」
「え? それなら、なおさら厨房の入り口にいた方がいいんじゃないの? 屋敷中を逃げられでもしたら厄介でしょ」
声を潜めつつ何気なく提案すると、谷崎は何とも言えないような呆けた顔で、小さくため息をついた。
「名家のお嬢様がそんなたくましいことを言うなよ……。それともなんだ、お前奴に向かってこられたとき、身を守れるような腕の覚えでもあるのか」
「なっ……ないけど、それは谷崎だって」
「俺は違う」
きっぱりと否定したその低い声に、少しどきりとする。思えば、谷崎は執事どうこう以前に、躊躇なくケンカを吹っかけて煽って、その勝負に何となしに勝ってしまう程度には強い奴だった。
「俺も格闘技のちゃんとした段や級を持ってるわけじゃないけど、取っ組み合いじゃ、そんじょそこらの奴に負ける気しないし。それに」
軽く背中を押された。早く隠れろという事らしかった。
暗いために距離感がいまいちつかめていなかったのか何なのか、予想以上に耳元で、その声はした。
「……俺は、男だし」
その、たった一言だった。
たかが一言、されど一言……その言葉だけで、私の心臓は大きく跳ね上がった。ついて出てきそうだった言葉をあわてて呑み込むように、私は口を強く結んだ。
裏を返せば、執事としてではなく、同い年の男子として守りたいと言われているのではないかと、そんな淡い期待に似た何かが、一瞬にして心をいっぱいにした。厨房から光が差し込んでいるとはいえ、かなり近くまで顔を近づけないと相手の顔がわからないような暗がりは、今の私にとって、これ以上ないほど好都合だった。
「……わかった」
絞り出すようにそう言うと、私は谷崎のもとを離れて物陰に隠れた。谷崎は私が隠れたのを確認すると、音もなく厨房へと入っていった。
谷崎が行ってしまうと、辺りは静けさを取り戻し、蒸し暑いはずなのに、時間が経つにつれ背筋が冷えてゆくような、気味の悪い感覚が長らく続いた。
それに引き換え、頬は熱いままだ。
「……谷崎」
ふと、つぶやいた。心細い。そんな感情がこんなに強くなるのは、かなり久しいことだ。暗闇も、人のいない寂しさも、令嬢としての重圧も、もう完全に慣れたことだと思っていたのに。
谷崎が隣にいないというだけで、こんなにも心細いなんて。
でも。
「……いくらなんでも、遅いんじゃ……」
さっきから、厨房から何も音がしてこない。正確な時間はわからないが、少なくとももう相手と対峙していておかしくないはずだ。谷崎も相手も何一つ音を立てないまま取っ組み合い、そうでなくともこんなに静かなのは、少しおかしいんじゃないだろうか。
まさかとは思うが、谷崎が……。
「たにざ……」
厨房の入口へと、一歩踏み出した途端、
——ガン!
「っあ……?」
——後頭部に、強い打撃。そこまでは把握できたが、そのあと、私の意識は急速に遠のいていった。
第三章 3 おわり
続く
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.49 )
- 日時: 2017/03/27 18:01
- 名前: 紅色ゆりは (ID: jCCh2JPd)
お久しぶりです。紅色ゆりはです。
私の後ろの不良執事をここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
このたび不良執事が倉庫ログに入りましたので、新規として新しい方の板へ移ろうと思っています。題名は『私の後ろの不良執事 二枚目』となっています。もしよろしければそちらの方も引き続き読んでいただけると嬉しいです。
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