コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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私の後ろの不良執事
日時: 2016/04/13 17:44
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)

恋愛小説に不慣れな紅色ゆりはです。

 ★コメントどしどしお願いします。
 ★アドバイスをいただけたら嬉しいです。
 ★更新は不定期です。
 ★中学生から書き始め、今年度(h28)高校生になりました。

 よろしくお願いします。

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私の後ろの不良執事【キャラ名募集中】 ( No.35 )
日時: 2015/11/01 13:50
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)

 杏莉ありがとう! もちろん採用です。
 後々絶対出てくるよ!

Re: 私の後ろの不良執事 ( No.36 )
日時: 2015/11/01 17:34
名前: miru* (ID: .pUthb6u)

ゆりはさん、お久しぶりです!
久しぶりで忘れてるかもしれないと、とても不安……^^;
miruとかいうヒトです。

早速ですが、すごく面白いです!
柚穂ちゃんが動き出すようですね(*^o^*)
頑張って!柚穂ちゃん!

少し戻りますが、先生、やな感じ……
お酒、暴力、金目当てetc……oh……

その分谷崎くんがかっこよすぎて、鼻血噴きそうっすね。(^ν^)
柚穂ちゃんのためにしたことでも、よくなかったと思うことがあれば悪かったなと謝る姿に、人間として尊敬します!

改めて、執事っていいなぁ。


それと、名前ですね!

チープな名前で宜しければ!
広瀬太一(たいち)さん
辻綾乃(あやの)さん
……ど、どうでしょうか!

辻さんは、募集!の文章読みながら、流れるように頭に浮かんだ名前です。
杏莉さんの名前が素敵すぎて非常に恐縮……。(>人<;)

更新楽しみにしてます!
頑張ってくださいね!

Re: 私の後ろの不良執事 ( No.37 )
日時: 2015/11/04 19:00
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)


 miruさんお久しぶりです!
 いえいえ覚えておりますとも!
 いつも大変参考になるご感想、とてもうれしいです。

 また、素敵な名前案、ありがとうございます!
 キャラの雰囲気にぴったり……!
 ありがたく使わせていただきます。

 ではでは更新!



 第二章 10


 お風呂の時間になっていの一番に浴場に入ると、ものの数分で
私はあがった。みんなが服を脱いでいるうちに体を洗い、みんなが
浴場に入るころには、濡れた髪と湯気が私の顔を隠してくれる、という
寸法。そして一足先に出れば、私の素顔は見られない。我ながら
抜かりのない作戦だった。
 私は適当に体を拭いて、急いで服を着た。髪から滴るしずくも、気に
してなんていられない。男子の方が10分早く入浴を済ませているはず
だから、谷崎はもう調理場横の小部屋に来ているかもしれない。
 私が浴場を出ると、ロビーには誰もいなかった。じゃんけんで負け
て、大きな旅館ではなく小さな民宿に泊まることになったのが幸いした
ようだ。この民宿には私たちのクラスしか泊まっていないし、男子は
二階の宴会場サイズの和室でまくら投げでもしているのではないだ
ろうか。これならだれにも見つかることはないだろう。
 ロビーというには少々お粗末な和室を通ると、きしむ階段を上って
女子部屋へ行こうとした。けれど、唐突に角から現れたおかみさんに
驚いて、私は反射的に隠れてしまった。
 「……ふぅ」
 おかみさんは夕食の時に使った折り畳み机を、片づけているよう
だった。ふと、口からこぼれるように、おかみさんがつぶやいた。
 「……今年の子たちで、この民宿も終わりかねぇ」
 ふと、下唇をかみしめた。

 小部屋につくと、案の定谷崎がすでについていた。
 「……遅くね」
 「ごめん」
 私があやまると、まあいいけど、と谷崎は軽く自分の首筋に手を
まわした。
 「柚穂、お前さ、気づいてたか」
 「何に?」
 急に切り出した谷崎に首をかしげた。私も谷崎もお風呂上がり
だからか、熱気が小部屋にこもる。ほこり臭さと混ざって、少しだけ
息苦しい。
 「夕食の後……見てたんだよ、岡山がこっちを」
 「岡山さんが?」
 「ああ。ただの興味本意ってんならまぁ……いやそれでも危険は危険
だけど、それだけならまだいい。噂にされちゃ困るけど、俺たちは
学校じゃ結構地味な方だからな、そうは広まらないだろ」
 「……どういうこと」
 はっきりと言わない谷崎ににらみを利かせると、谷崎は臆せずに
言った。
 「思うんだよ。あいつ、ただの興味本意じゃないんじゃないかって」
 言葉に詰まった私に、谷崎は続けていった。
 「……おれだって、悪意があるかどうかわからないやつに悪意を
向けるのは好きじゃない。ただな、いまあいつはクラスの中で一番
気をつけなきゃならないやつだと思うんだ」
 頭の隅にでも入れておけ。そういう事だろうか。
 「……それはあとでちゃんと考える。それよりも、今は芦田社長を
止めたいの。ホテルの位置確認はしておいた。だから……」
 「ついてきてくれってんだろ。ほら、玄関口のかぎ。忘れてただろ」
 そういって、鈴のついた銀色のかぎを谷崎は揺らして見せた。
 ……こいつには、当分かないそうもないな。

 第二章 10 おわり
                          続く

Re: 私の後ろの不良執事 ( No.38 )
日時: 2015/12/18 18:57
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)

 今回は番外編です。時間軸としては、第一章と第二章の間当たりと
なっています。


 番外編 【紅茶と抹茶と不良執事】

 少し熱めの紅茶の湯気が開け放った窓から流れていくさまを、私は
ただただぼんやりと眺めていた。風に揺れるレースのカーテンが、
今日はなぜだか踊っているように見える。
 さっきドアの向こうから聞こえてきたのは、おそらくつい一か月前
配属されてきた、若いメイドたちのおしゃべりだろう。こんな屋敷の
隅の小部屋に私がいるなんて、予想だにしていないのだ。それも
仕方のないことだ。床に乱雑に積まれた本は厚く埃をかぶり、あまり
にも誰にも使われないために、メイドの掃除経路からも外され、物置
としてすら使われず、忘れ去られている。本以外にあるものと言えば
この小さな古い木製のテーブルとイスだが、これらも確か幼いころ、
私自身が荻原やほかの使用人に見つからないよう、ここに運んできた
物だったはずだ。
 ここには最初、本当に本しかなかったのだ。
 「ふぁ……あ」
 あくびが自然と出てきた。日曜の午前10時なんて眠いったらない。
カップの紅茶がぬるくなる前にでも、今の状況の打開策を考えなけれ
ばならないというのに、これではここに隠れている意味がない。
 そう思うのに、次々と今はいらない想像力が発揮されてゆく。
 なんでこんな部屋が存在してるんだろう……。
 広い空き部屋がいくらでもあるし、別にコンクリートででもかため
たっていいじゃん……。
 私の遊び部屋用とかだったら、すごく嬉しいんだけどなぁ……。
 あははは……。
 「お嬢様。何をしていらっしゃるんですか」
 「ああ……谷崎」
 唐突にドアを開けて入ってきた谷崎に、ノックについて怒る気に
もなれない。私がここにいることを、知らなかったかもしれないし。
 「先日この部屋に入っていかれるところを見ましたので、もしやと
思ってきてみれば案の定ですね……。何をなさってたんですか」
 「別に……午前のお茶の時間なの」
 「こんな埃っぽいところでですか?」
 私はその質問にはとりあえず答えずに、スコーンをひとかけ手にと
った。
 「……お嬢様に仕えた時間と同級生として接する時間を足しても、
まだほんの一握りしか、共有した時間はありません。ですがお嬢様が
今、現実逃避なさっていることは、この日の浅い執事の目にも
一目瞭然ですよ」
 スコーンをかじると、ラズベリーの甘酸っぱい風味が口いっぱいに
広がった。紅茶を一口含んで、私は動揺していないふりをした。
 「お嬢様……荻原メイド長が、お姿を探していらっしゃいましたよ」
 荻原。
 そう聞いた瞬間、思わずごほっとせき込んだ。
 「谷崎あなた……事情を知ってるんじゃないの……?!」
 「いいえ? お嬢様が先日のお見合いの先方に抹茶を器ごと頭から
かぶせてしまったことなど、露ほども存じ上げておりません」
 カップを勢いよく置いたために、少し紅茶がこぼれた。
 知ってるじゃん!
 事細かく知ってるじゃん!
 わざとらしく執事スマイルをする谷崎に怒鳴りたいのを必死で
こらえる。ここで怒鳴ったら完全に負けになる。勝負をしているわけ
じゃないけど、なんだか負けになる気がする。
 「……少し手が乾燥していただけだもの。先方にも申し訳なかった
と思っているわ。直接正式に謝りにだって行ったわ」
 「失礼ながら、お嬢様が恐れていらっしゃるのは先方ではない
のでは?」
 「う……。それは」
 「まあ僕としては手が乾燥していたという原因だけで、頭から器を
かぶるということそのものが理解できないので、そこを荻原メイド長
とお尋ねしたいと思っております」
 「……わかった。もうわかった……」

 そうして私は荻原にこっぴどくしかられた。こっぴどくといっても
怒鳴られたわけじゃない。ただただ静かにお説教されたのだ。無言の
圧力ってああいうことを言うんだろうな。
 でも仕方ないじゃない。その日重い和服を着せられて、あんまり
急いでいたから足袋のサイズを間違えて、それでつまづいたんだから。

 まあこれで事あるごとにびくびくしないで済むからいいけどね。

                         おしまい

Re: 私の後ろの不良執事 ( No.39 )
日時: 2015/12/24 18:20
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)


 第二章 11

 昼間とそう変わらないはずなのに、真夜中の黒に染まった海の波の音
は、まるでうめき声のように聞こえた。もしひとりでこんな海沿いの
道を歩くことになっていたら、私はその言い知れない心細さに耐え
られただろうか。
 言葉にはしないけれど、本当に今回家の者の代表としてついてきた
のが、谷崎でよかった。もし他の者ならきっと私を止めただろう。
それが本来の使用人が仕える令嬢にすべきことだ。だから客観的に
見れば、今の谷崎の行動は間違っている。
 でも私はそれが嬉しい。間違っていたとしても、それが私の信念を
貫く助けになるのなら、嬉しいんだ。
 「……あ、柚穂お嬢様? 申し上げたいことがあるのですが」
 「なに、改まって」
 谷崎は少し考えるそぶりを見せ、意を決したように切り出した。
 「実は昼間、休憩時間に抜け出して使用人・広瀬太一の実家に
行ってまいりました」
 「……は?」
 目が点になっている私をよそに、谷崎はさらに続けた。
 「広瀬太一の実家はこのすぐ近所の漁村にありまして。芦田リゾート
が建設を始めるにおいて、そこは建設予定地に含まれていまして。
それを旧友から伝え聞いた広瀬太一が気をもんでおりましたので、
自分が独断で様子を見てきたのです」
 広瀬太一。使用人の出入りの多い宮門家でも、私だってその名前は
知っている。
 広瀬は数年前から宮門家で働いているコック見習いで、あいさつも
しっかりしている好青年だ。ただ今は皿洗いやまかない作りが主で、
時には庭師の手伝いや使用人部屋の掃除など、料理と関係のないこと
まで率先して空き時間にやっているらしい。私にもあまり使用人らしい
態度をとることが少なく、その割に礼儀がきちんとしているので、
かなり好印象だ。
 「……待って?」
 宮門家から私を任されたにもかかわらず、私に何も言わず抜け出した
事に負い目を感じて敬語にしてるんだろう。そこは意外ときちんと
しているのが谷崎だ。でも問題はそこじゃない。
 「芦田社長がこの町に来てること、知ってたわけ? 理由まで!」
 「はい」
 はい、じゃない!
 「なんっ……なんで今の今まで知らぬ存ぜぬみたいな態度を……!」
 「お嬢様にあまり情報を伝えると、何かと動きづらいので……僕が」
 「『僕が』?!」
 谷崎が気休め程度に咳ばらいをした。
 「ほら、到着しましたよお嬢様」
 建物の上の方には大きく『Je t,aimerai toute ma vie』と書いて
あった。このホテルの名前だろうか。
 「長い……」
 「くっさ」
 谷崎が鼻をつまんで嫌そうな顔をした。
 「芦田リゾートの建物なんて全部こんな感じの名前よ。ほら、
早く行きましょう」
 「りょーかいです、お嬢様」
 谷崎がにやっと笑った。私は深呼吸をした。
 呼吸がやっといくらか整うと、私はその敵地に足を踏み入れた。

 第二章 11 おわり               続く


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