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- 私の後ろの不良執事
- 日時: 2016/04/13 17:44
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
恋愛小説に不慣れな紅色ゆりはです。
★コメントどしどしお願いします。
★アドバイスをいただけたら嬉しいです。
★更新は不定期です。
★中学生から書き始め、今年度(h28)高校生になりました。
よろしくお願いします。
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.40 )
- 日時: 2015/12/26 16:18
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
第二章 12
「芦田社長のお部屋はこちらになります」
きっちりとスーツを着込んだ支配人風の人が、私と谷崎を案内して
くれた。昼間にホテルに来てもいいようなことを言っていたから、
芦田社長自身が話を通しておいたのかもしれない。
「ありがとうございました」
「いえ。今後ともわがホテルをごひいきに」
今後とも、って言っても、私は芦田社長の経営してる場所を利用した
ことはないんだけどね。
「夜分にすみません。宮門の柚穂にございます。お話があるのですが
お時間よろしいでしょうか」
ドアの前でそういうと、ガチャリと開いて、
「どうぞ、柚穂お嬢様。中で芦田社長がお待ちです」
と、髪の毛が長くてさらさらの女の人が出てきた。
声からしておそらく秘書の姫路とかいう人だろう。予想通り、美人
な人だ。
こんな夜中に芦田社長の部屋にいるのは、フロントから私たちの
到着を知らされたからだろうか。それとも何かの打ち合わせでも
していたんだろうか……。
「はい、失礼いたします」
「……申し訳ありません。そちらの付添いの方はここでお待ち
いただけますか」
付添い。要するに谷崎のことだ。
「すみませんがそれはできかねます。僕はただの付添いでなく、
柚穂お嬢様の専属の執事として宮門家に仕えております、谷崎留矢と
申します。わけあってこのような格好をしておりますが、自分には
お嬢様をお守りする責務があります」
昼間勝手に抜け出したり、肝試しでは主人を置いてったり、情報を
伝えなかったりと、かなり責務の使いどころが自由な執事だけどね。
「それは私の芦田社長に対する責務と似通っていますが、私も
今回は席を外します。あなたも柚穂お嬢様の執事を名乗るならば、
ここは身を引いてはいかがですか?」
そういって、姫路秘書はくすっと鼻で笑った。
谷崎はなめられている。そう、直感した。
ただでさえ年齢が若いという枷があるのに加え、スーツ姿なら
ともかく、こんなあからさまに中学生男子の黒ジャージ姿では、威圧感
も何もない。執事にだって見えない。
「……でも僕は」
「でも、なんて言葉を安易に使うとは、気がたるんでいるんじゃ
ありません?」
ぐっ、と谷崎は言葉に詰まった。自分でもそう思ったんだろう。
谷崎には悪いけれど、私も少しそう思った。私だって谷崎の執事の
ようで執事らしくない距離感は好ましい。でもそれはふとした瞬間に
ただの『礼儀知らず』になってしまう。そのさじ加減は難しい。
それと同じで、執事として接する以上、谷崎はもはや中学生であって
はならない。いわゆるプロ意識を持って、プライドを掲げて行動を
しなければならない。
それは、宮門家令嬢としてここに訪ねてきた私にも同じことが言える
けれど。
「……わかりました。それで結構です。谷崎、あなたはここで待って
いなさい」
「お嬢様!」
「……待ってて」
谷崎は納得していないようだったが、しぶしぶ引き下がった。
「ではどうぞ」
姫路秘書に奥へと通されると、この部屋が一般的な一室でないことが
すぐに分かった。
異様なくらいこだわられた装飾。黒いフローリングの床と冷たそう
な白い壁の廊下。白いドアを開けると、大きな窓から見える黒い海を
バックに、芦田社長が革張りの椅子に座っていた。
「やあ、柚穂ちゃん。よう来たね」
「こんな夜遅くにすみません。お話したいことがあって……」
「まあ座って座って」
白いソファに座ると、芦田社長は「タバコいいかね?」とタバコを
一本ふかした。
正直なところ、今の状況はすごく怖い。こんな風によく知らない
ような人と密室で、しかも一対一で話したことなんてない。向こう
だって何かしてくるわけはないだろうとたかをくくっていたのがあだに
出た。谷崎もいるし何とかなるだろうなんていうのは甘い考えだった
んだ。
だからといって今更何も言わず戻る気もない。
「芦田社長。私に、なぜこの町の漁村を建設予定地にとお考えに
なられたのか、その真意お教え願えませんか」
「……さすがは女の子だねえ。その手の情報が早いったら」
芦田社長はまだ長めのタバコを、灰皿にひねりつぶした。
「ハッキリ言ったらどうだい? 柚穂ちゃんとこの召使いの実家
について、召使いに泣きつかれたんじゃないのかい、ええ?」
「……っそんなことありません!」
思わず声を荒げてしまったことに少し悔いた。あくまで冷静に会話
しないといけない。そうでなければ異論を唱える資格なんてなくなって
しまう。
「広瀬は……芦田社長のおっしゃっている者は、そのように簡単に
主人に助けを求める安い人間ではありません。それにその者は召使い
ではなくコック見習いですわ」
「ああ、そうだったっけかな?」
ガハハハハハ、と豪快に笑う芦田社長。
笑い事じゃ、ないっつーの。
「……じゃ、なんで柚穂ちゃんはここに?」
「芦田社長が私の父と何度かお仕事をなされたと聞きました。その
芦田社長が何をしようとなさっているのか……。ただ純粋に、その真意
をお尋ねしたかっただけですわ」
「そうかい?」
芦田社長は二本目のタバコを口にくわえ、鳥の装飾が施された
ライターで火をつけた。
「まあ参考までに言っておくと、今のところもう建設予定地に建設
する気はないね。姫路君がいろいろと手をまわしてくれたようだが、
住民の反対も強いし。何より、ついこのあいだこのもとからあった
ホテルを買収して、内装の改築なんかも先日終わって、完全にワイの
もんになった。これでこっちの地方の進出は可能になったわけだから」
「そうなんですか」
「ああ。……姫路君の扱いも困ったもんだ。だがあの美人を手放す
のは惜しい……いや、柚穂ちゃんにはまだ早い話だったかな」
とりあえず愛想笑いをしておく。
早いも遅いもなく、そんな話をされたら困る。
「……では芦田社長。そろそろ失礼いたします。夜遅くすみません
でした」
「いやあ、いつでも来ていいんだよ、柚穂ちゃん。またいつかね」
私はもう一度会釈すると、その部屋を出た。
息が詰まるかと思った。
タバコのせいじゃない。あの私を探るような目線の居心地の悪さと
いったらない。芦田社長自体が私にとって苦手な存在なのだ。
「お嬢様」
一階のロビーで待っていた谷崎が、私を見るや否や駆け寄ってきた。
向かいに座っていた姫路秘書が、私に向かって会釈をした。
「……申し訳ありません。お嬢様をおひとりにするなんて、失態を
するとは」
「いいって」
姫路秘書の送迎の車を断ると、私は外に出た。冷たい空気と潮風が
気持ちいい。
「おじょうさ……」
「谷崎。もういいよ、同級生の谷崎でも」
無理しているのが、普段の谷崎からは考えられないくらい顔に出て
いる。それだけでもう、なんだか耐えられなくなってしまう。
私はいつからこんなに谷崎を大切に思うようになっていたんだろう。
令嬢と執事。はたから見たら、ただそれだけの関係のはず。ただ、
それだけなはずなのに。
「……悪かった」
ぽつり、そうつぶやいた。
「俺ついていった意味なんにもないな。その上あの秘書にバカに
された。考えてみればこうやって同級生だから、タメ口使ってもそれ
なりに許されるわけでさ。広瀬さんのこととか、やっぱり事前に
伝えた方が良かったんだろうな……」
「谷崎……」
「なんだよ?」
「……らしくない。気持ち悪いくらいにっ」
はっきりと、そういってやった。
優しくない。いたわってもやらない。とことん素で接する。
「そんなの谷崎らしくないよ」
大切だから変に隠し立てたり守ったりしない。急に態度を変えたり
しない。
そんなのは私らしくない。私らしくない私を受け入れるのは、きっと
谷崎でも大変だ。
だからとことん素で接する。それが私だから。
「谷崎は一生懸命執事をやればそれでいいよ。その他のことをする
のは主人の、私の役目なんだから!」
谷崎が私の執事なら、私は主人。当たり前のようで、それって
当り前でいるのは難しい。
だからそれを当たり前にしておこうと思える。それってすごい。
「……あきれた。でもその通りだ。俺らしくない」
谷崎がにやっと笑った。いつもの執事スマイルだ。
「……そんな風に思っていただけて光栄ですよ、お嬢様?」
「それはどうも、谷崎執事?」
谷崎は、また笑ってくれた。
第二章 12 おわり つづく
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.41 )
- 日時: 2015/12/26 16:58
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
第二章 13
三日目の朝、私は眠い目をこすりながら起床した。この異様なほど
までな眠気は、おそらく昨日の夜の出来事のせいで睡眠時間が極端に
短くなってしまったせいだろう。
「宮門さん眠そうだねえ」
岡山さんが髪をまとめながらそう言った。目がキラキラと輝いて
いる。なにかゴシップ記事のような話を期待されているらしい。
「いや……ちょっと波の音で眠れなくて」
「そうなの? じゃあ昨日点呼のあとどこ行ってたの?」
ものはついで、という風に重ねて聞いてきた。このキラキラした瞳
に、みんなは負けてしゃべってしまうのか。
「え、お手洗いに」
「お手洗い? 手を洗いに行ってたの?」
お手洗いってトイレのことだよ、と説明する前に、
「わかった! ありがとね。あ、宮門さんも早く朝食きなよ?」
そういって何人かの女子と部屋を出て行ってしまった。
「……ふう」
岡山さんが出て行ったのを見ると、私はやっとメガネをはずして
顔を洗い始めた。用心に越したことはないから、あまりクラスメイト、
特に岡山さんには、素顔を見せるわけにはいかない。
思い返してみると、昨日は不正をしていないかどうかを尋ねに行った
はずなのに、うまいことはぐらかされて、『建設はしない』という事実
を聞いただけだった。本当のところ、不正はしていたのかしていな
かったのか……。知りたくはあるけれど、もう聞く機会も術もない。
「最終日、か」
今日で臨海学校も最後。色々と問題やおかしなこともあったけれど、
詳しく考えるのはまた今度でもいいや。
今回のことで、執事に頼りすぎるのも頼らなすぎるのも自分に
とってよくないってわかった。それだけで今は十分だ。
今日はとにかく、しっかり楽しまなくちゃ。
第二章 完
第三章へ続く
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.42 )
- 日時: 2016/02/05 15:51
- 名前: 原田 桜 (ID: h4V7lSlN)
ゆりはさんお久しぶりです!
元『雪菜』です!!
気分転換に名前を変えさせていただきました♪
そして、久々に寄ってみたら新しい物語が・・・。
やはり、ゆりはさんのお話サイコーです!!
これからも更新頑張ってください!
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.43 )
- 日時: 2016/03/17 13:45
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
桜さん、お久しぶりです! コメありがとうございます★
そんな風に言っていただけて嬉しいです。次も頑張ります!
やっと第三章突入です。今頭の中に入ってる話の長さからすると、
まだまだ始まったばかりです。書くスピードが遅いので余計に時間
かかってます。
でもこれからも頑張って書き続けるつもりなので、どうぞ今年も
よろしくお願いします。
- Re: 私の後ろの不良執事 ( No.44 )
- 日時: 2016/03/17 15:20
- 名前: 原田 桜 (ID: tMBSASgt)
お久しぶりです!
いつ新しく更新されるのかと思うと楽しみで、何回も見に来ちゃいましたよ〜♪
ゆっくりでも大丈夫なので、よい物語を期待しています(≧∇≦)/
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