コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ヒーロー達の秘密会議。
- 日時: 2016/02/17 18:13
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=39531
誰かが言ったその言葉を、
僕はていねいに憶えていた。
*, 挨拶
初めまして、蒼(あお)と申します!
今作は、初挑戦となるファンタジーを含んだ作品です。
1度、書いてみたかった内容を自分なりに詰め込みましたー。(*^^)v
自分にも、こんな能力が欲しい!! または、こんな人達に囲まれたい!! などなど作者の夢が入っております(笑)
皆様の心に残る様な作品になるよう、一生懸命頑張ります。
では、お楽しみ下さい。
*, 注意書き
その1 更新は早い時もあれば遅い時も……。
その2 荒らしさん等は、来ても無視させていただきます。
その3 コメント&アドバイス、受け付けております!!
*, 小説開始日〜
2014年12月31日〜
*, 目次
プロローグ >>1
登場人物紹介 >>2
突破記念 >>13 >>14 >>19 >>21 >>22 >>35 >>36 >>41 >>53
第1話・彼女は彼等の被害者です >>3 >>4 >>5 >>7 >>10 >>11
第2話・僕等の名はお助けマン >>17 >>18 >>20 >>27 >>28 >>33 >>34
第3話・少女は愛の海を口遊む >>42 >>43 >>44 >>49 >>50
*, お客様
陽詩*さん
はるたさん
ゴマ猫さん
村雨さん
朔良さん
四之神綾芽さん
澪さん
*, 短編集紹介
・星屑チョコレート(上記URL)
甘く蕩ける様なお話、苦く崩れ落ちる様なお話、それは「誰か」の物語。
個人的な好みで失恋話などがやや多めですが、滑らかな口溶けを皆様にお届けして行きたいと思います。
長編よりも短編の方が好きだよ、という方々は此方を宜しければ。
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.19 )
- 日時: 2015/02/14 12:41
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
参照400回&500回&600回突破記念!!
今日(更新日)が丁度「節分」だったので、5人の節分でも書こうかなって思って、突破記念を企画しました(^^)
……前半部分は作者のおふざけです。ハイ。節分関係ないです。個人的に佑里&遼の絡みが好きなだけです。
此処だけの話、多分ですが、遙は登場の機会を狙っていたと思われます(笑)
※本編では、1月の中旬頃です。時の流れがかなり遅いです。
*
【小さな豆粒は大きな幸福を呼ぶ】
「ねぇねぇ、今日が『節分の日』だって知ってた?」
何かを期待しているかの様な笑顔で佑里の首に両手を回し、頬と頬が当たりそうな程顔を近付けて、いきなり抱きついてきた遼は、傍から見れば可愛らしい子供に見えているのだろう。
しかし、抱きつかれた本人は身体を小さく揺らして「またか」とでも言う表情をしながら、溜息を吐いた。その表情は、警察の取り調べに観念した泥棒に似ていた。
因みにだが、今この空き教室、別名ゴミ屋敷にはこの2人しかいなく、伶、旭、遙の3人はまだ来ていなかった。
「…………知りませんでした」
佑里は長机に映った自分と遼の影を見ながら、遼の返事を待った。そして、佑里の思った通り、間を空けずに元気良く声が返って来た。
「やっぱり! いやぁ、佑里ってバカだから、そういうの知らなそうだなぁって思ってさー」
遼は楽しそうに喋りながら、両手で佑里の首を軽く絞めた。直後、佑里の口から苦しそうな声が漏れたが、遼はお構い無しで今度は自分の顔を佑里に近付ける。またもいきなり近付かれたからか、佑里は先程と同じ様に身体を揺らす。その様子を見ると遼は不気味な笑みを佑里見せ、首に回した両手を佑里の膝に乗せて、もっと顔を近付ける。佑里は不味いと思ったのか、逃げようとしたが後ろは椅子の背もたれ、前を向けば遼、左右は遼の手によって逃げようとも逃げられない。焦りつつも、目の前にいる少年特有の甘い花の匂いで鼻を刺激されていてどうにもならなかった。もう逃げられないと佑里は目を瞑ると————
「……あれ、2人ともそんな所で何してるの? もしや、キスの予行練習?」
佑里は吃驚して声のした方を見ると、そこには一体何時からいたのか、遙が片手に大きなビニール袋を提げて2人の事を見つめていた。
言葉通りならば、遙は「来たばかり」のはずなのだが、嗤った所を見ると「来たばかり」では無いらしい。佑里は口がきけない状態になっていたが、我に返ると自分に馬乗りしていた遼を勢いよく突き飛ばし、顔を赤らめて抗議した。
「あたしと遼くんが、キ、キ、キ……キスっ何て、する訳無いじゃない! す、するとしても、強引な遼くんじゃ無いもん!!」
佑里は精一杯否定したのだが、遙の方は「そっかぁ」と全く聞いていない様子で、まだ嗤っていた。佑里は顔を真っ赤にして、もう1度否定しようかと思ったが、どうにも舌が回らない。
一方で遼は、突き飛ばされた勢いで唇を切ったのか、左手で口元を拭っていた。特に反論をする気は無い様だ。当然と言えば当然だが。
遙VS佑里の対決が始まるかと思われたその時、3人の耳にドアノブを回す音が聞こえて来た。伶は時間にルーズな為に、何時も遅れてやって来るので、3人は旭かと思っていた。——しかし。
「悪い、少し遅くなった……って、何で睨み合ってんだ、お前等。喧嘩か?」
廊下を走って来たのか、少々息が上がっている事情の知らぬ伶は、遙と佑里を見た途端、喧嘩かと思った様だ。相変わらず「少し」所の遅れでは無いのだが、本人は気にしていないようだ。
それと同時、睨み合っていた——と言うよりは、言い争っていた2人は、曖昧な笑顔でこの場を切り抜いていた。伶には絶対に知られたくないのだ。特に佑里は。
所で、まだ来ていない旭はどうしたのだろうと、辺りを見回している遼は、不思議そうに呟いた。
「……珍しいね。伶よりも遅く来る人がいるなんて、さ」
確かに、時間にかなりルーズである伶より遅いとなると、旭は伶よりも時間にルーズな人間なのだろうか。遼には到底そんな風には見えなかったが。
遙が「まぁまぁー」と言って、何かを思い出した様に手を叩くと、片手に提げていたビニール袋から、これまた小さな袋を取り出した。その袋には、大きく「福豆」と書かれていた。その文字を見て、伶は今日が何の日かを思い出した様だ。
「でも……良いの? 旭ちゃん来てないのに、勝手に先食べちゃっても……」
今にもその袋ごと食べ尽くしそうな遙に苦笑しながら、佑里は伶の方を見て問うた。問われた伶は少しの間考えてから、まだ来る気配の無い旭の顔を頭に浮かべながら「残しとけば……大丈夫じゃないか?」と遙から袋を取り上げ、笑った。取られた遙は、いかにも惜しそうな顔をして、袋を見ていたが、数秒経つと諦めた。
伶が袋を開けると、1人1人にその年の年齢の数ずつ渡した。渡し終えると、皆黙々と食べていたが、最初に食べ終えた遼は、周りが後1つ2つ残っているのを羨ましそうに少しの間見ていると、動いた。
まず最初に、最後の1粒を食べようとした佑里の手から、素早く豆を奪い、食べる。次に遙の豆を取り、その後で伶の2粒を口に含む。挙句の果てには、旭の為に残しておいた豆まで、勢いよく口に流し込むと、固まっている3人に向かって、少々小馬鹿にした様な笑顔を見せた。
「——ちょっ! 遼くんっ、いきなり何するの!! あたしの分まで食べて、しかも旭ちゃんの全部食べちゃったじゃない!!」
佑里は憤慨しながら遼の頬を抓ると、既に食べ終えた遼は小さな舌を出して、佑里を挑発した。頭に来た佑里を伶は何とか宥めると、深く溜息を吐いた。100粒入りの袋を1つしか遙は持って来ていなかった為、旭にはもう、渡せる福豆は無かった。どうしたものかと頭を掻いた伶の耳に、いきなり遙の声が響いた。
驚いて振り返ると、そこには何と、両手に遙が持って来た袋よりも数倍大きいと思われるビニール袋を提げ、汗だくとなっている旭の姿があった。
一瞬、驚きのあまり声も出ず、硬直していた伶だが、何秒か経つと旭の元へと駆け寄った。
「何か…………凄い、大荷物だな。コレ、重かっただろ。大丈夫か?」
「え、あ、はい。ちょこっとだけ重かったですけど、大丈夫ですよ。少し待ってて下さいね」
汗だくとなっているその顔を人目見れば、誰でも「大丈夫では無い」と思うのだが、当の本人は満面の笑顔で平気だと答えた。旭は床にかなり重いであろう大きな袋を1つ置くと、もう片方の袋の中を何やら漁り始めた。4人は旭の周りに集まって見守っていると、やっと何かを見つけたのか「あった!」と瞳を輝かせて旭は皆の顔を見る。そして袋の中から取り出したのは——海苔だった。ジップロックに入っている。
4人の顔が、またも固まった瞬間だった。
「今日、節分だって聞いたから、急いで家から恵方巻きの食材とか色々持って来たんですけど……え? 何で固まってるんですか?」
袋を漁りながら説明をしていた旭は、それぞれの顔を交互に見ながら、不思議そうに問うた。しかし、その答えは直ぐには返って来なかった。
旭の手には、使い慣れている杓文字が固く握り締められていたのだった。
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.20 )
- 日時: 2015/05/03 17:16
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
今まで生きて来た中で、「色々な意味で死にたくなったランキング」トップ3には入るだろう、昨日の出来事を思い浮かべると同時、旭は自分の机に顔を突っ伏した。
周りにいたクラスメイト達は、いきなり動いた旭に驚きの目を向けるが、今はそんな事気にしていない。いや、気にしているけど気にしていないのだ。
暫くしてクラスメイト達の視線が他の場所へと移されて行くと、旭は少し、目線を上げた。その頬は、ほんのり紅色に染まっていた。
「私…………どうしちゃったんだろ……」
溜息混じりにそう呟くと、顔をまた伏せた。その勢いでカチューシャにより整っていた髪の毛が乱れながら、染まった頬を隠す。
旭は、自分でも不思議だった。抑々、旭は人と関わり、仲を深めると言う事が上手な方では無い。これは旭も解っていた。だからこそ、昨日の自分の行為を理解出来なかった。初対面の人と話をする事なら未だしも、目が合うだけで耐えられない程、旭の対人恐怖症は重いものだった。
それが昨日。何故なのかは旭も解らないが、何時もより自然に話が出来、その上、傍に寄っても平然と過ごす事が出来た。やはり、あんなにも安心をして過ごせたのは——
「……この力を治してくれるって言ってくれたから、なのかなぁ」
ずっと机にいた所為か冷たくなっている両手を、まだ少し赤らんだ頬に当てて、熱を冷まそうとした。しかし、旭の頬よりも先に手の方が温まってしまい、熱を冷ます事は出来なかった。
*
放課後になり、教室を出て部活へと向かう者や、そのまま家へと向かう者とで教室にまだ残っている人は、数人しかいなくなった。
旭はジャケットを羽織りながら、机に両手を置いて顎を乗せていた。今日6度目となる溜息を吐くと、頭を左右に揺らして掛け時計を見る。授業が終わってから、まだ20分程しか経っていなかった。
果たして、あの人達は今日も来るのだろうか。そんな言葉が旭の頭を過っては、通り過ぎる。約束をした覚えは無いし、良く考えれば、自分は本当に必要とされているのだろうか、と旭は心の中で悩んでいた。
——そんな時、いきなり後ろの方から声が聞こえた。
「ねー、片峰さんってさ。此処の教室で合ってる? てか、いる?」
この女の子の様な可愛らしい声の割には、言葉遣いが荒い人物と言えば、旭の知る中で、思い当たるのは彼しかいない。
旭はその声を聞くと、勢いよく座っていた椅子から立ち上がり、バッグを片手に後ろのドアへと小走りで向かう。途中、他の人の椅子に足が引っ掛かり、転びそうになったが、今の旭は気に留めなかった。
その人物は、ドア付近でクラスメイトと何やら話し合っていた様だが、旭に気が付くと手を振って、旭の方へと歩いて来た。慌てて旭も、歩くスピードを速めたが、ドアに着く前に、その人物が自分の方へと来てしまった。旭は何だか、申し訳無い様な気持ちになり「すみません……」と謝った。しかし、相手は全然気にしていない様で「別に良いよ」と軽く笑った。
「何か、話があるって伶が言ってるんだけど、今からって大丈夫? 多分、10分位で終わると思うけど」
「暇過ぎて、本当にしょうがなかった位ですから、大丈夫です! 凄く!!」
昨日とは比べものにならない程、明るく生き生きと話す旭を見て、旭を呼んだ人物————遼は一瞬、吃驚した様だが、直ぐに笑って「じゃあ、良かった」と言い、旭の左手と自分の右手を繋いだ。いきなりの事で、驚きのあまり声の出ない旭に、お得意の小生意気な笑みを見せた。
「伶から聞いたんだけど、片峰さんって、直ぐ手を繋ぎたがるんでしょ? 俺のイメージと違ったわー」
「そ、そ、そんな事無いですっ。わっ、私は全然、そんな…………」
最初は勢いのあった声も、周りの目が繋がれた左手に集まっていると解ると、出て来なくなってしまった。頬を紅潮させて、俯き、繋がれていない右手で頬を触る。右手は直ぐに熱くなってしまい、同じ温度となった。
そんな旭に、遼は不敵な笑みを浮かべながら見下ろすと、今度は旭の頭を優しく撫でた。流石に耐え切れなくなったのか、旭は「や、止めて下さいっ」と力の限り叫んだ。すると、撫でるのを止め、あの可愛らしい声で「さぁ行こうか、片峰さん」とわざわざ周りのクラスメイトに、繋がれた右手を見せつける様にして教室を出た。勿論、旭も一緒に。
教室から出て数秒後、旭はやっと声が出せた様で、苦しそうに息をしながら遼に訊いた。
「あの、何で……っ、あんな事を……? もう、手、離して下さ——」
そこまで言うと、遼はぶつかりそうな程、顔を旭の耳元へと近付けた。遼の息が耳にかかって、旭はまた顔を赤らめる。が、遼はそれを予想していた様に口角を上げ、また息を吹きかける。今度ばかりは、自由な右手で小さく抵抗をした旭だが、力の強さが段違いな所為で、その抵抗は無駄に終わった。速まる心臓の音を聞きながら、旭は遼を横目で見ると——笑った。
「………………何、笑ってんの。そんなに変だった? 確かに素の伶には敵わないけどさぁ」
笑われたからか拗ね始めた遼に、また旭は笑ってしまった。口元を右手で押さえても、中々笑いは治まらないので、遼の機嫌をどうしても損ねてしまう。
「だって、可愛くて…………ふふっ……」
面白そうに笑う旭に「笑う所じゃ無いでしょ……」と文句を呟いている遼。そのまま2人は歩いていると、何時の間にか空き教室の前まで来ていた。まだ笑いが治まらない旭を見ながら、遼は何かを思い付いたのか口を開く。
「……このまま入ったらさぁ。誰かに勘違いされるかな? 伶にされて欲しいんだけど」
それまで笑っていた旭は、この言葉で笑いを止め、自分の左を見下ろした。旭の目には——固く握り締められている左手が見えた。遼の言いたい事が理解出来た旭は、ドアノブを回そうと手を伸ばす遼に急いで謝る。
「笑っちゃって、その、ごめんなさい! だから、手を離して欲しいです!!」
「えーどうしようかなぁ。俺、すっごい傷付いたんだけどなぁ。うーん。あ! こうしようよ」
ニヒルな笑みを浮かべた遼は、今、旭にとって、自分を玩具代わりに遊ぶ悪魔でしかなかった。旭は冷や汗をかきながらも、遼の口元が動く瞬間を見逃さなかった。
「————伶に抱きついて。今直ぐ」
そう言って絡めていた指を外すし、内開きのドアを片足で蹴り飛ばして、旭の背中を勢いよく押した。その衝動で旭は素っ転びそうになったが、何とか耐えた。しかし、中にいた3人の視線からは逃れられず、旭はただ、苦笑いをして手を振ったのだった。
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.21 )
- 日時: 2015/04/25 23:07
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
参照700回突破記念!!
まさか、こんなに大きな数になるとは、思ってもいなかったので、夢じゃないかと頬を抓りました。痛いです。
更新が遅いからか、全然進んでいないので、今日(更新日)がバレンタインデーという事もあり、5人の話でもと。
……本編では、まだ2月に差しかかってもいないんですけどね(笑) まぁ、これも記念と言う事で。
2回に分けて更新します。では、まず1回目——黒髪少年とお姫様のお話を。
*
【1日限定チョコレート】
ピンク色のカチューシャをした、ショコラブラウン色巻き髪のお姫様————片峰旭は、只今、人生最大とも言える決断をしようとしていた。
今日、2月14日は朝から何だか皆一様に騒がしかった。いや、別に皆が口煩い、という訳では無く。もう少し細かく言うと、何かを待っている様子なのである。
2月14日と言うと『バレンタインデー』であり、感謝の気持ちを伝える義理チョコや意中の相手へと渡す本命チョコ等、世間が恋人の甘いムードで包まれる、女性の一大決心の日でもある。
そしてこの事は、旭も決して例外では無い。
これまで生きて来てずっと旭は、誰かに対してバレンタインデーにチョコをあげた事は無かった。しかし、今年は何と4つ、不慣れながらも1から自分で作る事に成功した。なら、後は相手に渡すだけである。
——しかし。
「ど、どどどうしよ……作ったのは良いけど、コレ、どうやって渡そう。何か言って渡すのかな、えっと、どうすれば…………」
旭にとっては、此処からが悩む所なのであった。
チョコレート作りは、家にあった本に書いてあった通りに進めれば完成出来たものの、渡し方何てものはレシピ本には書いておらず、初の旭には到底解る事では無かったのだ。
普通は手渡しが無理ならば、下駄箱や机の中に等、置いておくものだが、相手の教室が解らない彼女には出来ない方法である。ならば、相手の学年の教室を回って訊き、何処のクラスなのかを探し当てれば良いのでは、と思うだろうが、彼女は極度の人見知りである。そんな彼女が4人と言う大人数のクラスを1つ1つ探し当てるこの方法は、どう考えても不可能である。
だが、彼女には1つだけ、相手にチョコレートが届く方法が、可能性はそう高くは無いがあった。
その方法とは、此方——『ゴミ屋敷に置いて来ちゃった。ごめんねー』方法である。本当にそのまんまの作戦であるが。
これはそう、言わばチョコレートを賭けた真剣勝負であり、相手の行動を予測する必要があるのだ。何故かと言うと、旭の作ったチョコレートは、決して日持ちする様な感じのチョコレートでは無い。なので、何とかして今日1日の間で相手に渡す必要がある。
そう言う事なので、今日中に相手の内、誰も此処に来ないとなると、チョコレートは置いてきぼりにされて、仕舞いには溶けて腐ってしまう。しかも、運悪く明日は休日で、今日来なければチョコレートは天に昇ってしまう訳だ。
「…………もうこの方法しか思い付かないし、こうするしか……無いよね」
旭は鍵をかけ忘れたと思われるドアノブを回して、部屋へと踏み入った。と、その時、何時かのビックリ箱が旭を邪魔し、旭は吃驚する間も無くそのまま勢いよく倒れた。
チョコレートはと言うと、その衝動で空中へと上がり——誰かが出した幅の広いテーブルへ素っ飛んで行った。起き上がった旭は、何とか無事でいたチョコレートを見ると、安心したのか息を吐いた。
立ち上がった旭は、まだ頭に衝動が残っているのか、不安定な足取りで、これまた誰かが用意した薄茶色のソファーに横になった。思ったよりも柔らかかったからなのか、身体を横にした旭は、何時の間にか目を瞑っていた。
*
「……ん? ドアが少し開いているが……まだ誰かいるのか?」
忘れ物を取りに戻ってきた黒髪の少年は、奥の方へと目を向けた。
その目に映ったのは、何処かの可愛らしいお姫様が横になっている姿と、机に纏めて置かれている4つのチョコレートだった。一瞬驚いて立っていたが、直ぐにバッグをその場に置いて駆け寄ると、まず最初にお姫様の方に行き、眠っている事が解ると傍にあるチョコレートを見つめる。
少年は微笑んで自分の名が書かれた袋を手に持って、お姫様に向き直り頭を優しく撫でた。
すると、お姫様は嬉しそうに小さく寝返りを打ち、寝息をたてて綺麗な笑みを見せた。
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.22 )
- 日時: 2015/05/05 07:56
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
参照700回突破記念!!
2回目です(^^)
今度は、1回目に出て来なかったあの3人の『バレンタインデー』模様を覗いてみたいと思います。
何だか……S系少年と口悪少年に囲まれたアイドル佑里が、かわいそうになっちゃいますね(笑)
ではでは——どうぞ、ご覧ください!
*
【1日限定狼さん】
「あ、佑里やっと来たー。ハイ、下さい?」
「ねぇ佑里ー。早くチョコ頂戴。俺、待ち過ぎてお腹空いちゃったのー」
アーモンド形の瞳を持ち、焦げ茶色ショートヘアをした、ゴミ屋敷のアイドル————橘佑里は、只今、人生最大とも言える苛立ちの真っ最中だった。
先程から、佑里の可愛らしい瞳を見つめている少年が2人いる。どちらも佑里の知る人物であった。それは、佑里本人が知ってほしく無い情報でさえ、言ってもいないのに、勝手に知っている様な関係の少年達なのである——が。佑里は何故か笑ってはおらず、怒りと言う感情で満ちていた。
だが、そんな彼女の表情を目にしても、少年達は笑顔を崩す事は無かった。寧ろ「待っていましたー」と言わんばかりに、2人でハイタッチを交わしていて、それが余計に彼女の怒りに火を付けたのだった。
「なっにが、『ハイ、下さい?』やら『チョコ頂戴』よ! そもそも何でいる訳!?」
何時もより高い声を出して、頭を押さえ、しゃがみ込んだアイドルの肩に、2匹の狼はそれぞれ片手を置いて、黒く染まった笑顔を見せ付けた。その顔は、どう考えても普通では無く、何か企みのある顔であった。
「えー。だって僕、2年生だから生徒玄関は此処だよ? いてダメな理由とか無いと思うけど」
「あ、じゃあ…………はっ! 遼くんは!? 1年生だから生徒玄関の場所、違うよね! な、何でいるの……っ」
「んーとね。先に1年の生徒玄関行って、靴を履いてこっち来て、空き箱に入れといた上靴に履き替えた」
「長っ!! 道のり長過ぎじゃない!?」
狼達は、自分の話を聞いてはオーバーリアクションを取るアイドルを見て、「こんな癒しを求めていた……」と言うかの様な、恍惚とした表情で両手を合わせていた。意味の解らない狼達を睨み付けると、アイドルは自分の下駄箱へと小走りで向かう。もう、こんな狼達には構っていられない様だ。
——しかし。そんな行動、この『悪魔』とも呼べる狼達が許す訳は無く。直ぐに追いつかれて、1匹に抱きつかれてしまい、身動きが取れなくなる。その衝動で、持っていた靴がアイドルの手から離れて落ちてしまう。
「んっ!? ちょっ、遼く……っ! や、止め————!!」
そう言って振り返った瞬間、もう1匹の狼がアイドルの肩に下がっていたバッグを勢いよく奪い取り、ファスナーを開けて中をかき回し始める。その光景を見たアイドルは、手を伸ばして止めようとするのだが、後ろから抱きつかれている所為で、全然届きそうも無い。数秒後に「あった!」と声を上げて、バッグを床に落とした。すると、抱きついていた狼も、目を輝かせて其方へと駆け寄る。
一方、疲れ果てたアイドルは、床に落とされたバッグを拾い上げ、無気力で下駄箱に寄りかかる。そんな愛らしさを無くしたアイドルに、今度は正面から狼が抱きついて来た。勢いあまり、下駄箱の扉に頭をぶつけそうになったが、今のアイドルには、「怒る」と言う感情は無かった。ただただ、疲れただけである。
「ね! ね! コレ、貰って良い奴!? すげぇ上手そう!! 食べて良い? 拒否しても食べるけど!!」
「あぁ、うん。良いよ……って、もう食べてるし」
「コレさ、めちゃくちゃ上手いよ! 佑里凄い!! 毎日食べたいわ俺!!」
「な……何かありがとう。何時もなら『不味い』て怒るのに…………今日は素直だね。どうかしたの?」
何時もならば汚されている所を、いきなり褒められたので、どういった反応をしたら良いのかが解らずに、慌ててアイドルは狼に問うと、もう1匹の狼が笑って答えた。
「あ、それはねー。遼は朝からずっと、佑里のチョコ楽しみにしてたからだと思うよ。佑里の事ばっか言ってたんだよ。えっと——」
「ちょっと待……っ! 遙っ!! 俺は、別にそんな事思って無い!!」
「えぇ? だって言ってたじゃん。『佑里のチョコ食べられれば、別に他のは——』とか」
「あぁぁぁ!! 分かった! 認める! だから、ちょっと黙れ!! 絶対その先言うなよ!? 絶対だからな!!」
頬を真っ赤に染めた狼は、仲間であるはずの狼の胸倉を掴みかかり、片手で相手の口元を隠して、何とか止めに入る事が成功した。しかし、半分近く本人に聞かれてしまった恥ずかしさからか、アイドルの方に向き直ると睨み付けた。だが、頬が真っ赤に染まっている為に、直ぐ「照れ隠し」だと伝わってしまい、睨んだ事による効果は狼の思っていたよりも少なかった。
「なーんだ」と息を吐くとアイドルは、2匹の狼に近付き、満面の笑顔でこう言った。その笑顔には、先程の2匹と似た意地悪な思いも含まれていた。
「————それで、お味の方はいかがです? 狼さん達」
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.23 )
- 日時: 2015/02/18 23:01
- 名前: はるた (ID: jGEzFx76)
床ドンからのお姫様抱っこ……
女の子ならだれでもドキドキしてしまう展開ですね。伶君の素でそういうことをやってのける鈍感さに敬意を示したいです。
お久しぶりです、はるたです。
最新の更新分まで読ましてもらいました。結果、胸がキュンキュンして大変でした。いや、こんな子たちと青春を共にしたいなぁ、とうつつをぬかしてみたり。もう青春はほとんど終わっているのですが(笑)
参照700突破、おめでとうございます。
記念小説読ませてもらいました。そうですね、バレンタインでしたね。
バレンタイン前までは「わーい、バレンタインだー!!」と楽しみにしていたのですが、この頃忙しくてそれどころではありませんでした。
読んでいるとチョコ食べたくなりましたね、はい。
旭ちゃんのチョコも、佑里ちゃんのチョコも食べてみたいですね。っていうか、女の手作りチョコが食べたいのです!!
おっとっと、すみません、本音が駄々漏れしてしまいました。
続き、楽しみにしております。
更新がんばってください。
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