コメディ・ライト小説(新)
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- Enjoy Club =第1章完結=
- 日時: 2019/09/29 17:38
- 名前: 友桃 (ID: E616B4Au)
- 参照: キャラ絵のリンク外れてましたが、今貼り直してます!
あるとき、世界に謎の薬品がばらまかれた。
数年後、不思議な能力を身につけて生まれてきた子供達。彼らは仲間を求めて、ある結社に集結した。
彼らと接触した女子高生・亜弓は、結社内の混乱に次第に巻き込まれていく――
ファンタジー&シリアス要素ありのラブコメです!
クリックありがとうございますm(__)m
はじめまして、友桃(ともも)です^^
初投稿です>< 長編になるのですが、ちょっとずつ更新していきたいと思います。
よろしければ読んでみてください^^
*たまに記事のNo.飛んでいるところがありますが、残りの返信数を増やすために必要ない友桃のコメントを消しただけなので気にしないでください^^
〜お客さま〜
・花見さん ・かれーらいすさん ・十六夜さん ・貴也さん
・勿忘草さん(亮さん、扉さん) ・咲さん ・gojampさん ・詩音さん
・セピアさん ・杏樹.さん(真白ちゃん・そふとくりーむさん) ・ハッチしゃnさん ・ARMAさん
・遮犬さん ・ひろあさん ・白桃さん ・ゆかさん
・aguさん ・皐月凪さん ・(朱雀*@).゜.さん ・奈々☆さん
・ 蘭*。*さん ・山口流さん ・トレモロさん ・紅蓮の流星さん
・或さん ・ (V)・∀・(V)さん(十六夜さん) ・もちもちさん ・夜兎さん
・むーみんさん(椎奈さん) ・未来さん ・ゲコゲコさん ・てるてるさん
・こたつとみかんさん ・星ファン★さん ・そらねさん ・希蘭さん
・Eternalさん ・羅希さん ・霧雫 蝶さん ・あらびきペッパーさん
・抹茶.(小豆.)さん ・野宮詩織さん ・、璃瑚. さん ・ののさん
・友美さん ・亜美さん ・蜜姫. さん ・ネズミさん
・月読 愛さん ・紗夢羅さん ・黒揚羽さん ・優香さん
・ぱちもんさん ・Lithicsさん ・苺莢さん
読んでくださってうれしいですv ありがとうございますm(__)m
〜目次〜
※一気に読みたい方 >>0-1015
<第1章>
プロローグ >>0
第1話『謎の闇組織E・C』
(1)>>1 (2)>>2 (3)>>3 (4)>>5 (5)>>6
(6)>>10 (7)>>11 (8)>>13
第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』
(1)>>25 (2)>>30 (3)>>40 (4)>>46 (5)>>49
(6)>>50
第3話『我ら、麗牙光陰――』
(1)>>57 (2)>>58 (3)>>64 (4)>>70 (5)>>81
(6)>>86 (7)>>88,>>89 (8)>>98 (9)>>104,>>105 (10)>>108
第4話『あなたのために……』
(1)>>111,>>112 (2)>>120,>>121 (3)>>130 (4)>>136 (5)>>147
(6)>>152 (7)>>157 (8)>>166 (9)>>172 (10)>>180
(11)>>184 (12)>>188
第5話『不確かなもの』
(1)>>212,>>213,>>214 (2)>>256 (3)>>268 (4)>>285 (5)>>291
(6)>>306 (7)>>332,>>333 (8)>>346,>>347 (9)>>357,>>358,>>359 (10)>>370,>>371
第6話『衝撃の刻』
(1)>>397 (2)>>413,>>414 (3)>>425 (4)>>447,>>448 (5)>>474,>>475,>>476
(6)>>486,>>487 (7)>>518,>>519,>>520 (8)>>534 (9)>>557 (10)>>568
(11)>>576 (12)>>599 (13)>>627,>>628 (14)>>648 (15)>>696,>>697,>>698
(16)>>708,>>709,>>710
第7話『友を取り巻くモノ1』
(1)>>721 (2)>>726,>>727 (3)>>750,>>751 (4)>>784,>>785 (5)>>798
(6)>>813,>>814 (7)>>870,>>871 (8)>>>889,>>890
第8話『友を取り巻くモノ2』
(1)>>893 (2)>>901,>>902 (3)>>905,>>906 (4)>>910,>>911,>>912,>>913,>>914 (5)>>918,>>919
(6)>>923,>>924 (7)>>926,>>927 (8)>>931,>>932 (9)>>934 (10)>>936
第9話『混乱の夜明け』
(1)>>940,>>941 (2)>>945 (3)>>949 (4)>>955,>>956
エピローグ>>962
〜登場人物紹介〜
登場人物いちらん >>1015
あだ名 >>48
〜企画〜
≪第1回キャラ人気投票≫ 2010.8.27〜
結果>>225
≪第1回シーン人気投票≫ 2010.923〜
結果>>511
≪☆お客様方の小説紹介☆≫
第1弾 返信300突破記念 2010.9.25 >>304
第2弾 参照2000突破記念 2010.10.11 >>460
第3弾 参照3000突破記念 2010.11.18 >>661
≪返信400突破記念*E・Cラジオ*≫ 2010.10.6〜
NO.1 亜弓&恵玲 >>422
NO.2 恵玲&風也 >>495
NO.3 ウィル&白波 >>587
NO.4 亜弓&風也 >>676
NO.5 水希&茜 >>852
≪返信500突破記念 =キャラQ&A=≫ 2010.10.17
≪参照4000突破記念 =キャラ誕生秘話=≫ 2010.12.9
NO.1 >>743 NO.2 >>748
≪ Enjoy Club名言集*。* ≫ by 杏樹.さん 2010.9.25・26・28
杏樹さんがつくってくださいましたーv
ネタばれになるんで本編一通り読んでから、ぜひご覧になってください^^♪
杏樹さん本当にありがとうございました!!!
第1弾>>317 (友桃コメ>>319)
第2弾>>338 (友桃コメ>>341)
第3弾>>362 (友桃コメ>>364)
≪E・C(1章)紹介文≫ by ARMA3さん
>>992 2013.1.27
≪Christmas Short Story≫ 2010.12.19
>>773,>>774
≪Happy Birthday≫
5月…… (朱雀*@).゜.さん
11月17日……杏樹.さん >>654
みんなでお祝いしましょ♪
~小説大会~
2010年冬 大賞受賞★
2011年夏 銀賞受賞
みなさま、ありがとうございましたm(__)m
*2011.5.4 第一章完結
=Enjoy Club=
第1章
―プロローグ―
――熱い
燃えるように、煮えたぎるように身を焦がしていくモノは、先程注入した薬品か、はたまた我自身の高揚か……。体内に何か不可視の力がみなぎってくるのを、今全身で感じている。
目の前の金属の台に置かれているのは、たいていの科学者が用いているだろう多量の実験器具。その透明なガラスには幾色もの液体が沈み、わずかな振動で波紋を描いている。その隣には、青白い液の残った注射器が無造作に転がっていた。
興奮に身を震わせる私の隣に、線の細い少年が音もなく歩いてきて足を止めた。
「……」
台上の液体を見つめる顔は冗談でも健康的とは言えず感情も感じられないが、よく見るとまだ幼いことが分かる。眠っていないのか、黒くくすんだ眼元をごしごしとこすり、彼は黙って私に視線を向けた。
「君のお陰だ。君が手伝ってくれたお陰で、ようやく完成した……!」
この試みを始めてから8年という時が経過していた。寝る間も食う間も惜しんで、器具と薬品と毎日、毎日にらみ合い、無数に思えるほどの液体を調合し、実験をし、数値を示して再び薬品とのにらめっこ。長い、長い時だった。しかし何の組織にも属さない、2人というごく少数の科学者が8年で実験の成果を出す、ということは、あるいは幸運なことなのかもしれない。たった8年だった、というべきなのだろうか……。
何にせよ、実験は成功したのだ。私の努力がついに実を結んだのだ!
現実であることを確かめるように両の拳を力強く握ると、先程まで無言だった少年が、まだ声変わりしない声で囁くように言った。
「ぼく、……少しは“かげはる”様の役に立てた……?」
彼の至極純な気持ちが伝わってくる。はっきりと頷いてやると、少しはにこりとするかと思ったが、ごく僅かにも表情は動かない。
――この子は今何を感じているのだろうか
長きにわたる研究によって身に宿った、“透視”の能力。あらゆる障害物を無にし、普通視界に入るはずの無いはるか遠くにあるものをも見ることができる能力。しかしこの能力を持ってしても、人の心は、――彼の心は覗けない。
「――天音」
私は少年の目を覗き込んで、そう呼んだ。
「私と同じ、能力者になろう。そしていつかはこの薬を世界中にばらまいて――……」
試験管の中の色とりどりの薬品。それぞれが異なる性質のものであり、体内に入れたときにどのような能力を発するかは、今の段階では未知である。しかし、だからこそ、私は興奮するのだ。未知のものを追いかけたくなるのだ。
天音が一番手近にあった、桃色がかった液体を手で示す。私は満足感に笑みを浮かべた。
- Re: Enjoy Club シーン人気投票&麗牙キャラ絵? ( No.444 )
- 日時: 2010/10/09 22:14
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
>作家をめざしてらっしゃるんですか?
全然、目指してません!!ハードルが高すぎる!!
でもある程度の物語は作れたほうがいいかなって思っただけですw。
そりゃぁちゃんとした文章で作りたいですから、ちゃんとできるようにしてるかも・・・?
あ、また登場人物絵とかあっちでも作っていきたいと思いますのでよろしくね!(男が ねって・・・)
- えっ!!? ( No.445 )
- 日時: 2010/10/09 22:46
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KnqGOOT/)
ハッチしゃnさん>
目指してないんですか!!??
てっきり作家志望だと……(汗;
てかこのカキコせっかく文章力あるのに、目指してない人多いですね><;
もったいない…とか思っちゃう私www←
重ね重ね厚かましいこと言って申し訳なかったです……><!!
おっwww
ハッチしゃnさんのキャラ絵がまた見れますねっwwww
楽しみにしてます^^♪
よろしければ、またぜひいらっしゃってください&お互い執筆がんばりましょうね♪
みなさま>
明日次話更新できます^^
- Re: Enjoy Club ( No.446 )
- 日時: 2010/10/10 14:04
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KnqGOOT/)
次ふたつに分かれます^^
チーズスコーンの表現のとこ、後で変えるかもですww
あと普通女の子に使う名前を男の子の名前にしちゃってますが、気にしないでくださいww←
- Enjoy Club 第6話『衝撃の刻(とき)』(4) ( No.447 )
- 日時: 2010/10/23 08:14
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: N9MWUzkA)
突然恵玲が私の家を訪ねてきたのは、夏休みも残りわずかとなったある日の夕方頃だった。彼女が連絡なしに押し掛けてくるのはよくあることなので、私はそれほど驚くこともなく彼女を家の中へ招き入れた。
習慣付いたように、一直線に私の部屋へと入っていく恵玲。そこで何やらふんわりと甘い香りがどこからか発せられていることに気付き、私は鼻を利かせて部屋を見回した。
「なんかすごくいい香りがするんですけど。……これってチーズですか?」
「あ、それスコーンの香りだと思う。チーズスコーン」
「チーズスコーン!?」
聞くからに美味しそうなお菓子の名前に、私は裏返った声を上げた。胸を高鳴らせて、ベッドに腰掛ける恵玲の隣に座ると、彼女は私には目もくれずに冷めた目つきでバッグの中身をかきまわす。
そしてすぐに、その甘い香りの正体が姿を現した。透明なビニール袋に入れられたチーズスコーンが4つ。見たところ綺麗に膨らんで、程よい焼き目が付いている。
恵玲が袋の結び目をほどくと、さらにチーズの香りが部屋に充満した。温かい空気も中から立ち上っている。
「もしかして焼きたてですか!?」
「微妙にね。先に別の所にわたしに行っちゃったし。てか……」
恵玲は袋を覗き込んで整った顔をしかめた。
「1個崩壊してる」
正直見た目がどうなっていようが全然構わなかった私は、詰め寄るようにして彼女にせがんだ。恵玲は面倒くさそうに視界の端で私を見てから、よりによって割れているスコーンを私の手に置く。そして自分は無事生き残っているスコーンを取り出して、小さな口でかみついた。
直後、彼女の顔に広がる幸せそうな笑み。それを見てさらに期待が高まった私も、早速スコーンの一部を頬張った。濃厚なチーズの香りとあたたかい甘みが口の中に広がって、微笑まずにはいられない。
私が両手を頬に添えて足をジタバタと揺らしていると、恵玲が変なモノを見る目つきでこちらに視線をやった。
「……何」
「すっごいおいしいのです〜!」
口の中身を飲み込んでから耐えきれずにそう叫ぶと、恵玲は「あっそ」と興味なさげに呟き、もう一口スコーンにかみつく。それが口に入ると彼女のムスッとした表情が途端にほころぶので、私は妙に感動してしまった。
彼女に倣って割れた塊を口の中に放りこみ、無意識に壁にかかった時計へと目をやる。
ふとそこで恵玲に言おうと思っていたことを突然思い出して、跳ぶようにベッドから立ち上がった。そして勉強机の上に置いてある小さなピンク色の袋を手にとって、再び彼女の隣に腰を下ろす。店の名前が印字されているテープをはがし袋を開けるのを、恵玲は横目で見つめている。
「じゃじゃーん!」
無駄な効果音とともに私が取り出したのは、雪のように真っ白なファーボンボンのシュシュ。普段から左上部を結んでいるため普通のシュシュやリボンはたくさん持っているのだが、ボンボンを買うのは初めてだった。
「午前中に買ってきたのですー」
私が手の中でボンボンを転がしながらそう言うと、一瞬興味深げにこちらを見ていた恵玲はすぐに関心が無くなったようにそっぽを向いた。
「なんだ。風也くんからのプレゼントかと思った」
彼女の、期待が外れたという感じのトーンの下がった声に、私はつい苦笑をもらす。
風也とのことは、その日のうちに電話で話してあった。
教室を出て風也とはち合わせしたこと。彼から逃げ出して、先生の呼び出しもすっぽかして、風音の街を無我夢中で走り回ったこと。有衣と出会って誤解が判明したことや、その後雨の中風也と2人きりで話したこと……。胸の内で溢れかえっていた思いを伝えあったことも全て。
それを最初は歓喜のあまり震え声で語っていた私も、次第に落ち着いていき、最後の方は静かに事の展開を話していたように思う。そしてその嫌になるほど長い話を、一言も口を挟まずに相槌だけ打って聞いてくれていた恵玲は、最後に一言包みこむような心に染み入る声音で言ってくれた。
「良かったね」
と。
しかし彼女がそういう優しい言葉をかけてくれる場面なんて、本当に限られている。今だって人によっては嫌味とも取られそうな台詞をさらりと吐いて、何やら残ったスコーンをじ〜っと睨みつけている。
袋を顔の高さまで持ち上げて何かを考え込んでいる恵玲に、私はどうしたのかと首をかしげて尋ねてみた。すると彼女はチラッと一瞬こちらに目をやり、その視線を壁の向こうのリビングの方に持っていったのだ。
「もしかして今、葵くんいる?」
瞬間、私はこの上ないほど顔が引きつるのを感じた。不快感を露わにして、勢いよく首を横に振る。
「いいですよ、あんなバカにあげなくて! それよりそろそろ風也が来ますから、そっちにあげたほうが絶対いいです!」
私が“葵”にあげるのを嫌がることを予想していただろう恵玲は、心底面白そうにニヤニヤとからかうような笑みを浮かべていたが、私の台詞の後半部分を耳にして一気に目を丸くした。
「来るの!? ここに!?」
「はいですっ。初めてですよ、呼ぶの」
抑えることもままならず、つい顔中がふやけてしまった。
この間メールをしていた時に、そういう話題が上がったのだ。実は以前家の位置だけ教えたことがあったのだが、招待したことは一度もなかった。そのためちょうどお互い予定の空いていた今日の6時に、私の家で会う約束をしたのである。
一応風音駅に迎えに行くと申し出たのだが、彼は家が近いのでこの辺はよく知っているからと丁寧にそれを断ってきた。確かに彼の話では、友賀家と紫苑家は徒歩10分から15分くらいで行き来できる距離ならしく、彼がこの辺りのことをよく知っていても何らおかしくはない。
私は再び時計を見上げて、心地よい緊張感を楽しんでいた。
「今度の土日に3人でどこか出かけましょー?」
思いつきでそんなことを口にしたのと、インターホンが鳴ったのはほぼ同時だった。時計を見ると、約束の時間の3分前だ。
私は「あっ」と声をあげ、ほとんど走るようにして玄関に向かう。恵玲も面白そうに口元を緩めて後ろをついてくる。
期待を膨らませながら玄関のドアを開けると、予想通りの人物が視界に飛び込んできた。私の後ろで、恵玲がわざとらしく満面の笑みを浮かべて手を振っていた。
- Enjoy Club 第6話『衝撃の刻(とき)』(4) ( No.448 )
- 日時: 2010/10/10 13:55
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KnqGOOT/)
「はいっ、風也くん!」
「……あぁ、サンキュ」
恵玲が差し出してきたスコーンを、彼はなぜか複雑そうな表情で受け取った。
初めて来る私の家にさすがに緊張しているのか、それとも2人で遊ぶ予定だったのにと恵玲がいることを迷惑がっているのか、とそこまで考えて、私は内心首を横に振る。少なくとも後者は確実に違うだろう。彼はそういうことにこだわるタイプではない。
それに……と私はさりげなく彼に視線をやる。
なんとなく予想はしていたのだが、私と風也は少なくとも外見からすればそれほどアツアツのカップルではない気がする。メールはしているのだが他の友人と同じく時間ができた時に返す程度だし、毎週日曜は必ず会おうといった取り決めも一切ない。お互い気が向いたときに流れで遊ぶ約束をするくらいである。しかも子供の頃に夢見ていたような遊園地や水族館でのデートなど実際はしたことが無く、地元をブラブラするか、ちょっと都会へ出て買い物をするかにとどまっている。
たぶんそういう地味な付き合いをしている原因のほとんどは、私にあるのだろう。
私は派手に遊園地に連れて行ってもらうよりは、風音で馴染みの喫茶店で他愛の無い話で盛り上がる方が楽しいし、プレゼントなども特別ねだる方ではない。メールは必ず速攻返すとか、何曜日は必ず遊ぶとか、そういう風に縛られるのは大嫌いだし、縛る側にもなりたくないのだ。
そう言えば私達はまだ、手をつないだことすら無いように思う。
私は内心苦笑して、意識を現実に戻した。
視線の先では、風也がスコーンを口の中で転がしながら、部屋をキョロキョロと見回していた。
「……やたらとCDが多いな」
CDがずら〜っと並んだ棚を目にして、驚いたように呟く。
私が頷いて、いつも聞いているのだと口を開きかけた時。
ものすごい勢いで廊下をかける音が聞こえ、次の瞬間ノックも無しに部屋のドアが開かれた。
激しく嫌な予感が体中を駆け巡り、私は露骨に顔をしかめて――
「バカ姉貴に男ができたーっ!?」
まだ声変わりしない弟の声に、頭がぐらっと揺れたような気がした。
最近驚くべき速さで伸びてきている身長。私と同じ生れつきの茶髪はふわりと顔を包み込むようなショート。良い具合に横に流された前髪は、左側が二箇所ピンでとめられている。部活から帰ってきてまだ着替えていないのか、ジャージ姿のままだった。
姉に対する敬意の欠片もないむしろ見下した台詞を吐いた弟に、いつものごとく頭に血が上った私は、風也がいるのも構わず全力で言い返した。
「うるっさいですよ、葵! わざわざ邪魔しに来たんですか!?」
「だってありえなくね!? 姉貴に彼氏とかっ。母さんに聞いてマジビビったぜ、ほんと! つーか彼氏めちゃくちゃかっこよくね!?」
「いいから出てってください! ほんと邪魔ですっ」
「うっわ、邪魔だって。こえー、姉貴こえー」
息を切らして叫ぶものの、葵は全く聞く耳を持たずにずかずかと部屋に入り込んできた。私は慌ててベッドを立ちあがり、ドアの前の所で葵の腕をつかむ。
本当に生意気すぎて腹が立つと、あからさまにため息をついた。
「何でそこで入ってくるんですか……っ」
「いや、こんなかっこいい人そう会えないから、とりあえず名前だけでも聞いておこうと思ってさ」
リスのようにくりっとした大きな瞳をらんらんと輝かせて、葵は風也に視線を向けた。いつものことだと呆れたように見ている恵玲の横で、呆然と事の成り行きを見守っていた風也は、そこでハッとして我に返る。
「あ……オレ?」
彼が問うと、葵はおくすことなく二度うなずいた。私はもうどうしようもなくて、仕方なく手を離す。
「……オレ、紫苑風也。お前もしかして亜弓の弟か?」
「はいっ。友賀葵、中2っす!」
葵の台詞に、一瞬風也が目を見開いた。しかしすぐに平静な表情に戻り、私と葵を見比べる。しばらくして、「おっもしれー」と珍しいものを見たというふうな顔で呟いた。
彼の考えていることは十分に予想が付く。大方、全然似ていない姉弟だなと思っているのだろう。唯一似ているとすれば、特徴的な髪の色くらいだろうか。性格に関しては似ても似つかない。
すると風也はふっと何かを思い出したように視線を上げ、それをそのまま私の方に向けてきた。不審げな声音で尋ねてくる。
「お前もしかして親に話したのか? オレのこと」
思いもよらぬ質問に、私は目を瞬いた。一拍遅れて、ちょっと気が抜けた調子で問い返す。
「言っちゃまずかったですか……?」
「いや、オレのこと知ってるんなら一言あいさつ行った方が良かったんじゃねぇかと思って」
風也がサラサラの髪を無造作にかき混ぜながら、リビングの方に目をやる。彼の言い分に非常に納得が行った私は、葵を部屋から追い出して、風也とリビングに向かった。
いつの間にか恵玲は、床に座ってベッドの端で腕枕をし、気持ち良さそうに眠っていた。
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