コメディ・ライト小説(新)
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- Enjoy Club =第1章完結=
- 日時: 2019/09/29 17:38
- 名前: 友桃 (ID: E616B4Au)
- 参照: キャラ絵のリンク外れてましたが、今貼り直してます!
あるとき、世界に謎の薬品がばらまかれた。
数年後、不思議な能力を身につけて生まれてきた子供達。彼らは仲間を求めて、ある結社に集結した。
彼らと接触した女子高生・亜弓は、結社内の混乱に次第に巻き込まれていく――
ファンタジー&シリアス要素ありのラブコメです!
クリックありがとうございますm(__)m
はじめまして、友桃(ともも)です^^
初投稿です>< 長編になるのですが、ちょっとずつ更新していきたいと思います。
よろしければ読んでみてください^^
*たまに記事のNo.飛んでいるところがありますが、残りの返信数を増やすために必要ない友桃のコメントを消しただけなので気にしないでください^^
〜お客さま〜
・花見さん ・かれーらいすさん ・十六夜さん ・貴也さん
・勿忘草さん(亮さん、扉さん) ・咲さん ・gojampさん ・詩音さん
・セピアさん ・杏樹.さん(真白ちゃん・そふとくりーむさん) ・ハッチしゃnさん ・ARMAさん
・遮犬さん ・ひろあさん ・白桃さん ・ゆかさん
・aguさん ・皐月凪さん ・(朱雀*@).゜.さん ・奈々☆さん
・ 蘭*。*さん ・山口流さん ・トレモロさん ・紅蓮の流星さん
・或さん ・ (V)・∀・(V)さん(十六夜さん) ・もちもちさん ・夜兎さん
・むーみんさん(椎奈さん) ・未来さん ・ゲコゲコさん ・てるてるさん
・こたつとみかんさん ・星ファン★さん ・そらねさん ・希蘭さん
・Eternalさん ・羅希さん ・霧雫 蝶さん ・あらびきペッパーさん
・抹茶.(小豆.)さん ・野宮詩織さん ・、璃瑚. さん ・ののさん
・友美さん ・亜美さん ・蜜姫. さん ・ネズミさん
・月読 愛さん ・紗夢羅さん ・黒揚羽さん ・優香さん
・ぱちもんさん ・Lithicsさん ・苺莢さん
読んでくださってうれしいですv ありがとうございますm(__)m
〜目次〜
※一気に読みたい方 >>0-1015
<第1章>
プロローグ >>0
第1話『謎の闇組織E・C』
(1)>>1 (2)>>2 (3)>>3 (4)>>5 (5)>>6
(6)>>10 (7)>>11 (8)>>13
第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』
(1)>>25 (2)>>30 (3)>>40 (4)>>46 (5)>>49
(6)>>50
第3話『我ら、麗牙光陰――』
(1)>>57 (2)>>58 (3)>>64 (4)>>70 (5)>>81
(6)>>86 (7)>>88,>>89 (8)>>98 (9)>>104,>>105 (10)>>108
第4話『あなたのために……』
(1)>>111,>>112 (2)>>120,>>121 (3)>>130 (4)>>136 (5)>>147
(6)>>152 (7)>>157 (8)>>166 (9)>>172 (10)>>180
(11)>>184 (12)>>188
第5話『不確かなもの』
(1)>>212,>>213,>>214 (2)>>256 (3)>>268 (4)>>285 (5)>>291
(6)>>306 (7)>>332,>>333 (8)>>346,>>347 (9)>>357,>>358,>>359 (10)>>370,>>371
第6話『衝撃の刻』
(1)>>397 (2)>>413,>>414 (3)>>425 (4)>>447,>>448 (5)>>474,>>475,>>476
(6)>>486,>>487 (7)>>518,>>519,>>520 (8)>>534 (9)>>557 (10)>>568
(11)>>576 (12)>>599 (13)>>627,>>628 (14)>>648 (15)>>696,>>697,>>698
(16)>>708,>>709,>>710
第7話『友を取り巻くモノ1』
(1)>>721 (2)>>726,>>727 (3)>>750,>>751 (4)>>784,>>785 (5)>>798
(6)>>813,>>814 (7)>>870,>>871 (8)>>>889,>>890
第8話『友を取り巻くモノ2』
(1)>>893 (2)>>901,>>902 (3)>>905,>>906 (4)>>910,>>911,>>912,>>913,>>914 (5)>>918,>>919
(6)>>923,>>924 (7)>>926,>>927 (8)>>931,>>932 (9)>>934 (10)>>936
第9話『混乱の夜明け』
(1)>>940,>>941 (2)>>945 (3)>>949 (4)>>955,>>956
エピローグ>>962
〜登場人物紹介〜
登場人物いちらん >>1015
あだ名 >>48
〜企画〜
≪第1回キャラ人気投票≫ 2010.8.27〜
結果>>225
≪第1回シーン人気投票≫ 2010.923〜
結果>>511
≪☆お客様方の小説紹介☆≫
第1弾 返信300突破記念 2010.9.25 >>304
第2弾 参照2000突破記念 2010.10.11 >>460
第3弾 参照3000突破記念 2010.11.18 >>661
≪返信400突破記念*E・Cラジオ*≫ 2010.10.6〜
NO.1 亜弓&恵玲 >>422
NO.2 恵玲&風也 >>495
NO.3 ウィル&白波 >>587
NO.4 亜弓&風也 >>676
NO.5 水希&茜 >>852
≪返信500突破記念 =キャラQ&A=≫ 2010.10.17
≪参照4000突破記念 =キャラ誕生秘話=≫ 2010.12.9
NO.1 >>743 NO.2 >>748
≪ Enjoy Club名言集*。* ≫ by 杏樹.さん 2010.9.25・26・28
杏樹さんがつくってくださいましたーv
ネタばれになるんで本編一通り読んでから、ぜひご覧になってください^^♪
杏樹さん本当にありがとうございました!!!
第1弾>>317 (友桃コメ>>319)
第2弾>>338 (友桃コメ>>341)
第3弾>>362 (友桃コメ>>364)
≪E・C(1章)紹介文≫ by ARMA3さん
>>992 2013.1.27
≪Christmas Short Story≫ 2010.12.19
>>773,>>774
≪Happy Birthday≫
5月…… (朱雀*@).゜.さん
11月17日……杏樹.さん >>654
みんなでお祝いしましょ♪
~小説大会~
2010年冬 大賞受賞★
2011年夏 銀賞受賞
みなさま、ありがとうございましたm(__)m
*2011.5.4 第一章完結
=Enjoy Club=
第1章
―プロローグ―
――熱い
燃えるように、煮えたぎるように身を焦がしていくモノは、先程注入した薬品か、はたまた我自身の高揚か……。体内に何か不可視の力がみなぎってくるのを、今全身で感じている。
目の前の金属の台に置かれているのは、たいていの科学者が用いているだろう多量の実験器具。その透明なガラスには幾色もの液体が沈み、わずかな振動で波紋を描いている。その隣には、青白い液の残った注射器が無造作に転がっていた。
興奮に身を震わせる私の隣に、線の細い少年が音もなく歩いてきて足を止めた。
「……」
台上の液体を見つめる顔は冗談でも健康的とは言えず感情も感じられないが、よく見るとまだ幼いことが分かる。眠っていないのか、黒くくすんだ眼元をごしごしとこすり、彼は黙って私に視線を向けた。
「君のお陰だ。君が手伝ってくれたお陰で、ようやく完成した……!」
この試みを始めてから8年という時が経過していた。寝る間も食う間も惜しんで、器具と薬品と毎日、毎日にらみ合い、無数に思えるほどの液体を調合し、実験をし、数値を示して再び薬品とのにらめっこ。長い、長い時だった。しかし何の組織にも属さない、2人というごく少数の科学者が8年で実験の成果を出す、ということは、あるいは幸運なことなのかもしれない。たった8年だった、というべきなのだろうか……。
何にせよ、実験は成功したのだ。私の努力がついに実を結んだのだ!
現実であることを確かめるように両の拳を力強く握ると、先程まで無言だった少年が、まだ声変わりしない声で囁くように言った。
「ぼく、……少しは“かげはる”様の役に立てた……?」
彼の至極純な気持ちが伝わってくる。はっきりと頷いてやると、少しはにこりとするかと思ったが、ごく僅かにも表情は動かない。
――この子は今何を感じているのだろうか
長きにわたる研究によって身に宿った、“透視”の能力。あらゆる障害物を無にし、普通視界に入るはずの無いはるか遠くにあるものをも見ることができる能力。しかしこの能力を持ってしても、人の心は、――彼の心は覗けない。
「――天音」
私は少年の目を覗き込んで、そう呼んだ。
「私と同じ、能力者になろう。そしていつかはこの薬を世界中にばらまいて――……」
試験管の中の色とりどりの薬品。それぞれが異なる性質のものであり、体内に入れたときにどのような能力を発するかは、今の段階では未知である。しかし、だからこそ、私は興奮するのだ。未知のものを追いかけたくなるのだ。
天音が一番手近にあった、桃色がかった液体を手で示す。私は満足感に笑みを浮かべた。
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(4) ( No.910 )
- 日時: 2011/03/24 21:00
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
- 参照: 無駄に長くなりましたごめんなさい、5ページです><
家を出ると、正面に10メートルくらいの長さの幅の広い道があった。あまり整備がされていない、ごつごつとしたアスファルトの黒い地面。歩行者と車を仕切る白い線やガードレールといった類は何もなく、端にさびたドラム缶が2、3個と、鉄網製のごみ箱が置いてあるだけだ。ドラム缶なんかはスプレーで落書きがされていて、“不良のたまり場”のイメージと合致し、少しだけ怖くなった。
その道以外にも、家を出てすぐ左右に延びる細い道があったが、功は迷わず正面の大きな道を進んでいった。歩幅の大きい彼においていかれないように小走りしながら、私はふと後ろを振り返る。いましがた私が出てきた彼らの家は、シンプルな真四角の建物だったが、周りと比べるとかなり新しいものに見えた。シックな茶色の壁も、まだつやが残っている。
今日も今までと別段変りなく異常な暑さだが、空気がねっとりとはせず乾いているだけ幾分かマシだった。ジリジリと地を焼く太陽が建物から半分顔をのぞかせているが、道の両側を挟む廃墟のような低い建物が日陰を作ってくれているため、こたえるほどではない。このまま日蔭の続く道だったらいいな、などと贅沢なことを考えながら、斜め前を歩く功にどうにかついていく。すると不意に彼がこちらを振り返り、しまったというような顔をして歩くペースを緩めてくれた。
彼は他のメンバーと比べると、特別ファッションに気を遣っている様子のない人だった。かといって別にセンスが悪いというわけではない。流行に敏感そうな下橋の人にしては、白いロゴ入りのTシャツに長ズボンという至極シンプルな格好をしているというだけである。しかし少し見たところだと、ピアスや指輪などのアクセサリーの類は身につけているようだった。それに反して、かなりファッショナブル……というか、特徴的な髪型。少し硬そうな質の銀髪は、前髪の右半分だけが目を余裕で隠せるくらいの長さで、残りはオールバックにしている。しかしなぜかその独特の髪型が、彼にはしっくりくるのだ。
「あ」と彼が声をもらしたのは、つきあたりを右に曲がったときだった。ちょうど私が、首の後ろにかいた汗に顔をしかめ、髪を結んでこなかったことを後悔し始めたころだ。彼はこちらを見て、低音の穏やかな声で言った。
「クレープ、食べるか?」
たぶんその瞬間の私は、うれしさとその倍にもなる恥ずかしさがないまぜになったよくわからない顔をしていただろう。一瞬にして顔が真っ赤になった私を見て、最初はごく平静な顔をしていた功が不審げな目つきになる。しかしそれは私の目には入らず、ついさっき自分が夢の延長で、「クレープー!!」と叫んだことを彼まで知っていたことへの恥ずかしさに、私はついまくしたてるように言ってしまった。
「そ、それっ、夜ゑ先輩に聞いたんですか!? 本当に恥ずかしいのです……っ」
両手を頬に添え本気で泣きそうになっていると、わざわざ立ち止まってくれた功はなぜか不思議そうな顔で首をかしげている。何と声をかけたらいいのかわからない困り顔のようでもある。それを彼の背が高いために上目遣いになりながら盗み見して、私はようやく頭を落ちつけた。いいのか悪いのかよくわからない予感が頭の隅をよぎった。
「えっと、もしかして……聞いてない……」
私の独り言に近い問いかけに、彼はちょっと目をそらして頭をかきながら言う。
「ん……夜ゑには何も聞いてないけど……。ほら、あれ、あそこにクレープ屋あるだろ。そろそろ腹減ってきたんじゃないかと思ってさ」
ぽかんと口が開く。
――……わ、私のバカ〜っ!
思わず頭を抱えて全身で叫びたい気持ちになった。彼のせっかくの親切心を、こちらの勝手な妄想で台無しにしてしまったわけだ。彼が優しい人なだけに、強い罪悪感にかられた。
しかしそんな私の心の中の葛藤など知らない功は、全然気にしていない風な顔で、「大丈夫か?」などと心配の声までかけてくれる。慌ててこちらの勝手な勘違いであることを彼に言うと、わずかに首をかしげながらもわかったという風にうなずいてくれた。
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(4) ( No.911 )
- 日時: 2011/03/24 15:23
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
ショックから立ち直りきれない私に、再び歩き出した功が前と変わりない口調で話しかけてくる。
「それより、夜ゑの呼び方、先輩じゃなくて“ちゃん”付けでいいと思うぜ。下橋の年下の奴みんなそう呼んでるし。あ、それか“夜ゑ姉”とか」
「……夜ゑ、ちゃん……?」
恐る恐る言う私に、功は頼もしくうなずく。中学以来年上の人には先輩を付けるのが当たり前となっていた私には、こういう呼び方はなんだかむずがゆく思えるものだった。しかし一方で、憧れの彼女とちょっと近付けたようでうれしくもある。
そう言えば彼女たちはいったいいくつくらいなのだろうと疑問に思い、功に尋ねようと顔を上げると、彼はすでに前方左手にあるクレープ屋で店の人と話をしているところだった。直接道に面して品物を売る、小さな個人経営の店である。ちょうどその正面、右手の方には、“居酒屋”という暖簾の下がった店もあったがあまり興味はわかず、クレープ屋の方に小走りで直行した。店の前にいる功の横に並び目線を上げると、“永瀬屋クレープ”と手書きで書かれた看板が。脇に取り付けられている小さな看板には、油性ペンで“1個100円から”と書いてある。地元で馴染みの店という雰囲気がそういう細かいところからも出ていて、とても私好みの店だった。
功に促され奥の壁に貼ってあるメニューの表を見ると、どうやらシンプルな味のものが多いようだ。恵玲とよく行くチェーン店とは、また違う感じである。
とにかく甘いものを食べたい気分だったのでカスタード味を注文し、バッグの中身を探ろうとして、私は「あー……」と力のないあいまいな声を上げた。探ろうとした手は何も触れず、空気をつかんだのみ。バッグ自体を家の方に置いてきてしまったのである。状況を察した店のおばちゃんが、目じりを下げて甲高い声で笑っていた。ごまかすように半端な笑いを浮かべた私の手に、不意に功がまだあたたかいクレープを握らせる。しっかりと受け取ってしまったあとで、私はあせって首を振った。
「えっ、あの、私お金出してな――」
「いいから食べとけ。昼までまだ時間あるし」
彼の珍しく強い口調に押されて、私は謝りつつもお礼を言うと、さっそくクレープに一口かぶりついた。もちもちの生地を伸ばすように噛み切ると、口の中にあたたかいカスタードの甘みが広がる。顔をとろけさせながら口をもぐもぐしていると、満足そうな表情のおばちゃんから声をかけられた。
「見ない顔だねぇ、新入り?」
予想外な質問に、驚いてゆるく首を振る。すると財布をズボンのポケットにしまった功が、代わりに答えてくれた。
「うちのトップの彼女。今日初めてここに来たから今案内してるんです」
前半部分はこのおばちゃんには通じないのではないかと眉を下げてそちらを見ると、予想外におばちゃんは顔いっぱいに光るような笑顔を浮かべて言った。
「風也くんの!? まぁーっ、さすが私の風也くん。いい子を捕まえてくるわね〜。この流れで、しーちゃんと夜ゑちゃんもくっついちゃえばいいのにねぇ」
聞き捨てならない言葉がいくつか混ざっていたが、目をぱちくりとさせ功とおばちゃんの顔を交互に見ることしかできない。クレープに噛みついた体勢のままそんなことをしていると、おばちゃんがまた目じりを下げて、「この子可愛いわねぇ」と高めの声音で言ってくる。私はふるふると首を横に振って、功に目で助けを請うことしかできなかった。
私の困りきった顔に苦笑を浮かべた功は、二言三言おばちゃんに声をかけ、私の手を引いてその店を離れた。愛想がよくてテンションも高い彼女に、去り際慌ててお辞儀をしておいた。
クレープ屋のすぐ先の角を左に曲がる。功は引いていた私の手を離すと、こちらを振り返って口元に柔らかい笑みを浮かべた。
「よく知ってるだろ、下橋のこと」
即答で何度もうなずく。口の中のものを飲み込んで、ゆっくりとクレープ屋の方向を振り返る。自分の声には動揺が残っていた。
「ほんとびっくりしました。こんなこと言っちゃ失礼なんですけど、下橋ってよくない噂が多いから大人の方がなじんでいるのは正直意外なのです」
功はうなずき、ふと周囲の風景を見回す。私も同じように左右に並ぶ低い建物を見てみたが、どれも色が黒っぽくくすみ、薄くヒビが入った、古いものばかりだった。時々家や店の名残らしきところがあるが、今も生き残っているのはかなり少数のようである。
「今も残ってる店は、革命前からあったのがほとんどだからな。下橋のことはみんな見てきて、よく知ってるんだよ。……それにしても荒れてたあの頃からずっと店構えてるなんて、本当にすごい根性してる」
尊敬、それから畏敬の念がこもる声で、功は言う。私はそれを興味深く聞きながらも、尋ねずにはいられない言葉があった。
「あの……」
“革命”ってなんですか、と尋ねようとした私は、ふと前方に目をやって、言いかけていた言葉を止めてしまった。自然と足も止まっていた。
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(4) ( No.912 )
- 日時: 2011/03/24 16:45
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
話しているうちにいつの間にか私達は、駅前の大きな広場に出ていた。円形に広がるアスファルトの地面。その周りを囲むように並ぶ店。私の位置からちょうど広場を挟んで正面に見える、小さな駅。広場では小中学生の男の子と数えるくらいの数の女の子が、バスケットボールで盛り上がっている。その中には先程家の中で見かけた集団も混じっているようだ。運動会の玉入れで使うような棒のついた籠を両端に置き、そこを目指して皆が全力でボールを取り合っている。ほとんどが半袖のTシャツに短パンもしくは七分丈のズボンという格好だが、どの子も例外なく全身にびっしょり汗をかいているようだ。肩で息をしながら、手の甲で汗を拭いているのが見える。いつもよりは乾燥していてさっぱりとした空気とはいえ、この炎天下のでは仕方のないことだろう。それでも皆、焼くように照らす太陽にも、全身から噴き出す汗にも負けることなく、バスケを楽しんでいる。あまりにもボールの動きに夢中で、こちらには気が付いていないようだった。
彼らが楽しそうに遊ぶ光景を熱心に見つめていると、功が建物の壁に寄りかかりながら尋ねてきた。
「亜弓、もしかしてバスケ好きなのか?」
突然名前で呼ばれたことに驚きながら、曖昧に笑って首をかしげる。
「ん〜特別好きってわけではないのです。球技は苦手ですし。でもなんか皆楽しそうだなって思って」
彼らを見ていると不思議と混ぜてもらいたくなってしまう。恥ずかしいので言えないが。
私の答えに、功はちょっとだけ残念そうに言う。
「そっか。伸次がずっとバスケやってるから、話が合うかもと思ったんだけどな」
「伸次って……しーちゃんって呼ばれてた、あの……?」
「そう。いじられてたあいつ」
そう言って功は口元に笑みを浮かべる。そんな彼の顔をやや顎を持ち上げて見上げながら、この人はきっと周りからすごく慕われているんだろうな、と確信に近い気持ちで感じていた。言葉の節々がどことなく優しいのだ。声音も、性格の真面目さが出ているのか、からかうような調子があまりでない。
私は先程夜ゑに遊ばれていた三和伸次という青年を頭に思い浮かべながら、再び歩き始めた功の後についていった。正面の広場の方ではなく、右に曲がり広場を左に見て歩くかたちだ。物騒な赤い落書きが目立つ横に長い建物に沿って歩く。駅から見ると、広場を挟んで右奥の道から来た私達は、今度は左奥の方の道に歩いていくことになる。広場が建物の陰で左手に見えなくなると、功は最初の角を右に折れ、細い道に入った。
彼が唐突に話を切り出したのは、そんなときである。
「有衣達のことで何か知りたいこととかあるか?」
私はクレープを食べきって残ってしまった紙を幾度も折りたたみながら、気になっていたことを即彼に尋ねた。
「皆って同い年なんですか? 有衣ねーさんが大学生っていうのは知ってるんですけど」
今歩いている道は、今までの道よりもさらに整備がなされておらず、人気もない。もちろん営業している店なんかは見当たらず、極めつけには歩いている道が途中から土にまでなってきた。もうアスファルトですらない。しかしそれが逆に湖を連想させ胸が高鳴り、気付かれないくらいにこっそりとスキップで歩いてみたりもした。
ゴミ箱を通りかかったところで、功は私がずっと手でいじっていた紙を捨ててくれた。ゴミがちゃんと入ったのを確認して、口を開く功。
「えっとー……俺以外は皆タメ。俺は大4だけど、有衣と夜ゑと伸次は皆大1だ。夜ゑと伸次なんかはガキの頃からの幼馴染だっていうしな」
「幼馴染! すごいのです……っ」
クレープ屋のおばちゃんの発言を思い出し、私はつい興奮した声を上げる。目が突然輝くのが自分でもわかった。
こういう他人の恋愛関係の話は大好きなのである。2人の顔を頭の中で並べると、思わず笑みがこぼれてしまう。絶対にお似合いのカップルだ。先程の家での会話からして、なかなかユニークな間柄ではあるようだが。
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(4) ( No.913 )
- 日時: 2011/03/24 20:45
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
すると不意に功が私を呼び、何も言わず前方をおもむろに指差した。彼が指す方向を見て、私は目を見開き、思わず感嘆の声を上げた。
4、5メートルほど先に見える、日光に反射して白く光る湖。周りの木々に隠れて全貌が見えないため、私は期待に背を押されながら、湖の方に駆け出した。
その先には、何とも幻想的な風景が広がっていた。大きさは湖というよりも、大きな池あるいは泉といった方が適切かもしれない。ほぼ円形で、周囲をぐるっと青々とした葉を付けた木が囲っている。風が吹くと葉がこすれあって、波のように耳に心地よい音を辺りに広げる。水面は、木々を映した澄んだ緑色。日の光に照らされ大半がまぶしいくらいに白く輝いているが、底を泳ぐ魚が見えるほどに水は透き通っている。時折吹いた風が水面を揺らすとき、一瞬金色に光る水がなんとも美しい。
私が恍惚とした表情で吐息をもらしていると、功が何も言わず近寄ってきて隣に腰を下ろした。湖の周りは短い雑草がはびこっており、湖の淵から1メートルほど間隔をおいて立派な広葉樹がかまえている。ちょうど座って湖を眺められるスペースがあるわけだ。
私も彼に倣ってその場に腰を下ろすと、柔らかい土と草がクッションになって意外と座り心地がよかった。功がハッとして服が汚れることを気にしてくれたが、私は迷うことなく首を横に振る。少しくらい汚れても構わない。ここに座ったら、自然にあふれたこの場所に溶け込めるような、そんな気がするのだ。
冷たい水が目の前にあるせいか、不思議と空気が涼しく気持ちよく感じられた。微風が吹いたときなんかは、あまりの気持ちよさに高揚感を感じるくらいだ。長い髪を耳にかけながらふと空を仰ぐと、円形を描いて並ぶ木々の間から燦然と輝く太陽が顔をのぞかせていた。額に手をやってひさしを作り、横目に功を見ると、彼はただ静かにゆらゆらと揺れる水面を見つめていた。
「いい所だろ」
不意に彼が、満足感と自信に満ちた声でそう言った。私は湖の方に戻していた目を細め、はっきりとうなずく。
功が体勢を変えるのが、草のこすれる音でわかった。なんとなく、これから彼が色々と話してくれそうな雰囲気を感じ取って、私は何も言わずに話が始まるのを待つ。辺りに広がる草々が、サ……とさわやかな音を立てる。草独特の香りが、ふっと鼻をついた。
「下橋は……元々噂通りの、酷いところだったんだ」
予想していた通り、彼はゆっくりと話を始めた。
「何年前の話かはわからないけど、随分前の俺達の先輩が、元々廃墟だったこの下橋にたむろって、そのうち占領するようになった。四六時中ケンカばっかりやってるし、外で酒は飲むし、バイクばぶっ放すしですぐに近所から煙たがられて。警察も細かいケンカばっかりやってる奴らをいちいち取り締まる暇なんてなかったんだろう、下橋のことは放置してた」
それはたぶんここが元々廃墟だったせいもあるだろうけど、と彼は皮肉に笑う。
「風也の前までのここのトップも、世間一般で言われてるイメージそのままの、タチの悪い暴力的な不良でさ、トップ以外の奴らも雰囲気に流されたりとかしてケンカばっかりやってたから、“下橋は不良のたまり場だ”っていう噂が立ったのも仕方がないことだったんだ」
今まで歩いてきた道をふっと思い出す。確かに、元々廃墟という話が納得できるような状態だった。落書きを見たときなんかは、思わずイメージ通りの“不良”を思い浮かべて、心のどこかで怖がっている自分がいた。
私が熱心に彼の話に耳を傾けていると、彼はふっと微笑んで言った。
「でも……2年前に、有衣達――有衣と伸次と夜ゑと俺、それから風也……つまり今の下橋のトップ5を中心に、当時トップだった後藤雄麻って奴を下橋から追い出して、ここのやり方を一気に変えたんだ。下橋ではわかりやすく“革命”って言っちまってるけどな」
――“革命”。こちらから聞かずとも、自然と出てきた。先程聞きそびれた謎の単語が。
私は呆けたようにその単語を頭の中で反芻する。元々本当に荒れた集団だった下橋が今のように平和なところになるのは、そんなに簡単なことではなかったはずだ。少なくとも、“革命”という二文字であっさり言いきってしまうほどには。
功が一度話を切ったところで、私はちょっとだけ眉をひそめながら尋ねた。
「今の下橋の人達を見てると、全然不良っていう感じがしないのです。そこまで一気に変わるのって、結構大変だったんじゃ……」
私の言葉に、なぜか功は自嘲気味な笑みをこぼした。
「いやーそれがな、別に革命で皆の性格が改善されたってわけじゃないんだ。本当に根っからの不良だった奴をここから追い出しただけであって。あまり褒められた話じゃないんだけどな」
予想していなかったわけではないが、やはり驚きに目を丸くしてしまう。
「追い出したんですか! 結構過激ですね」
「過激もなにも、口で聞く奴らじゃないから最後は力づくだ。……だから正直なところ、もしあの時風也がいなかったら革命は絶対に成功してなかった。元トップの奴らは俺らより年上だし、当然それなりにケンカもできるし。てか今でもあいつら、他の不良グループに入って時々下橋にケンカ売ってくるからな。恨んでるんだろうよ」
少しだけ沈んだ声。その時の状況からして後悔しているわけではないだろうが、わずかに罪悪感は残っているということだろうか。
しかし彼は、すぐに気を取り直して明るい表情でこちらを見てきた。
「まぁ、革命の経緯もうちょいちゃんと聞きたかったら、有衣達の方が詳しいからそっちに聞きな。言いだしっぺ、あいつらだし」
思わず、「えっ」と声が漏れる。自分は今、相当に間抜けた表情をしているだろう。有衣は確かに軽く言い出しそうだが、それにしても革命の言いだしっぺだなんて、思っていた以上にとんでもない人達である。
話を聞いている間に、なぜかしばらく風がやんでしまった。湖のおかげで涼しく感じるとはいえ、やはり炎天下でじっとしていると、思い出したように汗が噴き出してくる。タオルの入ったバッグを家に置いてきてしまったので仕方なく手の甲で汗を拭いていると、不意に功が立ち上がり、待ってろと目で合図をしてきた。うなずいて彼の後ろ姿を目で追ってみる。来た道を戻り数分してすぐに湖の方に帰ってきた彼は、両手に滴のついた缶ジュースを持っていた。つい、目を輝かせ声を上げてしまった。
「わぁっ、ありがとです!」
十分に冷えたアップルジュースの缶を受け取り、思わず火照った頬にそれをあてる。それから不快なほどに渇いたのどをしっかりとうるおして、再び功に熱い視線を送った。続きを聞く準備は万端である。
アイスコーヒーを手に持った功は、「あとは今の下橋のことしかないぜ」と笑って、再び話を始めた。
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(4) ( No.914 )
- 日時: 2011/03/27 11:20
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
今の下橋には全部で3つのグループがある。1つは、風也率いる下橋で最もケンカの強いグループ、“緋桜”。功達もこのグループのメンバーで、小学生から大学生まで全部で15人のメンバーが所属している。残り2つのグループ、“白虎”と“光刃”も同じような構成だ。
それぞれのグループには、しばしばトップと呼ばれるリーダーとサブリーダーがいて、“緋桜”でいうと風也と功がそれに当たる。他のグループにもそれぞれ2人ずついるのだが、全体で最も強いグループのリーダーが下橋全体のリーダーも兼ねることになり、現在その位置には風也がゆるぎないものとして存在している。またそれぞれのグループにはトップ3、トップ5という呼び名があり、それはそのグループ内でケンカの強い人を上から順に当てていったものだ。“緋桜”で言うと、トップ3は風也・功・有衣、トップ5は風也・功・有衣・伸次・夜ゑということになる。この言い方は他グループにもあるのだが、自然と“下橋のトップ5”と言うと、3グループの中で最も強い“緋桜”のトップ5を指すようになっていった。
「今の下橋でも、ケンカは定期的にやってるんだ。ただ前みたいに、憎かったり敵対してる奴をボコボコにする感じじゃなくて……、言っちまえばゲームとか趣味としてだ。元々ケンカがストレス発散になるとか、プロレス感覚だとかで好きな奴がここにはたくさんいるから、そういう奴がさっきの広場に集まってグループごとに分かれてやり合うんだよ。でも、他のグループも含めて基本的に皆仲がいいから、年下相手だった時は手加減するし、同じくらいのレベルの奴だったら本気でやる。終わった後怪我した小学生とかがいたら、手当は他のグループの奴でもやったりするんだ。ルールとかも色々変えてやるんだぜ。“円から出ちゃいけない”とか“ロッドのみ使用可”とかさ」
また聞きなれない単語が出てきて、私は首をかしげる。
「ロッド?」
「あぁ、鉄パイプみたいなやつだよ。あれを特注で見た目もっとオシャレにしたやつ。俺らはその棒のこと、言いやすいように“ロッド”って言ってる」
私が何だか面白いと目を輝かせると、後で風也達に聞くといいと言われた。どうやら功は素手しか使わないためロッドを持っていないが、他の4人は全員持っているようだ。風也はめったなことでは使わないが、有衣と夜ゑは男性に比べて非力な分それで補っているらしい。
はっきり言って私自身とは直接関係のある話ではない。それなのに、高揚感に胸が熱くなってくる。彼らにどんどん興味がわいてくる。そんな私の横で、功は穏やかながらも真剣なまなざしを湖の方に投げ、力強い声で言った。
「今の下橋には、一般人はもちろん、他の不良たちとも極力ケンカはしないっていう掟があるんだ。でもそれは他の不良グループからすりゃあ鼻で笑ってあしらうようなくだらないものだし、ただのなれ合いにしか見えないんだろうが……俺らはそうやってこの2年間うまくやってきた。他の奴らになんと言われようともな」
実に自信に満ちた、誇らしげな表情だった。
私の胸の中では、下橋への憧れがどんどん膨らんでいったのだ。
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