コメディ・ライト小説(新)

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 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Enjoy Club  =第1章完結=
日時: 2019/09/29 17:38
名前: 友桃 (ID: E616B4Au)
参照: キャラ絵のリンク外れてましたが、今貼り直してます!

あるとき、世界に謎の薬品がばらまかれた。
数年後、不思議な能力を身につけて生まれてきた子供達。彼らは仲間を求めて、ある結社に集結した。
彼らと接触した女子高生・亜弓は、結社内の混乱に次第に巻き込まれていく――

ファンタジー&シリアス要素ありのラブコメです!


クリックありがとうございますm(__)m
はじめまして、友桃(ともも)です^^
初投稿です>< 長編になるのですが、ちょっとずつ更新していきたいと思います。
よろしければ読んでみてください^^


*たまに記事のNo.飛んでいるところがありますが、残りの返信数を増やすために必要ない友桃のコメントを消しただけなので気にしないでください^^


〜お客さま〜
・花見さん ・かれーらいすさん ・十六夜さん ・貴也さん 
・勿忘草さん(亮さん、扉さん) ・咲さん ・gojampさん ・詩音さん 
・セピアさん ・杏樹.さん(真白ちゃん・そふとくりーむさん) ・ハッチしゃnさん ・ARMAさん
・遮犬さん ・ひろあさん ・白桃さん ・ゆかさん
・aguさん ・皐月凪さん ・(朱雀*@).゜.さん ・奈々☆さん
・ 蘭*。*さん ・山口流さん ・トレモロさん ・紅蓮の流星さん
・或さん ・ (V)・∀・(V)さん(十六夜さん) ・もちもちさん ・夜兎さん
・むーみんさん(椎奈さん) ・未来さん ・ゲコゲコさん ・てるてるさん
・こたつとみかんさん ・星ファン★さん ・そらねさん ・希蘭さん
・Eternalさん ・羅希さん ・霧雫 蝶さん ・あらびきペッパーさん
・抹茶.(小豆.)さん ・野宮詩織さん ・、璃瑚. さん ・ののさん
・友美さん ・亜美さん ・蜜姫. さん ・ネズミさん
・月読 愛さん ・紗夢羅さん ・黒揚羽さん ・優香さん
・ぱちもんさん ・Lithicsさん ・苺莢さん

読んでくださってうれしいですv ありがとうございますm(__)m


〜目次〜

※一気に読みたい方 >>0-1015

<第1章>

プロローグ >>0

第1話『謎の闇組織E・C』
(1)>>1 (2)>>2 (3)>>3 (4)>>5 (5)>>6
(6)>>10 (7)>>11 (8)>>13

第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』
(1)>>25 (2)>>30 (3)>>40 (4)>>46 (5)>>49
(6)>>50

第3話『我ら、麗牙光陰――』
(1)>>57 (2)>>58 (3)>>64 (4)>>70 (5)>>81
(6)>>86 (7)>>88,>>89 (8)>>98 (9)>>104,>>105 (10)>>108

第4話『あなたのために……』
(1)>>111,>>112 (2)>>120,>>121 (3)>>130 (4)>>136 (5)>>147
(6)>>152 (7)>>157 (8)>>166 (9)>>172 (10)>>180
(11)>>184 (12)>>188

第5話『不確かなもの』
(1)>>212,>>213,>>214 (2)>>256 (3)>>268 (4)>>285 (5)>>291
(6)>>306 (7)>>332,>>333 (8)>>346,>>347 (9)>>357,>>358,>>359 (10)>>370,>>371

第6話『衝撃のとき
(1)>>397 (2)>>413,>>414 (3)>>425 (4)>>447,>>448 (5)>>474,>>475,>>476
(6)>>486,>>487 (7)>>518,>>519,>>520 (8)>>534 (9)>>557 (10)>>568
(11)>>576 (12)>>599 (13)>>627,>>628 (14)>>648 (15)>>696,>>697,>>698
(16)>>708,>>709,>>710

第7話『友を取り巻くモノ1』
(1)>>721 (2)>>726,>>727 (3)>>750,>>751 (4)>>784,>>785 (5)>>798
(6)>>813,>>814 (7)>>870,>>871 (8)>>>889,>>890

第8話『友を取り巻くモノ2』
(1)>>893 (2)>>901,>>902 (3)>>905,>>906 (4)>>910,>>911,>>912,>>913,>>914 (5)>>918,>>919
(6)>>923,>>924 (7)>>926,>>927 (8)>>931,>>932 (9)>>934 (10)>>936

第9話『混乱の夜明け』
(1)>>940,>>941 (2)>>945 (3)>>949 (4)>>955,>>956

エピローグ>>962


〜登場人物紹介〜
登場人物いちらん >>1015
あだ名 >>48


〜企画〜

≪第1回キャラ人気投票≫ 2010.8.27〜
結果>>225

≪第1回シーン人気投票≫ 2010.923〜
結果>>511

≪☆お客様方の小説紹介☆≫
第1弾 返信300突破記念 2010.9.25 >>304
第2弾 参照2000突破記念 2010.10.11 >>460
第3弾 参照3000突破記念 2010.11.18 >>661

≪返信400突破記念*E・Cラジオ*≫ 2010.10.6〜
NO.1 亜弓&恵玲 >>422
NO.2 恵玲&風也 >>495
NO.3 ウィル&白波 >>587
NO.4 亜弓&風也 >>676
NO.5 水希&茜 >>852

≪返信500突破記念 =キャラQ&A=≫ 2010.10.17

≪参照4000突破記念 =キャラ誕生秘話=≫ 2010.12.9
NO.1 >>743 NO.2 >>748

≪ Enjoy Club名言集*。* ≫ by 杏樹.さん 2010.9.25・26・28
杏樹さんがつくってくださいましたーv
ネタばれになるんで本編一通り読んでから、ぜひご覧になってください^^♪
杏樹さん本当にありがとうございました!!!

第1弾>>317 (友桃コメ>>319
第2弾>>338  (友桃コメ>>341)
第3弾>>362 (友桃コメ>>364

≪E・C(1章)紹介文≫ by ARMA3さん 
>>992 2013.1.27

≪Christmas Short Story≫ 2010.12.19
>>773,>>774

≪Happy Birthday≫
5月…… (朱雀*@).゜.さん
11月17日……杏樹.さん >>654
みんなでお祝いしましょ♪


~小説大会~
2010年冬 大賞受賞★
2011年夏 銀賞受賞
みなさま、ありがとうございましたm(__)m

*2011.5.4 第一章完結





=Enjoy Club=



第1章




―プロローグ―



――熱い


 燃えるように、煮えたぎるように身を焦がしていくモノは、先程注入した薬品か、はたまた我自身の高揚か……。体内に何か不可視の力がみなぎってくるのを、今全身で感じている。
 目の前の金属の台に置かれているのは、たいていの科学者が用いているだろう多量の実験器具。その透明なガラスには幾色もの液体が沈み、わずかな振動で波紋を描いている。その隣には、青白い液の残った注射器が無造作に転がっていた。
 興奮に身を震わせる私の隣に、線の細い少年が音もなく歩いてきて足を止めた。

「……」

 台上の液体を見つめる顔は冗談でも健康的とは言えず感情も感じられないが、よく見るとまだ幼いことが分かる。眠っていないのか、黒くくすんだ眼元をごしごしとこすり、彼は黙って私に視線を向けた。

「君のお陰だ。君が手伝ってくれたお陰で、ようやく完成した……!」

 この試みを始めてから8年という時が経過していた。寝る間も食う間も惜しんで、器具と薬品と毎日、毎日にらみ合い、無数に思えるほどの液体を調合し、実験をし、数値を示して再び薬品とのにらめっこ。長い、長い時だった。しかし何の組織にも属さない、2人というごく少数の科学者が8年で実験の成果を出す、ということは、あるいは幸運なことなのかもしれない。たった8年だった、というべきなのだろうか……。
 何にせよ、実験は成功したのだ。私の努力がついに実を結んだのだ!
 現実であることを確かめるように両の拳を力強く握ると、先程まで無言だった少年が、まだ声変わりしない声で囁くように言った。

「ぼく、……少しは“かげはる”様の役に立てた……?」

 彼の至極純な気持ちが伝わってくる。はっきりと頷いてやると、少しはにこりとするかと思ったが、ごく僅かにも表情は動かない。

 ――この子は今何を感じているのだろうか

 長きにわたる研究によって身に宿った、“透視”の能力。あらゆる障害物を無にし、普通視界に入るはずの無いはるか遠くにあるものをも見ることができる能力。しかしこの能力を持ってしても、人の心は、――彼の心は覗けない。


「――天音あまね


 私は少年の目を覗き込んで、そう呼んだ。

「私と同じ、能力者になろう。そしていつかはこの薬を世界中にばらまいて――……」

 試験管の中の色とりどりの薬品。それぞれが異なる性質のものであり、体内に入れたときにどのような能力を発するかは、今の段階では未知である。しかし、だからこそ、私は興奮するのだ。未知のものを追いかけたくなるのだ。

 天音が一番手近にあった、桃色がかった液体を手で示す。私は満足感に笑みを浮かべた。

Enjoy Club 第1話『謎の闇組織E・C』(1) ( No.1 )
日時: 2019/07/01 15:39
名前: 友桃 (ID: y68rktPl)

―…ほんと恵玲えれって、私に隠れてコソコソ何やってるんでしょう?

 私はふぅっと浅いため息をついて、困ったふうに眉を下げた。さらさらとした心地の良い風が頬をなで、くせのない茶髪がふわりと舞う。それをちょっと鬱陶しく感じて手で押さえ、そのままふと下方に視線を移し、自分の全身を見下ろした。
 紺のブレザー、胸元には赤が基調のチェックのリボン。そして同色のスカートはもちろんミニ。
 今日から晴れて女子高生の一員となるのである。
 中学から伸ばし始めた生まれつきの茶色い髪は背中にかかるまで長くなり、自慢のサラサラなストレートが一段と際立つようになった。ただ下ろしているだけではつまらないので毎日シュシュやリボンを左上部に一部だけ結んでいるが、今日は淡いピンクのシュシュである。
 思わず口元が緩んでふやけた顔になってしまう。両手の指先でにやけを抑えるように頬を挟み、再び最初の疑問へと思考を移した。

つい先程のことである……


Enjoy Club 第1話『謎の闇組織E・C』(2) ( No.2 )
日時: 2019/07/01 15:43
名前: 友桃 (ID: y68rktPl)

 張り詰めたような雰囲気の中行われた、風音かぜね高等学校入学式。本校は公立高校であるため中学からエスカレーターで上ってくる生徒はおらず、つまりはほぼ全員が新しい環境の中緊張で全身を強張らせているということになる。ほぼ、と言ったのは、同じ中学の友人と連れ立っていつも通りのテンションの生徒がいることを考慮したせいだ。
 学力的にはちょうど真ん中辺り、具体的には偏差値50前後のこの学校は、学年差はあるものの毎年比較的大人しめな生徒が入学してくる。もちろん中には早速髪を染め、濃いメイクを施し、カーディガンからスカートが見えるか見えないかという新入生にしては目立つ格好をしてくる者もいるが、少なくともこの学校では少数派だ。
 私の地元にあたる“風音かぜね”という地域に位置する風音高は、最寄駅から徒歩10分と妥当な距離であり、加えて通学路はやや開けているという所で、高校生の寄り付きそうな店も多い。また制服も可愛いと好評であり、なかなかの人気高なのである。
 ただし、今年に限ってはある噂が原因で受験生が減ったという話だが。
 
そんな風音高での入学式を終えた私は、昇降口に掲示してあるクラス分けの表を見に足を速めた。

 ――ものすごい人だかりである。中学のメンバーとクラスを確認し合い、一喜一憂するグループがいる一方で、違う地域から来たのか自分のクラスだけを冷静に確認する者もいる。私は前者だ。同じ中学からは6人入学しているはずだが、そのうち4人は男子であまり関わり合いの無い人達ばかりだ。残り2人は私自身と、私の幼馴染であり親友でもある荒木あらぎ恵玲という少女である。
 視力のいい私は人だかりの後ろのほうからでも十分名簿は読めた。確認し終えた生徒あるいは親たちが少しずつ前方から散っていく。その流れで掲示板の前へと近付いて行った私は、そこでよく見憶えのある後ろ姿を見つけた。


「――恵玲っ」


 ぱっと振り返ると、すがすがしい程に真っ黒な髪が絵にかいたように弧を描いた。ハッと見返してしまう程の大きな瞳が、一瞬だけ見開かれた。

「…! 亜弓あゆみあんた今日どこにいたの!?」

 いかにも勝気そうな、はきはきした声音である。肩まででシャギーにした髪型が、彼女の強い性格を一層際立てているようにも思える。私よりも彼女のほうがずっと小柄なのに、なぜか見下ろされているように感じるのは実に不思議だ。現にちょっとムッとした表情の恵玲はしっかりと腕を組んで立っており、それはそれは威厳があるのだった。
 私は会場である体育館を思い浮かべて、不機嫌そうな彼女に丁寧に説明した。

「えっと…前から3列目の1番右端にいましたよ」

 風音高はややおかしな学校で、入学式の席をクラスごとにすればいいのに、到着した人から順に座っていくという謎な方法をとっている。お陰で「時間合わせるのがめんどい」という理由で一緒に行かなかった彼女とは会場で全く会えなかった。クラスごとであればもう少し見当がついただろうに。

 恵玲は浅く息を吐き、
「全然違う。あたし後ろの方だもん」
その視線をす…と前に戻していった。私も気を取り直して名簿に視線を走らせる。「名前見つかりました?」そう尋ねる前に、恵玲が「あ」と短く声を漏らした。

「恵玲?」
「あれ、4組!」

 ちょっと興奮した声で彼女が指さしたのは、2人の位置からやや右の方向。『1―4 担任・渡辺さやか』と書かれた真っ白な模造紙である。私は無意識に胸元のリボンをつかみ、やや身を乗り出すようにして上から順に名前を確かめていった。


『2番 荒木恵玲』


「――恵玲ですっ」
「……もっと下」

 むっとしたような恵玲の声に、私は思わず彼女を振り返る。が、そのつややかな黒目は未だ表からは動かされておらず、私は不意に湧いてきた期待を感じながら、再びゆっくりと名前を追っていった。

 ―…今井…沢田、島崎…谷田、友――

 力が、抜けた。


『17番 友賀ともが亜弓』


 自分の名前を見つけてからも尚目を瞬き、しっかり確認するようにそれを凝視する。
 いい加減頭にきたのか、気の短い恵玲がギロッと睨みあげてきた。

「まだ見つかんないの!?」
「いえ、今発見したとこです! 感動してるんです!」
「感動って…大げさな」

 本気で呆れたようにそう言った恵玲が、何の未練もなくくるっと後ろを振り返り、人込みから抜けようと足を踏み出したとき――

 ざわ…っと動揺が辺りに波紋のように広がった。

「え、うそ…!」「あの噂、本当だったの!?」「やだ、怖い」

 色々な声が辺りにばらまかれるが、言っている内容は似通っているように思う。皆友人だけでなく、見ず知らずの隣人とまで顔を見合わせ怯えたような顔つきで頷き合っている。
 しかしそんな中、人々が騒がしい理由が全く掴めていない私は、整然とした歩みを続ける親友の袖を慌てて捕まえた。

「恵玲っ、皆急に何を――」
「3組、見てみ」
「……」

 私は思わず恵玲の顔を穴があくほど見つめてしまった。彼女の瞳は相変わらずギラギラと光っていて、その口元は……何と不敵な笑みを浮かべていた。

 ――いつもそうだ。何か、自分に対抗出来得る何かが迫っている時、彼女はこうやって不敵に笑う。“やれるもんならやってみろよ”みたいな。

 私は口元を引き締め、言う通り3組の表へと目を向けた。さっきと同様上から名前を無言で読み上げていく。そして、ある名前を視界に入れて、すぅっと息を吸い込んだ。



 ここ風音から駅1つ挟んだ所に、“下橋しもばし”という地域がある。そこには主に中学生から大学生のいわゆる不良が大人数住み着いており、その地域全体を縄張りにしているとか…。しかも下橋の不良は他地域から見ても喧嘩が強く、中でもそこのトップの強さは群を抜いているとか…。そして、そのトップの名前は――



『10番 紫苑しおん風也かざや


 ようやくわかった。皆がおびえている理由が。
 私は紙の上に乗ったその名前に、ごくっと空唾を飲んだ。

 ―…ケンカ、売られたら…どうしましょう

 これだけ有名な不良だ。目を合わせただけでも因縁をつけてくるかもしれない。そんなことになったら……これはもう――

「恵玲、守ってくださいね」
「は?」
「だからっ、私がこの紫苑って人にカラまれたら守ってくださいね! 恵玲、爆裂ケンカ強いんですから!」

 結構本気でお願いしたのに、彼女には鼻で笑ってあしらわれてしまった。


Enjoy Club 第1話『謎の闇組織E・C』(3) ( No.3 )
日時: 2010/11/01 20:02
名前: 友桃 (ID: ZQ/BM/dz)

 その後クラス発表の人だかりから脱出した私たちは、以前からの予定通りクレープを買って家で食べよう、という話になった。小さい頃から、何かとイベントのあるときには友賀家にやってきてクレープを食べることが、ほとんど決まりのようになっている。ついこの間の中学卒業式は、確かイチゴチョコ味を食べて、それはもう幸せなひと時を過ごした。

「中学、か……」

 思わずため息交じりの声が漏れる。隣を並んで歩いていた恵玲が横眼でこちらを見た。

「今度は目つけらんないようにね」
「わかってます。それに高校は中学と違って髪染めてる人多いですから、大丈夫ですよ!」

 言いながら大げさにガッツポーズすると、丁度その時バッグの中で携帯電話のバイブが鳴った。どうも邪魔された気分である。鳴っている携帯電話は恵玲のものであったらしく、彼女がバッグからディープピンクのスライド携帯をとりだすと、バイブは一層大きくブーブーと音を響かせた。

 余談であるが、彼女の携帯電話は実に忙しい。学校の行き来や遊び途中、加えて授業中に鳴ることもしょっちゅうであるし、その内容も高確率で重要なものらしく、そのまま「急用できた! ごめん帰る!」と本当に帰ってしまうこともしばしばである。

 今回の連絡は電話だったらしい。相槌を打ちながら携帯電話を片手に会話をする彼女の口元は、先程に比べるとかなり緩み、頬も若干桃色がかっているようにも見える。声音も随分柔らかく女の子らしい声だ。まぁ、もともと可愛らしい声をしてはいるが。

 私は半ば呆れて、バレない程度に息を吐いた。

 恵玲は以前、それはそれは恋した乙女の表情で、「すっごくかっこよくて優しい男の子がいるの」と話してくれたことがある。「好きなんですか!?」と聞くと随分考えこまれてしまったので、はっきりしたことはわからないが、たぶんこの電話の相手はその子だろう。彼女の表情でバレバレである。

 普段とのギャップが激しい彼女の女の子らしい部分を見るのは微笑ましいが、しかし彼女のある言葉が私の耳にやけに強調されて入ってきたのである。

「うん、わかった。今からすぐそっち行くね!」


 ――……
   …“今から”ぁ!?


 ちょうど携帯を閉じたところで、彼女の大きな瞳と目が合う。私が視線に疑いの念を込めると、彼女はあまり申し訳なく思ってなさそうな顔で、

「ごめん、帰る!」

そう言い切った。

「またですか! クレープは!?」
「明日。明日学校終わってから食べよ」

 悪びれもなくそう言った恵玲は、素早く携帯電話をバッグにしまい、くるっと私に背を向けた。

「じゃっ、あたしこっちだから!バイバイ」
「えっ、……ちょっ」

 慌てて制止の手を伸ばした時には、恵玲は人間業とは思えない驚異的なスピードでこの場を立ち去っていたのである……




 ここでようやく“今”に至る。

 結局1人でとぼとぼと帰路についていた私は、そこでふと立ち止まった。さっきまではクレープを買うつもりだったのでデパートや喫茶店などが並ぶ駅前の“桜通り”を目指していたが、恵玲がいなくなった今、そちらに用はない。今まで北へ北へと歩いていたのを方向転換して、次の角を右に曲がろうとした、その時――

 向こうから同様に曲がってきた人物と危うくぶつかりそうになった。「あ」と思わず声を漏らしたが、相手が寸前のところで避けてくれたためどうにかぶつからずに済んだのだが……
 その一瞬、驚いて相手の顔を見た私は、ゆっくりとスローモーションのように目を見開いていた。

 金髪の、同年代のおそらく男の子であった。おそらく、というのは、若干青白いともとれるような真っ白な肌をしていて、顔立ちも一見女性のような人だったからである。それでも男性と判断したのは、彼が学ランを着ていたのと、突き刺すような鋭い眼光をしていたせいだ。

 私が慌てて謝ると、彼も「悪ィ」と一言言ってそのまま行ってしまった。
 どんどん小さくなっていく後ろ姿を、呆けたようにじ…っと見つめる。

「あの制服……うちの……」

 みるみるうちに体が火照っていく。ゆっくりとした動作で両手を頬にあてると、思った以上に上気しているのが分かった。



登場人物紹介-1- ( No.4 )
日時: 2019/06/14 18:11
名前: 友桃 (ID: U7ARsfaj)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1177.jpg

気が向いたときにちょっとずつ登場人物プロフィールを紹介したいと思います♪



【NO.1】友賀 亜弓 Tomoga Ayumi 

  ・年齢:15才(高1)
  ・誕生日:4月27日
  ・血液型:O型
  ・身長:163cm
  ・茶髪(生まれつき)
  ・部活:帰宅部

主人公さんです♪
苦労性でやられキャラな、この小説の中では比較的女の子らしい子ww
とりあえず特徴的なのが“ですます口調”。父親譲りです。
話し方と外見とで優等生タイプに見られやすいですが、勉強は………うん、スルーしといたほうがいい感じですね(笑)そのかわり走るのはめちゃくちゃ速いです!球技は激しくヘタですが。。。←←
で、最後に将来の夢は素敵なママになることですww たぶんこの子ならなれると思います(*^^)v


っていうことで、本編あんまり関係ないとこばっかり書いてしまいましたが……笑
なんとなーくどんな子かわかってもらえたらうれしいです(^^)
そのうち他のキャラも紹介していきたいと思います


☆キャラ絵は参照&↓から〜(参照に入りきらなかったんです><)

>>452



 

Enjoy Club 第1話『謎の闇組織E・C』(4) ( No.5 )
日時: 2010/10/23 07:49
名前: 友桃 (ID: N9MWUzkA)

 
同日の夜、それまで昼間の男の子を思い出してはびっくりするくらい激しく動悸していた心臓が、今別の理由で活発に動きまくっていた。

 とうとう明日、新しいクラスの子と初・対面なのである!

 この独特な緊張感と、そして大きな期待は、たいていの人が経験済みの心境だろう。それを認識してしまった途端、ちょっと道端ですれ違っただけの男の子のことは、あっという間に頭の隅に追いやられてしまった。

 ――……はぁ…皆どういう子たちなんでしょう……?

 白が基調のベッドの上を、枕を抱いた状態でゴロゴロと行き来する。しばらくそうしているうちに、なぜか不安がだんだん薄らいでいって、代わりに新しい生活への期待が体中に沸き起こってきた。がばっと上半身を起こし、視界に入った高校のバッグを輝かんばかりの瞳で見つめる。

 ――……そうですよ、私もう高校生じゃないですか!女子高生!女子高生が楽しくないわけないのですっ

 だんだんテンションまで上がってきた。抱いていた枕をポイッとシーツの上に投げ捨て、ベッドから反動をつけて跳び下り、そのまま部屋を出ようとすると――

「亜弓っ、あんた何回呼ばせるの!」

 若干怒りの形相の母親がタイミングよく部屋のドアを開けた。エプロンをつけたままである。
 私は苦笑いを浮かべて、

「あっ、呼んでました?ごめんです、考え事してて……」
「いいから、早く行きなさい。恵玲ちゃん来てるわよ!」
「えっ、恵玲!?」

 母親がため息をつきながら頷いている。
 私は慌てて部屋を振り返った。

 ――……汚すぎます…特にベッドが

 でも恵玲なら大丈夫だろう、と、私は一目散に玄関へと走って行った。――といっても、私の部屋は玄関のすぐ横なのだが。

「お待たせです、恵玲!」

 走りこんで勢いよくドアを開けると、思った通りしかめっ面の恵玲が立っていた。……その真っ黒な大きな瞳に睨まれると本気で足がすくむ。

「マジで待ったんだけど。あんた何、寝てたの?」
「いえ、考え事を……って、あ!!」

 私の視線はすごい勢いで彼女の右手に注がれていた。何やら紙の包みが2つ入ったビニール袋には、ピンクの文字で“おいしいクレープ屋さん”と書かれている。

 ――……これはっ、恵玲がドタキャンしたせいで食べ損ねた……!!

 考えていることが筒抜けの私の顔を見て、恵玲はさらにむっとした顔をした。この子は私といるときは基本そういう顔をしているので、さすがに慣れたが。

「せっかく早めに解散したから、クレープ買ってきてあげたのに」
「ごめんですー…って、解散って誰かと集まってたんですか?」

 てっきりこの間話していた“すごくかっこよくて優しい男の子”と2人で会っていたのかと思ったが、“解散”というとまるでグループで集まったような感じだ。というか、その男の子ともどこで知り合ったのかなど、詳細は聞かされていないのである。

 しかし、恵玲の反応はちょっと予想外のものだった。そんなに深刻な話題に持って行ったつもりは全くないのに、今度こそあからさまに不快な表情を浮かべて私から目をそらしたのである。

「どうでもいいでしょ、そんなこと!いちいち聞かないで!てか早く中に入れてよ!」
「――あ、そうでしたね」

 私は首をかしげながらも、彼女を部屋に招き入れた。その小さな背中から、はっきりとピリピリした空気を感じ取れる。よくはわからないが、地雷らしきものを踏んでしまったようだ。……ただし、一応言っておくと、彼女を怒らせるのはこれが初めてではない。小さい頃からの長い付き合いのため、それだけ何度も彼女の謎の地雷は踏んできたように思う。でも、わからないのだ。何に対して怒っているのか。毎回今のように「どうでもいいでしょ!」「あんたに関係ない!」とそう言われてしまうので、謎が謎のまま終わってしまうのである。

 本当にわからないことだらけだ、この子は、と私は彼女の後ろ姿を見てそう思った。彼女が私に素を見せてくれている、という自信だけはあるのだが……

「チョコバナナでいいよね」

 気付くと恵玲がベッドにもたれかかってクレープの入った包みを差し出していた。私は喜んでそれを受け取り、勉強机の椅子に腰かける。

「ありがとです。恵玲の、何味ですか?」
「ジェラート・イン・カフェモカ」
「……なんかそっち豪華ですねぇ」

 わざと恨めがましい視線を送ってみたが、やはり見向きもされなかった。私は気を取り直して、自分のクレープにかぶりつく。その期待以上のおいしさに、声にならない声を上げた。

 と、そこで突如昼間の男の子のことを思い出し、急いで口の中のバナナと生クリームを飲み込んだ。

「恵玲っ、私今日すっごいきれいな男の子に会ったのです」
「へぇ、どこで?」
「桜通りのとこの角です。すれ違っただけなんですけど」

 もう一口かみついて、私はぼんやりとその子の顔を思い出そうとした。金髪で、真っ白な肌で……それで……
 そこで、むむっと眉をひそめる。

 ――……私の記憶ってなんて曖昧なんでしょう……! もうぼんやりとしか思い出せません!

 というよりも、元々一瞬しか見ていないのだ。顔の細部まで覚えていないのは当然である。が、しかし、あれだけの衝撃を受けておいてはっきりと覚えていない、という現実は、本気でショックだった。自分でも驚くほど悔しい。


「もう一度会いたいですねー」


 恵玲がちらっとこちらに視線を寄こすのが分かる。そのまましんみりした空気が数秒続き、恵玲が確証も何も無しにぽつりと呟いた。



「……会えるんじゃん?」



 なぜかそれを聞くだけで、彼へと一歩近付けるような気がしていた。


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