コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- Enjoy Club =第1章完結=
- 日時: 2019/09/29 17:38
- 名前: 友桃 (ID: E616B4Au)
- 参照: キャラ絵のリンク外れてましたが、今貼り直してます!
あるとき、世界に謎の薬品がばらまかれた。
数年後、不思議な能力を身につけて生まれてきた子供達。彼らは仲間を求めて、ある結社に集結した。
彼らと接触した女子高生・亜弓は、結社内の混乱に次第に巻き込まれていく――
ファンタジー&シリアス要素ありのラブコメです!
クリックありがとうございますm(__)m
はじめまして、友桃(ともも)です^^
初投稿です>< 長編になるのですが、ちょっとずつ更新していきたいと思います。
よろしければ読んでみてください^^
*たまに記事のNo.飛んでいるところがありますが、残りの返信数を増やすために必要ない友桃のコメントを消しただけなので気にしないでください^^
〜お客さま〜
・花見さん ・かれーらいすさん ・十六夜さん ・貴也さん
・勿忘草さん(亮さん、扉さん) ・咲さん ・gojampさん ・詩音さん
・セピアさん ・杏樹.さん(真白ちゃん・そふとくりーむさん) ・ハッチしゃnさん ・ARMAさん
・遮犬さん ・ひろあさん ・白桃さん ・ゆかさん
・aguさん ・皐月凪さん ・(朱雀*@).゜.さん ・奈々☆さん
・ 蘭*。*さん ・山口流さん ・トレモロさん ・紅蓮の流星さん
・或さん ・ (V)・∀・(V)さん(十六夜さん) ・もちもちさん ・夜兎さん
・むーみんさん(椎奈さん) ・未来さん ・ゲコゲコさん ・てるてるさん
・こたつとみかんさん ・星ファン★さん ・そらねさん ・希蘭さん
・Eternalさん ・羅希さん ・霧雫 蝶さん ・あらびきペッパーさん
・抹茶.(小豆.)さん ・野宮詩織さん ・、璃瑚. さん ・ののさん
・友美さん ・亜美さん ・蜜姫. さん ・ネズミさん
・月読 愛さん ・紗夢羅さん ・黒揚羽さん ・優香さん
・ぱちもんさん ・Lithicsさん ・苺莢さん
読んでくださってうれしいですv ありがとうございますm(__)m
〜目次〜
※一気に読みたい方 >>0-1015
<第1章>
プロローグ >>0
第1話『謎の闇組織E・C』
(1)>>1 (2)>>2 (3)>>3 (4)>>5 (5)>>6
(6)>>10 (7)>>11 (8)>>13
第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』
(1)>>25 (2)>>30 (3)>>40 (4)>>46 (5)>>49
(6)>>50
第3話『我ら、麗牙光陰――』
(1)>>57 (2)>>58 (3)>>64 (4)>>70 (5)>>81
(6)>>86 (7)>>88,>>89 (8)>>98 (9)>>104,>>105 (10)>>108
第4話『あなたのために……』
(1)>>111,>>112 (2)>>120,>>121 (3)>>130 (4)>>136 (5)>>147
(6)>>152 (7)>>157 (8)>>166 (9)>>172 (10)>>180
(11)>>184 (12)>>188
第5話『不確かなもの』
(1)>>212,>>213,>>214 (2)>>256 (3)>>268 (4)>>285 (5)>>291
(6)>>306 (7)>>332,>>333 (8)>>346,>>347 (9)>>357,>>358,>>359 (10)>>370,>>371
第6話『衝撃の刻』
(1)>>397 (2)>>413,>>414 (3)>>425 (4)>>447,>>448 (5)>>474,>>475,>>476
(6)>>486,>>487 (7)>>518,>>519,>>520 (8)>>534 (9)>>557 (10)>>568
(11)>>576 (12)>>599 (13)>>627,>>628 (14)>>648 (15)>>696,>>697,>>698
(16)>>708,>>709,>>710
第7話『友を取り巻くモノ1』
(1)>>721 (2)>>726,>>727 (3)>>750,>>751 (4)>>784,>>785 (5)>>798
(6)>>813,>>814 (7)>>870,>>871 (8)>>>889,>>890
第8話『友を取り巻くモノ2』
(1)>>893 (2)>>901,>>902 (3)>>905,>>906 (4)>>910,>>911,>>912,>>913,>>914 (5)>>918,>>919
(6)>>923,>>924 (7)>>926,>>927 (8)>>931,>>932 (9)>>934 (10)>>936
第9話『混乱の夜明け』
(1)>>940,>>941 (2)>>945 (3)>>949 (4)>>955,>>956
エピローグ>>962
〜登場人物紹介〜
登場人物いちらん >>1015
あだ名 >>48
〜企画〜
≪第1回キャラ人気投票≫ 2010.8.27〜
結果>>225
≪第1回シーン人気投票≫ 2010.923〜
結果>>511
≪☆お客様方の小説紹介☆≫
第1弾 返信300突破記念 2010.9.25 >>304
第2弾 参照2000突破記念 2010.10.11 >>460
第3弾 参照3000突破記念 2010.11.18 >>661
≪返信400突破記念*E・Cラジオ*≫ 2010.10.6〜
NO.1 亜弓&恵玲 >>422
NO.2 恵玲&風也 >>495
NO.3 ウィル&白波 >>587
NO.4 亜弓&風也 >>676
NO.5 水希&茜 >>852
≪返信500突破記念 =キャラQ&A=≫ 2010.10.17
≪参照4000突破記念 =キャラ誕生秘話=≫ 2010.12.9
NO.1 >>743 NO.2 >>748
≪ Enjoy Club名言集*。* ≫ by 杏樹.さん 2010.9.25・26・28
杏樹さんがつくってくださいましたーv
ネタばれになるんで本編一通り読んでから、ぜひご覧になってください^^♪
杏樹さん本当にありがとうございました!!!
第1弾>>317 (友桃コメ>>319)
第2弾>>338 (友桃コメ>>341)
第3弾>>362 (友桃コメ>>364)
≪E・C(1章)紹介文≫ by ARMA3さん
>>992 2013.1.27
≪Christmas Short Story≫ 2010.12.19
>>773,>>774
≪Happy Birthday≫
5月…… (朱雀*@).゜.さん
11月17日……杏樹.さん >>654
みんなでお祝いしましょ♪
~小説大会~
2010年冬 大賞受賞★
2011年夏 銀賞受賞
みなさま、ありがとうございましたm(__)m
*2011.5.4 第一章完結
=Enjoy Club=
第1章
―プロローグ―
――熱い
燃えるように、煮えたぎるように身を焦がしていくモノは、先程注入した薬品か、はたまた我自身の高揚か……。体内に何か不可視の力がみなぎってくるのを、今全身で感じている。
目の前の金属の台に置かれているのは、たいていの科学者が用いているだろう多量の実験器具。その透明なガラスには幾色もの液体が沈み、わずかな振動で波紋を描いている。その隣には、青白い液の残った注射器が無造作に転がっていた。
興奮に身を震わせる私の隣に、線の細い少年が音もなく歩いてきて足を止めた。
「……」
台上の液体を見つめる顔は冗談でも健康的とは言えず感情も感じられないが、よく見るとまだ幼いことが分かる。眠っていないのか、黒くくすんだ眼元をごしごしとこすり、彼は黙って私に視線を向けた。
「君のお陰だ。君が手伝ってくれたお陰で、ようやく完成した……!」
この試みを始めてから8年という時が経過していた。寝る間も食う間も惜しんで、器具と薬品と毎日、毎日にらみ合い、無数に思えるほどの液体を調合し、実験をし、数値を示して再び薬品とのにらめっこ。長い、長い時だった。しかし何の組織にも属さない、2人というごく少数の科学者が8年で実験の成果を出す、ということは、あるいは幸運なことなのかもしれない。たった8年だった、というべきなのだろうか……。
何にせよ、実験は成功したのだ。私の努力がついに実を結んだのだ!
現実であることを確かめるように両の拳を力強く握ると、先程まで無言だった少年が、まだ声変わりしない声で囁くように言った。
「ぼく、……少しは“かげはる”様の役に立てた……?」
彼の至極純な気持ちが伝わってくる。はっきりと頷いてやると、少しはにこりとするかと思ったが、ごく僅かにも表情は動かない。
――この子は今何を感じているのだろうか
長きにわたる研究によって身に宿った、“透視”の能力。あらゆる障害物を無にし、普通視界に入るはずの無いはるか遠くにあるものをも見ることができる能力。しかしこの能力を持ってしても、人の心は、――彼の心は覗けない。
「――天音」
私は少年の目を覗き込んで、そう呼んだ。
「私と同じ、能力者になろう。そしていつかはこの薬を世界中にばらまいて――……」
試験管の中の色とりどりの薬品。それぞれが異なる性質のものであり、体内に入れたときにどのような能力を発するかは、今の段階では未知である。しかし、だからこそ、私は興奮するのだ。未知のものを追いかけたくなるのだ。
天音が一番手近にあった、桃色がかった液体を手で示す。私は満足感に笑みを浮かべた。
- Re: Enjoy Club ( No.930 )
- 日時: 2011/03/30 11:55
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: O/vit.nk)
@友桃さん
夜ゑちゃんゴスロリって可愛すぎるっ!!! ゴスロリ着てみたいなぁ…田舎じゃ完全に浮いちゃいますけどww
下橋の5人が戦ってるシーンとか見てみたいww クオリティ高すぎますけど; 夜ゑちゃんケンカできるんですね>< 意外ww
しーちゃん出番ないと読者からも下僕に成り下がっちゃうかもですよww← しーちゃん、頑張れwww
笑える小説ってどう書いたらいいんでしょう? 私も全然分かりません; そういうのって結構難しいですねよね; 私もシリアスになりがちですww
次から風也の出番ですね!! なんか久しぶりww
大学生よりも強いってなんかすごいなぁ…ww
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(8) ( No.931 )
- 日時: 2011/03/31 19:30
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
- 参照: 2ページです
風也に声をかけることができたのは、それから5日後のことだった。功のときのように呼び出すチャンスをなかなかつかめなかったのである。しかし、接触する機会が無くて焦り始めていた、ある平日の学校帰り。1人で下橋駅のホームを踏んだ有衣が、運良く同じ電車から降りようとする風也の姿を目で捉えたのだ。しめた、と内心ガッツポーズをした有衣は、隣の車両から出てきた風也の細い肩を勢い良くつかみ、そのまま有無も言わさず再び電車の中に引きずり込んだのである。風也が驚いて声を上げているが構わない。発車後、誰か厄介な人に見られていないかと窓越しにホームを見、誰もいないことを確認した有衣は、視線を下ろして思わず吹き出してしまった。
風也が遠ざかって行く下橋駅を窓越しに見つめ、やがて外と有衣とをぽかんと口を開けて交互に見だしたのである。小学生と外見上大差のない風也がやると、それは随分と可愛らしい動作だった。しかし彼の目が徐々につりあがっていくのを見て、有衣はやや顔をひきつらせ、すぐに顔の前で音を立てて手を合わせたのだ。自分がやった突発的な行為と、今さっきの彼の驚いた幼い表情を思い出して、口元が緩むのは抑えられなかった。
「悪ぃ、ちょっとだけ付き合って」
ついでに一瞬だけ片目を瞑る。それでも相変わらず警戒心むき出しの風也。年上の有衣相手にもひるむ様子はなく、むしろ反発しているような雰囲気さえ感じた。きっと年上ということで雄麻の取り巻き達といっしょくたに考えているのだろう。有衣からすればそれは迷惑極まりないことなのだが、そう思ってしまうのも仕方のないことだろう。やがて風也はむっとした表情のまま視線をそらし、ただ黙って窓の外の景色に目をやっていた。それを無言の承諾と受け取った有衣は、ほっと胸をなでおろして同じように景色を眺めていた。
昼時も過ぎ、太陽が最も活発になる時間帯。授業が午前中で終わった有衣は例外として、世間のほとんどの学生はまだ教室で授業を受けている。午後出勤の会社員だって、こんな半端な時間にはそう出まい。そのせいか、いま乗っている電車はラッシュ時と比べると驚くほどにすいていて、少しさみしいくらいだった。もちろん席も空いているが、すぐ次の駅で降りるつもりなので、入口の脇に立ったままである。行き先を知らないはずの風也も、何も言わずに突っ立っている。
電車が一定間隔で揺れ、そのたびに大きな部品が跳ねるような音が繰り返される。その音は後ろの車両の方に、こだまのように広がっていく。この揺れが苦手な人もいるのだろうが、電車に慣れている有衣としてはちょっとくらい揺れていないと、逆に違和感を感じてしまいそうだった。例えば仮に、電車が氷を滑るようにスムーズに走って行ったら……それはそれで気持ち悪いと思うのだ。完全に有衣の個人的な意見だが。
なぜかそんなどうでもいいようなことを考えながら、電車の適度な揺れに身を任せ、腕を組んで外を見つめる。電車はものすごいスピードで走っているはずなのに、窓の向こうの景色は有衣の感覚よりもずっとゆっくりな速度で流れていく。視線を建物に合わせてずらしていけば、ほぼ静止したような状態で見れるくらいだ。それがいつも不思議で少し面白くて、有衣はつい真剣に窓の向こうに意識をやってしまう。最初は下橋のぼろくて辛気臭い建物が見えていた外の景色も、すぐにごく普通の住宅街に変わっていき、一気に空気まで澄んできたように見えた。同時に電車が速度を落としていく。ひと駅だとやはり短い。
有衣は風也に目配せして、組んでいた腕を解いた。滑るように、電車がホームに入っていった。
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(8) ( No.932 )
- 日時: 2011/03/31 19:32
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
「オレンジジュース2つ」
駅前のファーストフード店に入り一番奥の席に腰かけた有衣は、やってきたウェイトレスに早速注文をした。そうしてさっさと邪魔者を追い払い、正面に座る風也に目を向ける。
彼は頬杖をついてこちらから視線をそらし、ちょっとふてくされた様子だった。電車に引きずり込んだときに見せた可愛らしい表情なんか、微塵も残っていない。どちらかというと、至近距離に見る彼の顔は随分と大人びて見えた。拗ねた表情をしているのに、だ。あまり明るい印象はもたらさない、妙に凪いだ瞳がそうさせるのかもしれない。不意打ちで驚かせないとあの可愛い顔は見れないのか、と有衣は軽く舌打ちしそうになった。
それにしても、と有衣はちょっと眉をひそめて彼の服装に意識をやった。今は平日の昼間。それなのに、彼は私服姿だ。学ランではなく。意味もなく自分の制服姿を確認した有衣は、本題に入る前にす……と目を細めて言った。
「お前……学校は?」
こちらを振り返り、あからさまに嫌な顔をする風也。つり目のせいか不機嫌さが際立っている。
それ以前に風也は自分のことを知っているのだろうかと突如不安になった有衣に、彼は不愉快さをはっきりと声ににじませて言ったのだ。まだ声変りはしていないためよく響きそうな高めの声だった。
「まさかこんなところまで連れてきて説教っすか、おばさん」
「おば……っ」
反射的に愕然とした声で繰り返してしまった。おそらく今までの人生で一度も言われたことのないだろう言葉だ。あまり気の長い方ではない有衣は、即座に身を乗り出し彼の胸ぐらを力任せにつかんでいた。
「てめぇざけんな誰がおばさんだ……っ。こっちはまだピチピチの高校せ――」
「高校生には見えないっすけど」
「おっ前マジでケンカ売ってんのか!! バリバリ制服着てんじゃんか!!」
自分のブレザーの襟をひっつかんで風也に見せつける。それを冷めた目で眺める風也。胸ぐらを本気で掴まれたままだと言うのに、全く動じる様子がない。動じているのはどちらかと言うと周りの客の方だった。言い合いの内容に失笑をもらしている人も中にはいたが。
しかしすぐに1人で熱くなっているのがバカらしくなって、有衣はつかんでいた手を乱暴に放した。浮かせていた腰を落ちつけて、苛立ちを押さえるために彼から目をそらす。
するとタイミングを見計らっていたかのように飲み物が運ばれてきた。久し振りに飲むオレンジジュースである。有衣は少々やけになってストローに口をつけると、すごい勢いでそれを飲み干してしまった。荒々しい動作でテーブルに空のカップを戻し、風也に睨むような目を向ける。彼はこちらの視線に気が付いていないのか、両手でカップを持ち、気持ち目を伏せてジュースを飲んでいた。男性にしては長いまつげ。しかもそのカップの持ち方が妙に可愛くて、有衣は内心パニックになっていた。
――……どーしよコイツ、めちゃくちゃ生意気だけどめちゃくちゃ可愛い……!!
隣に夜ゑなんかがいたら、黄色い声で騒ぎ立てている状況である。
しかしずっとそんなことを考えているわけにもいかず、有衣はそろそろ本題に入ろうと、かしこまるように椅子に座り直した。風也もそれを察してくれたのか、飲みかけのカップを静かに脇に置く。テーブルに当たる時の少し甲高い音が、2人の間に緊張した静寂を生み出す。周りの喧騒が一気に遠くなった。その雰囲気のせいか、やや体を固くした風也に、有衣は功のときのように率直に尋ねた。
「トップを追いだす反乱に、協力する気はねぇか?」
反応は、功とはまったく違っていた。つまり、驚愕に目を見張ったのである。戸惑うような声が漏れ、ついで彼は変なことを聞いたという風に眉をひそめた。その動揺はまさしく、下っ端扱いの小中学生に十分起こりうる反応だった。そもそもあの雄麻を追いだす、ということ自体が、彼らにとってはとてもではないが想像のつかないことなのである。“変える”だなんて大それたことはまず思いつかず、今の状況に妥協してしまうことがほとんどなのだ。
風也もそうなのだろう。今までの冷めた表情は薄れ、代わりに戸惑いが彼の顔にはっきりと表れていた。
「追い出すって……そんなこと、本当にできるんすか?」
有衣はその問いには答えず、じっと彼の顔を見返すのみ。そらすことなく、真っ直ぐに。そうしてトーンを押さえた声で、しかし力強く言う。
「下橋を変えたいか……それともこのままでいいか」
風也の表情に強い意志が宿った。テーブルの下で両のこぶしを握ったのが、小さな肩に力が入るのを見てわかった。
「変えたい、オレは……。変えられるんなら。――よく皆とも話してた。もっとアットホームなところがいいって。なんか皆色々うまくいかなくて、発散できるところが欲しくて、悩みを言い合える人が欲しくて、衝動的に下橋なんて所に来ちゃったけど……入ってみたら周りの空気に流されてもっと暗い気持ちになるだけだったって。悩みを話すっているより、愚痴とか悪口を言い合ってる感じで、自分がもっともっと堕ちて行くような気がするって」
彼が実感を込めて言うことは、まさに有衣の気持ちとも重なっていた。名家のお嬢様として育った有衣が、自分の意志の通らない、自分の知らないところで様々な物事が決まっていく家のやり方に、自分より立場の低い家の人を見下すような態度をとる名門学校のクラスメートに、そしてそれらをどうすることもできずただ言われることをしていただけの自分自身に強い嫌気がさして、それまでの生活とは全く関係のない、そして居心地のいい場を求めて下橋にやってきた、有衣の気持ちと……。
自然と、有衣の口から言葉がこぼれた。
「お前は……どうしてきたんだよ、下橋に」
す……と落とすように目を伏せる風也。そのまま唇を噛んで、何も言わずにテーブルのある一点を睨む。短く整えられた眉が、心なしか辛そうに歪んでいる。
すぐに有衣の方から、「やっぱなんでもない。関係のない話だったな」とその話題を引いた。目を上げた風也が、やはり無言のまま有衣を見る。唇が固く引き結ばれている。
「……そのうち話せよ」
有衣が視線をそらしながら言うと、彼はしぶしぶだが頷いてくれた。
そして有衣は本題に戻り、他に参加するメンバーを彼に伝えた。名前を言ってもわからないかもしれないという懸念は全く無用で、彼は記憶力のいいことに皆の顔と名前をすぐに一致させていた。下橋に加入した当初にざっと名前を紹介されたくらいで、その後はまともな接点など無かったはずなのに。そして芝崎功の名前が出た時の反応は特に早く、予想外の名前に顔色を変えていた。
「芝崎さんって、あの人大学生じゃないすか! しかもトップの取り巻き……。確かに他の取り巻き達とは違う感じだったけど、でも反乱に協力なんて……」
「まぁ要は、アタシらが思ってた以上に後藤達とソリがあってなかったわけだ、芝崎さんは」
言いつつ口元に笑みが浮かんでいた。もちろん、同世代と気が合わなかったことへの嘲笑ではない。むしろ、気が合わなかったからこその芝崎功への好感からきた笑みだった。
一応理解はした様子の風也は、話の先を目で求める。有衣はうなずいて、この間功も加えて4人で話した内容を、ほぼそのまま彼に伝えた。もちろん、風也の本当の力量が重要だということも。それをジュースを飲みながら聞いていた彼は、「よくこんな新人覚えてたな」と独り言を呟いたのみで、そのほかの部分には特に驚く様子も見せなかった。その落ち着いた様子が、彼がいつもは手加減しているのではという疑惑を肯定しているように見えて、有衣は徐々に体の内から熱いものが湧きあがってくるのを感じていた。彼女の中で、トップ後藤雄麻への抵抗が、現実に近付きつつあったのだ。そしてひと通り話が終わった後も、整然とした表情を崩さず目にも強い光を灯したままの風也を見て、有衣の心から迷いが消えていた。
そしてそこに駄目押しの、風也の力強い首肯。
「そのトップの取り巻き共は……オレが皆どうにかします」
彼の大胆な台詞に有衣は目を見開いたが、すぐにその顔にじわじわと笑みを広げていった。
「頼んだぜっ」
自然と、溌剌とした調子で出てきた言葉。自然と生まれてきた、胸の内の爽快感。
相手が年下の中学生であることも忘れて、有衣はこの瞬間心の底から彼を頼りに感じていた。
- Re: Enjoy Club ( No.933 )
- 日時: 2011/04/03 12:49
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
月読 愛さん>
初めましてな気がしませんが、はじめましてww笑 コメありがとうございます!!
や、返信数も多いんで(ほとんど自分のだし)参照は大した数じゃないんですが^^; でもそう言っていただけてうれしいですww
構成とキャラ……気に入っていただけたようでww よかったです、ほんと^^!! この先の話もそういう風に言っていただけるように、がんばりますっww
お邪魔なんかじゃ全然ありませんっ、ぜひ?また来てやってください!! 友桃が泣いて喜びますので←
またのご来訪お待ちしておりまs…(←黙;
改めてコメありがとうございましたー^^
(朱雀*@).゜. さん>
朱雀さんのゴスロリ見てみた…(←黙; てかその前に朱雀さんの顔を見てm(殴蹴
某友人〜夜ゑのゴスロリ描いてー!!←←
下橋の5人がたたかってるところはそのうち書けると思いますww てか一応書く予定ww あ、てか5人がたたかってるとこって、もしかして5人vs他じゃなくて、5人の中でってことですか?(風也vs功とか?) もしそっちだったら……う〜ん、そういう場面はあるんだろうか……←
そーいやしーちゃんあの子あんまり目立ってない!!笑 このままじゃ可哀そうだ、どうにかしよう!!←
とりあえず作者からはそろそろ下僕扱いになっちゃいそうでs…(←黙;
うん、なんかかっこいいシーン書いてあげないとな←← あれ、なんか私しーちゃん相手だと上から目線(笑
ギャグ小説は恋愛小説と同じくらい苦手です。書ける人うらやまww
てかシリアスの方が好きだから、シリアスばっか書いちゃうのかも>< 少なくとも私は。
風也は強いですょまぢでww 能力者のえれさまに対抗できるくらいなんで!!
下橋のヒーローでございます……(ぇ
それではコメありがとうございましたー(^^)
またぜひ?いらしてくださいww
独り言>
今回の話、いちだんとテンポ悪いうえに、なんか地の文書くのめんどくさくなって手抜いちゃいました(←ォィ;
ごめんなさい><
- Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(9) ( No.934 )
- 日時: 2011/04/03 12:48
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)
「――まぁそんなこんなで、今のトップ5――風也と功と伸次、それから夜ゑとアタシが集まったわけだ」
それまでの固い真剣な空気を振り払うように、有衣が軽い口調でそう言った。有衣と夜ゑの熱い語りはお世辞抜きに上手くて、思わずこちらまでが本気になって、革命に向け気持ちを奮わせてしまった。まるで自分がその場にいたような気分だ。膝の上で握ったこぶしが、いつの間にかうっすらと汗ばんでいる。私が興味津々な様子で話を聞くのを、2人は満足げに口角を上げながら見ていた。
革命の中心メンバー集結後、5人はこっそりメールアドレスを交換し、メールで連絡を取り合った。そして有衣ら言いだしっぺ3人が反乱仲間を探す一方で、風也と功は学校に行くふりをしてこっそりケンカの特訓をしていたらしい。大学生対策だったそうだ。
だんだん革命に向け本格的に動き出してきた昔話に、「ほぇ〜」と感嘆と尊敬の入り混じった声がもれた。頬が熱い。私は目を輝かせて、話の続きを催促した。ここまでいったらもうクライマックスだ!
「それで、その後はどうなったんですか? 革命当日とか!」
声が弾む。小さなテーブルに肘をついて、気持ち身を乗り出す。
するとなぜか突然、有衣に思いっきり爆笑された。ポカンと口を開け疑問符を浮かべた顔で有衣を見ると、彼女は目じりをぬぐいながら笑いの収まらない状態で言ったのだ。
「そっれがよぉ、革命当日はほっとんど風也が大学生片付けちまって特別話すことねぇんだ! なんつーか期待以上の働き? あの時の後藤の唖然とした顔ときたら、ほんとマジ笑いが止まらね……っ」
ついにはテーブルをバンバンと叩きだす。その“後藤の唖然とした顔”が具体的にわからない私は、彼女がなぜそこまで笑えるのかがいまいちピンとこなかったが、とにかく風也の活躍がすごかったということだけはわかって誇りに似た思いを感じていた。実際に見てみたかった気もするが。
夜ゑも手で口元を隠しながら、肩を震わせ笑っている。
「後藤達、敵わないってわかって自分から下橋出て行ってくれたしね」
「でもアイツら、その後また別の地域のグループ入って時々下橋にもケンカ売ってくんじゃん! 懲りねぇよなーっ、ほんと」
なんだか盛り上がっている2人に置いてきぼりをくらったようでついきょときょとと視線をさまよわせてしまったが、2人とも体を震わせるほどに笑っているので、だんだんとこっちまで楽しくなってきてしまった。つられて笑い声をもらす私に、有衣がひーひ―言いながら続きを話してくれる。
「それで……っ、その後は誰がリーダーになるかで、もめたんだけどよっ。アイツ、えっと功が、……自分リーダーやる柄じゃないしケンカあっちのが強いからって、風也にゆず……っ、けほっ、たんだ……けほっ、ひー腹いてーっ」
「ちょ、大丈夫ですか有衣ねーさん!?」
「有衣は笑いすぎー。何がそこまでツボだったの」
「わっかんねーっ」
顔を伏せて笑いを止めようとする有衣。背中ほどまである、大きくふんわりと波打った豪奢な髪が紅潮した頬まで覆っている。妖艶な大人っぽい外見をあおっているその茶髪を見、私はその視線をアルバムの写真に移した。高校の制服姿の彼女は、今とは全く雰囲気が変わって前下がりのボブにしている。同じ茶髪でも、高校生の頃の方が色がずっと明るく、金に近い。高校から髪をずっと伸ばしていたんだなとぼんやりと考えながら、その視線を今度はまた別の写真――夜ゑとその友人らしき女の子が映っている写真に向けた。その写真の中の夜ゑも、今とは全く違う長い髪。しかも強く巻いている。そしてその隣に映っているのが、革命の話には一度も出てこなかったポニーテールの見知らぬ女の子。カメラに向かってピースをつきだしている。よく見ると、とても目力の強い、はっきりとした顔立ちをしていた。
私の視線が謎の少女のところで止まっているのに気が付いて、夜ゑがふっと微笑んだ。
「その子は園香っていって、あたしの中学のときからの友達なの。高校からは離れちゃったけど、今もたまに会ってるんだ」
私はアルバムから顔を上げ、彼女に尋ねた。
「下橋とは関係のない人なんですか?」
「うん、高校のときの写真だから置いといただけ」
納得して頷き視線を戻すと、夜ゑが一緒にその写真を覗き込んでくる。両腕で頬杖をつきながら、次はいつ会えるかな、と期待するような声で独り言をもらす。
するとようやく笑いの収まった有衣が、じっと写真に視線を落とす私達に声をかけた。
「そろそろ下戻らねぇ? 話ひと段落したし」
私達はそろって顔を上げ、もちろん同意をし席を立った。夜ゑがアルバムを閉じるのをちょっと名残惜しく思いながら見つめ、それからぐるっとこの物置部屋を見回す。衣類が置いてあるせいか、生活のにおいがこの部屋からは感じられる。
ドアのところにいる有衣に手招きされて慌てて部屋を出ると、電気を消した有衣が私を振り返って、今の下橋の生活のことをざっと教えてくれた。
今下橋には小学生から大学生が50人近く通っていて、皆学校や部活が終わると下橋の自分の所属するグループに帰ってくる。有衣達なら、緋桜の家――つまり、ここに帰ってくるわけだ。
「下橋に帰ってからは皆好きなことやってるかな。駅前の広場で遊んでる奴もいれば、家でおやつ食べて喋ってる奴もいる。ケンカ強くなりたくて練習してる奴も。もちろん、グループ同士で対戦しようぜ的なときは、ほぼ全員広場に集まったりもするんだけどな」
そして、他の地域の不良グループと比べて、下橋特有の過ごし方と言えるのが、“勉強”だった。テスト前になると、それぞれの家に作られている勉強部屋で問題集と格闘する人が出てくるらしい。しかも、わからない問題があればその場で大学生に聞ける。特に緋桜には、英才教育で育った元お嬢様の有衣がいるのだ。
有衣がお嬢様育ちだと知って心底驚いた私は、呆気にとられて彼女の顔を凝視していたが、全く気にもされずに話は進んだ。
「若干塾みたいになってるけどな、テスト前に限っては。とにかく今の下橋では、“真面目に勉強してやがる、だっせー”って言った奴は逆に白い目で見られるね。まぁこれはたぶん、アタシらの影響なんだけど」
「その“アタシら”にあたしと伸次は含まれないからねー。勉強嫌いだもん」
さりげなく夜ゑが口を挟んだ。確かに嫌そうに唇を尖らせている。
私はそれに深く賛同して何度もうなずこうとし、そこで突然、
「あーっ!!」
おそらく下橋に来てから最も大きな声を上げていた。何事かと目を見開いて振り返る有衣と夜ゑに、私は泣きそうになりながら声を震わせて訴えた。
「つ、追試……っ。追試の存在忘れてたのですー!!」
廊下中に響き渡る、嘆きの声。
有衣が憐れむような表情を浮かべ、空笑いをもらしていた。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198