コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Enjoy Club  =第1章完結=
日時: 2019/09/29 17:38
名前: 友桃 (ID: E616B4Au)
参照: キャラ絵のリンク外れてましたが、今貼り直してます!

あるとき、世界に謎の薬品がばらまかれた。
数年後、不思議な能力を身につけて生まれてきた子供達。彼らは仲間を求めて、ある結社に集結した。
彼らと接触した女子高生・亜弓は、結社内の混乱に次第に巻き込まれていく――

ファンタジー&シリアス要素ありのラブコメです!


クリックありがとうございますm(__)m
はじめまして、友桃(ともも)です^^
初投稿です>< 長編になるのですが、ちょっとずつ更新していきたいと思います。
よろしければ読んでみてください^^


*たまに記事のNo.飛んでいるところがありますが、残りの返信数を増やすために必要ない友桃のコメントを消しただけなので気にしないでください^^


〜お客さま〜
・花見さん ・かれーらいすさん ・十六夜さん ・貴也さん 
・勿忘草さん(亮さん、扉さん) ・咲さん ・gojampさん ・詩音さん 
・セピアさん ・杏樹.さん(真白ちゃん・そふとくりーむさん) ・ハッチしゃnさん ・ARMAさん
・遮犬さん ・ひろあさん ・白桃さん ・ゆかさん
・aguさん ・皐月凪さん ・(朱雀*@).゜.さん ・奈々☆さん
・ 蘭*。*さん ・山口流さん ・トレモロさん ・紅蓮の流星さん
・或さん ・ (V)・∀・(V)さん(十六夜さん) ・もちもちさん ・夜兎さん
・むーみんさん(椎奈さん) ・未来さん ・ゲコゲコさん ・てるてるさん
・こたつとみかんさん ・星ファン★さん ・そらねさん ・希蘭さん
・Eternalさん ・羅希さん ・霧雫 蝶さん ・あらびきペッパーさん
・抹茶.(小豆.)さん ・野宮詩織さん ・、璃瑚. さん ・ののさん
・友美さん ・亜美さん ・蜜姫. さん ・ネズミさん
・月読 愛さん ・紗夢羅さん ・黒揚羽さん ・優香さん
・ぱちもんさん ・Lithicsさん ・苺莢さん

読んでくださってうれしいですv ありがとうございますm(__)m


〜目次〜

※一気に読みたい方 >>0-1015

<第1章>

プロローグ >>0

第1話『謎の闇組織E・C』
(1)>>1 (2)>>2 (3)>>3 (4)>>5 (5)>>6
(6)>>10 (7)>>11 (8)>>13

第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』
(1)>>25 (2)>>30 (3)>>40 (4)>>46 (5)>>49
(6)>>50

第3話『我ら、麗牙光陰――』
(1)>>57 (2)>>58 (3)>>64 (4)>>70 (5)>>81
(6)>>86 (7)>>88,>>89 (8)>>98 (9)>>104,>>105 (10)>>108

第4話『あなたのために……』
(1)>>111,>>112 (2)>>120,>>121 (3)>>130 (4)>>136 (5)>>147
(6)>>152 (7)>>157 (8)>>166 (9)>>172 (10)>>180
(11)>>184 (12)>>188

第5話『不確かなもの』
(1)>>212,>>213,>>214 (2)>>256 (3)>>268 (4)>>285 (5)>>291
(6)>>306 (7)>>332,>>333 (8)>>346,>>347 (9)>>357,>>358,>>359 (10)>>370,>>371

第6話『衝撃のとき
(1)>>397 (2)>>413,>>414 (3)>>425 (4)>>447,>>448 (5)>>474,>>475,>>476
(6)>>486,>>487 (7)>>518,>>519,>>520 (8)>>534 (9)>>557 (10)>>568
(11)>>576 (12)>>599 (13)>>627,>>628 (14)>>648 (15)>>696,>>697,>>698
(16)>>708,>>709,>>710

第7話『友を取り巻くモノ1』
(1)>>721 (2)>>726,>>727 (3)>>750,>>751 (4)>>784,>>785 (5)>>798
(6)>>813,>>814 (7)>>870,>>871 (8)>>>889,>>890

第8話『友を取り巻くモノ2』
(1)>>893 (2)>>901,>>902 (3)>>905,>>906 (4)>>910,>>911,>>912,>>913,>>914 (5)>>918,>>919
(6)>>923,>>924 (7)>>926,>>927 (8)>>931,>>932 (9)>>934 (10)>>936

第9話『混乱の夜明け』
(1)>>940,>>941 (2)>>945 (3)>>949 (4)>>955,>>956

エピローグ>>962


〜登場人物紹介〜
登場人物いちらん >>1015
あだ名 >>48


〜企画〜

≪第1回キャラ人気投票≫ 2010.8.27〜
結果>>225

≪第1回シーン人気投票≫ 2010.923〜
結果>>511

≪☆お客様方の小説紹介☆≫
第1弾 返信300突破記念 2010.9.25 >>304
第2弾 参照2000突破記念 2010.10.11 >>460
第3弾 参照3000突破記念 2010.11.18 >>661

≪返信400突破記念*E・Cラジオ*≫ 2010.10.6〜
NO.1 亜弓&恵玲 >>422
NO.2 恵玲&風也 >>495
NO.3 ウィル&白波 >>587
NO.4 亜弓&風也 >>676
NO.5 水希&茜 >>852

≪返信500突破記念 =キャラQ&A=≫ 2010.10.17

≪参照4000突破記念 =キャラ誕生秘話=≫ 2010.12.9
NO.1 >>743 NO.2 >>748

≪ Enjoy Club名言集*。* ≫ by 杏樹.さん 2010.9.25・26・28
杏樹さんがつくってくださいましたーv
ネタばれになるんで本編一通り読んでから、ぜひご覧になってください^^♪
杏樹さん本当にありがとうございました!!!

第1弾>>317 (友桃コメ>>319
第2弾>>338  (友桃コメ>>341)
第3弾>>362 (友桃コメ>>364

≪E・C(1章)紹介文≫ by ARMA3さん 
>>992 2013.1.27

≪Christmas Short Story≫ 2010.12.19
>>773,>>774

≪Happy Birthday≫
5月…… (朱雀*@).゜.さん
11月17日……杏樹.さん >>654
みんなでお祝いしましょ♪


~小説大会~
2010年冬 大賞受賞★
2011年夏 銀賞受賞
みなさま、ありがとうございましたm(__)m

*2011.5.4 第一章完結





=Enjoy Club=



第1章




―プロローグ―



――熱い


 燃えるように、煮えたぎるように身を焦がしていくモノは、先程注入した薬品か、はたまた我自身の高揚か……。体内に何か不可視の力がみなぎってくるのを、今全身で感じている。
 目の前の金属の台に置かれているのは、たいていの科学者が用いているだろう多量の実験器具。その透明なガラスには幾色もの液体が沈み、わずかな振動で波紋を描いている。その隣には、青白い液の残った注射器が無造作に転がっていた。
 興奮に身を震わせる私の隣に、線の細い少年が音もなく歩いてきて足を止めた。

「……」

 台上の液体を見つめる顔は冗談でも健康的とは言えず感情も感じられないが、よく見るとまだ幼いことが分かる。眠っていないのか、黒くくすんだ眼元をごしごしとこすり、彼は黙って私に視線を向けた。

「君のお陰だ。君が手伝ってくれたお陰で、ようやく完成した……!」

 この試みを始めてから8年という時が経過していた。寝る間も食う間も惜しんで、器具と薬品と毎日、毎日にらみ合い、無数に思えるほどの液体を調合し、実験をし、数値を示して再び薬品とのにらめっこ。長い、長い時だった。しかし何の組織にも属さない、2人というごく少数の科学者が8年で実験の成果を出す、ということは、あるいは幸運なことなのかもしれない。たった8年だった、というべきなのだろうか……。
 何にせよ、実験は成功したのだ。私の努力がついに実を結んだのだ!
 現実であることを確かめるように両の拳を力強く握ると、先程まで無言だった少年が、まだ声変わりしない声で囁くように言った。

「ぼく、……少しは“かげはる”様の役に立てた……?」

 彼の至極純な気持ちが伝わってくる。はっきりと頷いてやると、少しはにこりとするかと思ったが、ごく僅かにも表情は動かない。

 ――この子は今何を感じているのだろうか

 長きにわたる研究によって身に宿った、“透視”の能力。あらゆる障害物を無にし、普通視界に入るはずの無いはるか遠くにあるものをも見ることができる能力。しかしこの能力を持ってしても、人の心は、――彼の心は覗けない。


「――天音あまね


 私は少年の目を覗き込んで、そう呼んだ。

「私と同じ、能力者になろう。そしていつかはこの薬を世界中にばらまいて――……」

 試験管の中の色とりどりの薬品。それぞれが異なる性質のものであり、体内に入れたときにどのような能力を発するかは、今の段階では未知である。しかし、だからこそ、私は興奮するのだ。未知のものを追いかけたくなるのだ。

 天音が一番手近にあった、桃色がかった液体を手で示す。私は満足感に笑みを浮かべた。

Re: Enjoy Club  キャラQ&A ( No.514 )
日時: 2010/10/18 23:08
名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)

うわ、シーン投票するの忘れてました(-ω-`;)
申し訳ないです……orz
遥声のシーンですか。私もあのシーン好きです。
なんか"ヒア"って響きが好きです(・ω・´)←

Q&A、質問してみようかな……。よし、しよう(
うちの【Character's profile】から引用しますww

 友桃さんと主要キャラクターさま達に。
Q「あなたの愛するものは?」

変なQですいません。「I Love...」の所を引用((
考えろって話ですよねスイマセン……orz
"もの"は、人でも物でも動物でも、何でもいいです。
是非答えてくださいーm(_ _ )m

遥声1位!! ( No.515 )
日時: 2010/10/19 00:18
名前: ARMA ◆80E.zojjrI (ID: N9MWUzkA)

こんばんは〜!
遥声のシーントップでしたねぇ!!
今読み返しても感激しますよぉ!!

でも、"遥声"を入力するのって、変換が難しいとかいうレベルじゃないですね。。。
いつも"はるかこえ"->「変換」->「"か"をBSで削除」とかやってたりします、、、(読み登録しとけよっ)

>友桃さん
かなり遅れてしまいましたが、心に相手を思い浮かべて叫びます。

!!!500レスおめでとうございます!!
(すっかり言いそびれてた...)<-ここ遥声じゃないです

ご本人が直々に500レス突破のコメつけて下さってたのに...、スンマセン。
にしても、お祝いする暇がないくらいコメ&参照の増加が激しいかも...。

> (朱雀*@).゜. さん
"部活はしているんでしょうか???"
入部は何回かしたことはあるんですが、どの部にしても即刻幽霊になって、続かなかったですねぇ。。

あ、これ質問してみよ。
>(作品の)E.Cの皆さんへ
入ってみたいなぁっていう部活ありますか???
既に現役の人(水kとか)は、兼部してみたいなぁってところで結構ですっ。


それでは、またぁ〜。

Re: Enjoy Club ( No.516 )
日時: 2010/10/19 21:04
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: N9MWUzkA)


こっ、こんなにリクが来るとはまぢで思ってなかった……!!!www
みなさん、ありがとうございますっwww


まずゎ。。。

朱雀さん>

友桃:1番好きなのはゎ、断っ然オムライス!!!www まぢオムライス神っwww(ぇ
あとゎ、エビフライとドリアが2番争ってる感じですねー^^
なんか全体的に子供っぽいとかゆーのは無しな感じでお願いしますwww笑←

あと嫌いなのはエビ!!(ぇ 
エビむりっ>< エビフライゎ大好きなんだけどなぁ。。。←
あとアワビとかウニとかイクラとか……
あ・豆類も無理です(泣;
私も同じく好き嫌い激しい感じ(汗;

でわ?
キャラの方を。。。
ごめんなさい、ラジオにしようがないので箇条書きで!!


・亜弓(好)チョコ、ケーキ、グラタン、オムライス
   (嫌)ピーマン
    ……考えたこと無くて今一生懸命でっちあげたとかいうのは内緒な感じでww←←

・恵玲(好)クレープ!!(←こっちはちゃんと考えてありました(笑)、なんとなくすごいカニすきそうww
   (嫌)この子基本なんでも食べそうだなぁ。。。ww

・風也……打った瞬間、こいつ好き嫌い激しいぞ〜と思ってしまった……ww ごめん、風也っちwww←
  (好)……??← 普通の家庭料理が好きそうだな、なんとなく……。野菜とかちゃんと食べてそうww 昼ご飯はいつもパンですww
  (嫌)嫌いなもの多そうだけど、いざ考えると浮かばないっていう(笑 とりあえず納豆は食べなさそうww笑

・ウィル(好)あんみつ!!(←ちゃんと決まってました♪)、甘いもの全般、故郷イギリスの食べ物
    (嫌)基本なんでも食べます

・白波(好)ワイン←←
   (嫌)好きも嫌いも特にありません^^;

・水希(好)お菓子全般
   (嫌)にがいもの苦手そう>< ゴーヤとか;

あとは元々考えてあった人だけ。。。

・功……下橋のサブリーダーですよー♪
   (好)コーヒー   
   (嫌)甘いもの(チーズケーキは許容範囲)

・有衣(好)肉!! てかバーベキュー大好きっww

・夜ゑ……下橋の子ですよー
   (好)甘いものと可愛いものに目がありませんww

・まさかの影晴ww(好)コーヒーのブラック

・たぶん忘れられているだろう天銀ww(好)好きっていうかよく飲むのは紅茶のストレート



見にくいですねっ><!!
ごめんなさい(泣;
とりあえずはこんな感じでどうでしょうww



Enjoy Club 第6話『衝撃の刻(とき)』(7) ( No.518 )
日時: 2011/05/01 07:36
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: AEu.ecsA)

 恵玲と白波が水族館で憩いの時間を過ごしているだろう時、ウィルは出来得る限り人通りの少ない道を選びながら、“ある場所”へと向かっていた。

 ――……影晴様、金髪くんのことかなり警戒してるなぁ……

 正直、ため息をつきたい気分である。

 彼が向かっている場所は、不良のたまり場として知られている下橋。つまり、以前小松家での騒動のときに対峙した紫苑風也が住み着いている場所である。

 影晴は、麗牙光陰との対面の話の後に、まるでおまけを付け足すかのような軽い調子でウィルに任務を課したのだ。“紫苑風也のいる下橋という地域を少し調べてきてほしい”と。

 ウィルはその台詞を聞いた途端、過去を振り返って様々な後悔に駆られてしまった。
 なぜあの時、流れ……というよりも気分に任せて“麗牙光陰”を名乗るなどという軽率な行動をとってしまったのか。そしてそもそもなぜ、恵玲の予告状を送るという危険すぎる提案を飲んでしまったのか、と。

 しかし今更後悔して嘆いてももちろん遅いわけで、ウィルはせめてこの任された任務をきっちりこなそうと、下橋へと向かっているのだ。

 ただ1つ、ウィルには正直疑問に思う点があった。

 どうしてこのタイミングなのか。なぜわざわざあの事件から数ヶ月がたった今、この任務を自分に課すのか。はっきり言って、紫苑風也という人物を警戒しているのなら、事件後1週間くらいですぐに調査にいってもいいような気がするのだ。
 それにそもそもウィルは任務報告のときに、「紫苑風也と友賀亜弓はこれ以上E・Cには深入りしてこないだろう」と影晴に告げてあるのだ。
 それでもこうして下橋の調査なんてさせるということは……

 ――……ぼくって、もしかしなくともあんまり信用されてない……?

 いやいやいや、とウィルは内心勢いよく首を振る。それはない、と断言できる自分が確かにいる。今までの影晴への忠実な行動が、ウィル自身と影晴との信頼関係を確かに築いてきたと、そう思うのだ。

 ウィルは邪念を振り払うように実際に頭を振って、意識を眼前の光景へと向けた。
 どことなく、任務で行くような人気のない場所と雰囲気が似ている。雑然と並んだコンクリート壁。その一つ一つには、ご丁寧にしっかりと落書きが施されている。真っ赤なスプレーで殴り書きされているものもあれば、こちらが感心してしまうほどにデザインの良いものもあった。

 ――……確かにいかにも不良がいそうな場所だな……

 目だけを動かして様々に描かれた字を流し読みしながら、ウィルは歩を進めていった。

 下橋がどういう場所なのか全く分からないため、今は任務中にしては珍しく徒歩で目的地へと向かっている。

 彼の能力“テレポート”は、自分が頭に思い浮かべた場所に一瞬にして移動できるという極めて便利なものだが、当然のごとく制限が課せられているのだ。具体的には、“頭に思い浮かべられる場所のみ”という制限である。つまり、自分が実際に行ったことがある場所、自分の視界に入っている場所、そして究極を言えば写真に写っている場所には能力が適用されるのだが、それ以外の場合は普通の人間の能力範囲内で移動するしかないのである。もちろん普段散歩する程度であれば何も不便はないし、むしろ喜んで自分の足を使うのだが、任務となると話は別だ。当然のことながら、危険は格段に増える。

 ウィルは、なるべく足音をたてないように路地裏を進んでいく。こういうとき、自分は修行が足りないなぁとつくづく思う。いつも能力を駆使しているせいか、気配を消して移動するのがどうも苦手なのだ。

 出かけるときに確認してきた地図と、自分の歩いてきた道とを頭の中で照らし合わせて、そろそろ下橋の中心の方に近付いてきたころだと、ウィルは気合いを入れ直した。下橋がどういう場所なのかわからない以上、油断は禁物だ、と自らの緊張感をさらに高めていく。

 今自分は下橋駅から見て西側の、建物が雑多に並んだ位置にいるはずだ、と周囲に目を走らせ、そのまま建物の影に隠れつつ中央のほうに進んでいくと……

 ――……ん?……声?

 複数の声が遠く、自分の向かう先から聞こえてくる。しかも小、中学生くらいの子供たちの、随分と楽しそうな声だった。思わずその場に足を止めて耳をすましてみると、「行けっ、行けーなつきぃ! シュートォッ!」「ゴール!! すごい、なつきーっ!!」という極限に盛り上がった声が聞こえてきて、ウィルはつい頬を緩めていた。

 ――……サッカーやってるんだ……。楽しそ――

「闇組織がこんなとこで何油売ってんだ」
「――!?」

 それこそ心臓が飛び出すほどの驚きとともに、ウィルは電光石火の速さで後ろを振り返った。その視線の先には、あろうことか紫苑風也その人が無防備な体勢で立っていたのである。

Enjoy Club 第6話『衝撃の刻(とき)』(7) ( No.519 )
日時: 2010/10/26 17:44
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: N9MWUzkA)

 西洋の血が入った自分とはまた違う、色白の肌。綺麗に染められた透き通るような金髪は、首筋までのショートカットで全く癖がない。今にもサラサラと音がしてきそうな髪質である。
 燦々と太陽が輝く空の下、全体的に薄着でラフな格好をした彼は、ポケットに手を突っ込み建物の壁に背を預けた体勢で、こちらの様子を窺うようにして見ていた。

 寒気を伴う驚愕に、目を見開くウィル。あまりに予想外の事態に冷や汗が吹き出してきた。
 ウィルが体を硬直させていると、風也は不審げに眉をひそめて言った。

「逃げねぇのか? テレポートで」

 形の良い唇をきゅっと結んで、ウィルは真剣な瞳で風也を見つめている。それを風也は、心底嫌そうに顔をしかめて睨み返していた。

 ウィルは彼の質問に答えないまま、内心非常に悩んでいた。
 テレポートを使えば、確かにこの場は切り抜けられるだろう。しかし、それでは任務は完全に失敗に終わる。そしてこのまま何の情報も手に入れずにすごすごと帰るなんてことは、できるだけ避けたいのだ。それこそ彼のプライドが許さないのである。しかも元々風也には闇組織のことはバレてしまっているから、逃げる必要もないわけだ。

 うまくやれば本人から色々と聞き出せるかもしれないと、ウィルは違和感のないように当たり障りのない世間話から始めた。

「さっきからにぎやかな声が聞こえてくるんだけど、あそこでサッカーやってるのはキミの知り合い?」

 まさか本人から聞き出そうとは、さしもの影晴も予想していないだろう。

 ウィルはいつも通りの穏やかな微笑を浮かべて、根気強く彼の返事待った。

 が、しかし。

 流れるのはピリピリと肌に痛い沈黙のみ。おまけに風也はお世辞にも友好的とはいえないオーラを発して、射抜くような鋭い目つきでこちらを睨みつけてくるのである。それは覚悟していた以上に剣呑な光で、ウィルはごくりと唾を飲み込んでいた。

 低い、威嚇を伴う声音で風也は言う。

「オレがそう簡単に喋ると思ったか? ……ただでさえ気にくわねーっつーのに」

 瞬間、ぴくっと頬をひきつらせるウィル。

 ――……今さらりと酷いことを言われたような……

 やはり一筋縄でいくタイプではないかとため息をつきかけた時、ウィルはさっき以上の、それこそ殺気に近い空気を感じ取って、そろそろと目を上げた。風也が何かを見透かそうとするように、そらすことなくつり目を向けてくる。
 ウィルが黙って見つめ返していると、彼はしばらくの沈黙の後、ようやく口を開いた。

「……オレも聞きてぇことがある」
「だったらぼくの質問に答えてよ」

 ふっと緊張を解くようにウィルがもらした苦笑を、風也は気にもとめなかった。

「お前の仲間に……オレらの知り合いはいるか?」

 思わず表情を動かしかけ、しかしウィルはそこでぐっとこらえた。平静な表情を取り繕い、自然な形で首をかしげてみせる。

「何の話?」

 ウィルのとぼけた声に、風也ははっきりと眉根を寄せた。品定めするような目つきでウィルを見、どうするべきか悩んでいるようだった。
 一方ウィルはというと、今日何度目かの酷い寒気を背筋に感じている。

 ――……まさか、恵玲のことじゃ……ないよね?

 “オレら”というのは間違いなく、彼と友賀亜弓の2人のことだ。だとしたら、“知り合い”というのは恵玲もしくは白波、そのどちらかになる。そして白波が闇組織の一員であるということが、とうの昔にバレていることを考えると……

 ――……まさか、ね……

 ウィルは内心虚しい空笑いをもらしていた。恵玲が麗牙光陰の1人だとバレる要素はなかったはずだ。しかし、もしこのことに風也が気付いているとしたら、本当に笑い事ではない。少なくとも、恵玲にとっては。

 平然とした表情の裏でウィルはわずかながらも混乱していた。風也がはっきり“誰”と言わない上に、その根拠も示さなかったせいだろう。彼がどの程度の確信を持ってその問いを投げかけているのか、彼の不機嫌そうな顔からは全く読めなかった。
 そしてさらに風也が、「ま、どーせ喋んねぇか」とあっさり引き下がってしまったことで、結局結論が出ずじまいになってしまった。

 もどかしそうに唇をかむウィル。

「ぼくもキミ苦手かも……」
「そりゃあどうも。……それよりお前ら、随分変なタイミングでここに来たんだな? オレを警戒するにしても、あれから3ヶ月近くたってるぜ? それともまた別の用か?」
「いや、きみのこと警戒してるんだと思うよ。ぼくもここ来る時期に関しては疑問なんだけどね」

 困ったような笑みを浮かべて言うウィルを、風也は意外そうな表情で見た。

 ようやくこの場の居心地の悪い空気が薄れていく。

「ふ〜ん。ここに来んの初めてか?」
「うん。2回目以降だったらテレポートで来ちゃうしねー」
「……反則だろ、それ」

 風也はため息交じりにそう呟いて、ふともたれていた壁から体を起こした。正面にそびえる建物の黒っぽい壁を見るともなしに見つめて、ぽつりと独り言のように呟いた。

「突然調査っつーことは、闇組織で何か変化があんのかもなー」

 ハッとして彼を見るウィル。

 建物に挟まれた細い路地を乾いた風が吹き抜けて、ウィルの銀色の長髪をなびかせていった。

 さすがグループを仕切っているだけのことはある。そういうことについてはやはり敏感だ。

 ウィルは驚いた表情で彼を凝視し、心ここに在らずといった呆けたような声で言った。

「……あるよ……」
「――は? 何が」
「変化。今度の日曜日に、麗牙全員組織のリーダーに会わせてくれるって――」

 自分でも気付かないうちにそこまで喋ってしまってから、ウィルはハッとして口をつぐむ。そして、恨めがましそうな目で風也を見た。

「……ぼくやっぱりキミのこと苦手だ」
「知るかよ。勝手に喋っておいて」

 最後まで機嫌が悪そうな態度をとっていた風也は、冷たい声でそう吐き捨て、くるっとウィルに背中を向けた。未練なく、ひらひらと右手を振る。

「じゃあオレはそろそろ行くぜ。てめぇもウゼェからさっさと帰れよ」
「あっ、ちょっと待って」

 そのまま立ち去ろうとした彼を、ウィルは慌てて呼びとめた。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。