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時の魔術師(第二章・開始
日時: 2010/01/24 20:03
名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)

ふははははっ、時の魔術師、復活ーっ!(狂

消えたと思ってたのに、復活しているという奇跡。
果たして待ってくれていた人がいたのか、という話だが……まぁ、細かいことはよしとしよう。


ってわけで、「時の魔術師」、またまたヨロシクお願いします。

「呪われた瞳と愉快な魔女達」にも、主人公のソラが登場するんで、よろしければそちらのほうも……(宣伝w




では、どうぞ(。・ω・。)ノ

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Re: 時の魔術師 ( No.35 )
日時: 2009/12/31 22:17
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

二十七話——別れ——

 グダグダだったが、何とか“時の狭間”に行き、自分達の時代の扉を開いた。

 薄暗い地下室を出ると、ちょうど夜明けだった。

「ケント、これからどうするの?」

 高校生に戻ったケントは、出会ったときより大人びて見える。

 しかし、ケントはもう一人なのだ。お父さんもお母さんも亡くなって、もう一人ぼっち。これからどうするのか、私は心配だった。

「ん……どうもしないけど。もう高校生だから一人暮らしも出来るし。バイトして金貯めてできれば大学いって、できれば就職——ってか、しなくちゃならねぇんだよな、ははっ」

つまり、普通の人生を歩むってことか。

「でも、俺は何があったって幸せになるぜ、絶対。それが母ちゃんののぞみならなおさらさ。んで、幸せになって、長生きする。それから母ちゃんのところいくさ」

「うん……」

 ケントは強いね……と、ケントには聞こえないくらいの小さな声で言った。

「お前こそ、大丈夫なのかよ。色々と後始末あるんだろ?母ちゃんの病気を早まらせたヤツのこととか……」

「ああ、あれは大丈夫。あんなのよくあることだし。あんたはコッチのことは心配しなくていいんだよーだ」

 冗談めかして言うが、ハッキリ言えば、コッチ、つまり魔術関係のことにはもう首を突っ込んでほしくなかった。

 と、いうのも、一回魔術師に出会った者は、その後も魔術関係の事件に巻き込まれることが多いのだ。特にケントは代償を払わずに魔女と出会ったのだから、悪い魔術師に捕まるんじゃないかと思ってしまう。そうなったらすべて、私のせいだ。

「ケント。これ」

 私はポケットから紙切れを取り出した。

「何これ?」

「メアド。これから魔術関係でなんかあったときは、ちゃんと連絡するのよ」

「メアドって……魔女もメールやるのか」

「なに。何か不満でも?」

「いや……なんか、魔法のランプ的なものもらえたら嬉しかったなぁって」

 これだからド素人は……。

「ま、いいや。ありがたくもらうぜ用がなくてもメールするかもしれないから」

 へへっとケントは笑うが、私は無視した。

 陽が高くなってゆく。もうそろそろ人が出てくるだろう。こんな変な格好をした女の子と高校生がいたら、確実に怪しませる。

「じゃあ……ね。これからも頑張って」

「おう。お互い頑張ろうぜ。あと……」

 ケントは何か言いかけた。

「俺は最初、魔女なんて嫌だなーって思ってたけど、今は違うぜ。魔女はイイ奴だってわかったし、魔女のこと好きになったよ」

「え、やだぁ、愛の告白ぅ〜?」

「ち、違わいっ!」

 ケントはどこかへ去ってしまった。ほっと、胸をなでおろす。また泣くところを見られたら、私のプライドが傷つくからだ。

「じゃーなー!」

 遠くでケントの声がした。ビクッとする。まだいたのか。

「あ、うん。じゃあねーっ!」

 これじゃあ別れ際の友達だ。いや、友達なのかなー、と私は思いながら、朝日にかけてくケントを見送った。そしてケントが完全に見えなくなると、箒にまたがり、朝の空へ昇っていった。

Re: 時の魔術師 ( No.36 )
日時: 2009/12/31 22:20
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

二十八話——孤独の中の光——


 風は好きだが特に、夜明けの風はひんやりしていて気持ちがよい。

 清々しい気持ちで飛んでいたが、まだ不安があった。

 ケントには、後始末は大丈夫だと言っていたが、そんなこと全くなかった。あんなことよくある、ってのも嘘だ。あんなことがしょっちゅうあったら仕事なんかできゃしない。

 病気を早まらせるのも、また時の魔術の一つだ。だが、ミサコさんの病気を早まらして得になるヤツなどいない。つまり、誰かを困らせようとしたってこと。そして、病気が早まって一番困ったのはこの私。

 そいつの狙いは私——。

 誰かに狙われてるなんて、今まで考えもしなかった。怖くはあるが、心配なのはケントだ。私と関わったためにケントが襲われたら……。

 まあ、すべて魔法界の委員会に報告してから考えよう。何かあったら、あの暇な騎士団が、ケントを守ってくれる。

 あぁ、でも怒られるかな。委員会の人に……。

 久々に行く魔法界に思いをはせて、また、面倒だと思いながら家に着いた。


 
 そして私は今布団の中にいる。

 魔法界のことはいいとして、やはりケントが心配だった。

 一人でやってけるかしら……なんて、お母さんでも何でもないのに考えていた。孤独のつらさは、誰よりわかっているつもりだったからだ。

 孤独……。

 孤独と聞くと、私は怖くなる。自分は孤独だ、と思ってしまうからだ。私って一人ぼっちなんだな、一人、一人……。孤独という恐怖はどんどん広がり、闇となり、簡単に私を飲み込んでしまう。

 嫌だっ!一人は嫌だっ!!

 誰か——!叫んでしまいそうになったその時だ。

 ピーンポーン

 機械音が家に響いた。

「ソーラー?モエだよー!サキもいるよ!早く来ないと、サキが起こっちゃうよー!!」

 聞き慣れた元気な声がした。さっきまでの恐怖はどこへやら、私は「待ってよーっ!」と叫んだ。

 ——大丈夫。私は一人じゃない。大切な友達がいる。

Re: 時の魔術師 ( No.37 )
日時: 2009/12/31 22:26
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

二十九話——友情。の裏——


「ソラったら!休日だからってまた二度寝してたんでしょ!」

「二度寝の何が悪い!二度寝は正義だ!」

「正義でもなんでもないと思うけどなぁ〜?」

 いつものやりとり。

 それがまた愛おしく思うことがある。

「ほら寝癖!」

「シャツ出てるよ〜」

 ただ、それがうっとうしく思うこともあって……。

「はい、オッケー。じゃあ行こー!」

「おー!」

 まあ、それはそれでいいんだけどね……。


 
 今日はサキ達とピクニックの約束があった。もちろん、私はそれを忘れていたのだ。公園で食べようが墓地で食べようが同じだろ、なんて——口が裂けてもいえない。

 なぜだか原則として、お弁当は自分で作ったものに限られていて、私は慌てて作った。

 天気も晴れで、絶好のピクニック日和。でも私から見れば絶好の昼寝日和。

「な〜んでこんな早くから行かなきゃいけないの〜」

 自転車に乗りながら早速ブーイング。

「うるさい!あんたはただ寝たいだけでしょ」

「ええ、そうですよ、寝たいだけですよ。それ以外、何があるのさ」

「ソラったら、開き直っちゃったよ〜」

 まあ、いいか……と思いながら自転車をこぐ。

 さっきまで魔力がどうとか時がどうとかやっていたのが嘘のようだ。普通の中学一年生の女の子として、私は青春を楽しんでいるって感じがする。

「着いたよ!」

 ハッとすると、そこはいつも遊んでいる市民公園だった。

「早く早く」

 何をそんな急ぐ必要があるんだ?と思いながら、駆けてくサキ達の背中を追った。

「こっち、こっち」

「うん?」

 そこは広場のようなところだった。地面に円状の線がかいてある。線、というより溝だ。そこの中心部に立たされた。

 モエはずっと腕時計を気にしていた。サキもウロウロしている。

「なに……?」

 言いかけたときだ。モエが「今だ!」と叫んだ。

「え?」

 するとパァッと円状の溝から噴水がでる。あっという間に、私達は水の檻に囲まれた。檻と言っても幻想的で、虹がかすかに見える。

「凄い……!」

「えへへ。ソラにこれ見せるために時間早めたんだよ。この噴水滅多に見れなくて、サキが管理人の人に頼んだの」

「え、サキが?」

「ま、まあ。あんたに良い眠気覚ましになると思って……」

 あのツンデレのサキが!持つべきは友だと、私は確信した。

「最近ソラ、元気ないな、と思ってね」

「え、そ、そうだったかな……」

 友たちに心配されてるとは思ってなかった。
 
 水の噴水に、手をそっと入れる。水が飛び散った。

 考えてみれば、かなりここは濡れる。

「ちょっと……濡れるね?」

 そう言って振り返ると、二人はしっかりとビニール傘をさしていた。

「え!?二人共ずるくない!?」

「へへーん、いつも私達を待たしてる、お・か・え・し」

「なっ!?」

 そう言っている間にも、私はどんどん濡れていった。

 友達なんかいらない!私は一人で生きてゆく!

 私はそう決心した。

「はーっくしょーん!」

Re: 時の魔術師 ( No.38 )
日時: 2009/12/31 22:30
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

三十話——


「ソラ、大丈夫?」

 ゴホ、ゴホッ。

「悪かったよ、あんなことして。だって、最近元気ないからぁ……」

「ゴホッ……元気ないからってぇ。なんでこんな目にあわなくっちゃ……ふぁ……」

 私が口を大きく上げたのを合図に、サキもモエも、身をかがめた。

「はーっくしょーん!」

「……ソラのくしゃみにはとことん感心するよ。凄まじいね」

 サキがイヤミを交えて言う。

「うるしゃーい」

 
 サキ達の思惑通りずぶ濡れになった私だが、予想以上に濡れてしまった。おかげで風邪を引いたようで。

 モエは急いでタオルをかしてくれたし、サキは私を太陽で乾かそうと(私は洗濯物かっ!)日当たりのいいところにレジャーシートを引いてくれた。

「そ、そうだ。もう、お昼だし、お弁当食べよう!」

 私の顔がみるみる青ざめていくのをみたモエが大きな声で言った。

「そ、そうだね!」

 その調子にあわせて、サキも言う。

「ほら、ソラのお弁当見せてよ!」

「うん……」

 私は自分で作った弁当をお披露目。サキ達は、この世の物とは思えない!って顔をした。が、私を気遣って、無理やり笑みを作る。

「げ、芸術的だね!ソラ」

「独創的だよ!色鮮やかで……」

「他の人には作れない!」

「ソラ、すごいね!」

 ……とても料理を褒めているとは思えない。料理に対して「芸術的」、「独創的」と言うヤツはどうなのだろうと思うが、そんなものを作ってしまう自分にもあきれる。サキが「色鮮やか」と言ったが、私の料理には赤、黄、オレンジ、緑、青……ここはまだましだが、紫色のものや、黒い物体がある時点で、料理とは言えない。

 私はむなしくなって、早く食ってしまおうと箸を握ったが、二人に止められた。

「だめだめだめだめっ、食べちゃ駄目よ、こんな汚物……」

「サキっ!汚物なんて言っちゃ……」

 汚物……おぶつ……オブツ……。

 今にも崩れてしまいそうな私を見て、サキは慌てて、

「ほら、あたしのあげるから!」

 と卵焼きを私に差し出した。モエも、

「そ、そうだよ、ほら、私のも」

 とこんがりとしたからあげをくれた。

「うぅ……かたじけない……」

 友達ってのは、こういうのを言うんだな、とつくづく思う、今この時なのでした。

 そんな幸せの中、私はケントとミサコさんを思い出した。

 ——どうか、幸せになってください——。

 青い青い空で、ミサコさんが笑ったような気がした。



第一章——過去の落し物——「完」

Re: 時の魔術師 ( No.39 )
日時: 2010/01/16 19:04
名前: 白魔女 (ID: PwsOoYFR)

イエェェーッイ!

消えたと思ってたのに復活しているじゃアーリマセンカッ!(狂
マヂウレ━━(*´∀`*b)━━シィ!!!!


ってわけで、また続けて書きます。

「呪われた瞳と愉快な魔女達」にもソラ登場するんで、どうぞ読んで下さい(宣伝w


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