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- 時の魔術師(第二章・開始
- 日時: 2010/01/24 20:03
- 名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)
ふははははっ、時の魔術師、復活ーっ!(狂
消えたと思ってたのに、復活しているという奇跡。
果たして待ってくれていた人がいたのか、という話だが……まぁ、細かいことはよしとしよう。
ってわけで、「時の魔術師」、またまたヨロシクお願いします。
「呪われた瞳と愉快な魔女達」にも、主人公のソラが登場するんで、よろしければそちらのほうも……(宣伝w
では、どうぞ(。・ω・。)ノ
- Re: 時の魔術師 ( No.20 )
- 日時: 2009/12/31 12:25
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十四話——懐かしき母親——
「あいたっ」
ケントが自分の席から転がり落ち、後ろの机に頭をぶつける。その隣で、私も見事に前転をきめた。
「ど、どうしたの、ケント君」
またあの時と同じように、ケントの隣の席の香川ユウコとかいう女の子が心配そうに声をかけた。
「え?あ、全然大丈夫だよ、あはは」
無理な体勢で扉をくぐったのだから、その状態のままこの時代に来てしまったらしい。固い床ででんぐり返しするものだから、背骨が痛くなったが、顔面衝突は免れてよかったと私は思った。
「おい、今っていつなんだよ」
小声で私に話しかける。
「え、っと。私達が初めてここに来た時と同じ時間だよ。だから、このまま授業を受けて、帰りに病院に——」
「先生!頭痛いんで早退します!」
私の言葉を途中までしか聞かず、ケントは帰りの用意をし始めた。
「へ?あ、はい……」
先生も先生だ。こんな簡単に生徒帰らしていいのか、と思っている間に、ケントは教室から出て行ってしまった。
「そ、そんなに、急がなくても、いいじゃん……」
ケントに追いついた私が、不満そうに言う。そして少し走っただけで息が切れてしまった。
「だって、また母ちゃんが逝っちゃってたら嫌なんだよ。早ければ早いほうがいいだろう」
ケントの考えは合っているかもしれない、と、私は内心呟いた。
平日の昼間とあって、人通りは少ない。あるとすればおばさんたちがわやわやと噂話をしているくらいだ。そんな人たちに白い目で見られているというのにケントは全く気にせず病院へと急いだ。そうしている間にも、私の魔力はなくなってゆく。
この状態で、現代へ帰れるだろうか——?私は不安になってきた。こうやって歩いているだけでも、私の魔力はどんどんなくなってゆく。
もし、帰れなくなったら——?ううん、考えるのはよそう。
病院もまたガランとしていて寂しかった。いや、病人は少ないほうがいいのだが、これだと私達が目立ってしまう。
「あら、ケント君。学校は——」
知り合いの看護婦だろうか。しかしケントは無視して通り過ぎてしまった。
「愛想ないよね、ケント」
「うるさい」
すでにケントはお母さんの事しか頭にないらしい。黙ったほうがよさそうだ。
そして、そして——。ケントはお母さんのいる病室のドアについた。ゆっくりと深呼吸し、スライド式のドアを開ける。
「母ちゃん——!」
飛び込むように、ケントは母親の胸に飛びついた。
「ケント……」
一瞬驚いたような顔をした、ケントのお母さんは、すぐにやさしげなまなざしでケントを見た。
そして、私はそのやさしい顔を見て、ある事実を知った。が、この感動の対面を邪魔する気は、なかった。
- Re: 時の魔術師 ( No.21 )
- 日時: 2009/12/31 12:31
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十五話——母子の対面、そして衝撃——
あぁ、そうか。そういうことか——。私は幸せそうな顔をするケントとその母を見て思った。
「ケント……」
「母ちゃん、母ちゃん。俺、俺は……」
ぐっしゃぐしゃのケントの顔を見て、お母さんが静かに笑う。
「まあまあ、落ち着いて。深呼吸して、ほら、いっちに、いっちに」
ケントは素直に言う事を聞いた。お母さんのことは聞くんだな、と内心思う。
「母ちゃん、なんで俺が平日の昼間っから来たのに驚かないの?」
「ふふっ、ケントのやることなんて、わかるわ」
ふうん、そういうのが「お母さん」なのか……。
「あのね、母ちゃん、その——」
ケントには、あらかじめお母さんと話すときは、自分が未来から来た事は明かさないと約束させていた。これもまた、未来を変えてしまうかもしれないからだ。そのことを目で合図する。ケントは小さくうなずいた。
「母ちゃん、俺、その、母ちゃんの形見の事なんだけど……」
ケントは言った後でハッとする。「形見」なんて言ったら、この後自分が死んでしまう事がわかってしまうのではないかと。それに、この時の自分はまだそのものをもらってはいないのだ。
「そう、そうね……私があげた形見をなくして、ソラちゃんに頼んだ、と……」
そして、その優しいまなざしを私に向ける。
「エ!?エ!?」
おどおどするケント。
「お久しぶりです。藤岡ミサコさん。まさか、あなただったとは知りませんでした」
「えぇ!?なんで母ちゃんの名前知ってるの!?」
ケントは心底仰天してしまったらしい。これ以上混乱させまいと、ミサコさんのほうから話した。
「私はね、えぇ、私からは見ればついこの前に、ソラちゃんに依頼したのよ」
「嘘ぉ……」
逆にケントは頭が混乱したらしい。
「母ちゃん、一体、どの時代に……」
ミサコさんは、いたずらっ子のような笑顔で答えた。
「それはね——あなた達の時代よ」
- Re: 時の魔術師 ( No.22 )
- 日時: 2009/12/31 12:38
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十六話——ミサコさんの秘密——
「お母さんはね。自分の命がもう短いってわかった頃から、ずっとケントのことが心配だった。本人は隠していたらしいけど、ケント、お母さんっ子だからね」
ミサコさんの言葉に顔を赤らめるケント。
「だから、この時代のつい二週間くらい前に、ソラちゃんに頼んだってわけ」
「頼んだって……、お前、未来にも行けるの?」
「まあね〜。一度依頼した人は、それからずっと、魔術をかけられてもその魔術師が見えるの。だから、ミサコさんは私のことが見えていたのですよね?」
「はい。あなたが私のことを覚えていてくれて、うれしいわ」
私はミサコさんに引きつった笑顔を見せた。正直、八年前の依頼なんて、さっぱり忘れていたのだが。
「そこで……ケントが私の時代に来るってことがわかったの。まぁ、私にはどうしようも出来なかったけどね」
フッと笑うミサコさん。忘れていたとは言え、そのやさしい顔は、印象に残っている。
「え、じゃあお前も俺を見たんじゃないのかよ?その、未来で」
「ううん。ミサコさんの頼みで、私はついていかなかった——。だから、ケントのことは知らなかったよ」
「えぇ!?ついていかなかったって、つまり、母ちゃんの支払いは——」
「えぇ、悪魔達の元へ、死んだ後に潔くいくわ」
「そ、そんな——」
自分が一番やりたくなかったことを、お母さんはやろうとしていると聞いて、ケントは嫌そうな顔をした。
「ソラはなんで止めなかったんだよ!支払いのときは、大体ついていくんだろ!」
「ケント。ソラちゃんをせめないで」
ハッキリとした口調で、ミサコさんはケントを叱った。ケントはしゅんとする。
「しかたなかったのよ……あそこでソラちゃんが私を食べたら、あと少し残されたあなた達とあえる時間もなくなってしまう。かといって、寿命をちじめるのも、どうせ死が近い私には関係ない。すべて説明された後で、私はその支払いにきめたの。どうせそれなら、ソラちゃんにはついてこないでと言ってね」
「ミサコさんなら、変な事などしないと思っていました。あって数分で、やさしいくて、信じられる人だと思ったから」
「そう……」
ケントは寂しそうな顔をした。ミサコさんが、その頭をそっとなでる。
「それで、母ちゃん。俺達がこの時代に来たのは……その、母ちゃんの形見をなくしちゃって……」
「ふふっ。いつになってもそそっかしいんだから」
笑う母親に、ケントはムッとした様子で、
「笑い事じゃないよ。ずっと悩んでたんだから」
と言った。
「悩むのならなんでなくしたのかねー?」
ミサコさんは、私に向かって言った。
明るい性格でこんな優しい人が、なんで死んでしまうのだろう……。
- Re: 時の魔術師 ( No.23 )
- 日時: 2009/12/31 12:40
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十七話——真実——
「形見……なんか、自分の形見っていうとおかしい感じがするわ。えっと……」
ミサコさんは、ゴソゴソと自分のカバンの中から小さなポーチを出した。
「たしか、この中に……」
そう言ってしばらくポーチの中を探って数分。
「ないんですか……」
「う、うん……」
沈黙を破った私のセリフを、潔く認める。
「おかしいわね、確かにこの中に入れたんだけど」
「母ちゃん……あの……まさか……それって……」
ケントはポケットの中を探り、あのお父さんの形見と言っていた十字架を出す。
「あぁ!それよ、それ!それ、私がケントに渡すつもりだったもの!」
私は「え?」と思った。これはお父さんの形見で、でもお母さんの形見……。
「そういうことかっ!」
手をパンッとあわせて声を張り上げる。二人の注目を集めた。
「つまり、ケントがミサコさんの形見を忘れているのを悲観したお父さんが、気づくまでずっとそれを預かっていたのよ。でも、自分が死ぬまで気づかないケントに、自分の形見として渡した……ってわけじゃない?」
「そ、そうだったのか……!!」
驚く事ばかりのケントは、あごが外れるんじゃないかと思うくらいあんぐりと口を開けた。そして、
「母ちゃん……そして父ちゃんも、本当にゴメンっ!!」
これでもかと言わんばかりに頭を下げる。
「俺が、不甲斐ないばかりに、迷惑かけて、俺、本当に、本当に……」
「いいのよ……こうして自分の命を投げ出してまで、私のところに来てくれたのだから、もう、それだけで、私は……」
見ているだけでこっちも泣けてくる。親子っていうのはいいものだな。出来ればこのままもう少し二人をいさせたい。
けど、私にはもう時間がなかった。
クラッと目まいがしたかと思うと、そのまま倒れてしまう。それをミサコさんが受け止めた。
「ソラちゃん!?大丈夫?」
「すいません……」
もう、魔力がない。これじゃあ帰れない——。
一番やりたくなかった。これだけは。でも、これしか方法はない。
「ミサコさん、本当に申し訳ないのですが……」
言おうか迷う。ケントがいる前で——でも、仕方なかった。
「ミサコさんを、食べさせてください」
- Re: 時の魔術師 ( No.24 )
- 日時: 2009/12/31 12:45
- 名前: りんご ◆TJ9qoWuqvA (ID: 44GDRR0m)
おもしろいです!!(><)
あたし魔術師とか魔法とか大好きなんだよね〜〜〜!!
白魔女さん、がんばって〜〜!!
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