ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 時の魔術師(第二章・開始
- 日時: 2010/01/24 20:03
- 名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)
ふははははっ、時の魔術師、復活ーっ!(狂
消えたと思ってたのに、復活しているという奇跡。
果たして待ってくれていた人がいたのか、という話だが……まぁ、細かいことはよしとしよう。
ってわけで、「時の魔術師」、またまたヨロシクお願いします。
「呪われた瞳と愉快な魔女達」にも、主人公のソラが登場するんで、よろしければそちらのほうも……(宣伝w
では、どうぞ(。・ω・。)ノ
- Re: 時の魔術師 ( No.15 )
- 日時: 2009/12/31 12:04
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
九話——嫌われ者の喧嘩——
次の日は、普通にケントは学校に行き、いったん家に帰ってから、病院に行く事にした。
「はぁぁ、やっぱ緊張するなぁ。母ちゃんにあうなんて」
病院に行く途中、ずっとケントはぼやいていた。
「まぁ、あえばそれで終わりなんだから、緊張なんかしなくていいじゃん」
「って言ったって……八年間、ずっと俺はあってないんだぜ?はあ、母ちゃんにまたあうなんて……」
「嬉しくないの?」
「そりゃ、嬉しいさ!当たり前だよ!!でも、なんか、こう、複雑だな……」
「ハッキリしない奴だね。男ならもっとシャキッとせい!」
バンっ、と背中を叩く。ケントは「うわっ」と小さな悲鳴をあげ、自信のなさそうに曲げていた背中をまっすぐにさせる。
「やめろよっ」
「ははっ、まぁ、いいじゃん。お母さんも、元気のないケントなんてみたくないはずさ」
「……」
ケントは、「お母さん」と、「元気」という言葉を聞いてまた背中を丸めた。
「母ちゃん……明日、死んじゃうんだよな……。あのさ、一応聞くけど、絶対に明日、逝っちゃうんだよね。その、今日とかにならないよね?……って言うか、このまま死なないって可能性は……」
「ないっ。絶対ない。言っとくけど、助けようとは思わないことね」
容赦なく、私はその言葉をケントに突きつける。
「時を戻らせるのは、ただでさえすごく危険な事なの。ましてや人の命を助けるとか、そんな事は言語道断。他の事はまだいいわ。でも、これだけは変えては……」
「わかったから、もういいよっ!!」
ケントは怒鳴るように、私の言葉を遮った。
「そんなこと考えてねーよ!もしかしたらって思っただけだ!いちいち言うなよ。確かに母ちゃんが生きてれば、とは思うけど、俺だって、俺だって……」
立ち止まってうつむくケント。一瞬だけ見えたその傷ついた表情に、私はハッとした。
「ゴメン……」
「別に」
そしてケントは行ってしまった。その後ろを慌てて着いていく。
ケントが怒っていることは明らかだった。私もあそこまで言わなければよかったかもしれない。でも、もし少しでもケントがそう考えていたなら、止めるのが私の役目だ。それはケント自身のためでもある。
嫌われてもいい。それで助かるなら。
魔女はどうせ、嫌われ者ですから……。
- Re: 時の魔術師 ( No.16 )
- 日時: 2009/12/31 12:09
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十話——時のたくらみ——
険悪なムードで着いた病院では、さらに最悪な事が起きていた。
ケントに連れられて行った病室の前では、うなだれるようにケントのお父さんがベンチで座り込んでいた。
「父ちゃん……?どうしたんだよ……?」
まさか、という風にケントが話しかける。
「ケント……あぁ、ケント!!母さんが、母さんがあぁっ!!」
そのまま、お父さんはケントに抱きついき、顔を服に擦り付けて大泣きする。何があったかは、もう明白だった。
「母ちゃん……死んだのか……?」
その状態のまま、お父さんはうなずいた。
「嘘だろ……嘘だろ……」
そして、凄まじい形相で私に振り返り、にらめつけた。
「明日じゃなかったのかよ!!約束が違う!!なんで、なんで……!!」
他の人から見れば、ケントは誰もいないところに怒鳴りつけている事になるが、誰も、何も言わなかった。ケントが狂ったとでも思ったのだろうか。
「どうしてっ!?明日だろ!!なんで、また、母ちゃん……」
そして涙を流し、私にすがりつく。私はうろたえるばかりだった。
「そんな……私、何も知らないよ……っ!!」
その言葉に嘘はなかった。私も何がなんだかさっぱりわからない。確かに明日のはずだった。なのに、なぜ……?
これで二回母親をなくしたことになるケントは、ただただお父さんと泣いた。頭ではもう何も考えられないのだろう。
そんな光景を見ながら、私は頭をフル回転した。なぜ、どうしてこんなことが起こったのか?時は同じようにすすむから、時を何回戻ったって、おかしなことをしない限りは同じ出来事が起こる。病気がいきなり早まったりはしないはずなのだ。
誰かが意図的にこうしたと……?なら、私達と同じように時を戻ってきた者と言うことになる。と言うことは、同業者……!?私と同じ仕事の者は、いないはずだ。仕事をやるには、魔法界の委員会に契約をしなくてはならない。しかし、委員会では仕事をやる人数を決めていて、特別である時の魔術師は、一人と限られている。
仕事ではなくて時の魔術を使う場合にも、色々と契約があるから、現代に戻って調べれば、誰がこの時間に時を戻ったかは、わかるはずだ。しかし、時を戻って、出来事を変えてしまう事は大きな罪だ。私がその事を委員会に報告すればその者は刑に処されるだろう……。
それは、現代に戻ってからでいい。今は、今この時をどうするか考えるのが先決だ。
「ケントっ、行くよ……っ!!」
ケントのか細い手をむんずとつかみ、引っ張る。
「い、行くって、ど、どこへ……?」
泣きはらした目で、私を見る。
「もちろん、もう一回やりなおすんだよっ。もう一回時を戻って、今度こそ、お母さんにあわせる!」
「えぇ、でも……」
ケントは戸惑っていた。まだ、心が動揺しているのだろうか。時は戻れる、急ぐ必要なない、と自分を落ち着かせ、ケントに説明する。
「本当はね、一日に魔術を使える回数は限られていて、その一回を今回、この時代に戻ったときに使ったの。だから、また戻るとなると、私の魔力がなくなるし、軽い罪になるわ」
「じゃあ、なおさら……」
ひっく、ひっくと、ケントは駄々をこねる子供のように、泣きじゃくる。
「本当はいけないことよ。でも、でもね、契約した相手を裏切るような事、私はしたくないの。この仕事は名誉ある仕事で、そのぶん注目されがちだけど、……え、あ、魔法界でだよ?で、私は曲がった事が嫌いなの!ケントがこのままお母さんに会えないまま、支払いになるなんて、私はいや!少しの代償があっても、依頼人との契約は守る。それが私のモットーなの!!」
「お前……ごめん、ありがとう」
「うん……」
さっきのいざこざがなくなったきがして、私はすっきりした。
ケントは、愛おしそうに父親の頭をなで、私にうなずいた。
「行こう」
「うん。もう一回時を戻ろう」
- Re: 時の魔術師 ( No.17 )
- 日時: 2009/12/31 12:11
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十一話——もう一度、時を——
私とケントは屋上へと駆け上った。鍵がかかっているドアは魔術でこじ開けた。
屋上へのドアを開けると、冷たい風が体に当たった。コンクリートの地面からは、ところどころ草が生えている。広々としているが、どこか寂しげな屋上だ。
ケントは後ろでまだひっくひっくと泣いていた。お母さんをまた失うというつらさなど、私にはわからないが、とにかく今はケントを母親とあわせなくては、と自分に言い聞かせる。
カバンから魔法陣専用のペンを取り出す。このペンはどんなところでも描けるから便利だ。ケントを端に寄せ、屋上いっぱいの魔法陣を描く。描きながら、自分の魔力がなくなっているのを感じた。このペンは魔力を注ぎながら描くから、段々と疲れてくる。この後、また強力な時の魔術を使うんだ。魔力も節約しながら描かなくちゃなぁ……。
「ふう……」
やっとの事で描き終えると、ケントを呼び寄せ、魔法陣の中心に立つ。
「お前……大丈夫なのか?」
すでに息が切れている私に、ケントは心配そうに聞いた。ケントはもう泣いてはいなかったが、まだ目が赤い。
「あはは……大丈夫だよ。きっと、たぶん、そうさ……」
そして、意識を集中させ、魔力を魔法陣に流し込む。カバンから小瓶を取り出す間、何度かクラクラッときたが、なんとか持ち直す。
『依頼人との契約は守る』……それは、私が今までずっと大切にしてきた言葉。私に時の魔術を教えてくださった師匠様の言葉。師匠様は偉大で聡明で、そして一番人間らしかった。だから私はずっと師匠様のことを信じていた。ずっとずっと、何百年もの昔の話だが、私はつい昨日のように覚えている。
あぁ、師匠様。あなたは今私がしている行動を褒めてくださるでしょうか——?
遠のいてゆく意識の中で、私はそう思った。
- Re: 時の魔術師 ( No.18 )
- 日時: 2009/12/31 12:18
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十二話——危険な賭け——
「ソラ!ソーラ!!」
誰かが、また、私を呼んでいた。
あれ、また私、授業中に寝てたのかな……?そしたらまた、サキに怒られちゃうな。モエもそのうち、あきれちゃうかな。
「ゴメン、サキ、モエ……いつも迷惑かけて……」
「ソラ!どうしたんだよ、しっかりしろよ!」
私の視界に入っていたのは、サキでもモエでもなく、高校生のケントだった。
「あぁ……、ケント」
「はぁぁ、死んだかと思った。心配したよ。まったくもう」
「ここは……?」
「あぁ?時と時の狭間だろ。ってか長い名前だなぁ。まあ、いいけど、魔法陣からこっちに来た時、お前が通れていたから、ビビったんだよ」
ムックリ起き出すと、見慣れたドアがズラッと並んでいた。
「そう……あの状態で、魔術成功したんだぁ」
「え?それはどういう意味……」
「いや、魔力が足らなかったら、失敗して永遠に時間と時間の間グルグルすることになるかもなーって思ってて……さ」
顔を青ざめるケント。
「ケント……やっぱり小さいときのほうがよかったな」
「大きなお世話だよ……いいから、早く行こうぜ」
「まあ、急かしなさんなって。魔力も残り少ないし、帰りの分もあるし」
「俺は早く行きたいんだよーっ!」
性格はやっぱり幼稚だ。ケントを見ながらクスクス笑った。
「あのね、体力と魔力は繋がってるの。だから無理には走ろうとすると、魔力も消耗しちゃうのよ」
「え、じゃあ俺も、体力を使う時、魔力も使うのか?ってか、俺にも魔力あるのかよ!?」
「馬鹿だな〜。私は魔女。あんたは人間。根本から違うのよ、僕?」
「ぼ、僕っていうな!」
ほら、怒り方も幼稚。
「魔術師は、魔力で出来てるようなものだから、なにをするにも魔力を使うの。そのぶん、人間はいいよね、楽で」
「そうか?俺は魔法とか使えてうらやましいけど」
「……じゃあ、交換してよ、私と」
「え?」
その時だ。いきなり遠くからかすかに声がした。
- Re: 時の魔術師 ( No.19 )
- 日時: 2009/12/31 12:22
- 名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)
十三話——騎士団からの逃走——
「……だ。……すぐに探せ……」
遠くで、男の声がした。
「ヤバイ、委員会の奴らだ!」
「は?エ??」
いまいち状況がつかめないケントの腕を乱暴に私はつかみ、走り出した。
「私が魔術を二回使ったことがバレたんだ!」
「ええぇ!?でも、軽い罪なんだろ?軽い……」
「罪は罪だし、理由を話せば納得してもらえるかもしれないけど、時間がかかりすぎる。事情聴取みたいなことされるんだよ。もしかしたら、ケント、お母さんとあえなくなっちゃうかもしれない。だから今はとにかく逃げて、その時代に行こう。そっちに行ったら、委員会は追いかけられない!……はず」
「は、はずって……」
こう、走りながらも、段々魔力がすり減るのが自分でもわかった。それに、グルグル回る道は、走っていると酔いそうで気持ち悪い。しかし後ろでは、委員会の奴らが私達を見つけたらしい。
「いたぞーっ!!」
刑事ドラマでよくあるセリフだ。ドラマで見ているぶんにはカッコよくて好きだが、今は罵声にしか聞こえない。
「くっそぉ、委員会の奴ら……他に仕事がないからっていちいち騎士呼ばせやがって……騎士団も暇すぎんだよ、全く」
「ちょっと、キャラ変わってますよー」
ケントの声を聞き、ケントの腕を握っている手に、力をこめる。
「いでででで!」
「もう、いいから黙ってよ、今からドア探すから」
走りながら“時の瞳”なんてやったことないけど、やるっきゃない。でもまたこれも魔力を使う。それよりまず、走りながら集中なんか出来るのだろうか。
駄目もとでやったら、うっすらとだが出来た。だが走りながらで魔力が持たず、すぐ消えてしまう。すぐ後ろでは、委員会の騎士団の暑苦しい音がした。
騎士団は、委員会を守ったり、こうやって罪人を追いかけたりする奴らだ。警察、と言ったところだろうか。騎士団はよくある鉄でてきた暑苦しい鎧を着ている。魔術で出来ているから、中身は誰もいないが、騎士団には一人魔術師が混じっていて、そいつが騎士を操っている。
どうしよう、もうすぐ追いつかれる。そう思って、私はケントに言った。
「仕方ない、あまり、やりたくはなかったんだが……」
「な、なんだよ、俺に出来ることならさっさと言え!」
「じゃあ、言いますけど……私をおぶれ!」
「へ?」
ケントはビックリした、と言うか、何言ってんの?と言う顔で私を見る。
「走りながらだと、“時の瞳”使えないの!早く!私も嫌なんだから!」
「うわ、最後のセリフ傷つく」
しぶしぶながらケントはしゃがみ、私はその上にのっかった。
「重っ……」
「何か言った?いいから早く走って!」
そして、私はケントの広い背中で、“時の瞳”を使った。魔力が少なく、まだ薄っすらだが、なんとか場所は特定できた。
「ケント、あそこだ!」
私は指を指す。
「ようしっ」
ケントは加速した。重い鎧を着ている騎士団は追いつけないだろう、と思ったが、魔術であるために、ケントより早いスピードで来る。
「ケント、早く!追いつかれちゃうよ!!」
「お、俺、帰宅部なんだ……」
ぜぇぜぇ、と、すでにケントは疲れていた。
「いいから早く!!」
そんなケントを容赦なく、ドンドンと背中を叩く。
「痛いって。ほら、もうすぐ着くよっ」
「騎士ももうすぐつきますが……」
騎士の一人が手を伸ばした。
「ヤバイ、もう、追いつかれる——」
鉄で出来た指が、顔先まで来て、ようやくガチャ、と言う音が聞こえた。
「うわっ」
ドアを開けたはいいものの、私を支えていた一本の手でドアを開いたために、私は落ちそうになり、ケントは体制をくずし、転がる。
そのまま私達は光の中へと転がり込んだ——。
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