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時の魔術師(第二章・開始
日時: 2010/01/24 20:03
名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)

ふははははっ、時の魔術師、復活ーっ!(狂

消えたと思ってたのに、復活しているという奇跡。
果たして待ってくれていた人がいたのか、という話だが……まぁ、細かいことはよしとしよう。


ってわけで、「時の魔術師」、またまたヨロシクお願いします。

「呪われた瞳と愉快な魔女達」にも、主人公のソラが登場するんで、よろしければそちらのほうも……(宣伝w




では、どうぞ(。・ω・。)ノ

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Re: 時の魔術師 ( No.25 )
日時: 2009/12/31 12:49
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

十八話——魔女の本性——


 今は小3だが元は高校生のケントは、私の襟を掴み、怒鳴り散らした。

「お前!自分が何言ってるのかわかってんのかよ!?」

「わかってるよ!仕方ないんだ、これしか方法は……」

 うっ、と、私は息をつまらせる。魔力がないんじゃ怒鳴りも出来ないのか。もし、私のすべての魔力を使い切ったら、「ソラ」という存在はなくなるだろう。人間じゃない私にとって、怖いことではないが、依頼人をこのままにすることは許せない。

「このまま私が帰れなくなって、消えてしまうとするでしょう。ケントが帰れなくなって、この時代のまま生活すれば、時空に大きな歪みが出来てしまう。そうしたら時空が狂ってしまうの。最悪……この世から、「時」はなくなる」

 ケントがすっと、手を離した。

「私の魔力は、人を食うと回復する。もしそれで二人が承諾してくれれば、ミサコさんの支払い——悪魔との契約はなくなり、無事天国へいけます。そして、ケントの支払いもそれでチャラにします」

「そ、そんな——」

 母が今ここで死ねば、母は死後、幸せになれる。でも、その代わり母が食われるなんて……ケントは今にも泣きそうな、怒っているような顔で母を見た。

「私はそれでかまわないわ」

 ミサコさんの答えはそれだった。

「——母ちゃんっ……」

 戸惑うケント。

「だって……これで私が食べられさえすれば、ケントはこの先もまた生きられる。平凡な日常に戻れるのよ。母さんだって、悪魔の元へ行くのは、怖かったしね」

 ミサコさんは、明るくケントに振る舞った。でも、ケントは首を縦には振らない。

「だって、母ちゃんが、母ちゃんがぁぁ」

 そしてついに泣き崩れた。母を失う悲しさ。母はそれでいいと言っているのに、わがままを言う自分への不甲斐なさ。そして今まで自分のために尽くしてくれた魔女が、母を食べるという複雑な気持ち——すべてを抱えてケントは今泣いている。

 そんなケントを、私はただ見ているしか術はなかった。二人を助けようとしているのに、結果、ケントは今悲しんでいる。

 あぁ、なんて自分は残酷なのだろう。幸せな二人を引き裂くなんて。そして、なんで私は魔女なのだろう——。

Re: 時の魔術師 ( No.26 )
日時: 2009/12/31 12:51
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

りんごさん、ありがとーっ!

私も、魔法系大っっっ好きです☆

Re: 時の魔術師 ( No.27 )
日時: 2009/12/31 12:52
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

十九話——感情——


 流してもいない涙をふき取るように、私は顔をこすった。

「ケント……私、本当にゴメ……」

「ゴメン、ソラ」

 ケントは涙を乱暴にふき取ると、ソラに向かった。

「俺、ただ、母ちゃんがまたいなくなるのが嫌なんだ。んで、食べられるなんて事も、考えたくもない……けど、ソラは俺達を助けようとしてるんだ、って思って」

 そして泣き腫らした目で、ニコッと笑った。

「母ちゃんを……頼むよ」

「ケント……」

 こんな時、私は「人」ってなんて強いのだろうと思う。確かに人間は弱いときもあるが、弱い分だけ、他の生物より強いのではないだろうか。

「ケント。見ないうちに、大きくなったのね」

「大きくって……」

 自分はまだ小3だ、といわんばかりに背伸びする。

「体じゃないわ。心がよ。本当に、強くなって……」

 ミサコさんは、ここで初めて泣いた。

 自分が死んだ後も、立派に育った息子の体温を肌で感じ、抱きついた。

 私は静かに病室を出る。最後くらい、二人きりにさせよう、と思ったのだ。

 魔女は泣かない。悲しまない。でも、私はずっと人間界にいて、変わったのだろうか。自分の目から流れる清い雫を拭いて、また、師匠様のことを思い出す。

 師匠様は、さっきも言ったように、とても人間らしかった。笑って、怒って、そして泣いた。感情がある——つまり、人を思いやる事ができた。師匠様が今の私の立場なら、二人を引き裂きなどしなかったろう。

 そう考えると、やはり私は人間ではないのだ、と思う。

Re: 時の魔術師 ( No.28 )
日時: 2009/12/31 12:54
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

二十話——魔女——


 私は魔女。魔術師。
 

 人間ではない存在。


 人間にはなれない存在。


 人間になってはいけない存在。


 それを——師匠様は破った。やったはならないことを、師匠様はやってしまった——。

 師匠様——。

Re: 時の魔術師 ( No.29 )
日時: 2009/12/31 12:55
名前: 白魔女 (ID: iH8DsO3F)

二十一話——ケントの思い


「ソラ」

 ハッと、現実に引き戻された。目が赤いをしているがもう泣いてはいないケントが、母との最後の会話を終え、病室から出てきた。

「もう……いいよ」

「うん」

 そして、そのまま病室に入ろうとする私をケントが止めた。

「あのさ、ソラ」

「何?」

 やっぱやめて、と言われたらどうしよう。そんな事を考えていたら、ケントは真逆のことを言った。

「ありがとな」

「えっ……」

 私は戸惑った。なぜ、これから母親を食べようとする私に感謝などするのだろう。

「お前とた時間は、長かったようで短かったが、お前の事はわかっているつもりだ。

お前だって、好きで食べるんじゃないって事くらい、顔を見ればわかる。

そりゃあ、俺だって嫌だけど、ソラは俺達のために、やってくれてるんだろ。

だから、やるとき、なんて言うか……俺の事は、気にしないでいいから。

俺はお前を信じるから」

 わっ、とまた涙が出そうになる。
 
 それを見られないために、ケントの髪をくしゃくしゃっとした。

「ガキが。何言ってんのさ」

 そしてそのまま病室に入る。

 私は——私は魔女なのに。

 ケントは信じると言ってくれた。

 魔女なんて、信じないほうがいいよ——。

 私は心の中で呟いた。


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