ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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—バグ、消去します—
日時: 2009/07/26 23:58
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

キーンコーンカーンコーン……。
終礼が終わり、部活に励むため出ていくみんな。
とてもガヤガヤしている教室。
私たちのクラスは最上階で、見晴らしがいい。
天気は快晴の空。
でも、この夏の時期に快晴の空はキツイ……。
みんなは、噴き出してくる汗を拭きながら教室を出ていく。
そして、ほとんどのみんなは教室を出て右に行くのに、わたしだけは左に行く。
なぜかって? それは——……。
わたしの入っている部活は、「電脳探偵部」だから……。

たぶん目次

作者の紹介
     >>1
まずはあいさつから始めましょう
               >>2>>3>>4>>6
電脳探偵部に入ったワケ(あるいは詐欺)
第一部 ガリ勉のよくあるパターン……?
                  >>9>>13>>15
第二部 いくら頑張ったって運命は変えられない
                  >>16>>19>>20
第三部 誘拐まがいなことをする部
              >>21>>22>>23>>24>>25
第四部 その部に入部し、しかも実行
                >>28>>29>>30>>33
第五部 デリート、実行(あるいはもう元には戻れない)
              >>37>>42>>44>>45>>48
第六部 デリート! 
          >>49
あとがき
      >>50

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Re: —バグ、消去します— ( No.45 )
日時: 2009/07/26 16:32
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

「…………。」
緊張の一瞬。
ドクンッ……ドクンッ……ドクンッ……。
心臓の鼓動が大きくなる。
心臓の鼓動が大きくなるにつれ、外に飛び出しそう……。

そして、斎藤たちは……コップを持った……。
「それでは、こっちがわたしの飲むものね。」
そういって、もう一つのコップを出す。
「それじゃぁ……『いっせーのーで』で飲みましょう。」
雨雲先輩が言う。

雨雲先輩……これはずしたら、死んじゃうんだよ……! なのに……なのになんであんなに平然でいられるの!?
「いっせーのーで!」
そう言って、一気にコップの中の水を飲み干す!

そして、毒のある方は……。
「どっちだ……!?」
……沈黙が過ぎる。
そして——……。
倒れたのは……。
「あっ……うぁっ……。」
斎藤たちだ……。
「クッ……アゥ……アァッッ……!」
「……うそ……。本当に死んじゃうの……!?」
わたしたちの鼓動がさらに大きくなる。

「雨雲! お前——」
その時!
雨雲先輩が指に人差し指を当て、シーッ!のポーズ。
「雨雲に曇……。お前ら何考えてんだ……。」
空雷先輩……。
斎藤たちが苦しんでる時に、驚きの一言を上げた。

「からいっ!」
……からい?
わたしはさっき発した言葉の意味がわからない。
カライ……?
「からいっ! これ毒じゃねぇーじゃねぇーかぁ!」
わたしはようやくこの一言がのみこめた。

「からいのかよぉ〜!」
わたしと空雷先輩は一緒に声を揃え、頭を抱える。
「からいんだったら、そんなリアクションすんなよぉ〜!」
そういって、「はぁ〜……。」とため息をつく空雷先輩。

「まぁ、これで賭けはわたしが勝ったわ。財産を——ということでしたが——……。」
えっ!?
「あなたたちは、罪を償ってもらいます。」
「罪を……償う?」
斎藤先生と佐藤先生の頭の上に「?」マークが飛び交う。

「海晴ちゃん! 最初の用を忘れちゃダメよ!」
雨雲先輩がわたしに言う。
そうだ……。わたしは、佐藤と斎藤に罪を償わせるんだ……。

「そうか! それでわたしの証言が必要なのね!」
わたしは曇先輩のやりたいことがよくわかり、カーテンから出て行く。
堂々と! 胸を張って!
わたしは……佐藤と斎藤をデリートする!

「この顔を覚えてないでしょうか? 佐藤先生、斎藤先生。」
そういって、雨雲先輩がわたしに指して言う。
「そしてわたしも——……。」
そういって、声を変え、メガネをかけ、髪をポニーテールに結ぶ。

「お前は……お前らは……桜雨雲と柳川海晴じゃないか!」
「どう? 先生たち。わたしたち生徒に騙された気分は?」
そしてニコッと微笑む。
……これは魔女が悪だくみをするときの笑みだろう。

「クッ……。お前達! こんなことをしてタダじゃなおかないぞ!」
「他人のこと考えるより、自分のこと考えたら? 罪を償うということは、罪をしたということよ!」
雨雲先輩の言葉がホールのなかにこだまする。

「わっ……わたしたちが何をしたというのだ!」
「この子が関係してるのわからないんですか? ほんっと……咎人ってマンガみたいにしらっばくれるのね。」
そういって、わたしに向き直る雨雲先輩。

「海晴ちゃん。あなたは一体この人たちにどんなことされたんだって?」
「はい。わたしは——。」
わたしはいっぱい話した。
この人たちの所為で偽りの点数を返されたこと。
わたしの点数で賭けごとに使われ、自己中心的な事で殴られたり、暴行を受けたこと。
そして、言い終わり、沈黙がこの場を支配した。

「すまないっ……。本当にすまないと思っている。」
佐藤が急にかがみこみ、土下座をする。
「いや……他の学校の教職員の友達が……『金を多く稼げる方法がある』と言って誘って来たんだ! それで……賭け仲間の斎藤と一緒にやったら……もう……止まらなくなっちまって……。本当に……申し訳ないと思っている……。」
「すまない……。」
佐藤と斎藤の言葉が重なる。

「なぁーんてなっ!」
そう言い、ナイフを出してくる。
「俺らがこのまま引き下がるとでも思ったか!」
そして、わたしたちに襲いかかってくる!
「うそ……やめてぇー!」

Re: —バグ、消去します— ( No.46 )
日時: 2009/07/26 17:15
名前: 心 (ID: VZEtILIi)

「さいとう」と「さとう」??

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

生徒に騙されるなんて。
先生はまったくw

Re: —バグ、消去します— ( No.47 )
日時: 2009/07/26 22:05
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

そうだよ! 斎藤と佐藤だよ。
佐藤が海晴の担任で、海晴が頭いいことをえさに、お金を賭けてたんだよ。それで、海晴の点数が悪くなって、ぶったひと。
斎藤は、佐藤と一緒に賭けしてた人で、これ以上佐藤が海晴に金賭けて儲けるのを阻止するために、偽りの成績にして返した人。
だから、この二人は咎人ですね。

まっ! それくらうちの魔女はすごいってことですよ! 元演劇部部長ですからね。

Re: —バグ、消去します— ( No.48 )
日時: 2009/07/26 22:39
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

ガツッ!
……あれ? いつまで経っても切りつけてこない。
わたしはそっと目を開ける。
そこには、とても大きな背中があった……。

「空雷!」
雨雲先輩が言う。
「……知ってたか? 俺もいるんだぜ、センコーよぉ!」
そして、佐藤の腕を押し上げ、そのままアッパーをくらわす。

「おっ……お前は! 楠空雷!」
「おう! 俺の名前は楠空雷様だ!」
空雷先輩の声がホールの中を駆け巡る様にこだまする。
「かかってこいよ、雑魚ども。」
「チッ……。だぁぁぁぁぁぁぁ!」

佐藤がナイフを持って空雷先輩に切りつける!
「あぶない!」
それを左肩で軽々とよける空雷先輩。
「遅いな。」
そして、ナイフを持っている右手を左手で掴み、
ボキッ!
「あっ……うあ……。」
骨を折らせる。
それと同時に、ナイフが静かに落ちる。
そして、そのまま空雷先輩が右手でみぞおちめがけてめり込ませる!

ドスッ!
「うっ……あっ……。」
そのまま倒れ込む佐藤先生。
「ったく……。ほんっと雑魚だな。こんな雑魚しないねぇーのかよ!」
そういって、長い足でナイフを思いっきり蹴る空雷先輩。

「なぁ……なぁ!」
「ヒッ!」
斎藤先生は尻もちをつき、腰が抜けた状態で走り去って行った。
「お前ら、大丈夫か?」
空雷先輩がこっちに戻ってくる(その時、佐藤先生の体を踏んで変な叫び声が聞こえたのが嫌だったけど)。

「大丈夫。空雷は?」
雨雲先輩が心配そうに聞く。
「俺は大丈夫だって! あんな雑魚に怪我なんかさせられねぇーよ!」
そういって、ヘヘッと笑う空雷先輩。
「でも、不良ってこ—ゆー時役に立つのよね。」
「お前は一言多いんだよ!」
……よかった。普通の先輩たちだ。

なんか……ちょっと異世界にいるような人たちで、わたしたちとは人種が違うような気がした……。
だけど、一瞬だけだけどね。
「さぁ! もう帰りましょう! 佐藤はこんなんだし。気がついたら帰るでしょう。」
「ちょっと待ってよ!」
わたしは空雷先輩と雨雲先輩を止める。

「この人たちほっといていいの? また変なことやるかもしれないのよ!」
「だーいじょーぶだよ! もう、こんなことがあったんだからしないだろうし。」
空雷先輩が陽気に頭の後ろで手を組みながら言う。

「それに! その時はまた電脳探偵部がデリートすればいいでしょ! もし、やったとしても、この事で脅せるしね。」
満面の笑みで言う雨雲先輩。

「そうそう。あーゆー雑魚は脅したもん勝ち。」
「だ・か・ら! 心配しなくていいわよ! 帰りましょう!」
……やっぱりこの人たちは異世界から来た魔女と不良なのだろうか……。

あれから、わたしたちの生活はなんの問題もなしに過ぎて行った。
斎藤先生と佐藤先生はちゃんと謝ってくれたし、賭けたお金も元に戻したそうだ。

それに、ちゃんと成績に不正があったと親に報告し、校長先生にこっぴどく怒られ、全校集会で大騒ぎになった。だけど、わたしはこれでよかったと思う。

だって——……最終的には笑顔だったんだもん(お母さんの笑顔も戻ったし)。
やっぱり……こーやって出来たのは、電脳探偵部のおかげかな?

Re: —バグ、消去します— ( No.49 )
日時: 2009/07/26 23:52
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

「ねぇ! そーいえば、雨雲と曇お前、よくあんな危ない賭けしたよな。」
空雷先輩が思い出したように言う。

わたしたちは、あの部室にいて、ガラクタ山の頂上がいつものように空雷先輩。机に並べてタロットカードをやっているのが雨雲先輩。カチャカチャとキーボードを叩いているのが曇先輩。

「そうだよ! あれ、わたしすっごくハラハラしたんだから! 雨雲先輩と曇先輩は絶対勝つ自信があったの? なかったら大変なことに——」
「あった(わ)。」
……へ?
「勝つ自身があったわよって言ってるの。」
「……うそだろ?」
「ホントよ。」
ちょっと間を置いた空雷先輩の言葉は雨雲先輩によってすぐに返された。

「これは話術をうまく利用したものです。」
曇先輩がパソコンの画面の見ながら言う。
「雨雲先輩自信が毒を入れているので答えはわかります。雨雲先輩は『選びなさい』いいました。でも、これは主語を表していない。『あなたが選びなさい』と言ったらそれは限定している。それか『あなたが選んだものがわたしのものになる』と言ったらこれも限定している。」
そして、ちょっとここで間を置く曇先輩。

「だけど、ただ単に『選びなさい』と言ったら、こっちは毒の入っている方がわかるんだから相手が選んだものが毒だったら毒じゃない方を持てばいい。反対に、相手が選んだものが毒じゃなかったら、『これはわたしのものなのね』と言って受け取ればいい。主語を表していないくらいで、賭けを左右できる。」
そして、曇先輩の長い長い説明は終わった。
「なるほどね……。」

わたしが納得している時、空雷先輩の頭の上に「?」マークが飛び交っている。
「……どーゆ意味だ?」
聞いてくると思った。
「つまり、『選べ』って言ったら、選んだら言った人が選んだものを選べるのよ。だけど、言われた人がツッコミしたら、終りだけどね。」
そういって、華麗なウィンク。

わたしは、このウィンクにとらわれた人はもう終わったなと思う。
「だけど……曇先輩は現場に来なかったよね? なんで?」
わたしがみんなに聞く。
「曇は……現場に来ないわよ。曇は計画を立てるだけだから。」
雨雲先輩が言う。

「なんでなんですか?」
「さぁ? 曇に直接聞いてみたら? 今いるんだし。」
そういって、あごを曇先輩に向ける。
「うっ……。」
わたしがひるんでいる時に、フッ……と雨雲先輩が笑う。
「怖いのよね……。わたしも後輩なのに最初の時は怖かったわ。だけど、今はもう慣れたかしらね? ……。」

そして、わたしを見て優しく微笑む。
「あなたも慣れるように頑張りなさい。」
わたしはこの雨雲先輩の微笑みに、曇先輩がとても遠くにいるような感じがした。
「あっ! そーいえば、曇!」
空雷先輩が大声を出して言う。

「お前、なんであの時呼び出しといて書類だけなんだよ! あんなのぶっつけ本番じゃねぇーか!」
その声にパソコンの画面から目を離さないで答える。
「だって……そうした方がおもしろいじゃないですか。」

……沈黙がこの場を支配し、しかも空気を凍らせる。
ぶっつけ本番がおもしろくて、書類だけだったのか……失敗は許されないと言ったのは誰だ? ぶっつけ本番なんて失敗する確率が高くなるのと同じなんだよ!

これは、不良と魔女よりも恐ろしい……悪魔だな。
……沈黙がまだこの場を支配している。
そして、このままチャイムが鳴り、みんな逃げるようにこの場を去って行った。
……なんか二年の曇先輩が部長になった理由がわかったような気がする……。

こうして——、わたしたちは電脳探偵部に初めて入った任務を終えました。
初めてにしてはとてもよかったんじゃないかと思ったんですが、雨雲先輩やみんなはどう思ってるのかな……。まぁいいや。

これが、わたしの初めての任務です。
あの時、わたしは電脳探偵部に入ってもよかったと思ったんですが……やっぱりそうではありませんでした……。
まぁ、初めての任務が終わったので、それでいいじゃありませんか!

       斎藤・佐藤、デリート!


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