ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- —バグ、消去します—
- 日時: 2009/07/26 23:58
- 名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)
キーンコーンカーンコーン……。
終礼が終わり、部活に励むため出ていくみんな。
とてもガヤガヤしている教室。
私たちのクラスは最上階で、見晴らしがいい。
天気は快晴の空。
でも、この夏の時期に快晴の空はキツイ……。
みんなは、噴き出してくる汗を拭きながら教室を出ていく。
そして、ほとんどのみんなは教室を出て右に行くのに、わたしだけは左に行く。
なぜかって? それは——……。
わたしの入っている部活は、「電脳探偵部」だから……。
たぶん目次
作者の紹介
>>1
まずはあいさつから始めましょう
>>2>>3>>4>>6
電脳探偵部に入ったワケ(あるいは詐欺)
第一部 ガリ勉のよくあるパターン……?
>>9>>13>>15
第二部 いくら頑張ったって運命は変えられない
>>16>>19>>20
第三部 誘拐まがいなことをする部
>>21>>22>>23>>24>>25
第四部 その部に入部し、しかも実行
>>28>>29>>30>>33
第五部 デリート、実行(あるいはもう元には戻れない)
>>37>>42>>44>>45>>48
第六部 デリート!
>>49
あとがき
>>50
- 電脳探偵部に入ったワケ(あるいは詐欺) ( No.20 )
- 日時: 2009/07/24 18:44
- 名前: 空雲 海 (ID: JvL4RDTQ)
わたしは一生懸命やった……。
たぶん、わたしのいままでの人生で初めてこんなに何かに熱中したんだと思う……。
わたしは寝る間も惜しんで、頑張った……。
わたしに期待されているという重圧感、次はないという緊張感……。
すべての感情がわたしに重くのしかかってきた……。
わたしは、佐藤先生に信頼されてる、そして、期待されている……。
その期待に応えたい……! 応えて……またあの佐藤先生のキラキラとした顔を見たい……。
わたしは、もうそのことだけで起きていることが出来ていた……。
そして、待ちにまった課題テストの日がやってきた……。
その結果は……。
「6位……。」
この結果を見たとたん、わたしは冷や汗をかいた……。
どうしよう……。約束は5位以内……これじゃぁ……。
わたしは、もう結果だけがすべてだった……ちゃんと答えを埋め、確実に出来たという自信
は、この結果を見たとたんどこかに吹っ飛んでしまった……。
テストの答案用紙を配る時、先生がくれたメモ……。
わたしは、そのメモに目を落とす。
見たくないけど……見なければいけなかった……。
「いつもの場所に4時。」
そっけなく、そう書いてあった……。
わたしは、そのメモを……捨ててしまいたくなった…
…。
わたしは一人トボトボと歩いている……。
あの理科室へと続くあの道を……。
ここは南館。しかも1階だから廊下は暗く、人通りも少ない。
いつもは、楽しい気分へ行っていたこの廊下も、今は地獄へと続く廊下のように思えてきた…。
「はぁ〜……。」
ため息をつくわたし……。
次はこの結果を見てどんなことを言うんだろう……また叩かれるんだろうか……。
その時!
「きゃっ!」
わたしはいきなり口をふさがれ後ろに引っ張られた。
そして、口と鼻に布をかぶせている。そして、わたしの記憶は……そこで……。
気がついたら、わたしはいすに座っていた。
「ここ……どこ?」
- 電脳探偵部に入ったワケ(あるいは詐欺) ( No.21 )
- 日時: 2009/07/24 18:45
- 名前: 空雲 海 (ID: JvL4RDTQ)
わたしがぼんやりとしている意識の中、様子をさぐる。
教室くらいのスペースに、何か大きな物が積んである(これはのちにガラクタ山)。
一番前にはデスク(これはのちに曇先輩が座っているデスク)。
電気がぼんやりとついているだけで、なんだかほこりっぽい……。
全体的に暗い……。一体ここは……。
その時!
「お目覚めのようね。」
透き通るような声……。
そして、意識がどんどんはっきりとしてきた……。
そして、声の方を見る。
「わたしの名前は桜 雨雲。」
そして、優雅に一礼する。そして、そのまま続ける。
「こっちの金髪のヤンキー野郎は楠 空雷」
「そして……」
一番前のデスクに目をやる。
わたしも目をやる。
「こっちの中2が我、電脳探偵部部長瓜杉 曇よ。」
- 電脳探偵部に入ったワケ(あるいは詐欺) ( No.22 )
- 日時: 2009/07/24 19:17
- 名前: 空雲 海 (ID: JvL4RDTQ)
ちなみに、クロロホルムでお前を眠らせたのは俺だ。」
そして、自信満々に自分を指さす楠先輩。
クロロホルム……クロロホルムとは、ハンカチにしみこませ口と鼻にしみこませると眠って しまうという薬物……。
こんなマンガみたいな展開が本当にあったなんて……。
てか、なんでそんなものを高校生が持ってるの!?
そもそも、電脳探偵部って何!
「電脳探偵部……? なんですか、それ。」
わたしは思っていたこと、ありのまま聞く。
「電脳探偵部っていうのは、バグをデリートする部よ。」
バグをデリート……。
バグは機会用語で、異物のこと。ウィルスみたいなもの。
デリートは機会用語で「消去」……。
バグ(異物)をデリート(消去)する部? わけわかんない……。
「バグは咎人。咎人は犯罪ややってはいけないことを犯した人。デリートは消去。つまり、 この部は、バグ(咎人)をデリート(消去)する部。あなたの周りに咎人がいることわからないの?」
咎人……? わたしの周りに犯した人なんていない。
「君……前に学年3位だったよね……そして、その次は10位、今が6位……。」
瓜杉先輩が口を開く。
わたしは、その言葉で本来の用事を思い出す。
「そうです。それより——用事があるんで簡潔にお願いします。」
わたしが言った瞬間に、覆いかぶさるように言ってきたのは……、
「まぁ、そんな焦んなよ。時間はたっぷりとある。お前、この前遅れてきたから早く来過ぎて 30分前だぞ。」
楠先輩……。
「……どうしてそれを……。」
そして、ニヤッと笑う。
わたしは首筋の毛が逆立った……。
この部は……一体……。
「………………。」
わたしが何も言わないでいると、桜先輩が口を開いた。
「怖がらなくてもいいわ。わたしたちはあなたを救いだそうとしているのよ。」
「救い出そうとしている?」
わたしの頭の上に「?」が飛び交う。
「中間テスト……3位……。」
曇先輩の言葉でわたしが反応する。
「期末テスト……2位……。」
あれ?
「課題テスト……1位……。」
……わたしの成績じゃないみたい……だって、わたしは……。
「これが本来の君の成績だ。」
「えっ!」
わたしはその言葉で、絶句する。
だって……わたしの成績は……。
「これ、どーゆーことかわかる?」
桜先輩がいたずらっぽい笑みを浮かべて聞いてくる。
「偽り……。」
わたしがつぶやくと、大きく首を縦に振る。
「そう……何者かがあなたの成績を邪魔したのよ。本来の成績を偽りにし、返した。」
う……そ……。
「それじゃぁ……本当は、下がってなかったの?」
「あなたの成績はうなぎのぼりだった……あなたは、偽りの事実を見せられていたのよ。」
なによ……それ……。
わたしがどれだけ挫折したと思ってるの……佐藤先生にも怒られたのに……。
「それ、誰ですか?」
「えっ?」
「誰がやったんですか……。」
わたしが低い声で言う。
「……知りたい?」
桜先輩がクスッと笑う。
「知りたいです。」
- Re: —バグ、消去します— ( No.23 )
- 日時: 2009/07/24 19:44
- 名前: 空雲 海 (ID: JvL4RDTQ)
「それは——」
「雨雲。話を進める前に、登場人物が一人抜けてる。」
曇先輩が雨雲先輩をさえぎって言う。
「おっと! そうだった……。」
そして、間をあけて続ける。
「もう一人、この事件にはいたのよ。」
「事件? なんで事件になってるの?」
「もう立派な事件よ。」
そういって、ニコリともしない雨雲先輩。
事件って……。
「佐藤先生と斎藤先生はお金で賭けをしていたのよ。」
「賭け?」
「そう——。それも、生徒の点数でね。」
「えっ!?」
わたしは雨雲先輩の言葉で絶句する。
賭け……。
「佐藤先生は、多額のお金をあなたに懸けていたのよ。だから、あなたの点数が下がると、 急に態度が変わったり、暴力を振るうようになった。自分の懸けていたお金が、無くなったんだもん。」
雨雲先輩がゆっくりと言う。
その言葉は、わたしに重みとしてのっかかる。
「だけど、あなたは本当なら1位になってるはずだった。それを邪魔したのが斎藤先生。 もう、これ以上自分のお金がなくなるのを阻止しようとして、あなたに偽りの点数を返した。 斎藤先生は、今頃微笑んでいるでしょうね……。」
雨雲先輩が言い終わる。
「…………。」
わたしは、しばらく物を言えなかった……。
わたしの点数で賭けをしていたなんて……。そんな重大なことを、わたしの点数で……。
「こんなこと……犯罪よ。」
「えっ!」
わたしの頭の中に犯罪の言葉が飛び交う。
「しかも、教職員。こんなのバレたらただじゃおかないでしょうね。学校を辞めさせられるか ……悪い場合は教職自体を辞めさせられるか……。」
「…………。」
口をポカーンッとするわたし。
「こんなこと……バレないと思ってるのね……あいつら……。」
雨雲先輩が悲しそうに言う。
「バレないと思ってるからやってるんだろ。じゃないと……やらない。」
机やいすを積み上げた所で寝ている空雷先輩が言う。
「いつか嘘はバレる……なのに、やるなんて……バカだ。」
デスクに手を組んだ上にあごを乗せている曇先輩が言う。
みんな……こんなこと、起こってほしくないんだ……。
……沈黙がこの場を支配する。
「このままで終わりたくない……。」
この沈黙を破ったのは曇先輩だ。
「柳川 海晴。」
「えっ!?」
どうしてわたしの名を……。
「バグをデリートする。柳川の許可が必要だ。」
曇先輩が言う。
「…………。」
言っていることがのみこめないわたし。
「わたしたちの部は、電脳探偵部。部活動内容は……バグをデリートすること。斎藤と佐藤 をデリートする。それにはあなたの許可が必要よ。」
雨雲先輩が言う。
その瞳は、わたしをきちんととらえている。
「このまま終わらせるのかよ……。知らない間に点数で賭けされて、偽りの点数見せられて、 それでいいのかよ。」
空雷先輩が真剣な顔でわたしに聞いてくる。
「すべては柳川(お前)の判断にある。」
みんなの声が揃う。
……わたしは目を閉じる。
今、何をすればいいのか……そして、何をするべきなのか……答えは一つ!
「いいわけないじゃない! 斎藤と佐藤を……デリートする!」
- 電脳探偵部に入ったワケ(あるいは詐欺) ( No.24 )
- 日時: 2009/07/24 19:53
- 名前: 空雲 海 (ID: JvL4RDTQ)
……沈黙がまた訪れる。
そして、曇先輩がデスクのいすからゆっくりと立ち上がる。
「その依頼……お受けしました。」
「よっしゃ!」
わたしがガッツポーズをとる。
「ただし——……。」
曇先輩が低い声で言う。
「えっ……?」
その言葉でわたしの言葉が止まる。
「条件がある。」
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