ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん 参照1000突破
日時: 2011/12/01 18:03
名前: 出雲 (ID: lUTEu1Y0)

長い間放置してしまい申し訳ないです。
このたび更新再開したい所存にありますm(__)m
   
作者の出雲と申すものです。
三作目
「生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん」です。

一言
「参照1000突破ありがとうございますm(__)m」
もう一言
「更新沈滞中です…」

注意
・更新が遅い
・現在掛け持ち状態
・文才皆無
・スランプ状態

登場人物 >>1
作品 >>8
作品2 >>48

参照100突破 >>10
参照200突破 >>15
参照300突破 >>23
参照400突破 >>32
参照500突破 >>35
参照600突破 >>43
参照700突破 >>49
参照800突破 >>57
参照900突破 >>62
参照1000突破 >>66

第零章 無色せかい >>42
一色 白色せかい >>47

第一章 現実でりーと >>5
一話 でりーと済  >>6  >>7  >>11
二話 自我でりーと >>13 >>14 >>16
三話 でりーと病棟 >>17 >>18 >>19   

第二章 崩壊りばーす >>20
四話 追憶りばーす >>21 >>22 >>24
五話 りばーす中  >>31 >>33 >>34
六話 りばーす回廊 >>37 >>44 >>50

第三章 不完全るーる >>51
七話 自分るーる >>52 >>60 >>63
八話 るーる説明 >>64 >>65

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Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.18 )
日時: 2011/04/25 15:21
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第一章「現実でりーと」→第三話「でりーと病棟2」


「…失礼」
お見苦しい所を見せてしまったようで。

僕だと確信した内海クンは言う。
「大丈夫ですか?」
うん、それしか言う言葉はないだろうに。
そのもっともな言葉に頷いて、彼を見る。

手に握られていたのは白いタオル。

「今日、診察?」
「お見舞いです」
ふむむ、お見舞いとな。
ということは握られているのはその、方のだと思われますな。

でも、彼は手に持っていたタオルを僕に手渡してきた。
「拭いて下さい」

「いいんですか?」
「全然」
それではお言葉に甘えて。
ふきふき、と…言葉の意味は分かりますね。

口元を拭うと、改めて問う。
「お見舞いって言うのは…?」
他人の事に口出すのはどうかと思いますけど。
僕にとっては関係ないのであーる。

「透の…友人のです」
最初に出たのは、名前。
その彼と同じ名前の友人を聞いて、思い出す人が一人。

「透って、水白 透?」
水白 透。
一年前の殺人事件に彼と共に関わったという少女。

「そう、透の」
彼女はまだ入院してるのか。

話を聞くところ、彼女は殺人事件の影響で右腕の機能を失ったとか何とか。

「透サンの所早く戻った方がいいんじゃ?」
僕なんかの相手をしていていいのか。
僕も早く診察に行った方がいいんだろうけど。

逝った方が、ねぇ…

「それを言うなら、早く診察行った方がいいんじゃ?」
返された!

「あぁ、そうですよね」
その言葉は、早く行けよって言ってるのだと認識。
ふむぅ…なんだか邪魔ものっぽい。

「それじゃ」
内海クンは僕の言葉に会釈して道を譲ってくれた。


あ。タオル、どうしたものか。


「氏名君、大丈夫だった?」
トイレをでると、待ち伏せていたのか。
違うか。
待っていてくれた、訳だ。

「すいません、大丈夫です」

「氏名君、担当の先生は?」
「えーっと。久留間先生です」
久留間…名前は覚えてないです、すいません。

久留間先生、男の人。それ以外は謎。

「久留間先生は、こっちね」
僕の前を歩こうとした看護婦さん。

だが、その看護婦さんを呼ぶ声?が一つ。
「佐藤君!」
呼ぶ声からして、先生だと思う。

日本で一番多い名字の看護婦さんは、戸惑った様子で僕に助けを求めてきた。
…新入りだと思います。

「あ、一人で大丈夫なので…」

待っていたかのように、そう聞くと佐藤さんはお礼を言ってかけていった。


…何処に行っても邪魔ものなのかね。


「哀しい人間だよ全く」
そうして、肩を落として歩く素振りは…
しなかったけども、呟いて歩き出す。

いーさんが心配するかもな。
時間が遅れることは明白だし。


言葉の意味はもちろん、無いけどさ。

Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.19 )
日時: 2011/04/25 15:22
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第一章「現実でりーと」→第三話「でりーと病棟3」


「コンバンワ」
ノックせずにドアを開ける僕。
何とも無礼講。

その言葉に振り向いたのは黒髪の男の人。

開いたドアには担当医の名前が書かれていた。
「…遅いんだけど」

死んだような目をした、その担当医…久留間は机に頬杖をついて大欠伸をする。
「眠いんですか?」

自動ドアが閉まっていく音がして、僕はその久留間先生の前に置いてあるドアに座る。
軋む音がして、何だか僕が重いみたいじゃないか。
「眠いに決まってんでしょ」

分かり切っていたことを聞いて、分かり切った答え。

なんで聞いたのか、自分でも言葉の意味がわからないんだけど。
「遅れてすいません」

ここで、やっとマナーが守れたようで。
軽く頭を下げて、やっと本題に入ると言うところ。
「あーそれじゃ、いろいろ聞くから」


あ、そういえば。


「名前なんですか?」
聞いておかないと、一回聞いたかな?

「…またそれか」
久留間先生は髪を掻き毟って、呆れたように名札を見せた。

それを見ようと前へ身体を乗り出すと、先ほどよりも椅子が軋む。
「…馨」
名札には久留間 馨の文字。

「いつも言ってるだろ」
溜息をついて、名前を聞いた瞬間に嫌そうな顔をする久留間先生。
思うに、自分の名前が嫌な奴ですな。

僕と同じだ。

言葉に意味は無いんだけど。

「…おい」
「はい?」
「もう時間なんだけど」
「はい」

…今度こそ久留間先生は呆れたみたいだ。
長話が過ぎましたかな。

「もういいよ、何も変わって無い見たいだし」
変わってないと言ったらそうかもしれない。

「次は早めにきます」
そう言うといつも通りに先生は机の上の袋を手渡してきた。
薬、精神安定剤、僕の必需品。

それを受け取って椅子から立ち上がる。
「それじゃあ」
ドアに手を掛けようとしたその時、後ろから声をかけられる。

「氏名」

これだけ書くと、意味分からないな。うん。
「なんでしょうか?」
背を向けていた身体を前へ向かせる。

久留間先生はまた欠伸をしながら話し出した。

「郁は元気か?」
郁、いーさん。
「いーさんですか?元気ですよ」

そう言うと、そうか。言った後に続けた。
「忘れるなんて、無理だよな」
どういう意図で繋がったかわからないけれど、言いたいことは分かる。

いーさんに言われた、忘れろと言う言葉のことだと思う。

「そ、うですね」

「久留間先生にも経験が?」
僕はもう先生とは目を合わせていない。

背を向けていて、ドアも少し開けた。
少し開けたドアからは隙間風が吹き、手が悴んで出たくないな、とも思わせた。


「まぁ、な」


先生が呟いた。
それを聞くと、僕は後姿でもわかるように頭を下げて、診察室を後にした。

Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.20 )
日時: 2011/04/25 15:23
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第二章「崩壊りばーす」→プロローグ

        ‐第二章‐ 
        崩壊りばーす



お母さんは死にました。
 交通事故に巻き込まれて、ぐしゃぐしゃに。


—言葉に意味はありません。


お父さんは死にました。
 交通事故に巻きまれて、ぐちゃぐちゃに。


—言葉に意味はありません。


兄貴は死にました。
 殺人事件を起こして、自分もぐさぐさに。


—言葉に意味はありません。


弟は死にました。
 いじめが原因の、自殺でぼきぼきに。


—言葉に意味はありません。



僕は死にませんでした。
 その代わりに、目の前で人が死んでいきました。


僕は死にそうでした。
 その人は、目の前で多くの人を殺しました。


僕は死なせました。
 その人は、僕の目の前で死んでいきました。



僕は、言葉に意味を失くしました。
 
 —言葉に意味は、ありません。

Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.21 )
日時: 2011/04/25 15:24
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第二章「崩壊りばーす」→第四話「追憶りばーす1」

      第四話 追憶りばーす


「診察終わったんですか?」


診察室を出ると顔を赤くした分身こと内海が壁に寄りかかっていた。

右腕をタオルで強く握りしめながら、苦痛に歪んだ顔で、でも笑顔で。
「どうしたんですか、それ」

「刺された…」んです。
そう続けた時に、内海は右腕にのせていたタオルを剥がした。

「  」
抉られた肉、右腕は赤く染まっていて。


犯人は何となくわかってた。

「水白にやられたんですか?」
彼女ならやりかねない、いいや、彼女のお見舞いに来てるならそれしかありえない。

彼女はいつも奇声を上げていた。
看護婦さんを困らせていた。
自虐行為でシーツが赤く染まっていた。
自分の名前を何度も呼んでいた。

それは、内海の名前だったんだけど。

「そうですよ」
内海は笑顔でそう言った。
よく、笑顔でいられるよな。

そう感心していると内海の寄りかかっていた壁の隣、扉から聞きなれた声が聞こえてきた。
聞きなれた、僕の通う診察室の向かいの病室。


『とおるとおるとおるとおるとおるとおるとおるとおるとおるとおるとおるとおるとおる!!」


それに、内海は壁から背を離すとめくり上げていたシャツを下ろした。
シャツは、もとは白かったんだろうけど。

「大丈夫、なんですか?」
じゃないとは思う。
でも、彼は大丈夫って答えるんだろうな。

「はい」
内海はお呼びだしをくらった、扉に手をかけた。
開ける直前に内海は僕を振り返って会釈をした。

「それじゃあ、僕はこれで」

内海が扉を開けて。

僕が歩き出そうとして。

水白の声が聞こえなくなって。

病院はいつも通り静かになって。

僕の手が音を立てずに誰かに掴まれて。

掴まれて、て?
「え」

左手首が強く圧迫される。

「あだだだだだだ!!」
久しぶりの大きな声で声が裏返った。

僕の声が響いたからか、内海も顔を出して驚いたように此方を見てくる。
「氏名くん?」

『とーるとーるとーるとーる』
少し高い、女の声が後方から聞こえてくる。
自分の腕を握っているのが、その声の主だと気づくのにはそう時間はかからなかった。

「ありすちゃん、何でここにいるの?」
内海がその声の主らしい女の名前、ありすを口にした。
彼は驚きで少し固まってたりする。

「とーる、とーる見つけた」
多分。
最初のとーるは内海のことなんだと思うけど。

「とーるって…」
「とーる」
「氏名くんのこと?」
「とーる!」

その、ありすと言う名の女は僕の腕を先ほどよりも強く握りしめて。
「痛っ」

顔を見せた。
「         」

Re: 生きたいあーちゃんと逝きたいあーくん ( No.22 )
日時: 2011/04/25 15:25
名前: 出雲 (ID: luklZ16E)
参照: 第二章「崩壊りばーす」→第四話「追憶りばーす2」


あれ?

あれれ。
『とーる』

顔を見せたありす(定かではない)は、僕の心を蝕んでいく記憶の中にいる少女と似てる。
積木が崩れていくように、僕の心が壊れていって。

僕が発したその言葉は、僕にとって。
僕だけを傷つける、自虐的な言葉。


『あーちゃん』


僕だけの心に残る。
僕だけが知っている。
僕だけで彼女の為の記憶。
「とーる、あーちゃん、とーる?」

…こほん。
あーくんとしての僕の語り終了。
言葉に意味の無い語りも終了。

あーちゃん(ありす(多分(確か(不明瞭))))と、呼んでいた少女がいた。
過去、過去と言う名の記憶の中で彼女は僕をあーくんと呼んでいた訳で。

「僕はとーるじゃないよ」
彼女が僕を忘れたのは、悪夢が終わった日。

違う。

彼女が僕を忘れたことで終わって、始まったのか。

「あーくんだよ、あーちゃん」
覚えてる筈は無いけれど、僕が彼女と出会うなら呼ばなければいけない約束。

「あーくん!私あーちゃん!」
その約束も破ろうと思えば破れるのだけれど。
言葉に意味を持ちたいから。

僕が最後に意味を持った言葉だったから。

「そうだよ。やっと逢えたね」
心が崩壊しても、崩れて壊れて繰り返して。

りばーす、りばーす。

今日から悪夢を思い出す。
「うん!とーる探してたの!あーくん!」
「あーちゃんはとーるを探してたの?」
「そうだよ、とーるととーるがらっぶらっぶなの!」
「羨ましかった?」

「うん!!私もらっぶらびゅしたかったのだ!」
そうかー、僕を探していたわけじゃないことが心が痛む原因?
憎いと思うのは、僕の異常な嫉妬?

「じゃあ、昔みたいにらぶらぶしますか」
言葉に意味がないように。
「あーくんにらぶどっきゅーん!」
「どっきゅーん」

彼女の言葉にも意味は無いんだろうね。

『氏名くん…』
とーる(男)が僕を見て呟いた。
うぬ。突然おかしくなった僕にどん引きしている感じですかね。

これが、あーくんなので。
「改めまして、あーくんです」
自己紹介をしてみる。

彼が口を開く前にあーちゃんが腕を絞る。
「あーくん、とーるなのだ」
痛すぎて、言葉が返せないのだけど彼女は彼を紹介してくれた。
いだだだだだ。

「はじめまして、とーるです」
そうして彼もとーるとして自己紹介をした。
笑って、でも内海明流の笑いでは無くて『とーる』としての。


「とーる!あーくんお借りしまするー」

分身だともう一度確信。
僕であって僕ではない、彼であって彼では無い。

そして、とーる(女)とあーちゃんは分身に近い。
誰かを必要にしていて、誰かが好きで、でもその相手は恐れてる。

そんな、偽善で哀しいカップルが精神科病棟に二つに増えましたとさ。


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