ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ツギハギセカイ〜合作小説〜
- 日時: 2011/02/10 18:58
- 名前: 愉快な小説家たち (ID: fFMoervE)
この小説は雑談掲示板に立てていたスレ
「小説のキャラ同士で何か作ってみないか?というのが題材の雑談場」のメンバーの合作小説ですっ!
各小説の皆さんが合流するまで全員自由に書きますw順番どおりではないのでご了承ください><;
〜目次だっ!〜
オープニングテーマソング…>>26
〜プロローグ〜…>>1
第一章:混沌の始まり
遮犬作:>>2 >>18 >>31 >>54
青銅作:>>3 >>19 >>47 >>55(NEW)
Nekopanchi作:>>5 >>20 >>45
agu作:>>4 >>21 >>40
Neon作:>>6 >>22 >>32 >>43 >>53
るりぃ作:>>7 >>23 >>29 >>39
紅蓮の流星作:>>8 >>48 >>49 >>50
金平糖作:>>9
ZERO作:>>10 >>38 >>56(NEW)
カニ作:>>36 >>42 >>46
ソフィア作:>>12
いち作:>>13 >>28 >>34 >>41 >>57(NEW)
刹那作:>>15
さわ作:>>16 >>30 >>37 >>44
狩人作:>>17 >>33 >>51
紅蓮さん&いちさんペア:>>52
暴風警報!のちのち生徒会!! (遮犬作)
北斗の拳〜another story〜 (青銅さん作)
闇と獣と凡人と (Nekopanchiさん作)
スパイは荒事がお好き (aguさん作)
魔の海賊船 (絶櫨さんorNeonさん作)
総大将は女子高生! (るりぃさん作)
紫電スパイダー (紅蓮の流星さん作)
理想郷 (金平糖さん作)
殺戮兵器チームαと殺戮時代 (ZEROさん作)
-×-×-大脱出-×-×-(カニさん作)
ノストラダムス! (ソフィアさん作)
SURVIVAL GAME (いちさん作)
GHOSTB BOOK (刹那さん作)
魔法なんて大っ嫌い! (リューリラさん作)
路地裏の住人たち (狩人さん作)
以上の作品の順番で回っております!
小説を書く参加者様!
・遮犬
・青銅さん
・Nekopanchiさん
・絶櫨さん
・るりぃさん
・aguさん
・紅蓮の流星さん
・金平糖さん
・ZEROさん
・カニさん
・ソフィアさん
・いちさん
・刹那さん
・さわさん
・狩人さん
〜登場キャラの小説名&参加者一同〜
(遮犬さん作)
・暴風警報!のちのち生徒会!!(コメディ)
・白夜のトワイライト(シリアス)
(青銅さん作)
・北斗の拳〜another story〜(二次)
(Nekopanchiさん作)
・闇と獣と凡人と(シリアス)
(aguさん作)
・スパイは荒事がお好き(シリアス)
(絶櫨さん作)
・ドジでヘタレで残念な天才
・亡者の憂鬱
・魔の海賊船
・亜麻色の海賊
・凛として迎え撃つ嫌われ者
(るりぃさん作)
・総大将は女子高生!(二次)
・黒夜叉伝記
(紅蓮の流星さん作)
・紫電スパイダー
(金平糖さん作)
・理想郷
(ZEROさん作)
・殺戮時代 チームαと殺戮兵器
(カニさん作)
-×-×-大脱出-×-×-
(ソフィアさん作)
・ノストラダムス!
(いちさん作)
・SURVIVAL GAME
(刹那さん作)
・GHOSTB BOOK
(さわさん作)
・魔法なんて大っ嫌い!
(狩人さん作)
・路地裏の住民たち
これらは書く人の順番でもありますw
まだ参加者はいるのですが雑談掲示板のほうにこられていないので表示することが出来ませぬ><;
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- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.50 )
- 日時: 2010/11/22 19:10
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: .RPx9Kok)
突如空中からひらり、とまるで蜘蛛の如く舞い降りたその男。
その男を見て、少女は冷や汗をかかずにはいられなかった。
「・・・見つけたぜ、『イエスタディ』」
「その声・・・『バイオレット』・・・!」
「・・・お前を始末する」
言うなり、『バイオレット』は駆け出し、一瞬で少女・・・『イエスタディ』の目の前に。
「っ・・・!」
バイオレットの眼にもとまらぬ速さの蹴りを、イエスタディは腕で何とか防ぐ。
「あうっ!」
しかし蹴りの衝撃で、そのまま左に吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「つぅっ・・・!」
イエスタディは直ぐ起き上がると、右腕を押さえながら走りだし路地裏に逃げ込む。
「・・・・・」
その様子を見たバイオレットは、一瞬銀色に煌めいた『何か』を宙に放るような動作の後、
地面を蹴り、空に跳んだ。
「はあ・・・はあ・・・!」
イエスタディは、壁にもたれかかりながらもなお歩く。
「先ずは、どこかに隠れないと・・・!」
バイオレットに勝てるわけが無い、それどころか逃げ切ることさえ不可能。
そう判断した彼女はどこか屋内へ隠れる道を選択した。
イエスタディが不意に、今自分がもたれかかっていたビルの壁に手を当てる。
すると、壁が砂になって崩れ落ち、丁度人一人通れる大きさの穴が開いた。
「ここなら、少しは安全かな・・・?」
イエスタディは誰ともなく呟く。
ふぅっ、と息を吐いて座りこむ。
が、次の瞬間、屋上の方からズン、と鈍重な音。
イエスタディが顔を上げた次の瞬間、もう一度ズン、と聞こえた。
ズン、ズン、とその音は少しずつ近づいてきて、彼女の心にある予感をよぎらせる。
はたして、その予感は当たっていた。
ぴし、とまるで刃物が岩石を切り裂く音が、紫色の淡い閃光と共に。
天井が切り裂かれ、独特の音を立てて落ちてきた崩れた石材と共に落ちてきて、その中から現れたのは。
黒い仮面を着けた、黒いコートの男・・・バイオレットだった。
イエスタディはすかさず、壁に穴を空けて逃げようとする。が。
「そうはいかないぜ?」
「!?」
ぐんっ、とイエスタディは見えない『何か』に引っ張られ、
バイオレットの目の前に。バイオレットは右手で彼女の首を掴んだ。
「ぐぅっ!」
そしてそのまま左手で空中の『何か』を掴み、今自分が降りてきた穴を通って一気に屋上へ。
「ここならお前の能力でも逃げられないだろ」
屋上の端。
イエスタディは首を掴まれ、足元は虚空。落ちればひとたまりも無いだろう。
「・・・どうして」
イエスタディが、言う。
「どうして・・・貴方は彼らに味方したんですか・・・!?」
「・・・・・」
バイオレットは、答えない。
「このまま『彼』の野望が成就してしまえば・・・
貴方のいた世界が消えてしまうんですよ・・・!?
いや、貴方の世界だけじゃない・・・。
この戦いに巻き込まれた人たちの世界まで・・・!
・・・お願いです、もう一度考え直してください・・・
『彼』を倒すためには、貴方の協力が必要なんです・・・!
その為にボクは、貴方をこの世界に招いた・・・!」
その瞬間、びゅおお、と一陣の風。
バイオレットのフードが、風にあおられ、外れ、
バイオレットの淡い紫色の髪が露わになる。
仮面には、紫色の六眼。
「・・・興味が無い」
「きゃああああっ!」
刹那、紫色の閃光が奔ると共に、イエスタディの絶叫。
「連れてくるなら、他の人間にするべきだったな」
そう言って、バイオレットは無情にも、右手を離した。
「そんな・・・どうしてですか・・・?・・・『籐堂紫苑』・・・」
目に涙を浮かべながら闇の中へ墜ちていくイエスタディを、
バイオレット・・・否、『籐堂紫苑』は仮面を外し、冷然と見下ろすばかりであった。
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.51 )
- 日時: 2010/11/23 15:25
- 名前: 狩人 ◆Puie0VNSjk (ID: /od6a26Q)
「ここは?」
私たち、鬼と天はどこかの世界に飛ばされた
「んーっ、ミーナたちとは離れたみたいだな」
「まぁあの子達には三日月が居るから大丈夫でしょう」
そう言って私は刀を抜いた
「情報収集、処理、演算…発動」
私の刀に宿る能力の一つ、「情報」
半径1キロ以内なら殆どの情報を得ることができる
(…何もいない?生き物が500メートル以内には…」
「どうした?」
「生き物が居ない」
「は?どういうことだ?」
天は不思議そうに辺りを見渡した
五感の優れている天はこの近くに生き物が居ないことを確認した
「まずいな、あいつらとは相当離れているぞ」
「うん、早く見つけて…」
その瞬間だった、ちょうど1キロ地点
北、南、西に三人の人影あった
その姿を見た瞬間鬼の体がゾクリと震えた
そしてニヤリと笑った
「コート、太陽、桜、神」
「は?」
「私たちと今言ったのは私たちと同等、もしくは限りなく近いそれ以下の強さを持つ者達」
「……」
「楽しみね」
「桜って言うとまさかあいつか?」
「あの子でしょうね」
「あいつも飛ばされたのか…だが、神ってのは?」
「…私以上の力を持った「アイツ」よ」
「はぁ!?それっておま!…正直この世界の住人じゃ勝てないぞ!?武神でも呼ばない限り…」
「いいじゃない、今は私のほうが強いわ」
あきれたように天は顔を手で隠した
そして「遠近無視」とつぶやいて刀を縦に振るった
大きな音と共に、一直線の道ができた
辺りは砂煙に包まれたが鬼が二本の刀で「孔雀」とつぶやいて刀を振るった瞬間砂煙が収まった
私たち二人は裏社会最強…いや、人類最強と呼ばれている
だが、私は自分を下だと思っている
何故なら、私は自分以上に強い「武神」という者を見てしまったから
片手で、それも手首も曲げずに私を捻りつぶして地に伏せた
『弱いな、下の中ってとこだ』
『もし俺に勝ちたいならせめて下じゃなくて中くらいにはなってくれ』
『張り合いが無いんだよ…お前ら、強い相手とひたすら戦ったことあるか?』
『無いならやってみろ、楽しいぞ?命を賭けるのは』
この言葉を放たれた私たちは、それ以来ずっと強い敵と戦い続けている
「行きましょう、天…神様を倒しに」
「鬼…俺は太陽と戦ってみたいのだが」
「ならここで一旦別れましょう」
「そうするか、適当に連絡する時は地震でも起こしてくれ」
「分かったわ…健闘を祈るわ」
「誰に向って言ってるんだ?」
二人は笑って別の方向に走り出した
強者が居る、その戦場に向けて
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.52 )
- 日時: 2010/12/07 16:14
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: EWuSebNO)
男の懐にあった端末には感謝しなければならないだろう。
この端末にはこの辺り一帯の地図が入っている。
そうでなくともこの付近は一通り頭に入っているが、『1番』や『12番』といった単語に覚えはない。
おかげでどうにか先程男が言っていた『12番』に辿り着くことができた。
あいかわらず辺りはビルがそびえるばかりの、街灯だけが道路を照らすだけの闇夜の街並みだが。
やはり俺たちの知っている携帯端末よりも遥かに高性能なところも、逆にありがたい。
・・・あの男が言っていた『仲間』。
それはやはり俺と同じように他のパラレルワールドから来た人間だろうか・・・?
正直敵の内部に精通した味方が一人欲しい。
無論裏切られる可能性も否めないが、それならそれで十分に敵に近付くことができる。
裏切らなかったら万々歳だ。
食料円盤がある以上食料の問題は無い。とはいえ、いつまでも手を拱いているのは得策じゃない。
何しろいつ敵が先刻のように襲いかかってくるかもわからない。恐らく情報網も相当なもの。
今はSURVIVAL GAMEの時のようには仲間はいない。
疲れきって寝ているところでも襲われたらその時点で終わりだ。
・・・どう考えても、長く今の状況でいるのは賢明な判断とは言えない。
何にせよ、早いところその『仲間』とやらを見つけるしかないみたいだな。
男が死んだところ見ると、恐らく罠ではないだろう。
・・・遠隔操作で人を殺すほどの何か。罠にかけられたらその時点で死ぬ可能性もある。
これは慎重にいかないとな・・・。
・・・いや、だとしたら敵側に精通している奴を味方に引き入れるのはやっぱり危ないか・・・?
「やっぱりこんな状況だと頭も上手く回らないな・・・」
そう。どういう訳か夜が明けないのだ。
かれこれ1番からここまで、もう随分と長い時間移動してきたはず。
何日、とは流石に言わないが、少なくとも夜が明けてもいい時間は。
だが一向に夜が明ける様子が無い。端末に時計らしき機能も無い。
どうやらこの世界ではいわゆる常識は無意味みたいだ。
・・・味方に引き入れるにしても、そうでないにしても敵との接触は必要か・・・。
そこまで考え路地裏に入り込んだ時、目測数メートルくらい先の空中に、少女が浮いているのを見た。
少女の髪は紫色で、毛糸の帽子とセーター、
マフラーにブーツとミニスカートの下にタイツといういかにも冬の恰好をしている。
・・・まさか、ここまで常識が通用しないとはな。寝たまま浮く奴なんて見たことも聞いたことも無い。
と思ったが、そうではなかった。
「ん・・・?」
少女は寝ていたのではなく、恐らく気絶している。
そして、ところどころに火傷の痕。
・・・ということは・・・この少女は味方か?
「おい、あんた大丈夫か!」
そう言って少女に近づくと、少女が浮いていたのではなく
まるでハンモックの要領で闇にまぎれて見えない何かに乗っていたのがわかった。
「これは・・・金属の糸・・・?」
切れ味はあまり無いようだ。
そして、上手く力が分散するようにまるで蜘蛛の巣のような形になり、少女を支えていた。
「・・・と、まずは手当てをしなきゃな」
さっきの男からついでに携帯医療セットなんかも失敬しておいて正解だった。
いくつもの死線をくぐり抜け、事実一度電撃で死んだ身だからこそ、わかる。
まず一つ目は、この少女の火傷は電撃によるもの。右腕に打撃による痣の痕もあったが。
そして二つ目は、そのどちらの怪我においても、
言い方が少し変だが、絶妙な加減がなされていたということ。
腕の痣から見るに、これをつけた奴は相当体術に精通している。
そして、火傷の痕。痕とは言っても残らないように、ケロイドにもならないようになっていた。
しかし他にこれといった外傷は無い。おそらく気絶した理由は、電撃。
・・・もし、これらが偶然ではなく、わざとやったのなら・・・。
「・・・相当厄介な相手だな」
・・・まあまずは、こいつが起きたら色々と情報を聞き出すとしようか・・・。
「ん・・・」
と、早いな。
「あ・・・れ・・・ここは・・・いわゆる天国・・・?」
「目が覚めたか」
「・・・え?あなたが・・・もしかして、俗に言う天使さんってやつですか?」
「いや、違う。勝手に俺もあんたも死んだことにしないでくれ」
「・・・あれ?私確か屋上から落ちて死んだんじゃ・・・」
「いや、軽い怪我と火傷はしていたけど、ハンモックみたいに空中に吊るされているだけだったよ」
「・・・えっと、てことは貴方がこの傷の手当てを・・・?」
俺は無言でうなずいた。
「ありがとうございますっ!ええと、なんてお礼を言ったらいいか・・・
あ、とりあえず自己紹介からしますね!私、イエスタディっていいます!」
イエスタディ・・・『昨日』?随分珍しい名前だな。
「本当にありがとうございました!ええと・・・」
少女が一瞬何か言おうとして止まったので、
「ああ、俺は遠野秋夜」
俺も名乗ってやった。とりあえず悪い奴ではなさそうだ。
味方とみていいんだよな・・・?
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.53 )
- 日時: 2010/12/22 15:13
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
当たり前の結果だとばかりに頷くネルに対し、ジャックは納得がいかなかったらしい。 腰の刀、流れ星に手を伸ばす。 実力の方が伴っていないと判断されたと思ったのだろう。
辺り構わず斬り付けた。 酒場の店主からしたらたまったものじゃないだろう。 だが、サタンの厳しい表情は変わらずジャックへと向けられる。
「実力は確かに素晴らしい、魔術を除けば恐らくこの中で私に並ぶだろう。 だが、相手は魔術どころか未知の能力を扱う。 まず魔術なしでは対抗出来ないだろう、上級魔術を余所見しながらでも扱えるようになってからだ」
「な……止めろ、放せコラ! オイ! 人の放し聞けってチョット待て……ッ!」
そういうと、サタンは暴れるジャックの腕を掴むとその場に溶ける様にして消えた。 居た場所に、銀製の小さなペンダントが残る。
「……なんでジャックがこれを持ってた?」
そのペンダントを拾い上げるとネルはまじまじと見つめ、ため息をついた。 どうやらろくでもないものらしい。
「それ、何?」
流が危ないものでも見るかのようにそれに顔を近づける。 その直後、
「わぁッ!」
ネルは突然ペンダントを流の顔に近づけた。 流は驚いて顔を引っ込める。
「何するんですか !?」
流は明らかに呆れながらネルを軽く睨む。
「なにってさ、これ鍵だよ。 しかも神門の。 門番共が、サボってるな」
それに対し、ネルは面白そうに悪態をついた。 しばらくすると、ジャックが鎮めた酒場に活気が戻ってきた。
- Re: ツギハギセカイ〜合作小説〜 ( No.54 )
- 日時: 2011/01/21 13:43
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: .pwG6i3H)
- 参照: いやぁ、久々にサーセンorz
職業も決まり、見た目もそれに合わせたものにした俺達をおさらいしてみようじゃないか。
夕姫は英雄、鈴音ちゃんは魔術師、そして俺は——
「何の変化もなくないか?」
そう、俺は全く何も皆無に近いほど影響はなかった。
夕姫は肩当てやら動きやすそうな鎧、マントとかをつけているし……鈴音ちゃんもアニメでありそうな魔術師のハットとか……。
俺は何の変わりもない。特にこれといって変わりはなかった。さすが????だな。俺の脳内も????にさせてくれやがった。
「まあいいんじゃない? 武器も木の枝だし」
言われてみればそうだ。俺の武器は木の枝で……職業は謎。俺のキャラ設定おかしすぎるだろっ!
手に持っていた木の枝を地面に投げつけようとしたが折れてしまっては元も子もないので何とか押し留めた。
「よーしっ! 魔王倒すぞーっ!」
「いやいや、待て。夕姫、お前は本当の目的を見失ってはいないか?」
「魔王抹消ですよね?」
「鈴音ちゃんはしかねないから怖いな」
さっきから邪気と呼ぶに値するほどの笑みを浮かべている。これは鈴音ちゃんのゲーム脳が働き始めたせいか?
俺は一つため息を吐いて落ち着くともう一度状況をゆっくり把握するように話してやる。
「いいか? この世界は少し俺達の世界に外見は似てるけど、違う世界なわけだ。さらにはこの世界に椿たちも来たかもしれない」
「ふむふむ」と、頷く二人だが……本当に分かっているのか? 結構大事なことなんですけども。
「だから、俺達は魔王がいたとしてもそれを倒す暇なんてないんだって——」
「いますよ、魔王」
不意に鈴音ちゃんの言葉が俺の耳を貫くように衝撃を与える。
それは、俺も目で確認してしまったからだ。この目で。この現場で。
「ほら」
鈴音ちゃんが指を差した方向を——俺は凝視してしまっていた。何度も何度も目を擦る。
えーと……ここって町中ですよね?
「何で……魔王が目の前にいるんですか?」
思わず敬語になってしまうほどビックリだ。
だってな、君達。RPGゲームを始めて最初の町で武器や職業決めてだな、さあ冒険にというところで——
魔王が目の前に出現ってどうよ。
その魔王はまさに格好は邪悪な感じを醸し出し、律儀にも胸元の所に『魔おう』と書いてある。
王だけひらがな筆記ということは疑問だが、人々が喚きながら逃げているので魔王であることは確かなのだろうな。
「誰かーっ! 勇者をーっ!」
とかなんとか叫びながら町人は逃げまくっている。俺達の存在をまるで透かしているかのようにして隣を過ぎ去っていく。
さすがの夕姫も開いた口が塞がらないようだ。そして何より、鈴音ちゃんが満面の笑みというのはどういうことだ。
「……お前達が勇者か」
「え、えぇ〜……」
いきなり魔おうに話しかけられたよ。いやぁ、参った参った……。
「逃げるぞっ!!」
俺は二人の手を引いて魔王の元から去ろうとするが——片方の手が弾かれた。
「鈴音ちゃん!? 何してるんだっ!」
立ち止まる鈴音ちゃん。そして、邪悪な笑み。
これから予想すべきこと。んー……もしかして、倒す気ですか?
「えぇ、私が勇者ですっ!」
「「ちょっと待てぇぇぇぇッ!!」」
俺と夕姫の声が見事に重なる。
満足そうに立ち尽くすマジカルハットにマント、そしてビームライフル的な物体を手に持つ鈴音ちゃんの姿は——
あぁ、何とも滑稽だろうか。多分この状況じゃなかったら大笑いだろうな。
「そうか、お前が勇者か……」
ニヤリと不気味な笑顔を見せる魔王。ちょ、魔王さん魔王さん。最初の町でそんな見せ場使わないでください。
「どうだ? 世界の半分をお前にや——「私が世界を征服しますっ!」」
胸を張りながら勇者とは思えない、逆に敵かお前と言いたい発言をぶちかました鈴音ちゃん。
あぁ、見てられねぇ。だって魔おうさん、怒りすぎて顔に血管浮き出てるんですもの。
「いいだろう……なら、死にゃるがいいっ!」
死にゃるって何だよ。
魔おうの太い腕が鈴音ちゃんを襲おうとしたその瞬間、ビームライフル的なものを構えて——その腕を殴った。
「違う違う違うっ! 使い方違うからっ! 撃つものですっ! それっ!」
俺はツッコミを叫びながら鈴音ちゃんが案の定、魔おうの太い腕に吹き飛ばされてくるのを受け止めた。
なかなかの衝撃。てか腰が本当、痛いです。
「やいやいやいっ!」
次に横から夕姫がでしゃばってくる。やめとけ夕姫。それになんだ、その近所の悪ガキみたいなでしゃばり方は。
「何だ、お前は」
魔おうは夕姫に気が言ったようだ。よし、今の内に俺が鈴音ちゃんを安全なところへ——
「私は英雄だっ! このコスプレイヤーがっ!」
あぁ、ダメだ。この子の方がほうっておいたら色々と危ないわ。
俺はダッシュで夕姫の元へと駆けて行くことにする。
「英雄? 英雄というものは勇者が私を倒してからの称号だ」
魔おうは邪悪な笑い声を放ちながら夕姫を見下す。にしてもこの魔おう、でけぇ。3mぐらいあるんじゃないのか?
「そんなことどうでもいいよっ! とにかくかかってこいっ!」
と、いって夕姫は威勢よく剣を構える。ですよね、カボチャをここで取り出したら即死亡フラグ立っちゃいますもんね。
「面白い奴だな……なら——ぬええええっ!」
えぇ〜……何かかけ声ダサいな。見た目が台無しすぎるだろ。
そんなかけ声とは裏腹に何かすごいファイヤーボールみたいなのを生み出すからこの世って不思議だよな。
——といってもこの世界の不思議は一つも知らんが。
「どっせええええッ!!」
いちいちかけ声ダサいな。いや、そんなことよりファイヤーボールが夕姫に目掛けて吹き飛んでくる。
俺は全速力でタックルするような形で夕姫を前へ転がらせた。代わりに俺がファイヤーボールを目の前にすることになったが。
「奏っ!」
おいおい。俺の方が死亡フラグ立っちゃったじゃないか……。
とりあえず、なす術がないので目を瞑って右手をファイヤーボールに突き出した。
俺、死ぬのだろうか。走馬灯が駆けて行く……不思議な感覚だ……。
バチバチッ!
あぁ、当たったな。今、すげぇ音が鳴ったもの。
……バチバチ? あれ? ファイヤーボールに当たったらそんな電撃みたいな音しましたっけ?
ゆっくりと俺は目を開けてみる。するとそこにはファイヤーボールが逆に放った本人である魔おうへと向けられていた。
そして、魔おうに直撃する。
「むぉぉぉぉッ!」
とっても熱いんでしょうね。魔おうといえど、皮膚は皮膚なのでしょうかね。
マントやらについた火を消そうと地面へと転がりだす魔おう。対して俺は何が起こったのか全く意味不明だった。
夕姫と鈴音ちゃんを交互に見ると、二人とも唖然とした面持ちをしていた。
「えっと……何が起きた?」
俺は頭をボリボリと掻きながら二人に聞いてみた。
「……ファイヤーボール、跳ね返した」
単発的に夕姫が教えてくれた。ふむ、なるほどねぇ……って、え?
「跳ね返したっ!?」
俺の驚きを表す言葉に頷く二人。ていうかいつの間に鈴音ちゃん目が覚めたんですか。
「クソォッ! 覚えていろよっ! 勇者共っ!」
自身のファイヤーボールを自らが喰らっただけで逃げ帰ってしまった。俺達、ほとんど何もしてないと思うんだけどな。
「俺の能力ってもしかして……魔法とか跳ね返したりする能力、ということか?」
「多分……」
夕姫が難しそうな顔をして何度も頷いている。少し荒れた町中は数分後、再び人々が戻ってきて活気を取り戻した。
ていうか待て、町人共。お前らもしかして戦いの成り行き見ていやがったのかよ。チクショウ、感謝の一つもありゃしねぇ。
「……聞いたことがあります。魔法、いちいち受けてたら面倒臭いという理由でそれに対抗する能力……面倒な魔法をりじぇくと☆という能力があったはずです」
何その不愉快な能力名。全国の魔法使いさんに謝れよ。
「????でこんな能力手に入るんだなぁ……」
武器とかもカスレベルだけど少しは役に立ちそうだな。よかったーなんとか男としての面子は保てるかな。
「にしても……何のために魔おうはわざわざ町中に来たんだ……?」
「「さぁ……?」」
わけのわからない世界観に俺達は頭を傾げるばかりであった。
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