ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 聖歌が響く時
- 日時: 2010/10/10 17:40
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
初。魔法物です。
末永くかければ嬉しいです。
以上!
とにかく久しぶりなんで、更新とりま頑張って期待と思います。
記録
2010.10.10 参照が100に
始まりの歌
私はなんでここに存在するのでしょうか?
少女は問いました。
だれも答えてくれるはずありませんでした。
なぜなら誰もが少女の問いへの答えを知っていたからです。
私はどうすればいいのでしょうか?
少女は問いました。
誰も答えるわけありませんでした。
答えることと死ぬことは同義だからです。
何故私はこんな力を持っているのでしょうか?
少女は問いました。
誰もが優しく笑いかけました。
なぜなら——。
雪の中に血が、まるでグレーテルが落としたパンくずのように点々とついていました。
一人少女はその雪の中、ずっと遠いどこかを見つめておりました。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.32 )
- 日時: 2010/10/25 16:47
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
(シーン続いてます)
「まぁ、さっさと着替えよう!」
「ビエッタったら調子よすぎだわ」
もうまったく、さっきまでぐぅぐぅと寝ていて、おきても隙あらば寝ようとしていたくせに。だけど、こういうところが可愛いんだよね。
と、何はともかく私もビエッタに借りた白い綺麗なパジャマから黒いあの地味な、だけどお母様のつくろってくれたワンピースを白いせーたーの上から着る。何時もの、普通のただの制服。だけど、私にとっては大切で大事な制服。
白いパジャマだってまたビエッタのお母様がビエッタのためにぬったとても素敵なもの。尤も、ビエッタとしては最近流行の花柄の売ってるパジャマの方がお気に入りで、そればっかり着ているんだけど。ちょっとこの白いパジャマが可哀想になる。
なんて考えながら俯いているうちにビエッタは着替え終わっていた。私はまだパジャマのズボンをはいたままだというのに。烏の行水じゃなくて烏の衣替えだわ。
って、どういう意味なのかしら。
「もう、チュナったら早くー」
「そんなこと言ってる時間あったら髪とかした方がいいんじゃないの?」
ビエッタの綺麗な金色の髪は所々寝癖がついていて、またはねている毛も何本かある。ある程度までは可愛いといえるんだけど、ここまでくると面倒くさがって梳かさなかった髪にしか見えないわ。まったく。
「だってー梳かしたってこの髪はカールかかっちゃってるし」
「はねてる毛はどうするわけ? もう着替え終わったら梳かしてあげるから」
とか言っているうちに、私の着替えも終了。やっぱり靴はいていたほうが足元が暖かいわ。近くにくしが無いか探すけれど、全然みつからない。
本当にいつもこの髪どうしてるんだろう?
「串何処にあるの?」
「え、何それおいしいの?」
——もっていないらしい。
「なんで串持ってないのよ」
「だっていらないもん」
「……本気で言っているのかしら?」
ビエッタ……家ではこんなのだったんだね。うん。びっくりだわ、本当に。
「チュナ、その生暖かい微笑みは何? ゾクってするんだけど……。まぁ、さっさと朝ごはん食べよーよ。お腹減ってない?」
と、ビエッタが聞くとタイミングよく私とビエッタのお腹の辺りからグーっと言う盛大な音が聞こえた。
「く、はっははっはっは」
「あはははははははは」
——その日、朝ごはんに大分遅れて現れた私たちはビエッタのお母さんにこってり絞られることになるんだけど、それはまた今度のお話。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.33 )
- 日時: 2010/10/30 10:09
- 名前: 月華 (ID: VNDTX321)
- 参照: 五日間もいきなり消失してさーせん
◆ ◆ ◆
「え……」
ありえないわありえない。はい、現状を整理して冷静になりましょうってなれるわけが無いわ。一体これはどういうこと? たちの悪い冗談なの? それとも……。
ほっぺたをはたいてみる必要も無いほどにそれは現実だった。だって、そこからはちゃんと禍々しいばかりの鉄の匂い……血の匂いが確かに漂っているんですもの。
「ひっ」
ビエッタはやっと現状を認識してしまって、怖くなったのか声を上げる。その反応が正常。私はちょっとなれてしまったのか声が上がらない。そんな事実がちょっと気に入らないわ。こんなこと、慣れていいはずないんだもの。でも、やっぱり気持ち悪い異常に、怖い。なんでこんなことになってしまったのかしら?
でも、血の匂いになれたって言うのは正確じゃないのよね。だって、私はそんなのちゃんとかいだこと無いもの。お母さんもトゥーサも焼死で……。
怖い。自分が怖い。なんでこんなに冷静なの?
何人死んだの? クラスメイトがほぼ全員死んだのよ。
そう、学校におくれてきた私たちを待ち受けていたのは約三十人ほどのクラスメイトの死体と、血の匂い。そして、その中心に立つ青年だった。
「ようやく状況がわかったかぁ!? 俺は朱雀の無念を果たしにきてやったんだ。おら、さっさと相手をしやがれ!!」
◆ ◆ ◆
「任務は今度こそ成功したか?」
「否、失敗しました」
先日と同じ問答だけれど確実に雰囲気が変わっていた。朱雀が死んだということで、お互いに緊張が走っているのだ。
朱雀——四神と呼ばれる魔族の殺し屋兄弟の末っ子と一般的には言われている。主にものすごい強力な火を使ってくることで有名だ。そんな化物を少女が殺したというのなら緊張が走るのも当たり前だ。
「そうか、朱雀が行っても駄目だと。なら玄武は」
「もう向わせました」
すんなりと少年は答える。男もそれに対して、また冷静を保っていた。表情だけは。
しばらくの間沈黙が守られるが、すぐに破られた。少年の言葉により。
「だけど、少し妙なのです」
「何が妙なのか?」
男は少しフカフカな高級そうな椅子から身を乗り出して聞く。
「朱雀は、普通にナイフで刺されて死んでいたのです。しかも、それは普通の少女よりもちょっと強い力、まるで少年が勢いに任せてさしてしまったような深さで」
◆ ◆ ◆
「えっと?」
私はとりあえず、言葉を返してみる。
するとその青年は私たちの方につかつかと歩いてくる。ビエッタは何時もの気丈さも無くなり私の後ろにこっそりと隠れた。
そうして見下ろされるとまた、その姿にはものすごく迫力があり、私達よりただでさえ数十センチ高いというのに、そうすると筋肉質の体が強調されてまるで緑の鬼のようだ。表情を見ると、もっと怖くなって身がすくむ。
いわゆる鬼のような形相というものなのかしら?
「だーかーらー、俺は昨日お前に殺された朱雀の兄の玄武だぁ。お前を殺しにきたんや!」
「私は朱雀を殺してないわ!」
少なくとも殺した気はないわ。
そうよ、私は彼に殺されかけてそれで必死に歌って、そしたら何故か雪の中に眠っていて。私は朱雀を殺していないわ。
殺すなんて怖いことできるわけない……。
「あ? 殺してないだと? 嘘をつくな。だって、お前はあいつを燃やし殺したんだろ? しかも、死体だって上がってるんだ。けっ勘弁しろよ」
「燃やす……」
炎、まるで美しい真っ赤な炎。家が焼け落ちて、そして人が人が人が……。
覚えている、この前確かに思い出した。ええ、朱雀とあったときに確かに思い出していたわ。なのに、ずっと忘れていた振りをしていたみたい。変な夢から覚めて現実に戻れたというような……。
だけど、思い出さなければよかったかもしれないわ。思い出さなかったらそれは愚かなことだけど、絶対に思い出さなかった方がよかったって断言できる。
「私は……一人殺しちゃったのね」
もう戻れない。そんな気がした。
背後にはビエッタもいて。
「だけど、朱雀は私がやってないわ」
- Re: 聖歌が響く時 ( No.34 )
- 日時: 2010/10/30 17:58
- 名前: 月華 (ID: VNDTX321)
- 参照: 五日間もいきなり消失してさーせん
(シーン続いてます)
「け、ごまかしきるつもりか。最近の子どもは怖くなったな」
不適そうに、そして溜め息をつくように玄武は笑う。やはり鬼のようで、怖いわ。ただでさえその慎重さとか体格で恐怖を感じるのに、そのギラギラとした目の輝きが本当の鬼のように玄武を見せている。
けれど、玄武っていうのは人間のための神様の一人で、鬼を撃退するものっていうはずなのに。これじゃぁまるで玄武さん自身が鬼みたいじゃないの。だけれど、大切な人を失ったらどんな人でも鬼みたいになってしまうのかもしれないわ。あの日、私がそうなってしまったように。
そう、一人殺した。私は。
さっきしっかりと思い出せた。
一人、焼き殺したわ。私の歌で。
歌を'きょうき’として使ったわ。
歌を武器としたわ。人を殺すための。
歌は聖なるものなのよ。そういつかお母様は言ったわ。けれど、私は歌で人を殺めた。私は歌を汚してしまった。
そんな私にこれからも歌は答えてくれるかしら? 歌はこれからも私のために響いてくれるかしら? そういえばあの家で朱雀さんを目の前にした時私は歌えなかった。何故かはわからないけれど。だけど、もしかして歌えなかったのは私が歌を汚したから? だから、私は歌を響かせられなかったの?
何一つ確証も証拠も無くて、けれどそれしか考え付かない。
私は歌に裏切られた。いいえ、私が歌を裏切った。
「もう、私は歌えないわ。だから、許して」
「駄目だ。終ってしまったことだ」
「だから、私は朱雀を殺してなんていない」
私はもう一度そういうと、今度は一回玄武は俯いた。そして、顔を上げてさっきよりももっと怒った顔で言葉を叫ぶ。
「あああ? お前がやってない? そんなの関係ねぇーよ。ただ、朱雀が死んだことが許せねぇンだよ。でな、朱雀が誰に殺されたかはどうでもいいんだ。それなら、なんで朱雀は死んだ? 簡単だ。お前を殺しに行こうとしたからだよ。だから、俺はお前を殺さなきゃ行けねぇんだよぉ!!!」
めちゃくちゃ。意味不明。支離滅裂。筋なんて欠片も無くてただの悪あがきとも思えるわ。いい大人なのにそんなこともわからずに八つ当たりしている。それこそ大人気ないわ。
けれど、この場合論理なんて関係ない。ただ関係あるのは、どちらのほうが強いかってこと。
玄武の怒りを抑えることはできないし、どっちみち玄武は私を殺そうとするわ。だから、戦う以外道は無い。
そんなのすぐわかること。
けれど、第三の道があることを願って粘ってはいけないの? 結果はどうであれ、最後まであきらめる気は無かったの。
交渉は決裂したけれど。
「とにかく、俺はお前をゆるさねぇ!」
言葉が終るか終らない貸したその時、玄武の目が緑色に光った。ふと嫌な予感がして振り返り背後のビエッタの目を見るとやっぱり緑色に光っている。
「ビエッタ、どうしたの?」
「私、チュナのことよく分からない!! 友達のつもりだったのに。私、チュナのこと何も知らなかった。それが怖い。嫌だ。そんな私ならもう要らない。私なんてどうでもいい——」
ビエッタは意識は半ば朦朧としているみたいだわ。けれど、ありったけの思いを言葉にして吐き出している。今まで聞いたことも無かったビエッタの本音が次々に……。
そして、音は無かったけれどピカーンとでもいうようにいっきに当たりは緑色の光に包まれ、けれどそれは一瞬のこと。本当に幻想的な森林のような綺麗な澄んだ緑色。
だけど、気づいたら辺りは普通の色に戻っていた。ちょっと惜しいような気もするけれど、そんなことを冷静に考えている余裕なんて無かった。
ビエッタは確かに握りこぶしを私の顔面の前数センチのところに持ってきていたのだ。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.35 )
- 日時: 2010/11/02 20:48
- 名前: 月華 (ID: VNDTX321)
◆ ◆ ◆
歌えない私は普通の子。歌えない私はいらない子。ビエッタのよい友達じゃない歌える私は友達じゃない子。だけど今は歌えないからいらない子。お父様もお母様も弟もみんな死んじゃったから家族からもいらない子。テヨンだって魔族が嫌いだからいらない子。その他の人にとって私はどうでもいい子。
私なんていらない子。
どうでもいい子。
いなくていい子。
◆ ◆ ◆
一面はまだ真っ白で、だけどこの前の用に苺シロップをかけても食べる木にはなれそうに無い。ところどころに灰が落ちているから——。
結局気づいたらまたあの森の中にいた。しろい雪の中に残る足跡を見る限り、私はあの教室から逃げ出してしまったのでしょう。
怖くて、怖くて、怖くて。
結局私ははなからビエッタと本気で向き合う気なんて無かったわけなのよね。ああいう風に言われてそれで私はこんな風に折れてしまった。ビエッタのことを友達だと一瞬でも思えなかった。
——自分を思いやってくれない奴なんて友達じゃない。
勝手ないい分。自己中。私はもはや何様のつもり?
ビエッタだって信じようときっと頑張って、それでもくじけてしまうこともあって。それに、殴ったことはきっとあの緑の目が、玄武が原因だし。
——そうやって、人は人に罪を擦り付けるんだ。
違うわ。そうじゃない。
私は人に罪を擦り付けたりなんて。だって、ビエッタの意志で私を殴るわけ無いじゃない。ビエッタは友達なのだから。
——そう、それはむしがいい奴だ。
そうよ、私は一瞬ビエッタを友達だって思えなくなって……。
「って、あなたは誰なのかしら? 姿を見せて」
心に響いてくるような声は、実際は心に響いてるのではなく森に木霊しているのだと私はふと気づいた。どこまでも私の思っていることに対し尤もなことを言う声。
本当は神様でした、みたいな落ちも何故かありえるようなきがした。
「ちっばれちゃったか」
さっきの声と同じようにまた少年の声も響く……? この声は、ままるで。あの少年ではないだろうか?
茶色の太い幹から青い髪がのぞいたような気がした。紺に近い綺麗な艶のある髪。
「僕だよ、僕。覚えてるでしょ?」
彼は、セイルはそう無邪気な笑顔と共に言い放ちその太い幹のある木がある丘から降りてくる。何故か知らないけれど彼が一歩また一歩と私に近づいてくるたびに、森の木々が怪しい葉音をたてているような気もするけれど、それはきっと気のせいなのよね。
光も差し込まない密室のような木々の中、私と青い少年はそれぞれ自然に道を挟むように立つ。
それがまるでいつか昔からの約束のように。
「やぁ、待ってたよ。チュナちゃん」
- Re: 聖歌が響く時 ( No.36 )
- 日時: 2010/11/05 21:34
- 名前: 月華 (ID: VNDTX321)
(シーン続いてます)
状況が正直つかめないわ。
もう一度状況を整理するわよ。
朝私はビエッタと一緒に登校した。そして、教室に行ったらクラスメイトがほぼ全員殺されていて、その部屋の中央に鬼のような緑の髪をした大きな男、えっと玄武がいたわ。そして、その後ビエッタが何故か私に殴りかかってきて、その時色々と本音のような言葉をビエッタは吐いて……。思い出したくないわ。あの時のいやな感じ。で、今に至っているのよね。
それで、また今の状況はというととりあえず自分の焼けてしまった家がある山に戻ってきて、それで声を聞いたのよね。神の声のようなもの。だけど実は木の陰に隠れたセイルが発していた声で、今はそのセイルは目の前に一つ道を挟んで立っている。
よく考えるとかなり不思議な話なのかもしれないわ。ここまで展開が速いと。私には何かを深く考える時間さえ与えられない。
けれど、それ以上に不自然さが増しているような気がするわ。ある種のご都合主義というような。だって一昨日に家が燃えてから毎日いっこ事件がおきるなんて普通ありえるはず無いじゃないの。それに、第一お約束のようにセイルが私の家がある山にいるなんて、学校があるというのにどうしてこんな場所へって言う話。ここまでくると不自然というのより以上って行った方が正しいような気がしてくるわ。
「今、ちょっとこの状況を読み込めない感じかな? それとも今までの流れがあまりにも露骨で不自然すぎるとでも思っているのかい?」
彼の手が人差し指を突き出した形で私に向けられる。シュッというような風の鋭い音を聞いたような気もするけれど気のせいかしら? けれど、その俊敏な動きからは気のせいでは無いといわれても納得できるような気がした。
そんな細かいことを言ったとしても、結局はただたんにセイルは私を指差しているっていうだけの話。子どもの頃母親に人を指差してはいけませんと習わなかったのかな?
けれどそれ以上にその指は私の心を突いているような、そんな奇妙な感覚のほうが強いかもしれない。だって、さっきは私の感じたことをスパッと二つとも当てられるし、そのお陰で少し警戒したといってもいいのかも……。
相手は大好きなセイル君なのに。
「それは当たり前だよ。第一君と僕はほとんど話したこと無いんだからね。そんな物語で言うならば背景キャラのような存在の僕が、ここでいきなり出てきて待っていたよとか言って、それを怪しまなければそれはそれでまた今度は僕が気味悪がるよ。
君の僕へ向けるそれは憧れであって妄信ではなかったから」
私が学校で知っているセイルとは違って今目の前にいるセイルは良く喋る。それがまた警戒心を増させている。もしかしたらこのセイルは偽者なのではないだろうかと思ってしまうくらいに。それだとしたら本物のセイルは? もしかして魔族が絡んでいるのでは——?
それはそれで怖い。けれど一番怖いのは彼が本物のセイルであった時そのことを疑ってしまった自分なんでしょう。自分の好きな人を疑ってしまった。
だから、答えなきゃ。
「その言葉は間違っているわ。私はセイルのことが好きなの。憧れなんかじゃないわ」
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