ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 聖歌が響く時
- 日時: 2010/10/10 17:40
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
初。魔法物です。
末永くかければ嬉しいです。
以上!
とにかく久しぶりなんで、更新とりま頑張って期待と思います。
記録
2010.10.10 参照が100に
始まりの歌
私はなんでここに存在するのでしょうか?
少女は問いました。
だれも答えてくれるはずありませんでした。
なぜなら誰もが少女の問いへの答えを知っていたからです。
私はどうすればいいのでしょうか?
少女は問いました。
誰も答えるわけありませんでした。
答えることと死ぬことは同義だからです。
何故私はこんな力を持っているのでしょうか?
少女は問いました。
誰もが優しく笑いかけました。
なぜなら——。
雪の中に血が、まるでグレーテルが落としたパンくずのように点々とついていました。
一人少女はその雪の中、ずっと遠いどこかを見つめておりました。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.7 )
- 日時: 2010/09/25 19:08
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
(シーン続いてます)
私は優雅に見えるよう肘を突いて窓の外にまた見入ってみる。本当は肘はついてはいけないのだけれど、こういう場合は特別。だけど、なんで肘を突いてはいけないのかしら……まぁいいわ。どんな理由でもかまうもんですか。
しばらくすると、右隣の方からガサゴソとでもいうような音が聞こえてきた。返事を書いているのかしら? ちょっとだけ右目をテヨンのほうに向けてみると、悩みながらやはりノートの切れ端に文字をつづっていた。あら、私の対応は想定外だったってことなのかしら? 私、謝られて許さないほどに我が儘な人でもないのに。テヨンがそんな勘違いしていたことがちょっとおかしい。
でも、その勘違いは私の想像の中のことで本当なのかはわからないのよね? なら、そんな事を考えて可笑しく思っている私が本当に可笑しいのかしら。
——まるでくだらない言葉遊び。
何て考えているうちに返事の手紙が飛んで来た、って目に付き刺さりそうになっているのだけれど。わざと? ……なわけないわよね。あったらむしろ怖いわ。私はいつ殺人者と友人になってしまったのでしょうかと悩むことね。
ちょっとしたただの皮肉だけれど。
早速私の目に当たる前に机に落ちた適当におられた紙を開く。やっぱり想定外だったのね。
すると、そこにはさっきと同じく真ん中に小さく一文だけ書いてあった。
『さっきの歌、優しかった』
と。
聞いててくれたのね。私がビエッタに歌っているの。
優しかった……か。不思議な感想。でも、それは当たり前なのよね。だってお母様が歌ってくれた子守唄だから。名前は……赦しの歌だっけ? よく覚えてないわ。お母様自身だって歌詞の意味知らないといっていたしね。だけど、お母様の心に残る歌声は何処までも優しくて、それを思い出して歌ったからきっとそうだったのよ。
でも、誉めてくれるのはちょっと嬉しかったな。恥ずかしいからあんまり歌いたくないけれど、誉められると何度でも歌いたくなってしまう。私ったら単純すぎて泣けてしまうわ。
その優しさは私の優しさじゃなくてお母様の優しさなのに。
私はノートの端を千切ってありがとうとただ一言書いてテヨンにわ……。
「チュナ、何をやっているの?」
「あ……」
いつの間にか私とテヨンの間には先生が立っていた。真っ直ぐな綺麗な髪は整っているし笑っているけど、絶対に怒っている。それは私にも確信できてしまった。
つまるところ、授業中の内緒のお手紙が見つかってしまったっと言うところね。はぁ、私としたことが先生から注意をはずしてしまうなんて。
「チュナ? 四角五の問題を解いてくれないかしら?」
「ええ、罰は甘んじて受けます」
教科書を見下ろすと黒板に書かれたページより四ページほど遅れていた。どうやら全く話を最初から聞いてなかったみたいね。
とりあえずこれならテヨンに迷惑がかからないでしょう。私は、教科書を持って黒板まで歩いて行く。すると、背後から先生の声が聞こえた。まだ私に言い足りないことがあったのかな? と思って振り向いてみたけど違った。
「テヨン、教科書とノートくらい開きなさい? チュナとお手紙を交換していたことは知っているのよ?」
「げ……」
「テヨン、四角六ってあら今日は四角五までだったわね? じゃあ次回」
「そ、それはやめ」
「なら次の国語の時間にでも」
先生、怖いです。大の美人なのに、笑うと本当に美しいのにそれでは結婚できないと思いますよ?
「あら、チュナ。何か失礼なこと考えてない?」
その笑顔が本当に怖いんです。
◆ ◆ ◆
「わかっているな、カフェル君」
「勿論です」
カフェルは相手の男に向ってにこりと微笑んだ。
「お前は全てを国に捧げるんだな? そのためには家族など惜しまないと誓うのだな?」
相手の男は狸のように卑しい笑みを浮かべながら聞く。額に脂汗が絶えない。
「勿論です。全てはあなたの御心に」
カフェルは相手の男に対し忠誠を示すよう膝を突き、深く礼をした。
「サバス、この男に成り代われ。そして、そいつの家を家族ごと燃やしてしまえ。失敗はないな?」
「勿論でございます。それでは」
淡白に突然現れた少年は答える。一切の感情が混じっていないような声で。
「まて、その前にこいつを殺せ」
「命令ですか?」
「ああ」
少年はその言葉を聴くとすぐさまカフェルに向き合う。そして、カフェルの恐怖におびえた顔を見つめる。冷めた寂しい瞳で。
「ま、まて何をするつもりなんだ。落ち着け。とにかく落ち着くんだ」
カフェルはあわてて後退しながら話す。だけど、少年はただそれを見つめせせら笑い小さな声で短く言葉を綴った。
「Quemadura. 」
その時にはもうカフェルは消え、二人だけが残っていた。
「カフェル、お前に命じる。家族を燃やせ」
「了解した」
いつしか少年はいなくなりカフェルが敬礼をしていた。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.8 )
- 日時: 2010/09/26 11:47
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
◆ ◆ ◆
なんで帰るのがこんなに遅くなってしまったのでかしら? ただ、私は学校で部活をしていただけなのに……、今はもう空は漆黒に染まり月が静かに光っている。嗚呼、そうだわ。あのあとビエッタの家で一緒に食事をしたのよ。あの時は本当にお腹が空いていたからつい誘いにのってしまったのよ。お母様に電話をするのを忘れて。きっとお母様は私のことを心配しているわ。早く帰らないと。
自然と歩く速さがどんどんと速くなって行く。雪はもうとっくの当にやんでしまったみたい。
それにしてもお父様、帰ってきているかしら? 私ラジオも持ってないから汽車が停まってしまったかどうかまではわからないけれど、何故か嫌な予感がするの。
お父さんは帰ってこないような。
それにしても不思議な匂いがするわ。何時も帰ってくる私を見守っている鳥たちや動物たちもいないし、まるっきりといっていいほど生きているものの気配を感じないわ。ただ感じるのは冷たい冬の寒さと不思議な匂い。それにしてもどっかでかいだことがあるようなにおいなのよね。どこかしら……。
あ、そうだわ。キッチンでかいだのよ。かまどでお母様と一緒にパイを焼いていた時に。でも、あのパイは結局黒く焼け焦げてしまったのよね。って、
焼け焦げて?
もしかして。
瞬時に嫌な予感が私の頭の中を駆け巡る。そんなこと、ないわよね。そうよあるわけないのよ。まさか、家が焼けているなんてそんなはずないのよ。
森の中の家を焼こうなんて普通考えないし、私たちは何か悪いことやったわけではないし。
だけど、不安って恐ろしくて。
歩く速度がまた速くなる。否、もう走っているの域に達しているのだろうか? ふと、目の前を黒い粉が走っていた。もしかして、灰? そういえば煙たさも増してきた気がする。
きっとバーべキュウでもしているのよ。そうよそうよそうよ。
「ケホッケホッ」
あ、咳。止らない。そういえば目が痛い……。
なんとなく空を見上げてようとしてみると、何かが目に留まった。
真っ赤でとにかく美しい炎、そして焼け始めた我が家が。お母様とトゥーサごと、もしかしたらお父様も……。
そ、そんなわけないわ。気のせいよ。私は目をごしごしとこすってみるけれど、効果はなく目の前の燃えている家は何度こすっても消えない。
幻覚よ。きっと。
刹那、焼けた家からこっちにむかって走ってくる気配を感じた。その方向をみるとお父様が……。
「何故、お父様は」
「お前は誰だ?」
「私よ、チュナよ」
「チュナ? カフェルの娘か。はぁー、まだ全員殺せていなかったのか」
何を言っているの? お父様。カフェルはあなたの名前で私はあなたの娘だというのに。全員殺せていないってどういうこと? もしかして、お父様がこの家を……。
「お母様とトゥーサを殺したのはお父様なのですか?」
「お父様? 何を言っている。ああ、そうだ。まだ変化が解けていなかったのか」
「変化?」
目の前で喋っている人は確かにお父様の姿をしていて、お父様の声を持っていた。服だって、お母様が昔縫ったコートであったし。偽も野田なんて疑う余地はなくて。
「冥土の土産に教えてやろう。お前のお父様……カフェルはお前らを殺してもいいといった。そして、カフェルも殺された。そして、私はカフェルが生きていたことを証明するもの全てを殺してまわっているのだ」
「どうして!」
お父様が私たちを殺してもいいですって? そんなこと言うはずがないわ。それに、お父様が死んだってどういうことよ。それに、何故お父様が生きていたことを証明する人を全て……。
聞きたいことはたくさんあって一言には詰められないような気がした。だけど、一つ聞くなら。
「私も殺される? その美しい炎によって」
「ああ。だが、美しい炎だなんて心外だな。これは私の一部で私だから。汚れたな」
お父様は私のほうを向くと笑った。私を見下すように、そして自分をあざけ笑うように。こんな表情のお父様をみたことがなかったからどこか新鮮だなぁと思ったけど、考えてみればこの人は私のお父様ではないみたい。
「どういう意味? 体の一部って」
「私は魔族だ」
「魔族!」
話にしか聞いたことがなかったような物が目の前にいることについ驚いてしまった。だけど、魔族がなんで私の目の前に……。
そういえば、最近魔族は政府に従っているのだっけ? だとしたら、政府の命令で……。
「あなたは政府の命令でお父様の姿をしてここにやってきて自分の能力、魔法で私の家族を殺したということ?」
「その通り。私は頭がいい子どもは好きだよ」
「じゃあ私を殺すのをやめてくれない?」
「それは無理な話」
交渉は無理か……。でも、私このあと生きてどうするのかしら? 家は燃えてしまって、家族はこいつの言葉に従えばみんな死んでしまって……。
まって、私には歌がある。
「じゃあ、最後に一つ歌わせてくれない?」
「それくらいならば」
もしかしたら、何とかなるかもしれない。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.9 )
- 日時: 2010/09/27 13:12
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
(シーン続いてます)
私は昔からお母様の子守唄が大好きだったの。だから、たまにまねをして歌ったりしていたんだよね。お母様はそれぞれの歌には意味があるって言っていろんな歌を教えてくれたわ。幸せの歌、許しの歌、雪の歌、憎しみの歌、恋の歌。そして、ある日お母様は言ったのです。
「あなたの歌は魔法なの。だから憎しみや絶望を思って歌ってはいけない。でも、魔法なのだから希望や願いを思って歌って頂戴。そして、幸せになって」
と。
当時はまるっきり意味がわからなかったけど、今思い出すとなんとなく意味がわかる気がするの。
私の歌は魔法のように私の心を映すと。
『Rain of blessing pours down.
To my world
To our mind
It will erase one flame before long.
It will pick up the life many soon.
The song invites rain.
The blessed rain』
私は願う。
家の炎が消えることを。そして焼けてしまった私の家族が生きかえることを。私の歌が私の心を移すならありえないことはないのよ、きっと。
雨乞いの歌。とお母様は教えてくださった。恵みの雨を地に降らすのを願う歌。その恵みの雨は人の心にも降り注ぎ、命を新しくしてくれるの。と、微笑みながら教えてくれた。
だから、きっと新しい命でお母様たちはよみがえるでしょ?
「素敵な歌だな」
ただ、そう静かにお父様の姿をした人は言った。お父様に誉められたような気がして少し嬉しかったけれど、本物のお父様でないのなら別にどうでもいいことであった。
私のお父様は簡単には誉めてくれないのよ。
刹那、月の光が途絶える。そして、雨が……。
私の予測は当たっていたの。確かに雨は降り出した。私の歌は私の願いを叶える——。きっとそうなのよ。なら、私のお母様もトゥーサも!
やがて、私たちの家の炎は雨によって掻き消えていった。そして、炎が消えたら雨もまたどこかに消えていってしまった。
「お母様! トゥーサ!」
お願い、生きているなら早く返事をして。私はここから離れられないの。この人がいるから。
だけど、返事は無情にも返ってこない。なんでよ、新しい命で生き返ってのでしょ?
私は、馬鹿だったわ。命が復活することなんてありえないし、ありえたとしても肉体はもう炎によって焼かれている今、家族が復活するわけないことに気づかなかった。否、気づいていてもずっと否定していたかったのかしら?
「さぁ、そろそろお前を殺そうじゃないか」
目の前の男は早くしろとでも言うように私をにらみつける。
ふと、思う。もういいやって。私、ここで殺されてもいいやって。お母様だってお父様だってトゥーサだって殺されてしまったの。そんな中私一人生き残ってどうするのよ。
「なにふがいない顔しているんだ」
お父様は馬鹿にするように笑う。
「最後に掴みかかればどうなんだ? 私がお前の家族を皆殺してしまったのだよ?」
そうよ。死んだ人は生き返らなかったとしても、殺した人はまだ生きているの。そんなの許せるほど寛容な人間だったかしら、私は。
お父様の姿をした人をきっとにらみつける。
「お、生気が戻った。これでこそ殺し甲斐があるものだ」
「私は簡単には殺されないし、私はあなたを許さないわ!」
憎しみを歌ってはいけないとお母様は言った。だから、きっと今からすることはいけないことなのでしょう。だけど、私は……。
復讐には意味がない。そうしたって死んだ人は生き返らないから。でも、殺した人が生きているのは殺され損というもの。
『You deserve to die 10000 times.
Still, you are not permitted.
Your crime is heavy and deep.
You are not permitted the life.
I only wish the everlasting perdition. 』
あなたは何故生きているのでしょう? お母様やお父様やトゥーサを殺したあなたは何故今も息をしているのでしょう? それはあってはいけないわ。
だからあなたもともに死ななければならないの。殺した命の代償は自らの命でしか払えないし、ここで死ななくても私は何度でもあなたを殺しに行くわ。
あなたを許せないから。
死んだらそれで全てが終ってしまう。それもまた許せない。永遠の地獄に落ちないと許せない。でも、生きているよりはましなのよ。生きて永遠の地獄を体験しているのを見るのより、死ぬのをみる方を望むの。
償えるわけないわ。生きてその罪をこんな人が償えるわけないわ。
私のお父様の姿をした人は歌い終わると燃えてしまった。私の家を燃やした炎で。
- Re: 聖歌が響く時 ( No.10 )
- 日時: 2010/09/27 13:43
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
2、うそつきは誰?
「ねぇ、じゃああなたは知っているの?」
「ああ知っていたとも」
「何を」
「知る余地もない」
◆ ◆ ◆
あれ、なぜかしら? 私は一人で寝ていたはずなのにどうして右隣から寝息の音が聞こえてくるのかしら? まるで私のベッドに2人の人が寝ているみたいじゃない。って、そういえば天井のがらだって部屋の雰囲気だって違うわ。一体ここはどこなのよ?
まぁ、いいわ。今日は特別寒いような気もするから布団の中にもぐってもう一眠りしてから考えましょう。そしたらきっと思いつくわ。もういちど、おやすみなさい。
って、思い出したわ。ここはビエッタの家よ。昨日意識が朦朧とした中で歩いてここまできてそして……あれ? なんで私ビエッタの家にきたのかしら? えっと、ビエッタの家によって自分の家に帰ろうとして、変なにおいがして……。うーん、思い出せないわ。この後のこと。なにかが燃え盛っている記憶はあるのだけれど……。
やめた。考えれば考えるほど頭が痛くなってくるし、それならば考えない方がいいわ。考えないことは考えること以上に難しくて大切って言うしね。
って、誰の言葉だっけ?
その時、布団がうごめいたような気がする。さっと目を開けて右側を見るとビエッタが寝返りをうっただけみたいだった。
ビエッタって意外に朝遅いのよね。さて、もう一眠りってだめだわ! 今日は登校日だしビエッタの起きる時間に合わせていたら私が遅刻してしまうわ。
「ビエッタ! おきて」
私はビエッタの耳元に怒鳴りつける。小さくてちょっと赤くなっている可愛い耳だ。けれど、その可愛い耳にはどうやら私の怒鳴り声など届かないらしい。
じゃあ、次には……くすぐればいいんだわ。
ビエッタのわきの下に手を差し込んでコチョコチョコチョ〜。——駄目だわ。びくともしない。
どうしよう……、そうだわ。今度はメイドさんみたいに——。
「お、おはようございましゅ、ごしゅびんしゃま!」
か、かみまくりだわ。っていうか、なんで私メイドさんみたいになんて発想をしてしまったのかしら? それこそ本当に不思議ね。
だけど、意外にもこれは効果覿面らしくビエッタは「あとしゃんぷーん」と叫ぶ。
どうやら起きたみたいね。
さてと、最後の仕上げは……。
「おはようございます、ビエッタ様。本日の朝の紅茶はダージリンです。早く起きてください、ビエッタ様」
「おはようございます!」
ビエッタは簡単に飛び起きてしまった。やっぱり執事キャラ好きだったんだ……。
「あれ、私の執事のトゥナは?」
「何寝ぼけているの? 執事なんているわけないじゃないって、目をこすらないでよ! 私は本物だから」
「え、でも朝起きたらチュナがいるっておかしいよ。お泊りでもないのに……」
私に聞かないでよ。なんでビエッタの家に来たのかは忘れちゃったのだから。
「まぁ、早く学校に行きましょうよ。私もビエッタに付き合って遅刻なんていやなんだから」
「あ、そうか。今日は私の家にいるんだからチュナも私のペースに合わせなきゃいけないもんね」
「そういうこと」
「じゃ、さっさと着替えちゃおって、チュナなんで制服のまま寝てるの?」
あ、本当だ。この黒いワンピースはたしかに制服のワンピースだわ。でも、なんで着たまま寝ているんだろう? そういえば家に帰った記憶がないのよね。まるで家に入らずにここに来て寝てしまったみたいな感じだわ。
だから寝巻きなんて当たり前のようにもっていなくて、私服のまま寝たとか……。まさかね? 予定外に人の家に泊めてもらうことなんて普通ないもの。
「大丈夫、二日くらいならきれるから」
「そうよね。あ、思い出した。昨日の夜、お風呂に入る直前にいきなりチャイムがなったの。それで出てみたらチュナで。どうしたのって聞いてみると、確か校答えたのよ……」
ビエッタは一度悲しそうに口を閉じ、一つ呼吸してから言った。
「家が燃えて、人が庭の前で死んで……逃げ出す人影を見たって」
- Re: 聖歌が響く時 ( No.11 )
- 日時: 2010/09/29 14:00
- 名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
◆ ◆ ◆
全く、ビエッタたらどうしてそんな不吉なウソをつくのかしら? こんな雪の中で家が燃えるわけないじゃない。しかも、私の家は森の奥よ? そんなところに火をつけたら森一帯が全て焼けちゃって大変な火事になるじゃないの。一体どうしてそんな事を言うのかしら?
私は先をずんずんと進んでってしまっているビエッタの背中を見ながら考える。あー、鼻歌まで歌ってるわ。一緒に登校しよう、って言っといてどうしてそんなに先に進んでってしまうのかしら?
だけど、もう十㍍は離れたというのにまだ気づかないわ。それはさすがに変な気がする。
その時、背後から誰かの気配を感じた。いつも一緒にいる気配、それは……。
「お、チュナ。おはよ!」
「テヨン、おはよう」
やっぱりテヨンだったわ。テヨンは何も言わずにさっきまでビエッタのいたところにサッと入ってくる。ま、私の隣ってことね。
周りの人たちから見れば、私とテヨンってどう見えるのかしら? 仲のいいクラスメイト? それとももしかして恋人? 否、ないない。きっと仲のいいクラスメイトよ。もしかしたら私のほうが背が高いから、先輩と後輩に見えるかも。同い年だったら普通、男子の方が高いものね。
「おいちょっと無視すんなよ!」
「え、なに?」
私はテヨンの声によってはっと現実に戻される。おっと、話中に考えことは禁物ね。
テヨンは一つやっぱり聞いてなかったのかと大きく溜め息をついてから話す。
「お前の家昨日焼けただろ?」
「は……?」
もうテヨンもビエッタもそろって私の家が焼けたですって? 確かに、そうすれば私が何故ビエッタの家にいたかも説明できるけど、だけどそんなわけないじゃない。
ほら、今太陽が昇った方に私の家が……あれ?
「ど、どういうことかしら? 私の家が焼けたって……」
「そのまんまの意味だよってあれ? 知らなかった? おかしいな……、昨日ビエッタとか友達の家に泊まったわけじゃないだろ? だって、昨日は得意そうにビエッタの家にとまらせてもらうのよぉ? とか言ってなかったし」
テヨンが、ビエッタの家に泊まらせてもらうのよぉの部分だけ変に声を高くしたのが少しおかしかったけど、っていうかいらついたけど、たしかにそんなことを言った覚えはなかった。
でもね……やっぱり自分の家が焼けたのは信じられないし、なんで起きたらビエッタの家だったのかってことも不思議だし。謎だらけよ。
それに、いつもは屋根と屋根の間から見える森が少し黒っぽくなっているし……煤がついたみたいに。それに森の近くだけ木が白くないからね。
「あ、でも私ビエッタの家に泊まったのよ? 野宿したわけではないんだから」
「だよな」
テヨンも私と同じように悩み始める。
うーん、会話が弾まないわ。
「ねぇ、私の家が焼けたって話、どこできいたの?」
「えっとな……そうだ。かぁちゃんがセイルのかぁちゃんから聞いたとか何とか……」
「え、セイルのお母様から?」
「そうだけど、よく覚えてねぇや。ごめん、ちょっとお前の家が焼けたって話も信用できないかも」
「あ、うん」
そっかぁ。聞き出した相手が不明だったらそりゃ信用できないわね。まぁ本当にセイルのお母様だったら結構そのお話信用できそうなのだけれど。
でも、なぜかしら? だってセイルの家は私のすむ森から結構離れているというのに、どうしてセイルのお母様がそれを知っていたのかしら。最初に知るとしたらきっと森のふもとに住んでいるシャクリージおじ様よ。
「ま、あんまり悩みすぎんなよ。どうせ今日森に帰ったらわかることだろうし、な?」
「うん。それもそうよね。あせる必要は無いわね」
そうよ、あせっったてなにもわからない。とりあえず今を満喫しなきゃ!
「あ、チュナ遅いよー。テヨンおはよー」
「お、ビエッタ。はよっ」
学校の黒い校門にもたれかかってるビエッタ発見。もう学校まで来てしまったのね。
「って、なんで先いっちゃったのよ!?」
「配慮よ配慮。女子は気配りが大切なんだから。ね、テヨン君」
テヨン君のほうを見ると顔をみるみると真っ赤にさせている。
え、どういうことなの?
「あれ、チュナ気づいてないの? 鈍感だなぁ」
ビエッタは心底おかしいとでも言うようにくすくすと笑う。
ちょっとぉ、一体どういうことなのよ!?
この掲示板は過去ログ化されています。