ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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聖歌が響く時
日時: 2010/10/10 17:40
名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)

初。魔法物です。
末永くかければ嬉しいです。
以上!

とにかく久しぶりなんで、更新とりま頑張って期待と思います。

記録
2010.10.10 参照が100に

始まりの歌

私はなんでここに存在するのでしょうか?
少女は問いました。

だれも答えてくれるはずありませんでした。
なぜなら誰もが少女の問いへの答えを知っていたからです。

私はどうすればいいのでしょうか?
少女は問いました。

誰も答えるわけありませんでした。
答えることと死ぬことは同義だからです。

何故私はこんな力を持っているのでしょうか?
少女は問いました。

誰もが優しく笑いかけました。
なぜなら——。


雪の中に血が、まるでグレーテルが落としたパンくずのように点々とついていました。
一人少女はその雪の中、ずっと遠いどこかを見つめておりました。

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Re: 聖歌が響く時 ( No.27 )
日時: 2010/10/13 18:00
名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)

(シーン続いています)

 私が生き残るためには歌を歌うことでしかなんとかできないってことは、もう重々わかっていたの。ただ、その歌はとても危険だということも……。
 例え私が生き残れたとしても、その歌の力で朱雀が死んだとしたら、それは許されないこと。罪人を殺したら、私だって罪人になってしまう。それに、お母様はいつか言ったわ。自分で気づいていないことで相手を傷つけた時、それもまた許されないことだって。私が火から逃れるために魔力を使った時、朱雀がたまたま傷ついてしまうのなら、全て私のせい。
 そして、私はそれを望まない。

 もう、いっか。私なんて。生きている意味無いのよ。それが私を火の中に葬った神の決断であり、神の意志なのよ。それに抗うことなんてできるわけないわ。私はここで、否この前の火事で死ぬべき人だったのよ。きっと。
 ここで私が生き延びれるわけ無い。

 走馬灯、って本当に走るのね。今までの日々が思い出されていくわ。
 あ、まだちっちゃい頃のビエッタだ。お菓子が三つあって最後の一個をどちらが食べるかでじゃんけんしてる。最初はぐー、じゃんけんポン! あぁあ、私が負けちゃったわ。泣いてるみたい。だけどビエッタは半分にしてくれた。昔からビエッタはいい子だったのね。ありがとう。

 今度はトゥーサとお喋りしてる。そういえば最近トゥーサとあんまり話さないなぁ。何でだろう? やっぱり大きくなってそれぞれに友達が増えたからかな?
 お母様も出てきた。お父様も。きっと昔々のクリスマス休暇の時ね。クリスマスツリーが玄関に飾ってあるみたい。あの時はサンタさんきたのかしら? 小学校を卒業してからサンタさんが来ないのよね。

 今度はテヨンが出てくる。小学校の時仲良くなったのかしら? まだちょっとぎこちない感じがするわ。小学校にはテヨンと年が近い男の子、あんまりいなかったのよね。一人か二人くらいだっけ。しかも、どっちも根暗な奴だったわね。今まで全然思い出せなかったことがみるみる思い出されていくわ。

 せ、セイル!! セイルも記憶の端に何時もいる。セイルとであったのは中学校のクラス発表の時だったわ。それで出席番号が近くて。最初の方は街の学校ってことでちょっととまどってた私をいろいろ助けてくれたのよね。最近はあんまり話せていないけれど……。

 色々思い出せた。幸せだったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、辛かったこと。それで私はもう充分です。思い出だけもって死んでいって、それで終わりでいいです。私にそれ以上の生き方なんてもったいないわ。ただただ、今までしっかり生きて来れたことを感謝するだけで充分よ。

 まわりの炎は私の周り半径一メートルほどまで近づいてきた。もうすぐ私も燃えてしまうわね。
 決意を込めて静かにまぶたを閉じる。ありがとう、本当にありがとう。

 その時、何か叫び声が聞こえた。目をパッと開いて耳を澄ます。

「チュナ、生きてるか! 今から助け行くから、心しておけ!!」
「無理!」

 ケホケホ! 咳が、なにか有毒なものすっちゃったみたい。って、テヨンがここに飛び込んできたら、テヨンもその何かを吸って死んじゃうわ。みちずれなんて嫌よ! テヨンにはまだ未来の幸せがあるかもしれないのよ。被害者は私だけで充分なのに。
 でも、きっとテヨンは私がいくら止めてもこの中に乗り込んでくるわ。自分で助からないと、テヨンは止まらない。

 どうやって、どうやって助かるのよ。私は無力なただの女の子で……私には歌があるわ! 誰かを傷つけるかもしれない、それでも確実に誰かを傷つけるよりはずっといいわ。私は、誰も傷つかない確立にかける!

『My singing voice sounds.
 For my happiness.
 For your happiness.
 There is a possibility of dying by nobody, too.
 There is a possibility of damaged of nobody, too.
 In that case, I believe the possibility.
 Please save us. 』

 名前は……全ての人の幸福のために。だっけ? 全ての人が幸せになれるかもしれないから、救われることを望むような歌。
 だけど、私はこの歌があんまり好きではない。幸せになれる可能性があると思っているのに、誰かに救いを求めるところが。運命は自分で切り開くものだから、私はこの歌があんまり好きでない。

 でも自分の力じゃどうにもならない時だってあるわ。その時、救いを求めていけないわけ無いわ。

 嗚呼、息をするのが苦しくなってくる。歌を歌うときに空気をたくさん吸ってしまったからだわ。ケホッケホッ。咳が、止まらない。
 やっぱり駄目なのかな?私なんかに生きる資格なんてなかったのかな?

 あきらめかけた時、奇跡は起こる。これは普遍のルールとなる。


 刹那、目の前に閃光が走った。

Re: 聖歌が響く時 ( No.28 )
日時: 2010/10/15 18:56
名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)

◆   ◆   ◆

光の向こう側には何が待ち受けているのでしょうか?
——それは誰も知りません

光の向こう側は希望なのでしょうか、絶望なのでしょうか?
——それは誰も言えません

光の向こう側には幸せはあるのでしょうか?
——それは……

◆   ◆   ◆

「チュナ、大丈夫? チュナ……」

 嗚呼、耳元から声がするわ。誰の声でしょう? 私を心配ししきりに呼びかける声、とても優しそうな声だわ。でも、少し疲れているのかかすれているみたい……、私がかすれさせてしまったのだとしたら、それはどうわびればよいのでしょうか?
 でも、きっとわびないのが正解なのでしょうね。友達にわびはいらねぇなんていわれそう。あれ、そんなこという友達は一人しかいないわ。何故、無意識に彼のことを思ってたのでしょう? 不思議な話。

 そんな事を思いながらまぶたをゆっくりと開ける。すると目の前には美しい瞳が待ち受けていた。ただ、その瞳は私が目を開けたことに気づくとさっと離れて行く。
 その瞳の主は、やはりテヨンだった。私の傍に座り込んでいるみたい。うずくまっているようにも見えるけれども、なぜかしら?

 あっ、そうだわ。確か火事が起きて閃光が走ってそれで……。

「よかったわ、テヨン。生きているみたいで」
「それはこっちのセリフだよ」
 うずくまりながらも左手を親指だけ立てて差し出してくる。私もそれに合わせて右手を親指だけ立てて返す。

「だけど、不思議だよな。いきなり閃光が走って、そしたらここにいて……」
「そうよね。何が起こったのかしら?」

 魔法が発動した。そうとしか思えないけど、そのことはあえて黙っておく。不用意なことを言ってテヨンを怒らせたりしたくないわ。
 だけど、なんで魔法を使った本人の私にもこの現象がよくわからないのかしら? 

「もう、夜だな」
「あ……」

 本当だわ。まわりの木々にさえぎられて空の様子はわからないけど、確かにあたりはいつしか漆黒に染まっていた。ガスの街灯が静かに光っている。
 そういえば、私たちが家に行ったのは確か夕方ごろ。そして、火事があった時はまだ日は沈んでなかった。なのに……

 私たちはどうしてこんなところに放り出されたままなの?

 おかしいわ。絶対におかしい。だって、誰かが様子を見に来たような跡が無いんですもの。
 先日のほうのことはよく分からないわ。けれども、今日のほうはそろそろ誰かが様子を見に着てくれてもいいはず。でも、雪で真っ白の道には足跡一つ無い。あるのは私とテヨンのなっころがっていた跡や、テヨンが私の近くにすわっていた跡くらい。

「何かがおかしいような気がする……わ」
「そうだな……」

 私たちは考える動作をしないものの、かくかくにきっと頭を動かしていたのだと思う。

Re: 聖歌が響く時 ( No.29 )
日時: 2010/10/15 21:08
名前: ユエ (ID: hj1.aJrP)

仲間割れで殺される設定(ノ゜⊿゜)ノ??!!
朱雀っていったら、イメージは赤、ですかね……?


ふおッ! チュナが死んじゃうかと思った……!!!
読んでてハラハラした!

Re: 聖歌が響く時 ( No.30 )
日時: 2010/10/20 18:40
名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)

はらはらしてもらえてよかった……。
そうです、仲間割れで殺される設定でした(笑)

3、私に戦えと神は言うのですか?

「へぇ、それは不思議なお話ね」
「嗚呼全く持って不思議な話。それでいいじゃないか」
「よくないわ」
「なんでだい?」
「わからない」

◆   ◆   ◆

 目を開けたら光が差し込んだ、なんていう目覚めは久しぶり。私の部屋に光はほとんど差し込まないし、昨日は曇っていたから光といえるほどの光は無かった。だから久しぶり。気持ちの良い目覚めだわ。

 だけど、そんな事を思った次の瞬間には脳裏であの時のお母様たちの姿や燃える家が浮かぶ。——はぁ、昨日みたいに忘れることができたならずっと楽だったのに。忘れっぱなしであれば、幸せに生きていけたかもしれないのに……。それはどこまでも寂しいけど、どこまでも幸福。

「ふあぁー、おはほぅトゥナ」

 私の右隣のほうから寝ぼけたような声が聞こえる。ビエッタもちょうど今起きたみたいね。って思ったら、次の瞬間には小さな寝息が聞こえてくる。もしかして、いつもビエッタが遅刻している理由って。

「な、なんでそんなに律儀に二度寝ができるっていうのよ!?」
「Zzzzz」

 私の叫びにもお構いなしにビエッタは眠り続ける。もう、眠りの森の美女のつもり!?
 だけど、その安らかそうな寝顔を見るとふと安心してしまう。安らかそうな血色のいい寝顔を見ると。口からはよだれがたれ落ちている。

「お母様も美しかったわ」

 ビエッタの綺麗な金髪の髪を二三回なでてみるけど、なでるたびにお母様のあの綺麗な金髪が思い出される。私の黒い髪はお父様譲りなのよね。ああ、でもお父様ももう死んでしまったんだわ、きっと。そう思うと、また無性に悲しくなってくる。いつまでも沈んでいてはいけないし、悲しんでいてもいけないっていうのはわかるけど、金髪の髪を見るたびにお母様やトゥーサを、黒い自分の髪を見るたびにお父様を思い出してしまうことはしょうがないんだわ。本能のようなものなのよ。

 あの時のお母様も金髪の髪を床に流し、横になっていた。まぶたは閉じられ、長い黒いまつげが下を向いていたのも、まだ少し温かく血色も悪いわけではなさそうだった。まるで今のビエッタのよう。

「何考えてるんだろう? 今日は平日よ。クリスマス休暇が始まっていても学生は普通に学校はあるわ。ビエッタ、おきて!」

 私の声に、目をこすりながら少しビエッタが反応するけれど寝返りを打ってまた寝始める。

「ビエッタ、おきろ」

 耳元で叫ぶけどビエッタはやっぱり起きてくれない。こういうときはどうするんだっけ……。あ、そうだ。

「お嬢様、朝です。起きてください。お嬢様」
「あ、おはよ。トゥナ。早く制服をだしてちょうだいって、あれ? チュナ。トゥナはどうしたの?」
「ふっ、よかった」

 ビエッタは普通に喋る。生きていた。お母様とは違って、しっかりと今を生きていた。

「え? 何がよかったの?」
「なんでもないわ」

Re: 聖歌が響く時 ( No.31 )
日時: 2010/10/23 10:55
名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)
参照: やっとポケモンエンディングまでいったぁー

(しーん続いてます)

「え、ちょっとどういうことー?」
「だから、なんでもないの。さぁ、朝ごはんを食べましょ。早く早く」

 私はビエッタの言葉を受け流す。お母様のことを思い出していたこととかを悟られたくなかったからかしら? 隠す必要は無いかもしれないけれどなんとなくね。
 そのことにかすかな疑問を感じつつもビエッタもまぁいっかという感じで、にっこりと笑う。うん、やっぱりビエッタが笑うと辺りに花が咲き誇るような温かさを感じるわ。それはそれでまるで魔法みたい。

「あ、今日の朝ごはんは雪ウサギのスープかな?」
「雪ウサギのスープ? もしかして、雪ウサギを煮込むの……?」

 ……聞いてないわよ、私。ビエッタがそんなものばかり食べているなんて。私、本当にこの家でうまく暮らしていけるのかしら?

 ——暮らす。そう、私はここにしばらくあずかってもらうことになったのよね。近い親戚といってもそれは海を渡った向こうの国にいて、忙しい人だからその人の家においてもらうこともできないし、それ以外に親戚といえるような親戚もいないのよね。もう、お母様が家と縁を切らなければこの辺にもまだまだ親戚がいたはずなのにね。まぁお母様を恨んでもしょうがないわ。ということで、私はビエッタの家族と交渉しここにしばらく住まわしてもらうことになったわけ。必要なお金はお父様とお母様が銀行に預けっぱなしにしていたお金を貰ってきてわたすことになたのだっけ? まぁ、その辺はよく分からないわ。

 だけど、ウサギを煮込んだスープとかを食べる気にはなれないわ。

「あ、大丈夫。スープの色がまるで雪ウサギのように白いからそう言っているだけ。さすがにウサギをなべに放り込んでだしをとって肉とするようなまねはしないよぉ。もう、チュナったらひどいなぁ」
「だって、そう言ったら誰だってウサギを煮込んだスープだって思うじゃない。せめて、雪ウサギじゃなくて、真っ白なスープとでも言えばいいでしょう?」
「チュナ、ネーミングセンス無さすぎ」
「それはビエッタのことでしょう?」

 もう、怖かったじゃない。白兎をなべで煮込んでる様子が頭に浮かんできて。
 だけど、白いスープなんて食べるの初めて。一体どういうものを使って作っているのかしら? 私の家でスープって言ったらお味噌をつかたスープとか野菜のスープとかばっかりで、いつも色は黄色とか茶色。あとは、前にちょっとトロっとしたような透明のスープを作っていたりもしてたわね。

 ちょっと楽しみかもしれないわ。

「じゃぁ、早く着替えよ。着替えないと朝ごはん食べさせてくれないから」
「手伝わなくていいのかしら?」
「いつも私が寝坊で遅刻してるの知ってるでしょ? そんな私に、朝ごはんを作ったりするのを手伝う余裕があるわけないじゃん」
「あら、今日は早いから手伝うべきじゃないのかしら」

 時計の方に視線を飛ばすと、そこの針はちょうど七時をさしている。学校には八時過ぎにつけばいいからまだ全然時間があるわ。
 と思いビエッタの方に視線を戻すとってまた寝る気!?

「逃げないで頂戴」
「グーグーグー私は寝てるよー。起こさないでってきゃぁぁ。ちょっとなにすんの!?」
「征伐って奴かしら?」

 ビエッタは寒そうに身を縮ませて震える。布団を剥ぎ取るのってやっぱり効果があるわね。生憎私はビエッタに対する感情とかで寒くないのよ。
 否、フローリングの床はかなり冷たくて裸足の足だけは凍えてしまいそうだけどね。

「……は、はい」
「よろしい」
「実はチュナってかなりまじめで、Sだったんだね」
「なんか言いいました?」
「いえ、何も」


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