ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 十二支牢獄Story
- 日時: 2011/04/29 22:14
- 名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: c5zRNdeN)
ハジメマシテ、コンニチワ。
スレを見てくれたことにマジ感謝です。
いつ挫折するか分からないような真の駄作者につきあってくださる方のみ、お残りください。
【注意書き】
1.この作者、挫折経験アリ
2.荒らし駄目・絶対!
3.コメ大歓迎
4.意味不(←ここ重要
5.多分グロアリ…?
6.更新亀以下(←ここも重要
では、これより始まりますは一人の少女と十二人の囚人の話に御座います。
お気に召されれば光栄に御座います——————
※お客様※
◆アキラ様 ◆*+。弥生*+。様 ◆神凪和乃様 ◆腐女子まん*羽菜。様 ◆ソナー様
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- Re: 十二支牢獄Story 参照200突破! ( No.36 )
- 日時: 2011/03/27 15:57
- 名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: c5zRNdeN)
9話:『だって俺、強いモン』
数分後、やっとトーヤさんの爆笑は止まったらしく、今は服に着いた汚れを払っている。
「……俺、あの人苦手かも知んない」
「そ、そんなこと言わないでくださいよ、ね?」
ふてくされた顔で私の横に腰を下ろした螺猿さんはまだ少し赤い。
「……ところで、あの子は誰なんですか?」
「え?」
少し離れたところでしゃがんで一人空を見上げている子供。
少年……だろうか?
随分と幼い。
なんだか、寂しげな雰囲気を醸し出している。
「ああ。 アイツは『兎影』。 一応アイツも【十二支】の一人だよ」
「そうなんですか?! 私より小さいのに……」
「年齢なんて関係ないからねぇー……ここは。 要は実力の問題さ」
そう言ってからりと笑う。
失礼だが、とても強そうになんて見えない。
「螺猿」
兎影ちゃんは急に立ち上がり、螺猿さんを呼んだ。
「どうした、兎影?」
「風が変わった、来るよ」
「! 二人とも下がって!!」
「ど、どうしたんですか……?」
螺猿さんは戸惑う私の前に立った。
その瞬間________
ドガァアアアンッッッ!!!
「きゃぁっ!!」
「レイトちゃん!!」
螺猿さんは私を抱き寄せ、爆風から守る。
激しい爆発音と爆風ともに現れたのは、大柄な囚人だった。
「チィッ! 避けたか。 流石は【十二支】と言うところか……」
「あいにく、アンタ見たいのにやられる筋合いはないよ」
自分よりもはるかにデカイ男を前にしても、螺猿さんはひるまず相手を睨みつける。
「ら、螺猿さん……」
「大丈夫、心配しないで」
私をそっと後ろに追いやる。
その間も、彼は男を睨みつけていた。
「兎影! こっちに来て!!」
兎影ちゃんが、螺猿さんの声を聞き走ってくる。
「……第四区画の【十二支】、か……。 道理で避けられる筈だぜ」
「ご名答」
走る兎影ちゃんを横眼で見ながら、男は忌々しげに呟く。
「ら、螺猿さん!」
「大丈夫だよ、だって俺、強いモン」
そう言って無邪気に笑う。
「最後のお喋りは、終ったか?」
「ん? 最後? そんな訳ないじゃん。 俺、死なねーし」
「そうか。 ……殺す」
その言葉を合図に、囚人は螺猿さんに殴りかかる。
螺猿さんは、それを軽く避け、囚人の腹に蹴りを入れる。
だが、囚人は螺猿さんの蹴りを受け止め、自分の方に引き寄せる。
囚人が振りぬいた拳は螺猿さんの顔にヒットする。
螺猿さんは痛みに顔を歪めながらも反対の脚で囚人の顎を蹴り上げる。
螺猿さんの蹴りがモロに入った囚人は思わず掴んでいた手を離す。
二人ともいったん距離をとる。
「テェなっ、この野郎……」
そう言って螺猿さんは鼻血を乱暴に拭う。
「テメェこそ」
囚人は軽く顎を摩った後、ニヤリと笑う。
「死ね」
「ヤダ」
短い言葉を交わした後、再び始まる激しい攻防。
息をつく暇さえ与えず、繰り出される拳に蹴り。
一進一退の攻防に終止符を打ったのは、意外な人物だった。
二人ともギリギリまで張りつめた緊張の中、同時に拳を振リ抜いた______________
はずだった。
ボガァァアアンッ!!
爆風と共に乱入してきたのは二人の男。
「チッ、しつこい奴はモテねーぜ?」
「黙って死にやがれええ!!!」
乱入してきた男の一人は、手にナイフを持っていた。
繰り出されるナイフの柄をひらりひらりとかわしながらも、笑みを浮かべている。
「ハッ! そんなチンケなナイフ一本でこの俺様が殺されると思うなよ?」
そう叫んだ男は、突き出されるナイフを余裕でかわす。
ナイフを突き出して伸びきった男の腕を掴み、固定してから容赦ない一撃を浴びせる。
「ッカハァ!」
相手の体がクの字に折れると同時にその背後に回り、蹴りを叩きこむ。
鮮やかで無駄のない動きだ。
「よぉ! まだ死んでなかったか? 第九区画【十二支】『螺猿』さんよ!」
「アンタも相変わらずだな。 第七区画【十二支】『馬相』さん」
せっかくの機会を邪魔された、とでも言いたげにブスッと一気に不機嫌になる螺猿さん。
「その減らず口、切り殺してぇなぁ」
螺猿さんの言葉に対し、笑顔でキレる【十二支】『馬相』さん。
その後、螺猿さんは一撃で囚人を仕留め私と兎影ちゃんを自分の後ろに回し、馬相さんと睨みあっている。
「何でアンタがここにいるんだ」
「いや、ただの成り行きだ。 気にするな」
「あ? じゃぁさっさとここから消えてくれ」
不機嫌丸出しの螺猿さん。 声が刺々しい。
「何で俺様が消えなくちゃならねぇんだ。 テメェらが消えろ」
螺猿さんの一言に反応し、馬相さんまでもが不機嫌になる。
馬相さんの声が怒っている。
どうあろうともこの人は人の言うことに従わないらしい。
ある意味、この二人は息が合うんじゃないだろうか。
仲、悪いなぁ……。
- Re: 十二支牢獄Story 参照200突破! ( No.37 )
- 日時: 2011/03/27 16:00
- 名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: c5zRNdeN)
- 参照: http://牢獄って一部屋って言うのか言わないのか疑問だよね。
*用語解説*
『ウエスタン監獄』
世界で最上級の収容能力を持つ監獄。 一度ここに入ってしまうと死ぬときまで出て来ることは出来ない。 男子棟・女子棟・管理棟の三つの棟があり、男子棟十二区画、女子棟の計十三棟があり、牢獄一つに四、五人収容される。
【十二支】
ウエスタン監獄 男子棟に一人ずつ存在する。 毎年開催される【十二支】戦挙で生き残った者がその称号を受け継ぐ。 【十二支】になった者には各区画の【十二支】の名が与えられる。
第一区画 『鼠谷』(ソダニ)
第二区画 『牛裏』(ウシウラ)
第三区画 『寅玲』(インレイ)
第四区画 『兎影』(トカゲ)
第五区画 『竜奇』(リュウキ)
第六区画 『新蛇』(ニイダ)
第七区画 『馬相』(バソウ)
第八区画 『獅羊』(シヨウ)
第九区画 『螺猿』(ラエン)
第十区画 『飛鳥』(アスカ)
第十一区画 『犬』(ケン)
第十二区画 『猪柊』(チョシュウ)
彼らはその名と称号を与えられると共に、自らの過去を捨てる。 記憶も名もすべてを捨て、各区画の囚人たちを纏め上げる。 それは時に己が命の危機に面することも少なくはない。 それすらもその背にすべてを背負いこの地獄の監獄で生きていく。
- Re: 十二支牢獄Story ( No.38 )
- 日時: 2011/03/27 16:33
- 名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: c5zRNdeN)
10話:『足掻けよ。 世界のクズ共』
男子棟 管理室
格子がはまった窓から見えたのは、落ち出した夕日とだんだんと顔を出す暗闇の両者だった。
それを窓際に立ち、静かに眺める男と机の上に置かれた黒と白のチェス駒を一つ一つ動かす男が居た。
「なぁ、スグル」
姿を隠していく目が痛くなる迷惑な色の夕日を眺める男は呟く。
コトリ。
黒のチェス駒をゆっくりと前進させる。
『スグル』と呼ばれた男は答える。
「何だ」
「夕日が、その存在を消していくよ」
「そうだな」
「人はあれを燃えたぎる様な赤だと言うけれど、僕はそうは思わない」
「ほう。 ではお前は何と形容するのだ?」
「そうだね……」
そこで夕日を眺める男は静かに目を閉じる。
「……その身の犯した罪を最後にこの世に示している様だ、かな」
アキラは、チェス盤から視線を外しもう一人の男を見る。
「私は、ただただ消えると言う真実から逃れたいと泣き叫ぶ子供の様だ、かな?」
そう言って薄く笑う。
「あんたの考えそうなことだな。 何か飲むか?」
「ああ。 そうだな……紅茶でも貰おうか。 この私達を眺めるしか能のない日を眺めながら飲む紅茶も悪くない」
「相変わらずな趣味だ」
「そうだ、アキラ。 棚の一番上の段の左端に菓子が入っていたはずだ。 それも出してくれないか」
「解った」
『アキラ』と呼ばれた男は窓から離れ、部屋の奥へと消えた。
それを見届けたスグルはふと手元のチェス盤に目を落とす。
ゆっくりとした動作で一つ白の駒を持ちあげる。
それをしばらく眺めまわす。
球と曲線でつくられ、真っ白な色を全体にムラなく塗られたただの駒。
チェスの駒。 ただの。
この世界に同じ形・色がいくらでも存在する何の変哲のない娯楽の一パーツ。
部屋の奥からいつものティーセットと菓子を抱え戻ってきたアキラは、白のポーンの駒を眺めているスグルを見る。
スグルが考え事をしているときに話しかけると碌な目に合わないことを彼は知っていた。
身をもって経験していた。
やがてスグルは腕を動かし、チェス駒を掴んでいた指を一本一本放していく。
このよく解らない行動も毎回のことだ。
やがて支えを失った駒が地球の重力に従い、床に落下する。
「足掻けよ。 世界のクズ共」
床に落としたチェスの駒をスグルは容赦なく踏みつぶした。
バキリ。
静かな部屋の中に砕け散る木片の音が響く。
スグルはそれまでとは打って変わった残酷な笑みを浮かべていた ____________________________
・・・
「いい加減にしてくんないかなぁ? 俺はただここから消えろって言ってんの」
「あ? テメェ、誰に向かって命令してんだ。 殺すぞ」
「アンタにそこまでの実力があるのか? あぁ?」
「どうしても死にてえらしいな。 いいぞ、いつでも相手になってやるよ!」
「ハッ! 誰がアンタの相手なんかするかよ。 時間の無駄だぜ!」
「ほぉ、逃げるのか? ま、俺様のさっきの戦いぶりを見てしまったら当然か」
「はぁぁ?! アンタ、自惚れんのもいい加減しとけよ! このナルシストが!」
「ナルシスト? 馬鹿な。 あんな低俗な生物と一緒にするな。 俺様は全世界の万物の頂点に君臨するほどの器を持ち合わせているのだ。 そんな一般人の括りに入れてもらっては困る」
「ッの! そんだけ戯言が吐けるんなら十分ナルシだよ、アンタ!」
「そう嫉妬するな。 ん? 俺のこの強靭な精神と実力が羨ましいんだろ?」
「それ以上口を開いたら殺す! 誰が何と言おうとも殺す!」
まるで、子供の喧嘩だ。
先ほどから続いているこの口論だが、いい加減飽きてしまった。
私の隣では兎影ちゃんが地面を一列で行進する蟻の大群を眺めている。
トーヤさんに至っては、そこら片の木の幹にもたれかかり、爆睡している。
……トーヤさんは一体今まで、どこに隠れていたのだろうか。
空を見上げると、夕日が顔を隠し暗闇がこちらまで手を伸ばしていた。
雲が仄かにオレンジ色に染まる。
私はこの時間帯の雲が一番好きだ。
二色の色が、お互いを邪魔せず綺麗な調和をなしている。
少し、冷たさが入り混じる風が私の頬をなでていく。
それがまた心地いい。
顔を下げると、二人は未だに懲りもせず口論を続けている。
「だからなぁ、……あ゛ッーーーー!! もうイライラする! いい加減認めなよ!」
「フン! 俺様の実力を認めないのは貴様の方だろう! 貴様こそ俺様の配下になりたくなったのではないか?!」
「ならねェつってんだろ!!」
もうそろそろか。
「あのぅ。 螺猿さん、馬相さん?」
「何、レイトちゃん?」
「何だ、小娘」
その瞬間、螺猿さんは今まで抑えてきた殺気と苛立ちを爆発させた。
「あ゛? テメェ、今なんつった? 小娘だぁ? 本気で殺害されてェのかコノ糞野郎」
「オイ、その俺様の胸倉を掴んでいる汚い手を離せ」
馬相さんは音がこちらに聞こえるほどきつく螺猿さんの腕を掴んだ。
一方螺猿さんの方はその腕の痛みを気にならないほどなのか、額に青筋を浮かべている。
「沈めるぞ」
「八つ裂きにしてやるよ」
「え、ちょ、ちょっと! あの?!」
「なんやおもろいことなっとるやんけ。 恋した乙女貶されてがキレたか。 難儀なやっちゃ」
「キャァッ! ビックリさせないでくださいよ、トーヤさん。 ……ところで、さっきのどういう意味ですか?」
「……本気で言っとる? それ」
「??」
何のことか全く分からない。
私の表情を見たトーヤさんは呆れ半分、苦笑い半分のような微妙な表情を作ってこちらを見ている。
「天然?」
「そういうことヤロな」
突然現れた兎影ちゃんの言葉に、二人で納得してしまっている。
一体何の事を言っているのか教えてほしい。
「伝わるとええなぁ、アンタの気持ち」
彼女は、螺猿さんに憐憫の情を抱かずにはいられなかった。
- Re: 十二支牢獄Story ( No.39 )
- 日時: 2011/01/08 01:38
- 名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: au7rBPzb)
*お詫び*
お久しぶりでございます、皆さま。
パソ禁をいきなり言い渡されたのが昨年の事。
本当にすいませんでした。
そして、皆さん、遅くなりましたが明けましておめでとうございます!
ようやくpcに触る許可が出ましたので、更新を再開させて頂きます。
……誰も待ってないかな? まぁ、いいさ。
これからもノロノロと更新していきますので、どうぞ宜しく。
叶嵐
(本文欄がでかくなっているのは驚いた)
- Re: 十二支牢獄Story ( No.40 )
- 日時: 2011/03/27 17:26
- 名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: c5zRNdeN)
- 参照: http://意味不。 土下座。
11話:『レイト』
数分後、私とトーヤさん、兎影ちゃんの三人で螺猿さんと馬相さんを落ち着かせ、半ば強引に兎影ちゃんは螺猿さんを連れて去って行った。
馬相さんも最後まで我を通し、私に強烈な印象を植え付け去っていった。
「……【十二支】って……」
「ん? なんや、レイトちゃん。 なんか言ったか?」
「いえ、【十二支】って個性的な人が居るんだなーと」
「アレは、特別や」
「レイト! トーヤ!」
「あ、ひ、広富さん!!」
「よう、姉御」
「姉御って呼ぶな! 全く二人とも、空を見な!!」
私たちの後ろから現れたのはケイトさんだった。
ケイトさんは右手を腰に当て、左手の人差指でそれを指す。
「?」
「空言うても…」
何の変哲もない。
私たちの頭上にあるのは限りと言う単語とは無縁の広い空だ。
……色は群青色だったが。
「さっさと帰ってきな! 運よく看守の見回りがなかったから良かったものを! ばれたら拷問だよ?!」
「スマンッ! この通りや! どうか勘忍してや!!」
顔の前で両手を合わせ、合唱の形を取る。 そんなトーヤさんを見て、睨んでいたケイトさんも次第に呆れ顔になり、短く言い放った。
「帰るよ」
トーヤさんは直ぐに安心したようなほっとした表情を見せ、既に歩き出しているケイトさんに走り寄って行った。
「レイト? 何してんだい、ホラはやく来な」
「レイトちゃん! はよう来ぃ! ナイが待っとるで」
「アンタがそれを言うのかい」
「気にしぃなや、レイトちゃん! 早く!!」
トーヤさんとケイトさんは振り返って、私を呼ぶ。
二人は笑っていた。
「………で」
「え? なんやてぇー? 聞こえへんで?」
「何でなんですか?」
「何がだい?」
「何で、そんなに笑えるんですか?」
「……」
「何でそんなに明るいんですか? 何で笑っていられるんですか? ここは、地獄の監獄のはずなのに……」
トーヤさんとケイトさんは顔を見合わせる。
ケイトさんは突然に私に問いかけてきた。
「レイト、アンタ家族は?」
突然の質問。
「か、家族ですか?」
「そう、家族」
「家族、は……父なら、居ます」
「母親は?」
「ッ! は、母は……死、にました……」
今でも、あの時のことを考えると胸が抉られたように痛い。
でも。
「レイト、アンタの母親が死んだのは何時のことだい?」
ズキンッ
「なんで、そんな……こ、と…を?」
「レイト、母親が死んだのは何時だい?」
再度の質問。
ケイトさんの表情は……ない。
「そ、ん……な、こ…ッ?!」
滑り落ちた苺。
血のまみれた母。
冷たい肌。
恐怖に身開かれた目。
刻まれた言葉。
次々と溢れかえるあの日の一コマ一コマ。
———————————————————————痛い
手が、足が、だんだんと震えが全身に回る。
「今でもショックかい?」
ズキンッ
「し、知ら……!」
あたりまえじゃないですか。
一体何の質問ですか。
笑えない。 笑って一蹴することができない。
———————————————痛い
「アンタの母親が死んだことは認めてるんだろ?」
ズキンッ!
「あ、え……は、い」
認めて……いる。
愛するこの世でたった一人の母。 私を愛でてくれた母。
死んだ。 そう、もうこの世で息をしていないのだ。
痛い
息が苦しい。
痛い
嫌な脂汗が頬を伝い流れる。
痛いいたい
「レイト」
ゆっくりと。
ゆっくりと。
ケイトさんは私に向かって歩いてくる。
「け、ケイト……さん?」
頭が、酷く痛む。
手でこめかみの所を抑える。
目の前が歪む。
目がしらが熱い。
あれ? ダメ。
ダメだ。
…………………・…・なにが?
泣いちゃいけない。
…………………・…・なんで?
押さえなくちゃ。
…………………・……なぜ?
ダメだ………。
……解らない。
頭が…・…イタイ。
頭の思考がその働きを止める。
「dcvbん?!」
何かが聞こえる。
その言葉を正確に訳すことができない。
「xcvbんm!!」
解らない。 知らない。 ここはどこよ。 誰なのよ。 解らないよ!
突き刺すような頭の痛みから解放されたい。
その思いだけが私の脳内を埋め尽くす。
次第に視界が暗くなっていく。
重くなる瞼が唯一はっきりと捉えたのは、最後に見えたのは、ありえないはずの姿。
「鴉さん………?」
そんなバカな………。
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