ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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血觸症−Murderer(s) syndrome− 
日時: 2011/04/19 23:11
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

ほぼ初投稿です。自分の文を他人が読んでも変にならないかドキドキです、特に元になる話はないけど、時系列順じゃないから説明できないところがあるけどよろしくお願いします><
1話 >>1
2話 >>10

 まさか約三ヶ月も経ってしまうとは…忙しいのと戦闘シーンに納得がいかず、投稿を控えてましたが、最近は時間が開いて来たので再開シマス。下手くそですがヨロシクネ

第1話「殺人(者)嗜好」

一話の登場人物

副業俳優で高校生で血觸症で多重人格者の主人公:宝御示 交(ほうおんじこう)芸名は霧鎌 交

唯一交の血觸症のことを知っている親友:矢口 智嗣(やぐちともつぐ)

歌手で交のクラスメート:遠上 華波(えんじょうかなみ) 芸名はカナミ

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Re: 血觸症−Murderer(s) syndrome−  ( No.20 )
日時: 2010/11/27 04:20
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

 連れてこられた部屋には、いつの時代だと疑いたくなるような雰囲気とオーラに包まれた部屋だった。
「いらっしゃいませー」
 のれんをくぐると、見るからに上質な生地を使っている着物を来た男女が店の入口で出迎える。
「キャー、霧鎌くんよ! ちょっとちょっと! 」
 女子達が騒いでいる。雰囲気台無しじゃないか。
「おお、智嗣じゃないか。よく来たな」
 目の前にきれいなグレーの着物に緋色の羽織りを着た男が立っていた。
「よっ、条士。相変わらず似合うねー、和服」
 その男。条士は、俺に目を向けてきた。
「お前は…確か交だっけ? えーっと…」
「宝御示です、芸名は霧鎌ですけど」
 ああ、と条士さんは手を叩いた。
「まぁ、ゆっくりしていけや。適当な席に座っていいぞ」
「行こうぜ、交」
 席は全て座敷で、机と座布団があった。
「ほい、コレがメニューな」
 条士さんがお品書きと書かれた冊子を2つ机の上に置いた。
「ここの和食は毎年条士の父さんが教えてる弟子が造りにきてるらしいぜ? 」
「あぁ、そうか。条士さんの家って和食の名門だっけ? お前が中3のころに少し聞いただけだが」
「そそ、条士の父さんは俺の親父の弟。親父は弟に結婚を先越されてるんだぜ? すっげぇだっせえー」
 ゲラゲラと智嗣は笑っている。どこに笑える要素があるかわからないが、とりあえず苦笑いしておく。
「あ、んで、条士は柔道部の次期キャプテン候補ナンバーワンだ。柔道ならお前にも負けないんじゃないのか? 」
「ハハハ、まず俺ジュードーしないし。てかなんで俺基準? 」
「いや、【闘】って付くやつ全部すごそうだし」
 俺は一体どんなイメージなの…
「お前何がいい? ってか何が美味いかわからんよな。というわけでコレを頼むんだ! 」
 智嗣が指さしたの所には、【えび天定食 2030円】。別にカネがないわけではないが、なるべくランチは1000円代で抑えようと努力しているのだが…。
「コレってお前が俺の奴を何本か横取りしたいだけ—」
「おねぇさーん! えび天定食2つー! 片方は海老天多めで! 」
 こっんの野郎…。
 メニューの端をみると、天ぷら追加500円となっていた。多分食べないのに払う方は俺なんだろうな…。
 しばらくして出てきたものは、至って普通の天ぷら定食のようだった。
 何ら考えもせず一口食べてみると…。
 普通だ、何時も食べてる方が美味しいなんていえない。何時も食べているのが目の前の奴の父親レベルの料理のものだから、コレは普通に考えたら美味しい部類なんだ。そう、美味しい美味しい。
 そう無心になりながら食べ続け、数分後、やっと食べ終わった。
「うん、毎年通り【普通】だな」
 智嗣は普通にその味を普通と言った。気付いたら横にはコレを作った人と思わしき人が正座をなしていた。そんなことを気にも止めず智嗣は俺に向かって
「交、お前はどうだった? 」
 と聞いてきた。流石にコレは可哀想だと思ったので、平常心を崩さずに
「美味しいですよ—」
 と答えた、横の料理人は一瞬顔が緩んだような気がした。が。
「微妙だってさ。もうちょっと精進せい! 」
 鬼智嗣、こういう事に一寸の妥協も許さないのがこいつの性格だ。
「お言葉いただき光栄でございますっ! もっと精進するよう努めますっ!! 」
 横の料理人は一礼をし、厨房に戻って行った。
 こいつ…たまに読心術みたいなものを発動させる…本当は持ってるんじゃないか?
「お前…俺の気遣いをすぐに崩さないでくれるか? 」
「えー、だってお前普通に作り笑いだったし」
「俺ってそんなに分かりやすいか?」
「うん」
 分かりやすいと言われて少しがっかり、あまり外に心情を出さないように心がけているのだが…。
「ひゃー。相変わらず評価が厳しいなー、智嗣は」
 下駄のカポカポという音と共に、条士さんが来た。
「これも彼の成長の為だ。俺よりも交の方がエグイぞ? なにせ評価を誤魔化したのだからな」
「なんで俺が悪者みたいになってんだよっ! …あ、確か遠上のライブって2時からだっけ」
「遠上ってあのカナミのことか? なんだ、お前らそんなのに興味あったのか? 」
「いえ、少し頼まれたことがありまして」
 掛けてある時計を見るともう1時40分。そろそろ準備して舞台に入ってる頃だろう。    俺は立ち上がり、きっちり2030円を机の上に置いた。
「じゃあ、行ってくる。智嗣、お勘定よろしく」
「あ、交! てんめぇ! 」
 捕まんないうちにさっさと行こう。たまにはお前が払え、ばーか。

Re: 血觸症−Murderer(s) syndrome−  ( No.21 )
日時: 2010/11/27 04:31
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

 特設ステージには、二つ入り口がある。1つは学院祭から入るための入口と、もうひとつは敷地外から入れる外部用の入り口だ、二つの入り口には予定通り特殊警備員を配置している。
 学校内からは学校関係者以外は入れないし、学校外からは馬鹿高いチケットが無いと入れないし、万全は整っているはずだ。

 特設ステージの舞台裏に行くと、流石に本番前ともあってコンサート実行委員たちは緊張しているようだった。
 幕の向こうからはすごい人数の声が聞こえる、収容人数5000人はすぐに埋まったそうだ。
 ステージの横には、コンサートの衣装を着たカナミが立っていた。
「宝御示君、お父さんから聞いたわ…。私を、守ってくれるって…」
「おう、遠上。外部チケットは即完売だったようだな、よかったじゃないか」
「………」
 遠上は黙って下を見ていた。そりゃあ、命を狙われているんだ、不安にだってなる。
「まぁ、何も起こらないのが一番だが…何か起こるとしても、隕石とかが学校に降ってきたりしない程度なら大丈夫だ。お前はこの特設ステージの5000人の奴らを魅了させてくればいいさ」
「…ありがと—」
「おおっと、それは無事に終わってから言ってほしいな。何も気にせずいつも通り歌えばいい」
 遠上は黙って微笑んだ。そして、カナミは、幕が今にも上がりそうな舞台に立った。
 ま、いざとなったときのために…。
 俺は鞄の中からハンドガンとホルスターを出し、制服のブレザーで隠れる所に着けた。
 2時まで後1分。証明を暗くした時、横からでもわかるくらいに観客の視線は一気に幕の方に向けられた。
「10秒前!」
 客席の熱気は最高潮に達した。
「「5! 4! 3! 2! 1!」」
 最初の曲が流れ出した。カナミのライブが幕を上げたのだ。

 2時間後

 凄まじい熱狂の中、ライブはとうとう最終局面へ。
「皆ありがとう! 次は最後の曲! 【Love sinner】!」
 カナミがマイクを構えた瞬間、アイツが突然声を荒らげた
『交! 女の上だ! 』
 一つの影がカナミの、遠上の頭上に現れる。その影は鉈のようなでかい刃物を下に振りかざしていた。

 —不味い、ハンドガンじゃ間に合わない!!

Re: 血觸症−Murderer(s) syndrome−  ( No.22 )
日時: 2010/11/27 04:32
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

「クソッ!!! 」
 気付いた時には俺はその影に向かって思いっきり飛び蹴りを喰らわせていた。
「宝御示君...? 」
 遠上が驚いていた。だが起こっている事態を理解したのか、彼女は尻餅をついた。
 ドンッ!と轟音をたて、その影はステージの壁に吹き飛んだ。客の視線が音の方に行く。
 完全に死んだと思ったが…。
 鉈を持った影は壁に四角の穴を切り出し、外に逃げ出した。
 コイツもどうやらマトモじゃないようだ…。
『体制を立て直すきだぞ。交、追うんだ! 』
[言われなくても! っ!? ]
 気付いたら横遠上が俺の服を引っ張っていた。
「宝御示君! 追わないで! ゼッタイ危ないよ! 」
 ………ここで逃がすと彼女はまた狙われることになる。
「大丈夫さ、お前が歌っているなら」
 彼女に微笑み、服を掴んでいる手をそっとほどいた。
 穴から外に出ると、鉈のような物を持った影はすぐそこにある学校の敷地内の森の中へ逃げ込んでいた。

 影を追って走っていると、後ろから音楽が聞こえ始めた。どうやライブが再開してくれたようだ。
 気づけば、相手は森の中に溶け込んでいた。気配、殺気、音など、全てを消していた。
『交、奴は身を潜めた。この人工木々の中から闇討ちをする気だ。』
 人の植えた木で作られた森を、それをコイツは森とは呼ばない。
 脚を止める。相手の能力などがわからない以上、慎重に行くしか無い。
[なんなんだあいつは、鉈みたいなやつってあんな事までできないだろ! ]
『ナタじゃない特殊な武器を使っているのか、あいつの能力なのか』
[俺達みたいなもの以外の超能力的な能力があるのか!? ]
『さあな、見てみないとわからん』
[なんでもいい、替わってくれ! ]
『なんだ、今回は速いじゃないか』
 当たり前だ、遠上が危ないんだ。
[逃がしたら不味いんだ、頼む! ]
『仕方ない』

『いっちょ初めますか! 」

Re: 血觸症−Murderer(s) syndrome−  ( No.23 )
日時: 2010/11/27 04:37
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

 ホルスターからハンドガンを出す。
 見れば敵は気配を消して高速で周りを移動しているだけだった。そんなもの、オレに通用するはずがないだろうが。
「見えてるんだよっ! 」
 予測地点に銃口を向け、引き金を引く。
 発砲音と共にキンッ! と金属音がする、どうやら銃弾を武器でガードしたようだ。
 だが、移動を止めたのは確かだった。そこには、ボロボロの布着の鯨包丁(?)を持った交と同世代くらいの女がいた。
「貴様、何故ソレでこんな事ができる? 」
「フフフ。ワタシ、ね、スバラシイ、チカラ、モッテ、る、ノ」
 顔に見合わぬ狂った声を出す女。恐らく、最近、カルトじみている血觸症反対派の中で出回っているという凶化薬か…。
「貴様のチカラとやらは薬か何かだろう、誰が与えた」
「カンケイ、なイ。アナタ、死。死死シ死死死し死」
 女は鯨包丁を振りかざす。簡単に避けれるが、一振りの力が強すぎる、重量に加え、薬の効果もあるのか…。
 避けるたび、後ろで人工木がバキバキと倒れていく音がする。
 少々困った、オレには近接武器が…あ、この拳銃確かバヨネットついてたっけな。
 グリップの側面に付いてるボタンを押すと銃口の下辺りから小さな刃が飛び出していた。
「よし、コレで…」
 次の瞬間。包丁の刃がオレの目の前を通った、見ると小さな刃は跡形もなく吹き飛んでいた。
「雌犬め…」
 久しぶりに本当の怒りという物を感じた。銃弾は防がれる、唯一の近接武器は折られる、散々だ。
 しょうがない。
 敵の刃を避けながら電話を取り出し、何時もの武器班に電話をする。
「おい! 何でもいいから折られない様な血觸武器を—」
「手を掲げてください」
 言われる通り、手を上に掲げると、上から降って来た大剣のような物をつかんだ。電話を投げ捨て、敵の攻撃を塞ぐ。
 金属音というより、ゴンッと鐘が落ちる様な音が響いた。
「ア、、ア、、、、ア、、ナタ、、、、ナ、、、ナニモ、、、ノ」
「殺し屋さ、狂った殺人者だけしか対象にしてないがな」
「ア、、、ア、、ア、」
「その擬剣の銘(命)、頂くぞっ! 」
 鯨包丁を同じ大きさの大剣で叩き割る。負けを確信した女は一目散に逃げようとしていた。
「質問に答えろよ! 」
 大剣を背中を向ける体に向かって投げる。
「ギャアアアアアアアア」
 女が断末魔を上げる。
 大剣は皮膚と骨を貫き、右足を切断する。この広さだ、そう遠くまで声は聞こえない。
「人並みに叫ぶ前に人間をやめたことを後悔するんだな。で? 誰がお前に力を与え—」
「ワタ、、、ワタシ、、、、シュウヤサン、、、アい、、、シてタ、、、」
 修也とは…確か幹恵と共にオレの墓を訪れた人間だ。
「デ、、デも、、、シュウヤサ、、ンキヅカなイ、、、ダかラ、、、」
 しまった、さすがにやり過ぎたかな。
 答えを聞けず女は息絶えた、出血性ショック死だ。これじゃあ誰がこんなことをした原因なのか分からない。今度からナイフみたいなものは携行しておくか… 

 折れた包丁に触れる。
 能力で過去の経緯や記憶をたどる…元は【神谷修也】のファンで…。

 もう興味ない、どうせ交が聞いてくるだろうし、その時まで考えないでおこう。

Re: 血觸症−Murderer(s) syndrome−  ( No.24 )
日時: 2010/11/27 15:46
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

 体の意識がもどった。血觸が終わったのだ。
 ハンドガンをホルスターに仕舞い、ステージに向かう。
「みんな、ありがとー! 」
 特設ステージの裏に戻った頃には、もうカナミのライブは終わっていた。カナミが観客に手を振りながらこっちに向かって走ってくる。
「ありがとう、交くん。もしもあのままだったら私、殺されてたね」
 交…俺にはそっちの方が呼ばれやすい。
「まぁ、任されたことだから、当然だ。よかったな、無事に終わって」
 華波は、笑顔で俺にもう一度
「ありがとう」
 と微笑んだ。

 後日

「この間は、娘を守ってくれてありがとう、交君」
 彼の顔は、爽やかだった。娘を守るきっかけを作ったのはこの人自身だ。
「いえ、いいんです。それより聞かせていただけませんか? 母さんの事…」
 約束通り、前も来たバーで修也さんに母の事を覚えてる限り教えてもらった。
 話しはとても楽しかった。事件以前の記憶が欠落している俺にとっては、昔、母がいた頃のことを思い返している様な気がした。

 約1時間後

「も…もういっぱい…ぐー…ぐー…」
 またこの展開かよ! 来るたびこうなのか!?
「霧鎌さん。申し訳ないのですが、もう一度送ってやれますか? 」
「ええ、いいですよ。連れがいないときはどうしてるんですか? 」
「私がタクシーまで運んでいますが、最近はどうも腰が痛みましてねぇ…」
 はぁ…、仕方ない。
 酔いつぶれた大物俳優をタクシーに乗せ、遠上家の住所を言う。
 発進してしばらくすると、頭の中から声がしてきた。
『おい、交。今度はお前に用があるみたいだぞ』
[え? ]
 この間の女性の霊のことだろうか。血觸を発動させ、修也さんを見る。
 前の用に1体の霊が見えた。
 だがその美女は、明らかに俺の方を見ていた。

「華波を…修也をたすけてくれたのね、ありがとう」

 そう言うと霊は、霧のような光に包まれ、天に向かって消えて行った。
『よかったな。お前は人間だけでなく、幽霊まで救ったんだ』
[…オマエは、俺に何をさせたいんだ? ]
『—この体は、お前が持っているものだ。交の好きにしたらいいさ、オレは手伝い位はしてやるよ』
 全ての選択は俺にある、血觸はそのための力。そういうことだろうか。

 俺は今、少しだけ、血觸症にありがたみを感じている。
 こんな気持ちになれるのも、こんな経験が出来るのも、なにより、友人がまた1人増えるのも、全てコイツと血觸症のおかげなのかもしれない。


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