ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 黒蝶は美しく断つ
- 日時: 2011/01/04 15:25
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=DA0Sp5PedNs&feature=related
クリックありがとうございます。
こんにちは、氷兎です。
・我は荒らしなり。
・あたしゃ更新遅いのは嫌いだよ。
・氷兎、嫌い。
・血とかもう無理。
の何れかに当て嵌まる人は即刻『小説一覧トップ』へお戻り下さい。
・まあ、読んでやってもええのぅ。
・アンタの為にじゃねーけど読んだるわぃ。
・氷兎、結構好きだよ。
の何れかに当て嵌まる人は是非最後までお付き合い下さい。
出来ればコメも下さい。…訂正します、絶対。←
では、始まり始まり………かな。
【目次】
登場人物 >>01
【第壱話】黒蝶は鮮やかに舞う
@1 >>02 @2 >>06 @3 >>08 @4 >>09
【第弐話】黒蝶は頑なに籠る
@1 >>10 @2 >>11 @3 >>12
【第参話】黒蝶は忘却に死す
@1 >>15 @2 >>18 @3 >>19 @4 >>22
【第四話】黒蝶は儚げに詠う
@1 >>23 @2 >>26 @3 >>29 @4 >>30 @5 >>32
【第五話】黒蝶は消失に溺れる
@1 >>41 @2 >>47 @3 >>51 @4 >>56
【第六話】黒蝶は眩しさに酔う
@1 >>58 @2 >>60 @3 >>72
【episode】
@1『聖なる夜は貴方のために』 >>35
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■イメソン
水樹奈々さんの「夢幻」
参照にてどうぞ。
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- 【第五話】黒蝶は消失に溺れる @4 ( No.56 )
- 日時: 2010/12/28 14:57
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
「胡蝶っ」
おにーちゃんが胡蝶さんに駆け寄る。
でもわたしは驚愕していた。自分がおねーさんの事を胡蝶と呼んだ事に。
徐々に記憶が戻っているのかもしれない。
「胡蝶、胡蝶……っ」
おにーちゃんが涙を流しながら胡蝶さんを抱きしめる。
胡蝶さんの目はもう開く事はなくて、既に身体は冷たくなっていた。
おにーちゃんはおとーさんの方をキッと睨んだ。
「この外道が……っ」
「どうとでも言え」
おとーさんは全く意に介していないようだった。
おにーちゃんはさっきまでわたしが寝ていたベッドに胡蝶さんを寝かせてからまたおとーさんの方向に振り返る。
「おい」「何」「マナを連れて逃げろ」「は、」「いーから逃げろって」
おにーちゃんの目にはもう涙は無くて。
マロくんがわたしを抱いて逃げようとした時、わたしはおにーちゃんに手を伸ばした。
わたしの大半の意識は殺がれてて、目もあまり開いていなかった。
「けがしないでよね、兄貴」
自分でも、何で兄貴って言ったか分からなくて。
ああ、もういいや、考えるのも面倒臭い。
ただ、意識が完全に殺がれる前におにーちゃんが笑ったのを、わたしは見逃したりなんかしてないから。
だからさ、
ちゃんと、帰ってきてよね。
ここで完全に意識が遮断された。
#
ゆらゆら、ゆらゆら、水の中に居るみたいに心地よく揺れる。
目を覚ましたらそこは、真っ白な世界だった。
「なんや早いなぁ、まだ来たらあかんやろぉ」
そこに立っていたのは、死装束を身に纏った胡蝶さんだった。
だったら、ここは天国……なのかな。
「そこまで簡単にあたしが死んだと認められんのも腹立つなー、まー死んでるけどなー」
カハカハと妙な声で笑う胡蝶さんは紛れも無い、先ほど死んだ胡蝶さんだった。
てゆうか、心の中読まないでよ。
「知らんわ、アンタ喋れへんのやから心読むしかないやん。それに、読めるもんは読めるんやー」
いやいや、そんな事言われてもな……。
それよりも何でわたしこんな所に来ちゃったんだろう。
わたし、まだ死にたくないなー、まだってゆーかずっと死にたくないけどさ。
「アンタ、一回死んどるんとちゃう」
あー、ありえないこともない。
実際記憶の方は一回どころか三回だし。でもね、身体の方が死んだ覚えはないんだけどな。
胡蝶さんみたいに心臓貫かれた覚えもね。
「……ほんまむかつくやっちゃなあ。今のアンタがマナかイリヤか何て知ったこっちゃないねんけどダァリンの妹やからな、どっちゃにしても」
ダァリンなんて大層なもんじゃないと思うけど。
それより、どうやったら此処から出られるだろう。
「もう行きぃ」
え、
「せやから、アンタは死んでない」
どゆこと。
「ほなな」
胡蝶さん、どゆこと。
わたし死んでないのはいいとして、どーゆーこと。
「アンタは精一杯生きなあかんで、ばいばい」
ちょ、ちょっと待ってっ。
わたしは、もう——
もう、袋小路から抜け出したはずじゃないの。
#
- Re: 黒蝶は美しく断つ ( No.57 )
- 日時: 2010/12/29 15:03
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
何しとんじゃボケ、胡蝶さんが何したんじゃっ
てか優しいなぁ、胡蝶さん……。 もう行きぃって。
マナの意識の中なのかな、これって。
- 【第六話】黒蝶は眩しさに酔う @1 ( No.58 )
- 日時: 2010/12/29 15:04
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
隼音、隼音。
今も貴方の名前を、愛しい貴方の名前を呼んでいるのに。
やっと見つけた貴方はわたしの事など覚えてなかった。
四肢と首と胴を切り離されたはずの貴方が生きているのは、わたしの父親の所為の他ならないね。
隼音がわたしを忘れても、わたしは隼音を覚えてるから、愛してるから。
#
わたしが暗闇で誰かを待ち続けた時間、約3年間。
3年の間、誰かが来る事は多々あったけど、わたしが認めたのは貴方だけだった。
他の奴はわたしが全部薙ぎ払った。少しばかり怪我を負ったみたいだけど、感覚が無くて分からない。
わたしが見てる暗い暗闇の中に微かな光を帯びたものが一つ、近づいてきていた。
「おいおい、ここらはヤーさんが多くていけねぇな。つーか生きてんのか??」
光はうっすらと影を帯びていたが、それは綺麗な紅い光だった。
わたしの頬には一筋の涙が零れ落ちた。
自覚も無いのに何故か流れたその涙を、わたしは拭う事すら出来ない。
指一本も、動かせない。
「おい、お前何してんの。危ねぇぞ……っと」
その声はわたしの右側から左側に移って、何かが崩れる音がする。
ゴミ箱に入ってたゴミらしきものがぶちまけられ、わたしの近くまで転がる。
気配で何がどうなっているかくらいなら分かるけれど、それの形状や色なんかは分からない。
光はわたしの前まで戻ってきて止まる。
「怪我ばっかじゃねぇの。どれ、返事は出来るか??」
優しそうな声に反応してビクッと身体が動くが、口は動かない。
わたしが光を人間だと判断するまでに20秒の時を有していた。
誰かの温もりに触れたからか、わたしの身体の感覚は戻ってきているみたいだ。
当たり前だが、感覚が戻ってきた事で負っていた傷が痛み出す。
「痛てぇか、そうかそうか。ちゃんとした人間みたいだな」
其処で迷ってたのか、とわたしは眉間に皺を寄せる。
その行動を見て、「よしよし」とわたしの頭をくしゃくしゃにされる。
わたしは声を出したくて喉を揺らそうとしたけど、少し掠れた声が出るだけでそれ以上は出来なかった。
「お前、一人なのか」
わたしは首をゆっくりと縦に振る。
その人は優しい微笑を浮かべてわたしの腰を抱え込んだ。
そのまま上に持ち上げられて、結果的にわたしが抱っこされている感じになった。
わたしも、それに便乗して思いっきり抱きつく。
その人はよろけそうになるが、何とか持ち堪えて静かに歩き出す。
段々と視力も回復してきて男性だと判断する。まあ、口調からしてそうだとは思ったけど。
口も、身体も、視界も、全部元通りになった気がする。
「お前、名前何て言う」
「……いりや」
何となく思い浮かんだ名前を言ってみる。
自分的には明らかに偽名だけど、その人は信じている。
「そうか、いりやか」
抱きかかえられて少しだけこの人の目線に近づいた。
優しく笑うこの人の眩しさに、涙が出た。
「え、俺何かした??」
「ううん、違う、違うよ……。お兄さんは何て言うの、名前」
涙を拭いながら聞いていく。
この人が着ているコートの襟を見ると、襟に付いているタグに名前が書いてあった。
「ハヤネ……」
「んで知ってんの、エスパー??」
「今時タグに名前って……小学生??」
ハヤネは「違う!!持ち物には名前書くって習わなかったのか」と力説していた。
そして、わたし達は歩いていった。
傷だらけの身体の痛みなんて吹っ飛んじゃうくらい沢山話をした。
これがわたし〝依里弥〟の誕生と、隼音との出逢いでした。
- Re: 黒蝶は美しく断つ ( No.59 )
- 日時: 2010/12/29 15:08
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
胡蝶さんですもの。
否……このまま出番ナシは流石に扱いがひどいかと……
意識の中ですね、うん、多分←
【第六話】でまた過去に戻ります。
この時依里弥は11歳で、隼音は33歳です。
依里弥はこの時隼音の事を呼び捨てにしてます。かわいいな、二人とも……(^^)
>アキラさん
- 【第六話】黒蝶は眩しさに酔う @2 ( No.60 )
- 日時: 2010/12/30 16:00
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
それから1年の歳月が過ぎた。
隼音と一緒に歩いていて見つけた廃ビルでわたし達は暮らしていた。
思いのほか住みやすかったので気に入っている。
「隼音ー、ご飯まだー??」
「まだ1分しか経ってねぇんだけど」
わたしの体内時計では既に1時間経過しているはずなんだけど。
つまり腹ペコというワケです。
「散歩行ってきてもいい??」
「はいはい、どうぞ行ってくださいー」
わたしは廃ビルの正面玄関からてくてくと出ていく。
出ていく間際に「三輪車とかに轢かれるなよ」と言われたので「轢かれるわけねーだろ▼※%&#」と言い返しておいた。
後に言葉じゃない言葉が混じってるのは無視。
わたしは廃ビルの真後ろにある倉庫の中に入っていった。
薄暗くて埃が舞っていて、蜘蛛の巣まで張ってある少し不気味な倉庫。
隼音がよく出入りしている倉庫。
いつもは入っちゃいけないと言われているけれど、興味があるので入ってみる。
「入るなって言われるほど入りたくなるんだよねー」
わたしが入った途端目に付いたのは深緑色の鞄だった。
傷だらけで埃まみれの、隼音が大事にしている鞄だった。
わたしが隼音に発見された時もこの鞄を肩に提げていた。
#
『その鞄なぁに。傷だらけだし、新しいのに買えないの??あ、糸解れた』
『大切な人から貰った大切な鞄だしな。あ、糸解れた』
そう言って愛しそうにその鞄を見つめる。
『コイビトの??』
わたしが茶化すと隼音はわたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
わたしが髪を整えようとしてもぐしゃぐしゃを繰り返してきた。
「お前にはまだ早ぇえよっ」
#
そうやってずっとはぐらかし続けてきた。
だから今、こうして隼音に内緒で来ているのです。
「さあ、おーぷんっ」
「ばぁか」
後ろから声がして鞄から目を離した隙に、鞄を取られた。
「隼音っ?!ご飯はっ」
「出来ましたー、早く来い」
わたしは頬を膨らませぶーと唸った後、隼音がわたしを置いて、鞄を持って歩き出した。
その鞄の中からひらひらと、一枚の写真が零れ落ちる。
わたしは隼音が写真を落とした事に気付いてない事を確認してその写真を表に翻す。
其処には綺麗な女性と、少しばかり若い隼音と、それから男の子と、
「……わたし??」
隼音は振り返ってからわたしが持っている写真を見て目を見開く。
間違いない、間違えるはずも無い、わたしの家族だ。
それを、何で隼音が。
隼音はわたしから写真を取り上げておもむろに鞄に突っ込んだ。
「見なかったことにしろ」
「何で、何でこれを持ってるの?!」
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