ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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私が書いた小説はただの妄想に過ぎなかった。
日時: 2011/01/08 12:11
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)



初回作『隠忍』に基づいた二作目。


よろしければどうぞ。
荒らしは無視。

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Boy of fragment ( No.33 )
日時: 2011/07/23 17:21
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

—残 酷 な 瞳ー


その日は雨が燦々と降り続けていた。

6月に入り、今は梅雨真っ只中。

じめじめとした日が続いていた。


「あ〜今日も雨だよぉ・・なんで梅雨ってあるのかねぇ」

美鈴が梅雨空を眺めながら、つぶやいた。

「北海道に行けば?北海道は梅雨がないらしいよ」

「マジで!?あーでも冬が寒いからなぁ」

「美鈴は暑がりでもあるし、寒がりだもんね」

「よく分かってんじゃん、里沙!」


その時、廊下でざわめきが聞こえた。


「このざわめきは・・・・」

「おかげでいっつも悠ちゃんが来るタイミングが分かるよね」

「本当に人気者だからね」


廊下では悠と例の6人が登校してくる様子を見るために集まった
野次馬たちが興奮している。

これは毎日のように続いているのだ。


「いやぁ〜今日も朝からみなさん暇ですなぁ」

空雅がガムを膨らませながら、野次馬たちを眺めながら言った。

「よく飽きねーよな。なーにが楽しいんだか」

「大和の言うとおりだな。論理的に説明するのも馬鹿馬鹿しい」


『お、おはよう!神崎さん』

「おはよう!あっ髪型変えたんだね。似合ってるよ」

『おう、神崎。後で国語のノート写させてくんね?』

「あいよ!ったく、授業中爆睡しすぎ!」

『悠ちゃん聞いた!?体力テストの結果。すごいよ!』

「ははは!ありがとう」

『神崎さん!ぜひ、我が陸上部へ!』

『いやいや、バスケ部に!』

『吹奏楽部に入ってください!!』

「どれもお断りでーす。ごめんね」


「相変わらず悠の人気はすごいね」

「日向、俺らだってすごいんだってよ」

「悠には敵わないだろ。煌は教師だろ?普通の人でもそこそこ
 かっこよければ人気にもなる」

「うっわ〜。さすが玲央。毒舌だね」

「黙れ」



・・・とまぁこんな日の朝だった。



しかし、こんな彼らの姿を誰にも気づかれぬように憎しみの目で
傍観している人物がいた。


「ふざけるな・・・なぜあんな奴がちやほやされるんだよ。あんなにも
 最低な女に!この世から消えてしまえばいいのに!」





その目は昔の私の瞳にそっくりだった。

こうして毎日のようにみんなと言葉を交わすが、そんな様子を
いつも陰で恨めしそうに見ている人がいることに気付いたのは
すぐだった。
 

孤独

嫉妬

絶望

冷酷

残酷


昔の私が持ち備えていたもの全てを、その人は持っていた。

私のことが憎くて憎くて仕方ない。

私を憎んでいなければ立っていられない。

私を常に見張っていなければ不安で仕方がない。


そうでしょ?



分かっているわ

あなたが誰なのか

あなたがなぜ私を憎んでいるのか

だってあなたは・・・・



















私の“カタワレ”










柊柚夢。

Re: 私が書いた小説はただの妄想に過ぎなかった。 ( No.34 )
日時: 2011/06/19 08:15
名前: 猫猫 (ID: Vhz3S.Kc)

おはようございます。
自分もコメディーの方で小説を書いているのですが、この小説見てて
ビックリしちゃいましたよ!!自分がこうなったらどうしよって自意識過剰ですが思いました。
すごいですねぇ!!がんばって書いてくださいっ!応援してます!

Twin elder brother ( No.35 )
日時: 2011/07/23 18:07
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

—想 像 は 現 実 に—



“その人”はいつも私のすぐそばにいた。

髪で顔を隠してわざとほくろを書いて、怖がっていた。


正体がばれるのを—————・・・


私は気付かないフリをしていた。

怖がっているくせに普通に絡んで一緒に楽しい時間も過ごした。




見掛け上は






“その人”は中学校時代の転校生だった。

私があの小説をちょうど書き終わった一ヶ月後の。

最初見たときは普通の人だった。

そこまではしゃがないけど、暗くもない、本当に「普通」。


“その人”が「柊柚夢」に似ていると感じ始めたのがそれから二週間後。

もうすぐ中学校を卒業する時だった。

その日は風が強くてよく晴れていて、とても眠かった。

お気に入りの場所だった体育館の裏の芝生で寝ようと向かったら

そこに“その人”が先に寝ていた。

見つけた時は、『あ、寝てる』くらいだった。

近づいてそっと顔をのぞいた。


風で髪が顔から離れた。



そこには私の中の想像でしかない顔があった。



私が想像した「柊柚夢」のイメージは幼い時見たことのある子だった。





どうしてか、あれから約10年経つというのに忘れられないでいた。

しかし、名前も声も知らなかった。

ただぼーっと私を見つめているその子の顔だけが頭に残っていた。


そして今となっては、その子が誰だったのか分かる。




その時、目の前で寝ていた“その人”だった。







そして“その人”は私のせいで人生を狂わされた。


それを思い出すのは



      
   辛い





恨まれるのが当然だ







ごめん

謝ることが無意味なことは知っている

でもカクシノで“その人”の存在を思い出した

私も怖かったわ

あなたに殺されそうで

ごめん

ごめんなさい


あなたの心を殺した



どうか私を許さないで










フ タ ゴ ノ オ ニ イ チ ャ ン  












峯村龍樹



A past family poisons it by th ( No.36 )
日時: 2011/07/24 18:19
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

—過 去 は 泡 沫—



「悠、お前俺らに何か隠してない?」

突然大和が口を開いた。



梅雨も明け、夏休みが近くなったある日の昼下がり。

私たち7人は一つの部屋でそれぞれ好きなことをしていた。


パソコンで、文字を打っていた手を止めて大和を見た。


「いきなりどうしたの?」

なるべく明るく笑い混じりに応えた。

「いきなりじゃねーよ。俺ら全員この1カ月我慢してきた。
 必ずお前から話してくれると思って。だけど、気付いたんだよ。
 お前は絶対に自分から自分の思っていることを話さない。
 聞かれることにしか答えない。そうだろ?」



言葉を失った




「大和の言い方はきついかもしれないけど、心配してるってことは
 分かってるだろ?ずっと俺たちが聞きたかったことなんだ」

煌の言葉に私は頷いた。


分かってる

本当はずっと何か言いたそうだった。

でも、私からはなかなか言えるようなことではなかった。

この1カ月、頼るか頼らないか迷っていた。


彼らと会ってからまだ3カ月ほどしか経っていない。

しかし、彼らと出会ったことで(正確には再会)私は大きく変わった。

白黒だった私の世界に色がついた。

そして今もまだつけ続けている。

心から大切で信頼しているのは彼らだけだ。



だからこそ、迷惑をかけたくないと思ってしまう。

いつも近くにいるからこそ肝心なことが言えなくなってしまう。

だけどやっぱり言葉にしなくては伝わらない。

秘密も作りたくない。



言おう


私は決心した。





「ずっと言わなくちゃと思っていたの。でも、怖かったんだ。
 言葉にするのが。だけどやっぱり、6人に秘密は作りたくない。
 だから聞いてほしいことがあります」

6人は黙って私を見つめていた。

私は一息ついて、過去のことを話した。








 私は神崎悠としてこの世に生を受けた。
 そして私と同じように生を受けた子がいた。
 私は双子の妹として生まれてきた。

 双子の兄の名前は知らない。
 名字もたぶん違う。
 父と母は私たちが5歳の時に離婚した。
 
 その原因が“私”だった。


 私はその時から不思議な力があった。
 たぶんそれがカクシノ。
 カクシノの力が出るたびに、私は双子の兄に話していた。
 


 『もう少しでママが帰ってくる』
   ———なんで分かるんだよ。
 『見えたんだもん』
   ———あり得ないだろ。
 “ただいまー”
 『ほらぁ!』


 『今日パパ知らない女の人と沖縄に行ったよ』
   ———何言ってるんだよ。パパは出張だよ。
 『でも女の人と楽しそうにご飯も食べてたよ』 
   ———なんで分かるんだよ。
 『見えたんだもん』
   ———嘘だろ。
 『本当だよ。嘘だと思うならパパに聞いてみようよ』
   ———馬鹿馬鹿しいよ。
 『じゃぁ今度の日曜日にまたその女の人とパパ会うみたいだよ。
  ○○ホテルって言ってた』


この力のおかげで当時の父が浮気していることが発覚。
 
責められたのは私ではなく兄だった。

口にしたのは全て兄だったからである。

父からはお前のせいだと暴力を受けていた。
 
いくら兄が、俺じゃない、悠だと言ってもそんなのあり得ないと言われ
信じてもらえなかった。

その結果、兄は離婚のとき父からも母からも預かられるのを拒否され、
養護施設へと預けられた。

私は母に連れて行かれた。

兄の最後の姿を見たのは、養護施設から私と母の姿を心のない顔で
見つめていた姿だった。


その後、兄はどうなったかは知らない。



でも恐らく悲惨な人生を送ってきたんだと思う。

全部私のせい。

私が家族を壊し、兄を傷つけた。


それなのに、そのこと全てを忘れていた。

母は再婚し、私は幸せな生活を送っていた。


しかしその家族は、あのテロで私のせいで殺された。



全部私がまいた種だったんだ。

全部全部

私は今までにたくさんの人の心や身体を殺してきたんだ。

許されるはずもない。

許されたくない。

そうでなければ私は生きていけない。





兄は私に復讐をするつもりで私に近づいた。

テロリストとなって。

見事に兄は私の家族を奪った。

でも肝心の私は殺されていない。

憎くて憎くて仕方がないはずだ。

憎まれて当然。

だから何も言えない。

何もできない。

私が一度殺してしまった人の心をまた殺すことなんてできない。




だけど・・・・このまままたたくさんの人が死ぬのも嫌だ






私はどうすればいいの?










全てを話し終えた私は、6人に包まれていた。

もう何度6人に涙を見せただろう。

こんなにも素直にありのままの自分を見せられるのは6人だけだ。




本当にありがとう・・・・











 

Brother and sister pleased to ( No.37 )
日時: 2011/07/30 11:32
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)



—兄 妹 の 涙—



「おはよう!」


今日もいつものようにクラスのみんなに声をかける。

昨日のことがあり、目は少し腫れていたが何とか元に戻した。

普段と変わらない毎日—————。

でもそれがどれだけすごいことだか私は知っている。

だから今を大切にするためにも・・・・



兄と話をつけなければならない。





私は決心をしていた。

今日で彼と“友達”として会うことは最後だ。



窓際の2列目の前から3番目の席

そこに彼はいつものように、つまらなそうな顔をしていた。

私は息を整え、彼に近づいた。


彼の席の前で立ち止まると、彼は不思議そうに私を見上げた。

「何?」

怪訝な顔をして私に問いかけた。

深呼吸をした私の次の言葉を待つ彼。


「話があるんだけど、いいかな?」


真剣な眼差しで彼を見つめる。

何かを察したのか、彼は席を立ち「分かった」と素直に言った。




校内はどこも人がいるため、私たちは外に出た。

ほとんど人は来ない、倉庫の裏。

季節はすでに夏。

気付けば、蝉の鳴き声がよく響いていてうるさいくらいだった。

暑いはずなのに首筋を流れる汗は冷ややかだった。


鼓動が乱れ始める

お互いの顔を見つめる


私は意を決して言葉を発した。


「あなたなら、分かっているよね?峯村」

「・・・・案外早かったね」

「あなたは誰なの?本当の名前は何?」

「はは!ふざけてんじゃねーよ。兄弟の名前すら忘れたのか」


その言葉になぜか心が痛んだ。

その理由はすぐに見つかった。

彼の表情がたまらなく苦しくて辛そうだった。


・・・・・あぁ、この人は・・


「忘れるわけないわ。でも事実かどうか分からない。あなたを見たとき
 はっきり言ってすぐには気付かなかったし、どうでもよかった。
 でも、最後に見たあの顔がずっと頭に残っていていつしか、あなたが
 そうなんじゃないかと思ったわ」

「俺はお前を許さない。たとえ殺してもな」


私は今どんな顔をしているんだろう?

きっとすごく情けない顔をしている。

だって悲しいというよりもほっとしているんだもん


「うん・・・。許さなくていい。許してほしいなんて思ってない。
 でも私もあなたを許さないわ」

「は?」

「確かにあなたを苦しめたのは私。だけど関係ない人を殺した。
 殺すなら私一人だけを狙えばよかったはず!!」

「なぜ俺が殺したことになる?お前が殺したんだよ」

「・・な!?」

「だってそうだろ?お前さえいなければ誰も死ぬことはなかった!
 誰も傷つくことはなかった!お前さえいなければ・・・。
 だから全部お前のせいなんだよ!悠」


唇を噛み締めた。

彼の言っていることは正しい。

私がいなければこんなにたくさんの人が犠牲にならなくてすんだ。
 
私がいなければ彼も笑えていたはずだ。


でも・・・でも!!!



「そんなの分かってる!だけど、人を殺したのは間違いなくあなた!
 手にかけたのはあなただわ!いいえあなただけじゃない。
 ほかにもたくさんいるはず。テロリストたちが。
 私を憎むんなら私だけを殺しなよ!?今が絶好のチャンスでしょ?
 私を殺したいんでしょ?だったら今殺せばいい!!
 誰もいない、誰も見ていない。あなたには好都合でしょ!?」

私は彼に近寄る。

彼は目を見開いて後ずさる。

「ねぇ!?早く殺しなよ!!今!ここで!!!」

私は叫ぶ。

それでも彼は何もしない。

私は彼の本心を確認でき、呼吸を整えた。

「そう、あなたは私を殺せない」

さっきまでとは違う、低い声で言った。

彼は驚いた顔を隠せない。

「あなたは私を殺すことなんてできない。だって優しいから。
 たった一人の妹を手にかけることなんてできないわ」

彼は言葉を失くしている。



「だからあなたは誰も殺せない」


そう言って私は微笑んだ。

その場に崩れおちる彼。


私と唯一血縁関係にある兄——————柊柚夢。


私の兄が人を殺せるわけがないんだ。
 
傷つく心をよく分かっているから。

本当に優しい人だから。


兄は私を守っててくれていた。








私は彼を優しく包み込んだ。

お互い兄妹としての再会を喜ぶ。

涙があふれてあふれて止まらない。





しばらくの間私たちは抱き合っていた。






抱き合いながら私は思った。



絶対にあの人を許さないと—————————・・・





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