ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 私が書いた小説はただの妄想に過ぎなかった。
- 日時: 2011/01/08 12:11
- 名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)
初回作『隠忍』に基づいた二作目。
よろしければどうぞ。
荒らしは無視。
- Original of tutelary wills ( No.18 )
- 日時: 2011/02/19 13:07
- 名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)
—東 京 都 警 察 庁—
「彼女の様子はどうだ?」
「はい。中々手強いですね。びくともしません」
「まぁそう簡単にはいかないだろう。少しずつでいいさ。
しかし、彼女を泣かす事だけはやってはいけない」
「分かっています。彼女は私たちが守ります」
これは、春日井煌と警察庁長官、安齋隆史の会話である。
俺達は年齢、本職を偽り彼女のいる高等学校へと入った。
俺たちの役目はただ一つ。彼女を守るだけだ。
「大和と築茂は彼女と同じクラスだったね」
「はい」
「君たちが一番近くで見守れるのだから、しっかり頑張ってくれよ」
「はい」
俺はこの人が嫌いだ。
だからそっ気ない返事しかしない。
言われなくても守るっつーの
「大和!いつも言ってるだろ。もうちょっと長官に有るまじき
態度を取れって」
「はいはい、わかってますよ」
「あと、悠を変に挑発したり嫌味を言うのも禁止だ」
「でもさぁ悠って全然いつも冷静だよねぇ。大和のことなんて
眼中にないんじゃねーの?」
「空雅、お前は黙ってろ」
「それにしても、これからどうする?悠は無事だったけど大勢の人を
巻き込んでしまった・・・。これ以上犠牲者を出すわけには
いかないでしょ」
「当たり前だ。一番の目的は彼女を守ることだが、国民の安全を
守るのも俺たちの仕事だ」
「もうさぁ、悠に俺たちのこと言っちゃわね?」
「・・・・・・」
「だってそうだろ?このままだと、あいつ絶対に俺たちのことを
信用なんてしないぜ?」
「確かにそうかもしれない。でも、言ったら言ったで余計に
怪しまれる。何も信じることができなくなるかもしれない」
「空雅の言ってることも煌の言ってることも、どちらも一理あるな。
しかし、まだ始まったばかりだ。これからまだまだ起こる。
もう少し様子を見たほうが良さそうだ」
「・・・悠はきっと苦しんでる」
俺の言葉で全員がハッとした。
「お前らだって分かってるだろ?あいつがあの時、もう私に関わるな
って言ったのは、俺たちを巻き込まないためだってこと。
面ではああいう態度だけど、心の中では誰かに気づいて
ほしいんだ。俺は気づいてやれるようになりたい。
あいつにとって頼れる人は俺だって言わせたい」
もうこれ以上悠を悲しませることだけは嫌だった。
何があっても、あいつが俺を信じなくても・・・。
「あったり前だよ。そんなのお前だけじゃない。俺等全員が
そう思ってる。だからこそ俺達はここにいるんだろ?」
そうだ
俺達はみんな同じ意志で、自分たちの意志でここにいる。
「悠に会いにいこう」
- Voice of mind and one dripping ( No.19 )
- 日時: 2011/03/10 10:48
- 名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)
—焼 け 野 原—
見渡す限り、テロの悲惨さを滲み出している焼け野原。
私は今、一番最初に爆弾が爆発したと考えられる
私が通っていたS高校に来ている。
「ここにくれば何か分かるかと思ったけど・・・
なんにも手がかりがないからな・・」
私は一生懸命、テロの真相をつかもうと思った。
落ち着け、わたし。
必ずどこかに道はあるはず。
どこかを見落としているのかもしれない。
どんなに些細なことでもいい。
何かヒントになるものがあれば・・・・。
私はしばらくその場に立ち尽くして考えていた。
「いくらお前でもなんにもわかんねーよ」
ふと聞き覚えのある声が後ろで聞こえた。
びっくりして振り返ると、そこには彼らがいた。
「へぇ〜神崎悠でもそんな顔するんだぁ」
私はしまったと思い、いつもの私に戻った。
「何しに来たの?」
「だから忠告しに来てやったんだっつーの」
「はぁ?何の忠告だよ」
「だから、お前がいくら考えても無駄だって言う忠告」
「はぁ?意味わかんないんですけど」
「あ——もう!だからっ俺らの力があればどうにかなるってこと!!」
「おい、大和。いい加減にしろよ」
ここで私と大和の間に築茂が苛立ちながら割って入ってきた。
「お前はいつも強引なんだよ。そんなんじゃ誰だって嫌気がさす。
そろそろ学べ」
「はいはい。分かってますよー」
「お前さ、帰ってくんない?邪魔なんだよね」
「それは本当にお前の心の声か?」
心の声・・・・・?
こいつら・・・・何を知っている?
「さっき、俺らを突き放したのは俺らを巻き込まないためだろう?」
ドクン
ドクン ドクン
ドクンドクンドクン
はっふざけるな
「私がお前らをかばう必要性がどこにある?
私は私のためだけに生きている。自惚れるな」
「どうしていつも自分の心を押し潰して、人の心をかばうの?」
荻原日向が傷ついた表情で私に問いかけた。
私が私の心を押し潰してる?
何言ってんだよ・・・
お前らに何が分かる?
「いい加減にしろ。お前らは私に何を期待してる?
安っぽい信頼性か?偽りの関係か?
悪いが私には何にもない。無力だ。
もう、私に関わるな」
そう言って私は、彼らに背を剥け歩き出した。
なぜか分からないが、歩きながら私の頬に
一粒の雫が跡をつけた
- The pure-white world and two p ( No.20 )
- 日時: 2011/03/10 11:07
- 名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)
—真 っ 白 な 世 界—
ひと目で分かった。
うしろ姿でかおは全然見えないのに、悠があの神崎悠が
泣いているのがすぐに分かった。
震えていた。
肩が小刻みにほんの少し震えていた。
抱きしめたかった。
そう思った瞬間、俺は反射的に走り出していた。
ものすごい速さで走った。
ほんの数メートルなのに、悠がどこかに消えてしまいそうで
怖くて怖くて、走った。
この数秒間が俺にはとても長く感じた。
後ろから5人の走ってくる音も聞こえる。
でも俺が一番最初に悠を掴みたかった。
細くて白くて綺麗な悠の腕を思い切り掴んだ。
そして俺の胸に悠の顔をうずめた。
両腕で華奢な悠の体を抱きしめた。
びっくりするくらい、震えていた。
声は一つも聞こえなかった。
ただただ強く強く、抱きしめた。
悠は抵抗をしようとはしなかった。
後から5人もすぐに追い着いたが、誰もなんにも
言わなかった。
言えなかった。
「悠・・・・」
俺に名前を呼ばれて、肩をビクっとさせた。
それを見てさらに強く抱きしめた。
悠も俺の背中に腕を回していた。
長い長い間、俺達は抱き合っていた。
俺の目には真っ白な世界が映っていた——————。
- House of delusion that actuall ( No.21 )
- 日時: 2011/03/23 13:40
- 名前: 涙歌 (ID: WJdkfPQp)
—現 実 の 家—
しばらく抱き合った後、悠は俺の腕の中で
気を失ってしまった。
俺はそんな悠を抱きかかえ、「俺たちの家」へと
運んだ。
「よく眠っているな」
築茂がベッドに寝ている悠を見てながら、悠の髪をなでた。
ここは俺たち6人が住んでいる家。
この設定も悠が小説の中で書いていたことと同じだ。
しかし、多少は違うところもある。
俺たち6人は悠の寝ている部屋でただただ悠を見つめていた。
とてもきれいな寝顔だった。
「これから・・・・どうする?」
日向がいつもの心配そうな顔で煌に訪ねた。
「できれば、悠に俺たちのことを信じてもらいたい。
そうすれば行動の幅が広がる」
「だけど、簡単にはいきそうにもないよね」
「もちろんだ。だが、少しずつ悠は俺たちに心を開いてくれていると
思う。そんなに遠くはないかもしれない」
「俺たちはこれから何をすればいいんだ?」
空雅が悠から目をそらずに言う。
「俺たちの一番の目的は悠を守ること。それだけは忘れるな。
たとえ、悠が守ってほしくないと言ってもだ」
全員が煌の言葉に強くうなずく。
「悠は、信じるだろうか・・・・」
めったにしゃべらない玲央が呟いた。
玲央の言うとおりだ。
悠は俺たちがこれから話そうとしていることを信じるだろうか。
あまりにも信じられずに、あきれるだろうか。
聞いた瞬間、鼻で笑って俺たちを見下すだろうか。
————————————わからない
悠が何を思って、何を考えて、何をするのかなんて
今の俺たちにはわからない。
きっと悠にはお見通しなのかもしれない。
だとしても、俺たちには俺たちのできることをするまでだ。
伝えなければならない。
悠に。
一つしかない真実を。
どんな受け止め方でも真実には変わりない。
あの小説が世界を狂わせるものだということは・・・・・・・・・。
- Dream inside where power buds ( No.22 )
- 日時: 2011/03/23 14:32
- 名前: 涙歌 (ID: WJdkfPQp)
—夢 と 現 実—
どこだろう・・・ここは
とっても暗い
東西南北がわからない
なのにどうしてだろう・・・・
とっても温かい
誰かがいるような気がする
だから怖くない
でもどこを見渡しても人影なんてない
あれ?
見たことある景色が一瞬見えた
なんだっけ?
デジャブとかいうやつだっけ?
ってか私、なんでここにいるの?
どうやってここに来たの?
—————————————あぁ、そうか
夢 だ
だったらいいや
すぐに目は覚めるよね
そう思うのに、なぜか生々しい
「現実」と全然変わらない「夢」
恐ろしいくらいに感覚も感触もリアルだ
あれ・・・?
また何か視えた
なんだろう、あれ
丸い木の実みたいなものを誰かが食べようとしている
それを誰かが止めようとしている
大きな声でさけんでいるような・・・
しかも一人じゃない
数人の人が一人の人を止めようとしている
顔は薄暗くてはっきり視えないけど
確かに誰かがいる
追いかけなきゃ・・・・・
走って追いかけなきゃ
もうちょっと・・
あと少し
光
温かい光
あ・・・・きれい
天井・・・・・?
どこ?
「悠!?」
誰かが私の名前を呼んだ。
すぐにその声は大和だと気付いた。
大和の声にびっくりしたように他の5人もベットの周りに集まる。
「悠・・・大丈夫か?」
大和の問いかけにゆっくりと首を縦に動かした。
「ここは・・・・?」
「俺たちの家だ」
大和たちの家・・・・?
家?
そっか、私あのまま気を失ったんだっけ
家にいるのか・・・
・・・・・
家!?
私はすぐに体を起こした。
ゆっくり部屋を見渡した。
同じだ・・・・・・・
「気づいたか?」
私の行動で察した煌が口を開いた。
「お前が小説で想像していた俺たちの家と同じだろう?」
鳥肌が全身に光よりも速いスピードで広がった。
まさか・・・ありえない
こんなことまで同じなの?
だとしたら、一体何なのこれは?
頭の中が混乱していた。
「何なの・・・これ?」
思わず口にしていた。
「悠、これから俺たちが話す内容を真剣に聞いてくれるか?」
煌が私の瞳を見つめる。
唾を呑んだ。
やっと首を動かした。
やけに緊張感が漂う空気
誰も何にも言えずに無言
静かにゆっくり動く心臓
それぞれの瞳を見つめる
「信じられないかもしれないが、よく聞いてくれ」
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