ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪談(短編集)
- 日時: 2011/04/21 22:26
- 名前: 涼 (ID: fS3ho1RJ)
始めまして私の名前は涼と言います。
色んな怪談話を書きたいと思ってます
よろしくお願いしますね
- Re: 怪談(短編集) ( No.4 )
- 日時: 2011/04/22 18:40
- 名前: かりん ◆SVvO/z.cC. (ID: ueXHoJNS)
これからも楽しみにしてますね
- Re: 怪談(短編集) ( No.5 )
- 日時: 2011/04/22 19:45
- 名前: 涼 (ID: fS3ho1RJ)
*/02 ( 開かずの扉 )
ママの実家は洋風の屋敷なのはママが元華族だからだ。
あたしたちは世間で俗にいう「由緒ある家柄」だ。
資産家のパパと元華族で財産も相当あるママ。
あたしはお金持ちの上に成績優秀で容姿もとても優れている。
何もかも素晴しく完璧な人生だわ。
そしてママの実家に遊びに行ったさいに長すぎる廊下を走っていた。
屋敷が広すぎて小さい頃から来てるのに屋敷全部を制覇するのは、
ママでさえも、結婚する前にやっと出来たらしい広さなのだ。
だから、あたしは屋敷に入ってそうそう「冒険」する事に決めた。
「美鈴、お行儀良くするのよ?」
「はーい」
ママの言葉をそっちのけにあたしはさっそく長い廊下を走る。
後ろでママの声が聞こえるけど無視、無視…。
しばらくすれば前も後ろも廊下だけ。
足を進める。
ふと、気がつけばドアがあった。
こんな所にドアがあったかしら、と思いつつドアノブを握り、
その今まで無かったはずの「ドア」を開けた。
「真っ暗じゃん!!」
中は暗闇みたいに真っ暗で何も見えない。
朝なのに窓ぐらいあるでしょ?
もう…と呟く。
「えーと、電気は何処よ?……えぇっ?」
入り口近くの壁に探しても見つからない。
仕方なく持って来た懐中電灯を点けた。
部屋の中は何にも無い。空っぽの部屋のようね。
「なーんだ、つまんないの…」
あたしはドアの所に行ったけど、ドアが閉まっていた。
閉めた覚えは無いんだけどな。
まあ、良いわ。
ドアノブを握って開けようとするけど、開かない。
どんなに力強く引っ張っても無駄、ビクともしなかった。
暗闇の中に独りきり。
本格的に恐怖と錯乱に陥ったあたしは泣き叫んでドアをたたく。
「誰かあ!!誰かっ!……助けてぇ!」
誰もあたしを助ける人はいなかった——。
——
「ねぇねぇ、知ってる?」
一人の女子高校生がある廃墟と化した屋敷に指差す。
隣にいたもう一人の女子高校生が興味深そうに訪ねた。
「あのね、あそこに元華族の孫娘がいたんだよ」
「知ってる!…たしか行方不明になったんだよね」
あの事件以来あの元華族は何処かへ引っ越してしまった。
そして女子高校生がこう言った。
「昔から、明治ぐらいに建てられたあの屋敷には、
ある部屋に入ると二度と現世に帰れない
という噂は本当だったんだねー」
明るく言った女子高校生たちは別の話題に変えて屋敷を通り過ぎる。
彼女等の地域から明治ぐらいから伝えられている都市伝説だった。
そして、その廃墟の屋敷のある窓に……。
一人の少女が映っていた。
- Re: 怪談(短編集) ( No.6 )
- 日時: 2011/04/22 19:48
- 名前: かりん ◆SVvO/z.cC. (ID: ueXHoJNS)
怖い・・・
華族と開かずの扉・・・
何か関係あるのかな?
- Re: 怪談(短編集) ( No.7 )
- 日時: 2011/04/22 22:08
- 名前: 涼 (ID: fS3ho1RJ)
*/ かりん様
私は基本的に読者に解釈を委ねる主義なので、
かりん様の想像した解釈で良いですよ、
コメントありがとうございます。
- Re: 怪談(短編集) ( No.8 )
- 日時: 2011/04/22 22:52
- 名前: 涼 (ID: fS3ho1RJ)
*/03 ( 殺したのは何? )
「お母さん………、……」
「やっと……食べられる」
子供の息絶えた声を見届けると己の我が子に喰らい付いた。
己が腹を痛めて産み落とした、我が子を首を絞めて殺めた。
大飢饉が起こったのだ。
食料も何も無い、もはや人情など忘れ去られた世界なのだ。
しいて言えば「地獄」が相応しい世界だった。
親は子を捨て子は、さ迷いながら飢えて死んでいく。
例え高貴な者たちが憐れんで食物を与えたら殺し合いの奪い合い。
所詮この世は己が大事なのだと、幾度なく教えてくれる世界だ。
私も例外ではなく生き延びるためにたった今、我が子を喰らった。
それからは捨てられた子たちを狙い喰らうようになった。
大飢饉で高貴な者たちは町などには来ず、誰も見抜きもしやしない。
だから、容易く殺せた。
だが、何処か心苦しい時もあった。
それさえも時がすぎれば、無感情になる。
もしも、神や仏が憐れんでも嬉しいとは思わないだろう。
安直な同情、などいらぬ。
欲しいのは………何だったのか忘れた。
それから数世紀に渡り私は子供を殺しては喰らい続けた。
情はもはや無い。
あるのは人々に忌み嫌われる「妖怪」と化した化け物の己だった。
ある日の山奥にて、今宵もまた幼児を喰らおうと腕をつかんだ瞬間。
「その子を放せっ!!」
「…………っ!?」
突然、茅葺小屋から出てきたのは身なりの良い男だった。
嗚呼、侍と呼ばれる身分の人間か……、
そういう私も元を辿れば人間だったことを思い出す。
そう思い出している内にあっという間に「侍」に切り殺された。
血の海が私を包む。
侍は助かった幼児を抱き抱え、私を冷たく見ている。
私も所詮あの大飢饉という「地獄」から縛られてきた「人間」なのだ。
人間なのに、人間は醜いとか自分勝手に主張し、子供を殺した。
所詮あの「地獄」の飢えで醜くなった者たちと同類なのだ。
息絶えてもうすぐあの飢饉よりも恐ろしい死の世界の「地獄」に逝く。
視界が暗闇に閉ざされる。
遠い昔に人間だった頃の「私」を思い出した。
あの幼児が人間だった頃の私の我が子と重なって見えた。
だから………。
ただ救済を求めて求めれないから子を喰らい続けたのか?
良く分からない。もはや罪人というか、罪を犯した妖怪なのだ。
そんな願いも無駄に等しく叶わぬのだ。
もうどうでも良くなった、早く黄泉へ逝きたい。
最後に私が思ったことを誰にも分からぬ知らせぬまま胸に秘めた。
殺したのは、何だったのか。
—— それは、人の心。
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