ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 機械と魔法戦争 program requiem キャラ募集
- 日時: 2011/10/11 16:43
- 名前: 黒鳩 ◆Y62Eyrx3rA (ID: Y8BZzrzX)
皆さまどうもはじめまして。あるいはお久しぶりです。黒鳩といいます。何ヶ月かぶりにようやく帰って来れました……。
今回は初めてここで書いていた小説のリメイクを再び書きたいと思います。前回での自分での反省点を踏まえて、今度は気づいたらなくなるということがないように……。
キャラ募集開始しました。詳しくは>>4まで
それでは、prologueに入ります。
炎が、銃口から走る。続けて連続する炸裂音。
私は駆けだす。木々の合間から銃口の光が見える。パパパ、と乾いた音。後ろから着弾音と思われる音が聞こえた。
すぐにまた違う爆発音。後ろの方から焦げくさい匂いがした。多分、炎の魔法だと思う。
だけど無視。この戦争、いや。戦いの終わりは、頭。つまり司令官を打ち取る。それが勝利への近道にして、定石。相手も想定しているだろう。
木々の間から微かに見えた建物。頑丈な作りをしていることは前もって調査してある。手持ちの武器じゃ、正面突破は困難。
周りはもう戦場だった。死体、弾痕、銃声、悲鳴。どこにでもある、普通の戦場だ。ただこの白の森が紅くか黒くに染まっているだけ。硝煙の臭いも嫌というほど嗅いできた。もう、私は機械兵の一人なのだろう……。
駆ける前に敵兵が躍り出た。人数は二人。視界に入るのは、短機関銃と機関銃。生身の特殊兵隊。ガスマスクに似たマスクに銃弾をはじき返すどす黒い防護服。鴉の黒よりそれは黒かった。確か名称、溝ガラス。あいつらとの距離はまだこの速度なら5秒ほどかかる。その前に発砲された。横に飛び退け回避。大木を楯にする。
「……イーグル、シフトチェンジ。ダブルアクション」
大木に寄りかかり、呼吸を整える。そして手に持ってる武器に音声入力する。この場合、速度と威力を優先、手回しは無視する。
「タイプ、ガブディラス、タイプ、メタルイーター」
がちゃん、とトリガーを引く。見た目は機関銃のような私のイーグルから、銃口の下あたりに収納されていた刃が飛び出した。銀色の鈍い光が綺麗だと不謹慎ながら思った。
「アクション!」
また銃弾の進行ルートに私は飛び出した。あいつらは予想外の反応に一瞬怯んだ。そこに隙が生まれる。だから狙う。まずがメタルイーターで。
「!」
距離を詰めつつ、銃口を頭に向けて発射。特殊弾丸は正確に、無慈悲に、ガスマスクごと頭に直撃。まさに砕く、といった感じに爆ぜてそいつは後ろに吹っ飛んだ。
「!?」
相方の死にざまに驚いたのか、もう一人はこちらに背を向けた。兵士としては素人以下。それが命を刈り取られる好機を相手に与えることになることになるのだから。
「!」
私はそのまま走る。相手が振り返ったときには、そののど元に刃を突き付けていた。身長が相手の方が大きかったので私が武器を掲げるような形で。
「司令官の居場所を吐け。そうすれば殺さない」
「う、ウソつくな!い、今ころ、殺しただろう!?」
「だから最低限しか殺さない。最低限に、その人は入っていた。だから殺した。本当なら皆殺しにしなきゃいけない。でも、これは超お節介を焼いている。だから居場所を吐け。そうすれば貴方を殺さない大義名分ができる」
私は淡々と続けた。こいつはやっぱり新兵らしい。短機関銃の銃口が震えている。身近で人が殺されるのをはじめてみた時の反応だ。私はもう慣れているけれど。声からして男。若い男性だ。
「さぁ。どうするの?死にたい?私を殺すなんて考えて行動に移したらすぐさま蜂の巣にしてあげるけど」
「……」
迷ってる。祖国を裏切るのはいやだ、でも死ぬのはもっといやだ。でもここで情報を吐けば戻ったときに殺される。でも吐かなければ今ここで殺される。八方ふさがり。だったら、選べる方法は一つ。自分が殺されることもなく、国を裏切ることもない、方法。それはだめだと警告したのに。
「死——」
「警告無視。だから気絶でもしてて」
刹那、ガブディラスを引っ込め、銃身で思いっきり顎を殴った。
彼は悲鳴を上げるまでもなくぶっ倒れた。顎にひびが入らない程度に軽く殴った程度だから1時間もすれば気がつくだろう。でも、それころにはこの戦場は終わっている。私の手によって。
- Re: 機械と魔法戦争 program requiem キャラ募集 ( No.33 )
- 日時: 2011/10/16 15:36
- 名前: 黒鳩 ◆Y62Eyrx3rA (ID: Y8BZzrzX)
battleside 炎天、おのが正義の為に、導兵、おのが家族の為に
「さて、落ち着いたかな?」
「……はい」
少年が声をかける。わたしは泣き崩れた自分の顔を直し、たちあがった。瑪瑙に負わされた怪我なんてもう治っている。ナノマシンが活性化してるのが分かる。さっきより頭もクリアになってるし、強い感情に支配されることもない。
「何があったか、よくは分からないけど、こちらとしてもこのまま終わらせる訳にもいかないんだ。自警団が何人も殺されているからね」
「分かってる。暴走しちゃった件は、ごめんなさい。でも、殺しを謝罪するつもりはないよ」
わたしは立ち上がり、イーグルを、再び構える。
「ネレコの国境に入ったとき、そちらの自警団の攻撃を受けたの。多分、彼らはわたしたちが難民であることを分かって上で、殺すつもりで攻撃してきたと思う。私たちは防衛するために戦っただけ。それはさっきも言ったよね?」
「……事情は聞いてなかったけどね」
「そう。だから貴方達がこれ以上ネレコにいるなというなれば、出ていく。でも、ここでもし、戦ってでも私たちを裁くっていうなら、わたしが戦う。見ての通り、わたしは機械導兵だから」
「お姉ちゃん!?」
「姉さん、何言ってるんですか!」
二人が焦っている。機械導兵であることは黙っているといったのだが。
「駄目だよ。その道ばれてる。そこの男の子、多分わたしと水晶が機械だってこと、見抜いてるし」
「……よくわかったね」
少年が感心したようにいった。わたしは続ける。
「わたしたちの動きを見ていて、分析してたみたいだったから」
「そうですか……」
紅い女の子がこちらに歩み始めた。
「でも、それでも許せない。殺さなくてもいい、殺さなくてもいいのに……」
「貴方は、殺し殺さずの世界に向いてないんだよ。瑪瑙みたいに」
銃口を下げ、わたしは言う。
「だからそんな生ぬるいことが言えるんだよ。殺さなきゃ殺される。これは当たり前なんだよ?炎天って言っても、貴方は普通の人でしょ?駄目だよ。これ以上、泥沼の中に足を突っ込んじゃ。迷いは、自分を殺す。滅びを招くことになる。それでも貴方は戦うの?」
「そのために僕がいるんだよ」
少年が割り込んできた。
「リアスが死なないように。だから僕がここにいる。君に分かるかな?迷いながらも戦う、そんな人の気持ちが」
「分かんないよ。だからこうしてぶつかるんでしょ?」
わたしは、決心した。この力、今度こそ、正しいと思うこと————
家族を守るために、傷つかせないために、使うと。
「じゃあ、戦おうか、炎天。機械導兵が相手してあげる」
「お姉ちゃん無理だよ!炎天相手に一人で戦うの!?そんなボロボロの体で!?」
水晶が必死にわたしを止めた。だけどね。
「ここで逃げたら、また同じことにくり返しだから。大丈夫、わたしは負けない」
頭をなでて、わたしは告げる。
「瑪瑙も、見てて。苦悩の果て辿り着いた、これがわたしの答えだよ」
「ねえ、さん?」
わたしは、唱えた。あの力、暴走せずともわたしは使える。
たとえ上官たちの玩具にされていたとしても、今は家族がいる。
目的なく殺してきた過去は捨てて。今は、家族が笑顔にいるために。
おかしい理論でも、これがわたしの想い。
もう。
振り回されない。目的を忘れない。
家族を、守るために。
「——————わたしたちを、守る力を」
- Re: 機械と魔法戦争 program requiem キャラ募集 ( No.34 )
- 日時: 2011/10/16 16:07
- 名前: 黒鳩 ◆Y62Eyrx3rA (ID: Y8BZzrzX)
battleside 導兵、炎天、和解?
「……ふぅ」
解放して、わたしは目の前の敵を見た。唖然としている。そうだろう。
姿が変わるほどナノマシンが活性化してるのだから。
桜色の前髪が視界に入って邪魔だ。
イーグルはナノマシンで分解して、手と一体化した。今は両手でかぎづめのように変化していることが見なくても分かった。ここまでナノマシンが自分と一体化してるのは初めてだ。
「驚いた?これがわたしの当時の姿。といっても手は違うのよ?これは武器ね。大分昔だったから正確に再現できなかったけど」
「……ウソ。何これ……?」
「いくよ」
わたしは軽く駆けだした。
自分でも驚くほどの身体能力だ。
「リアス!」
少年が鋭い声をあげたのが分かった。
わたしは女の子の前に止まって爪をのど元に突き付けたまま制止した。
「!?」
驚いた顔でわたしを見た。にっこりと笑顔で答える。
「これで一回、わたしがその気なら死んでたよ」
「……」
黙って悔しそうにわたしを見る。身体能力じゃわたしには勝てない。
生身と機械じゃ機械が勝つ。
「殺しが嫌なんでしょ?貴方が最初からその気だったら二人に手を出してるはずでしょ?ためらう理由なんてない。だってわたしたちは貴方達の敵。でも、良心があるから、話を聞いてくれた。違うかな?」
「何が言いたいんですか!?」
彼女が苛立った風に聞いてきた。
「わたしたち、戦う理由なんてないんじゃないかな?ねえ、あなたもそう思うでしょ?」
「……ていうと?」
少年は、分かってるくせに理由を聞いてきた。
「あの人たち、単なる賊だよね?だって、腕章してなかった。貴方達に呼びに行った彼だけは、腕章をつけていたから、あの人は自警団のはず。だけど他の人間は多分自警団の真似事をして難民を殺してる賊だと思うんだけど」
「……それに証拠は?」
「今言った以外に、行動がおかしい。ネレコは難民を受け入れる国。なのにいきなり戦闘行為をしかけてきた。これが示すことは、暴力で奪おうとしたって証拠」
「ふぅん……それで?」
「あれは生きてても破壊を生むだけ。だから死んでも仕方ない。自警団と対立してるような連中のことで、わたしたちが対立する理由もない」
「人の命は誰だって平等です!あなたは悪人だからって殺してもいいっていうんですか!?」
「そうだよ。破壊を生んで、他のひとに不幸を与える人間は死ぬべき。貴方が思ってるほど、命っていうのは軽くも重くもないんだよ。炎天、あなたは優しすぎるの。彼は、納得してるみたいだよ?」
「え…?」
彼女は振り返り、少年を見る。わたしを無視して、彼のもとに戻り、何か話し合っている。
わたしも戻り、二人に伝える。
「もう、大丈夫だと思うよ。和解の秘訣は、和解の主導権を握ること。今回はわたしたちの勝ちだね」
「…お姉ちゃん、何その姿」
「ああ、これ?」
それからわたしは二人に自分の姿を知ってる限り話すことになった。
- Re: 機械と魔法戦争 program requiem キャラ募集 ( No.35 )
- 日時: 2011/10/18 14:20
- 名前: 黒鳩 ◆Y62Eyrx3rA (ID: Y8BZzrzX)
inside 家族、安らぎの時間、監視
ネレコのあの事件から早10日ほど経過した。
わたしたちは問題なくネレコに入ることができた。元々ネレコと言う国は、国籍が存在しない。ネレコの領土にいる全ての人間=ネレコの国民というアバウトかついい加減な方法で成り立っている国なのだ。
だがその温和で平和的な国民性のおかげで人口は世界でも上から数えた方が早いくらい多い。が、同時に犯罪の発生率もかなり高い。
だがそこは正義感の強い国民性ゆえ、解決率も高いわけだ。
色々な国の人々が集うネレコだが、アストとフレアの国の者には冷たく接する者もいるという。家族を殺されたり、全く関係ない人だろうと、感情が許さないのであろう。わたしもその気持ちは分かる。
そういえば、ラックの国とは違い温暖な気候のおかげでここでは美味しいものがたくさんとれる。それが一番わたしには嬉しいかな。
そして今日も新しい居場所でわたしは自分たちの朝ご飯を作っているのだった。
そうそう。あの一件で上に人と言うか、自警団の一部の人には、わたしと水晶が機械兵と機械導兵だということがばれてしまった。何か怖がれたけれど、どうやらすぐには打ち解けるのは難しいらしい。それに、あの一件はネレコの軍にも伝わってしまったらしいから。近々また襲われるとわたしは予感している。正義の名の下なら、殺しを正当化することだってできる。それが欠点だが指摘はしない。わたしたちには関係ないから。
「姉さん……おはようございます」
「おはよ瑪瑙。あ〜あ…髪の毛ぐちゃぐちゃだよ。おいで」
「はい……」
眠気眼の瑪瑙がふらふらと台所の中に入ってきた。金髪の長い髪がぐちゃぐちゃになっている。一旦手を止めて、手櫛で彼女の金髪を軽く梳かしてあげた。彼女は何かむちゃむちゃ言っているが、寝ぼけているのか。
「う〜ん……」
「こぉら。抱きつかないの」
彼女はわたしに抱きついてきた。よしよしと頭をなでてあげる。夢いていた、あの頃の夢が叶って嬉しい。
そういえば、わたしの認識はどうやら生前、つまり機械導兵になる前の精神に戻っているらしい。あまり、機械としての感覚はない。生身と何ら変わらない。つまり人間に感覚的に戻っているのだ。
ただ呼び方がクリスから水晶に、パールから瑪瑙に戻ったことに当初二人は戸惑っていたが、わたしの強い要望で彼女たちは名前を変えた。翡翠、水晶、瑪瑙。これがわたしたちの名前だ。
武器だったイーグルはナノマシンで分解されて体内に紛れてしまったし、今のわたしは体の一部を武器に変化させることで戦うことを可能としていた。手をガブディラスにしたり、肩から翼を出したり。ただこの技術は現在のアストでも理論上は出来ても現実は無理だ。つまり、オーバーテクノロジーというやつになっている。
無闇な戦闘は避けた方がいいかな、と思ったけど、別に軍から逃走してるわたしには関係なかった。せっかくネレコには闘技場があるのだから。
今住んでいるこの家というかこれは、オンボだったのを、わたしのナノマシンを入れて補強したものだ。つまり廃墟を勝手に改修したもの。まあこんな森の中にある辺鄙な場所に誰も来ないので、関係ないんですが。
いるとすれば。わたしたちを監視すると言って勝手に住み込んでいるリアスという女の子だ。自警団としてほっとけないとかなんとか。別にいいのだが。わたしにとってはオマケみたいなものだから。ルィンという男の子も一緒に一階の一部を占拠して暮らしているが、彼は礼儀がしっかりしているので、わたしとしては合格。彼ならいっしょに暮らしても文句なし。
「姉さん、朝ご飯なんですか……?」
「うん、スクランブルエッグかな。あとは魚の塩焼き。パンはあるから焼くなり煮るなり生で食べちゃうなり好きにしていいよ」
「パンは煮るのは無理です……」
「そだっけ?」
瑪瑙はうにゃうにゃ言いながら自室に戻って行った。わたしはお皿に適当に人数分のたまごを乗っけていく。
さて、これでいいか。
- Re: 機械と魔法戦争 program requiem キャラ募集 ( No.36 )
- 日時: 2011/10/18 16:21
- 名前: 黒鳩 ◆Y62Eyrx3rA (ID: Y8BZzrzX)
inside 導兵、姉妹、戦う
「お姉ちゃん、ちょと、本気?」
「そうだよ。何か変?」
「何って……何で闘技場になんて来るわけ?」
「腕試し……かな」
「腕試しですか?」
「そう」
私は、あの後、ご飯を食べて、暇だったので町の方で遊ぶことにした。遊ぶといっても、闘技場にエントリーするためだ。瑪瑙と水晶もついてきた。
わたしたちは受付で短く質問を答えた後、登録してもらった。
わたしは一人、瑪瑙と水晶は二人だ。
そのまま外に出た。
ルールは簡単。円状フィールドから場外まで吹っ飛ばすか、気絶、または戦意喪失。殺しはルール違反で武器の使用は自由。人数は二人まで。わたしの場合、常に一人だから最悪二人同時を相手するわけだ。負けても参加費がなくなるだけで大した損失じゃない。そもそも勝てばいい。
試合にはそれぞれ種類があり、番人と呼ばれる人たちに挑むランク戦、参加者同士で戦うランダム戦の二つ。
わたしたちはランダム戦をチョイスした。
夜の試合開始まで、時間をつぶすことにした。
どうせここでやることなどないのだ。寝て食って過ごす。そういったことすらできなかった今まではよりはずっといい。
「じゃああたしたちは好きに過ごすね」
「うん。いってらっしゃい」
二人はそのまま人ごみの中に消えていった。二人とは夜に合流予定だ。それまでわたしも好きにしていよう。
「さぁー!今宵もやってまいりました!参加者同士の熱き戦い、ランダム戦が開始されます!気になる今回の対戦カードはこちら!」
夜、穴のあいたドーム状の建物の中。円形のコロシアムにやかましい観衆と実況者の声が響く。わたしは円形のフィールドに立っている。暑苦しい空気が、戦場とは違う感覚でわたしを高揚させる。
「ランダム戦最強の一角!巨大な斧が今宵も空を切る!ジャッキー選手だぁぁぁぁぁ!!!」
見ると、筋骨隆々のごつい男性が、どデカイ斧を引きずり、フィールドに上がってきた。顔が厳つい。左目に傷跡が走っていた。
「対するは最年少の一人!戦いとは程遠いほどの華奢な体!可憐な見た目でどんな戦いを見せてくれるのか!?翡翠選手だぁぁぁ!」
わたしも軽い運動をする。うん、ナノマシンの調子もいい。勝てるかも。
「嬢ちゃん……ワシはどんな相手も全力を出すぞ?いいのか?降参なら早めにしておいた方がいいぞ?」
「相手に降参を進める時点で、自分の勝ちを悟ってるなら。それは傲慢だよ」
その人は、厳つい顔を鬼のようにして、「こらぁやばいかもな」と言って、斧を構える。わたしも、軽く重心を低くして、身構えた。服装をしっかり選んでよかった。スカートの方が動きやすい。
「それでは、ファイトぉぉぉぉぉ!」
実況の声を聞いて、わたしは走り出した。
それは、もう一方的だ。明らかな実力差に、観衆一人たりとも声をあげない。実況さえ、言葉を失った。それは、負けると思われていた少女の、ありえない戦闘能力による。可憐な見た目とは裏腹に、恐ろしい身体能力をしている。そしてその顔が美しかった。戦姫のようで。
「むぅぅぅぅぅん!!!!!」
男の振り上げた巨大な斧が落ちてくるそれを目の前にしても、少女は微動だにしない。
優雅に微笑みながら
「無駄」
と言って、予備動作なく飛び上がり、斧を逆に受け止め、無理やり投げ飛ばした。
「うぉぉぉぉぉぉ!?」
男はフィールドの端まで吹っ飛び、なんとか踏ん張って落ちることを阻止した。さっきから何度も斧を受け止め、吹っ飛ばす。それの繰り返しだ。男は悟る。あれは機械導兵。あれが殺す気で戦っていれば自分はもうとっくに何も出来ない血肉の塊になっていることを分かっている。奴は遊んでいる。男は熱くなった。
(この気持ち、まさしく戦いよな!)
男には少し戦闘狂のような部分があった。それがこの状況を楽しんでいる。だから何も考えずに斧を前にして、走り出す。筋骨隆々としてはありえないほど俊敏な動き。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
これに全てをかける。巨大な肉弾戦車と化して、華奢な体に破壊の力を秘める少女向かって突撃!
少女は佇み、身構えた。そして。
視界から突如消えた。
「!?」
男は一瞬で気づき、立ち止まる。それが仇となった。
「チェック、メイト!」
すぐ隣に、高速で移動してきた少女。
加速に加え体を空中で捻り、くるりとスカートをはためかせ。
「いっけえええええええええええ!!」
全ての力を込めた回し蹴りが、無防備な男のこめかみに見事にぶち当たった!
男はそのまま斧ごと場外まで、バウンドしながら吹っ飛んで行った。
- Re: 機械と魔法戦争 program requiem キャラ募集 ( No.37 )
- 日時: 2011/10/19 15:18
- 名前: 黒鳩 ◆Y62Eyrx3rA (ID: Y8BZzrzX)
inside 紅色の悪鬼、魔獣
「……お隣、いいですか?」
「?ああ、どうぞ」
試合の後、わたしは近場の飲食店で遅い晩御飯を食べていた。
ちなみに試合はわたしの圧勝。殺しが御法度なので、場外に蹴りだした。結果、番狂わせとしてどうやらわたしはあの場所に歓迎されるらしいと、主催者側が直々にわたしを呼び出して語っていた。あそこまで興奮する大人に、わたしは身の危険を少し感じた。襲ってきたら間違いなく二重の意味で殺していた。
「席が空いてなくて……すいません」
「いえ」
混み合いの中、一人で黙々とご飯を食べるわたしにとっては、同席する人のことなどどうでもいい。チラリと隣をみた。紅い髪の毛で、右側の前髪が右目を隠し、片側で髪の毛を下している。左目だけだが、赤紫の瞳がくるくる動いている人たちに合わせて移動している。外見年齢はわたしより小さい。多分12、13歳くらいだと思う。こんな時間帯に動いているということは、彼女も難民だろうか?
だがその格好は異様だ。何でかだぶだぶの黒いローブを着ていた。しかもフード付き。見ただけで魔法使いだと分かる格好だ。(ローブは魔法使いの正装であるため)
「先ほどの戦い、観客として見させていただきました。素晴らしいです」
「見てたんだ……。まあ、単なる暇つぶしだけどね」
「そうですか。機械導兵にも暇つぶしってあるんですね」
「!」
すぐさま臨戦態勢にわたしは入った。といっても座ったまま、ぎろりと睨んだだけだが。彼女、わたしが機械導兵だと知っている。
「ネレコの軍人ね」
「そう思ってもらっていいよ」
彼女は砕けた言葉づかいをしながら、わたしに見る。
「私は或都。或都・フェイリア。指摘通り、ネレコの軍人をしてるの」
「軍人さんがこんな場所に、ノコノコ現れた理由は何?わたしが知ってる情報は全て吐いたわよ」
「そうだと思うよ、私個人としても。だけど、上の人たちはそう判断してないんだ。だから私がきたの」
「で、目的は?ここでどんパチやるんだったら相手するけど?」
「今日の目的は単なる視察。別にここでどんパチするつもりはないよ。他の人を巻き込みたくないし」
「軍人とは思えない発言ね。まあ、対象と接触してる時点でぶっちゃけると甘い考えだけど。軍に消されるわよ?」
「大丈夫だよ。私は軍にとっては貴重な戦力だから」
「さすがね紅色の悪鬼さん」
「!……なんだ、知ってるんだ」
彼女の通り名を言った途端、彼女は分かりやすいくらい落ち込んだ。
わたしも警戒を解いた。まあ、今んとこ彼女に敵意はないことは分かった。
或都・フェイリア。東西、そしてきラックの兵士など関係なく圧倒的な数の敵を戦闘不能にしてきた悪魔。幼いながら極めて数の少ない闇の魔法を使いこなすネレコ屈指の魔術師。闇天候補とも呼ばれるその実力はわたしや水晶でも倒すことは無理だろう。機械兵でも、機械導兵でも、もとは人間だ。
彼女の使う呪いは、気持ちの強さが魔法の強さにに比例する。
彼女の場合、噂では半殺し7割、殺し3割と非常に微妙なことをやってのけている。機械兵、生身、魔法使い、魔術師、科学者など、相手を選ばない。それだけ強い魔法を使いこなしているのだ。
「別に、私は殺したくなんてないもん……」
「貴方もあの子と似てるわね」
「あの子?」
「炎の姫君。聞いたことあるでしょ?」
「ああ。炎天の……」
彼女はびっくりした顔でわたしを見た。
「戦ったの?」
「戦う前に和解したわ。降参しろってね。おかげで今は監視下に置かれてるけど」
「そうなんだ……」
「安心して。わたしはもうアストと関係ないし、あなたたち軍に喧嘩を売るつもりもないから。ただまあ喧嘩を売ってくるなら殺すけどね」
「……上に人たちは、あなたを危険視してる。出来ることなら今この状況で排除して来いって言われたけど……」
「戦いたくないと。ま、その通り名は失礼ね。将来的に敵としても、今は貴方は敵じゃないわ。そんな緊張しなくていいよ」
「貴方は、どうして将来殺し合う人にそんな風に出来るの?」
わたしの態度が不信なのか、彼女はむすっとした顔で聞いてきた。
ここは正直に答えておく。
「その程度で決心が揺るがない自信があるからね」
「……」
彼女はわたしを見て、何か考えてるのだろうか?
まあ、今は目の前のご飯を胃の中に押し込んでしまおう。
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