ダーク・ファンタジー小説
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- Ghost-Soldier【完結】
- 日時: 2016/07/08 23:01
- 名前: レンクル01 (ID: Kv3UCL6v)
開いていただきありがとうございます!
初めましてです、レンクル01と申します。
小説初心者です!低クオリティ回避不能です。
ご了承をお願いします……
シリアスジャンルで書かせていただきます。
多分後半にいくにつれシリアス増えていくと思います
今年は受験生なので、更新はとても遅いと思います。亀です(
この物語は、魔法・シリアス・復讐辺りが出てくると思います。
考案者は私ですが、肉付けはネットやリアルの友達みんなでやってきました。
できるだけたくさんの人に読んでもらうことが目標です!
読んでいただけるととても嬉しいです……!
最近気付きました、1話が長いのでこの小説かなり長いです。(
無事完結しました!ありがとうございました!
<物語進行につれて登場人物紹介を更新します>
(ネタバレ注意)
【ライデン・ヴィエラヒルデ】
男 16歳 黒髪、青ジト目。魔武器はサーベル(雷)
正義感の強い生真面目な青年。
正体は創造神フレアの血を引く大魔術師。一人称は俺。
【ネオン】
女 16歳 青髪ショートボブ、青丸目。魔武器はクレイモア(炎)
明るく馬鹿な楽観的少女。
正体はライデンがフレアの魔力で産み出した幻影兵士。一人称は私。
【イタルータ・ティア=スカーレット】
本名はアイリス・グレイドール。
男 17歳 赤黒髪、赤つり目。魔武器は光線銃2-F(閃光)
やや趣味が女性な社交的エリート兵士。
本性は心壊者で、ライデンを狙っていた。一人称は俺
【ツバキ・アヤカシ】
裏の人格は『アヤ』と名乗った。
女 16歳 黒髪ぱっつんロング、赤丸目。魔武器は弓(桜)
控えめで臆病、健気な和風女性。
裏の人格として魔物を宿していた。一人称は私。
【セイシュン・グリオニオ】
男 17歳 青紫髪+マフラー、赤死に目。魔武器は矛(氷)。
物静かで協調性がない。ツバキ大好き。一人称は僕。
【ムンナ・シャルル=ジルマーズ】
女 17歳 白銀髪1つ結び、緑たれ目。ジルマーズの若き女王。
優しく若干ツンデレな女性。一人称は私。
【リーナ・ストレディオ】
女 17歳 金髪1つ結び+ゴーグル、緑つり目。ジルマーズ監視塔。
姉御肌の万能エリート兵士。だがサボり魔。一人称はあたし。
【ヤジータ・デッドライン】
男 14歳 赤髪アホ毛、黄つり目。魔武器は風神鉈(風)
感情を表に出さないインテリ天才戦士。一人称は俺。
【アイリ・レーシー】
男 14歳 薄茶髪三つ編み+謎の青毛、赤たれ目。魔武器はハープ(音)
ミステリアスな常にこやかな美声美形男子。
その正体は800万人に一人の退魔の魔術師。一人称は僕。
【フィギール・イングニクス】
女 14歳 薄黄髪ツインおさげ(?)+折れた猫耳、黒死に目。魔武器はグローブ。
リーダーシップのある人間嫌いの猫さん。一人称はフィギール。
【ミカン・ライトニング】
女 16歳 オレンジ髪おさげ+白黒リボン、黄ジト目。魔武器は無し、魔術は魔方陣。
眠そうだがやるときはやる魔力の強い女性。一人称は私。
【ミクロ・ニャエンテ】
女 16歳 紺髪1つおさげ+猫耳、黒つり目。魔武器は魔法科学薬品と器具。
科学分野研究生の知的な猫さん。一人称は私。
【レイド・エストリージャ】
女 16歳 金髪メッシュ黒髪ショートボブ+角フード、赤と青のオッドアイ。魔武器は大鎌(星屑)。
狂ったような笑い方のキチガイ少女。
仲間の身代わりとなり死亡。一人称はオレ。
【ユーティア・エルク=セルフィンザ】
男 17歳 薄緑髪+前髪で片目を隠す、赤と青のオッドアイ。身体にルーンを宿す。
身分をあまり口にせず、素朴な雰囲気の優しい王子。一人称は僕。
【シン・カトリュス】
男 18歳 紺髪+耳に青のクリスタル、赤と青のオッドアイ。魔武器は刀(二刀流、海)
静かで生真面目な弟思いの青年。一人称は俺。
【ジン・カトリュス】
男 18歳 赤黒髪+耳に赤のクリスタル、赤と青のオッドアイ。魔武器は刀(二刀流、大地)
おちゃらけた不真面目な兄思いの青年。一人称は俺。
【フレア・アルバーン】
世界の創造神と伝えられているが、その全てが謎に包まれている。
では、よろしくお願いします!
【近況】参照1600越えありがとうございます!
- Re: Ghost-Soldier(その後 ( No.46 )
- 日時: 2015/10/25 13:10
- 名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)
ライデンside
俺はとある研究施設にいた。
一人の男の隣で、ガラス越しに見える泣き叫ぶ子供を、ただ眺めていた……
「……?」
目を開けると、四角だらけの天井が映った。
身体を起こそうとするが、あちこち痛んで起き上がれない。
「あ、気がつきましたか。」
隣から声が聞こえる。首だけを動かして声の元を見ると、前髪が片目を隠している緑色の髪をした少年が座っていた。
……服からして、高貴な人に見える。
「誰……?」
「ああ、貴方はあのとき休んだのですよね。初めまして、ユーティアです」
「ユーティア!?」
大声を出してしまったために傷がひどく痛んだ。
だがユーティアって確かセルフィンザの王子……
「大丈夫ですか?……傷がとても深くて今はまだ動けないと思いますが……」
「う、動け……ません……」
俺の前にいる王子は、とても王子とは見えないような……
失礼だが、素朴な雰囲気を持っていた。
「丸二日寝たままでしたよ。具合はどうですか?」
「……二日?そんなに……?」
そんなに長い夢を見ていた感覚はなかった。
「……おっと、そうですよね。具合なんていいはずありませんよね……あの後ヤジータ様たちが運んでくれていなければ、命はかなり危なかったですね……」
元々生死をさ迷うような傷だったのですが、と付け足した。
「あ、あの……イタルータは……」
「イタルータ……あ、黒いコートの方ですね。彼はまだ目を覚ましていませんが、無事ですよ。もっともシンは極刑を望んでいましたがね……」
イタルータに見せられた映像……あれから、ずっとあのことが頭にこびりついて離れない。
「……どうかされましたか?」
「あっ、いえっ、なんでも……」
とりあえず、貴方が目を覚ましたこと、皆さんに知らせてきますね、とユーティアは部屋を出ていった。
「……俺は……」
「ライデン!来たよっ!」
部屋に駆け込んできたのはネオンだった。
「…ネオン。」
「大丈夫?」
俺を気遣うような目をするネオン。
「とりあえずな。……なぁ、ネオン」
「え?」
「お前、あのサーベルになんで炎が宿ったのかわかるか?」
「ああ、ライデンのサーベルね?なんでだろーね」
「炎ってお前の属性だろ……?」
わかるのなんてお前しかいない、と言う前に、
「私もあんなの見たことなくて……でもライデン凄かったよ!かっこよかった!」
「それはどうでもいい」
……なんだか話が脱線していた。
「んーと、元からライデンには炎の力もあって、それが目覚めたとか?」
「そんなことあり得るのか……?」
わかんない、とポカンとした顔で言われた。
「結局わからずじまいか……あれは何だったんだろ……」
「あ、リンゴ剥いてきたの!食べる?」
「食べる」
その後は、ネオンに俺が倒れてからのことについて話を聞いた。
イタルータの光線銃がいきなり壊れてヒートが消えていたこと、みんなで俺とイタルータを運んでくれたこと、シンがイタルータを殺そうと刀を抜いたところをジンとヤジータで阻止したこと、俺達の看護にはアイリとユーティアがついてくれたこと。
「いろいろあったんだな……」
「当然だよ!あ、ライデンが寝てた二日間の間に、私は梅干しが食べられるようになったんだよ」
「それはどうでもいい」
ネオンが帰ってからも、セイシュンやヤジータ、アイリ達にシンとジン、いろんな人が来てくれた。
イタルータはまだ目覚めないようだったが、じき目を覚ますだろうとのこと。
だが、今回の任務で、二人の仲間が欠けた。
建物で俺達を助けて犠牲になったレイド、俺の不手際で化け物に身体を乗っ取られて姿を消してしまったツバキ。
やはりみんな虚無感を感じていた。中でもセイシュンやミカン、ミクロは、彼女たちと関わりも深かっただけに尚更……
「……なんか、長い一日だったな……」
眠りすぎていた筈なのに、その日はやたらと早く寝付いた。
泣き叫ぶ子供を見て笑顔でメモをとる男。
そんなやつを見ているのに嫌気がさした。
あるとき世間知らずなのを省みず研究施設を抜け出して
見事に天涯孤独の身になった。
少しだけ持ち出して、少しずつ使っていた金もなくなって
雨に濡れていたときだった。
『笑ってみたら?』
そう言って俺に手をさしのべた、一人の少女。
傘も持ってなかったのに、ニッコリと笑っていた。
- Re: Ghost-Soldier(3人 ( No.47 )
- 日時: 2015/10/27 22:43
- 名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)
ライデンside
その後俺は歩ける程度には傷が回復し、セルフィンザ兵であるシンとジン、まだ目を覚まさないイタルータを残して、ジルマーズへと帰還した。
道中、行きのような活気はなかった。
「おかえりなさい」
ムンナはいつものように俺達を迎えてくれたが、俺達の落胆は隠せなかった。
ツバキとレイドがいないことと、そのツバキの体を乗っ取った化け物と戦わなければいけないことが、精神的に大きなダメージとなっていた。
「ユーティアから話は聞いているわ……とりあえずみんな今日は休んで、これからのことについては明日、改めて話しましょう。」
そんな空気を読んだのか、ムンナは俺達を兵舎へと案内した。
みんなは疲れていたのか早く寝付いたが、俺は今日はあまり眠れなかった。
「……身体が重い」
傷のせいだと思っていたが、二日ぶりに目が覚めたときからずっと感じていた違和感は傷とは全く関係なかったようだ。
身体がずっしりと重く、なにかに引きずりこまれていくような感覚。
「……ただの違和感であってくれればいいのに」
そう思って目を閉じる。
現れた少女のまわりには、青い光が浮かんで消えた。
今日の夢は、それしか覚えていない。
翌日になって、俺達は玉座の間へと集められた。
「アヤのことだよね?」
ネオンは小声で話しかけてくる。俺は無言で頷いた。
「さてと……集められた理由はわかっているわね?」
全員が頷くまでもなく、一段上にいるムンナを見上げる。
「ツバキとレイドのこと、とても残念に思うわ。……でも、立ち止まってはいられないでしょ?ツバキの中に眠っていた化け物……食人植物を産み出す元凶であるそれを、なんとしてでも倒さなければいけないでしょ?」
ムンナはモニターをスクロールさせた。
そこには巨大な森のような場所が映る。
「リーナが望遠鏡で覗いていたらしいんだけど、最後の施設が倒れたと聞いた直後に、この森が変形を始めたのよ。隆起や断層が一気に起こって……その結果がこれ。」
ムンナがもう一枚の写真を出す。
そこには、地下にできた自然の洞窟のようなものの入り口が映された。
「この先に、その化け物がいると断定していいはず。異常な地下の周波数を確認したわ」
そこまで話が進んでいるなら早い。
「ならその入り口から、全員で中へ入って化け物を袋叩きにしてしまえば……」
「残念ながらそうはいかないわ」
ムンナは首を横に振った。
「入り口の門も道も、とても細く複雑な構造になっているの。切り開くのにも時間がかかりすぎるし、その間に化け物が別の手を打ってくればフリーズよ。それにこの道、制限時間内に中に入らなければ生き埋めになる構造みたい。恐らくこんなところを通れる安全な人数は……多く見積もって3人。」
「3人!?」
全員驚愕に目を見開いた。
「そんな……普通の巨大なものでさえ、5人くらいで叩いてたのに」
ヤジータが呟く。
その通りだ。今までの戦いからして、あの化け物と3人で戦うのは……
「その3人って、立候補制?」
「方法は問わないけど、実力者じゃないと無理だと思うわ。かといって、普通のソルジャーだと魔武器が使えないし……」
「なら、そのうちの一人は僕が行く」
真っ直ぐな目でムンナの目を見ているセイシュンは真っ先に名乗り出た。
「本来なら僕なんかじゃなくて、イタルータが行くべきだった。でも今彼は動けず……それに、ツバキの仇は自分で討ちたい」
淡々と語る彼に迷いはないようだ。
「学院代表はヤジータじゃないかな?」
ミカンが呟いた。
「……うん、それがいい」
「そうだね。僕らのリーダーに行ってもらおうよ。ヤジータ、それでいい?」
ヤジータはしばらく目を閉じ、そのまま頷いた。覚悟はできたようだ。
「後ひとり……」
「ライデン行きなよ!」
「はぁ!?」
突然投げ掛けられた言葉は、ネオンからのものだった。
「な、何で俺!?俺なんかより強いやつなんて山ほどいるだろ!?お前とかが行けばいいじゃないか!」
「でもさー、すごかったよね?イタルータと戦ってたとき。」
全員はっとした顔をしているが、俺には実際どうしてあんなことが起こったのかも理解していない。
そうこう考えてるうちに、
「……その3人は、後で私達と来て。入り口と入り方を教えるわ。決行は……明日でいい?」
「はい」
「問題ありません。」
「……えっ?」
断れない雰囲気になっていた。
- Re: Ghost-Soldier(明かされた元凶 ( No.48 )
- 日時: 2016/02/06 23:35
- 名前: レンクル01 (ID: BlQGlUWP)
ライデンside
「うわ陰気くさっ」
ヤジータがふいに呟いた言葉は間違ってなかった。
世界樹の巨大な根。そのひとつが不自然に抉りとられ、ぽっかりと空いた空洞。
その中から発見された異常なまでの周波数。
恐らくこの中に、アヤ……ツバキがいるはずだ。
「随分と変なところに隠れ住んでるんだな」
「世界樹の周りの方が、ヒートを扱いやすいとかそんなもんだろ」
世界樹を解放できるかどうか、それは俺達3人にかかっている。
今になって恐ろしいくらいの不安が込み上げる。
学院で首席をとるほどの実力者であるヤジータなら勝てるだろう。たった一人で数々の組織を倒してきたセイシュンなら勝てるだろう。
だけど俺はネオンやイタルータと常に一緒で、一人でなんて勝てたことがない。サーベルの力がなければイタルータにも殺されていた。
そんな俺が……
「ライデン、大丈夫だよ。」
ふいにヤジータの声が投げかけられた。
「何があっても、俺はお前を信じる。お前はお前の戦いをするんだ。」
ヤジータの言葉に、セイシュンも僅かに微笑みながら頷く。
「……ありがとう」
「よし、行くぞ。」
3人で狭い空洞へと入っていく。
俺が通過したとき、入ってきた入り口は巨大な蔦で覆われた。
▼
狭い道をくぐって辿り着いた大きな広間のような場所。
天井も床も真っ赤で、ところどころ草の緑が見える程度。
「……あら?貴方達が来たのね?」
そこに響いた声。
上空3メートル辺りに浮いているアヤは、俺達の目を覗きこむようにして見ている。
「ツバキを解放しろッ!!」
「あー、そっちの貴方はあのときの……残念だけど、ツバキちゃんを解放するためには゛あること゛をしないといけないわよね?」
アヤがニッコリと笑う。
「ツバキの人格を閉じ込めているお前のヒートを、血と一緒に出しちまえばいいんだよな」
「そう!流石は学院首席様よね〜、頭いい!っと茶番はここまでにして……」
アヤの顔から急に笑みが消えた。
「貴方達って、まだ知らないのよね?世界樹が邪木になった理由。」
「理由って……そんなのお前の……!!」
「いいえ違うわ、確かに私は世界樹の中に宿っているヒートがなんらかの衝撃で逃げてしまわないように守ってるけど、そもそも私は世界樹から産み出されたの。私が最初な訳ないわ。」
「……それじゃあ……!」
「そう、元凶は別にいるってこと。いったい誰なのかしらねぇ……」
俺達は何も考えが出せないままいた。
「わからないのね。だったら教えてあげるわ、元凶のこと。その人は、闇のルーンを最初に産み出した人物、『ヒート』の魔力をそのまま受け継いでいる。まぁ魔力っていってもヒートなんだけどね。」
退屈したのか空中をふわふわ浮きながらアヤは話し出す。
「貴方達もこの話は知っているわよね?ヒートとルーンが激突して、ルーンの勝利で終わった争いのこと……あの後彼の魔力は誰の元へ行ったのかしら?」
「まさか……ルーンの中へ!?」
「そう!つまりルーンは制御していたけど、ヒートそのものを体内に宿したまま生きてたってわけ。すごいわよねぇ。で、その後ルーンは結婚して子供もできて、ルーンの血筋は今も絶えることなく続いているのよ。」
そして、とアヤは続ける。
「世界樹にはヒートのヒート、……あーちょっとややこしいわね……が宿ってるの。つまりはルーンの血筋を受け継いだ人物ってわけなのよ。」
俺にはわかってしまった。誰が元凶なのか。
昔両親に聞かされた話。そして自分のルーツ。
元凶は、全ての元凶は……
これまでたくさんの人を苦しませて悲しませて、たくさんの人を殺していった世界樹事件。
その、黒幕は……
「そうでしょ?ライデン・ルーン=ヴィエラヒルデ君?」
- Re: Ghost-Soldier(黒の精神世界 ( No.49 )
- 日時: 2015/10/31 09:56
- 名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)
ライデンside
「……は?」
「なんで、え?ライデンの本名って……」
セイシュンとヤジータが驚愕の目を向ける。
「ふふっ、驚いているわね。無理もないわ、それにライデン君は自分から故意に世界樹を変えたわけじゃないのよ。」
わかってる。俺に変えさせた人物もわかってる。
さっきわかったんだ。
「研究者だったライデン君のお父さんね。人体実験を繰り返してきたマッドサイエンティストだったらしいわ。その人がライデン君の身体に少しずつ、ヒートを目覚めさせるための細工をしていった。ライデン君も、ここまで言えば心当たりがあるんじゃないかしら?」
あった、自分を使っての実験だと思っていたあの薬。
風邪を引いたと言ったときから何年も飲まされ続けた薬。
きっとあれだ。
「そしてお父さんが死んだ後、ライデン君のヒートはライデン君の意思とは外れて独自に動き出し、世界樹を変えてしまったのよ。」
俺が、元凶……
「う……嘘だろ、ライデン……」
「私を殺しても世界樹は元には戻らないかもしれないわね?だって彼の中のヒートがあるかぎり、永久に世界樹は変貌を続けるんだもんね。」
俺が、みんなを危険な目に遭わせてきた元凶……
「ライデンを、殺せってことかよ……できるわけないだろ……!?」
「もしくは彼の中のヒートだけを引っ張り出せれば話は別よねぇ。ああライデン君、今日はちょっと気を付けた方が良いわよ」
俺が、イタルータを狂わせて、レイドを殺した元凶……
「気を付ける……?」
「いつもはあることをしていたせいで彼の中のヒートは表に出ることができなかった。それが彼が心壊しなかった理由なの。でも今日は、それができない状態にある……つまり、わかるわね?ほらもう危なくなってきてる」
俺が、俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が……
「……ッ!!ライデン!正気を保て!」
「しっかりしろよ、ライデン!こいつを倒すんだろうがッ!!」
「虚しいわね、貴方達が必死に叫んでも、彼にはもう届かない……」
「ライデン……!!」
俺はあのとき、イタルータに殺されるべきだったのかもしれない。
そうされていれば、きっと世界樹のヒートを変える者はいなくなっていて、ネオンか誰かが俺の代わりにアヤを倒してくれた筈なんだ。
俺なんて、いなければ……
このまま消えてしまえば……
目の前がどんどん暗くなって、目に映るのは真っ赤な天井とアヤ、そしてセイシュンとヤジータだった。
ごめん……お前らが辛い思いをするはめになったのは、俺のせいなんだ……
俺が、この世に産まれたからなんだ……
何かに引き摺りこまれていく感覚が強くなる。
きっとこれはヒートなんだな、と無意識に思った。
そのまま視界はブラックアウトした。
▼
目の前は真っ暗な空間だった。
何も見えず、聞こえず、その場に倒れている感覚もない。ゆっくりと上半身を起こし、座るような体勢になる。
やがて、見えると言うよりは頭に浮かんでくる映像があった。
泣き叫ぶ子供と、嬉しそうに、楽しそうに笑う大人。
父親がその元凶だった。
幼い頃から、俺もこの大人の中に加わることが多かった。
慣れさせるためだったんだろう。
そして俺も、あの薬によって実験されていた。
とにかく散々だったそこからどうしても逃げたくて、夜に警報を振り払って研究施設から出た。
だけど世間知らずな俺が生活なんてできるわけがなくて、少しだけ持ってきたお金も使い果たして、途方にくれていたとき。
雨に濡れた道路に座っていたとき、一人の少女が俺に手を差し伸べた。
傘も持っていなくて、ずぶ濡れなのにニッコリと笑っていて、『笑ってみたら?』と声をかけてきた。
『笑えるわけないだろ』と反論すると、彼女は俺の手をひいて、ジルマーズ王国の城に連れていった。
どうやら少女はそこの少女兵士だったらしい。サーベルを渡され、それが扱えるか聞かれた。
サーベルを試しに振ってみると、そこには確かに雷が宿っていた。
その後身体に電流が走り、もっと軽くサーベルが使えるようになった。
それが兵士になるための条件だったららしく、俺は何故か兵士になることになった。
少女は、『ご飯も住むところも確保してもらえるし、お金だってもらえるし、これからはいっぱい笑えるよ!』と笑った。
兵士なんて楽なもんじゃなかったけど、そいつのお陰でたくさん笑えて、たくさん仲間もできた。
だけど、そんな俺のせいで、俺の仲間が苦しんでいた。俺がいなければみんな幸せだった筈なんだ。
俺は……どうして生きているんだろう
なんのために生きているんだろう
俺が生きたところでみんなが悲しみ、俺が死ねばみんなは助かる。
もういっそ、誰か俺を殺してくれ…………
俺は、生きる価値のない人間なんだ…………
『そんな人いないよっ!』
響き渡った甲高い声。
ここは俺の精神世界の筈だ。俺以外に人なんているわけがないのに、そいつはそこに立っていた。
青い目のはずなのに、何故か色が変わっている。
「ネオン……」
ニッコリ笑ったその目は、真っ白に輝いていた。
- Re: Ghost-Soldier(幻影兵士 ( No.50 )
- 日時: 2015/10/31 10:16
- 名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)
ライデンside
「……聞きたいことがありすぎるぞ」
「え?何が?」
ネオンの足元は青く光っている。
「まず、お前はどうして俺の精神世界にいる?それに目の色だって違うし、おまけに頬の切り傷だってないじゃないか。」
服装や体型、顔も髪型も全く一緒なのに、ところどころ違う点がある。
「そうだねー。まずそこから説明した方がいいのかなぁ。でも、私の言いたいことから言わせてもらうよっ」
いつものような口調で、この黒い空間なんて気にしていないようだ。
「……ライデンのバカッ!」
「はぁ!?」
突然怒鳴られた。
「いい!?ライデン、生きる価値のない人間なんているわけがないの!みんな生きるために産まれてきたんだよ!」
ネオンの目は、いつになく真剣だった。
だけど……
「……お前に何がわかるんだよ、全部俺のせいだったんだぞ!?そのせいでみんなが辛い思いをした!レイドだって殺して、イタルータだって狂わせた!全部俺のせいなんだ!……もう、俺のせいで悲しむ人を見たくないんだ……!」
「……ライデン」
ネオンが目を閉じる。
そしてそれと同時に、俺にある映像が流れた。
『こいつを倒すことを優先させろ!』
『わかってる……ライデンのヒートは後から考えよう』
血塗れになっていたセイシュンとヤジータ。その向かい側には、傷ひとつ負っていないアヤの姿があった。
「あの人たち、ライデンのこと信じてるんだよ。君がヒートに負けるわけない、また一緒に戦ってくれるはずだって。」
「……だからなんだっていうんだ、俺が死ねば全て終わるんだぞ!?」
「あのねぇライデン、君の悪いくせだよ。何でもかんでも自分が全てを背負って、仲間に迷惑をかけないようにって。みんなが辛い思いをしたから何?君はその罪を償うために死ぬの?」
「だって……それしか償いできないだろ……」
「だからバカだって言ってるの!」
ネオンはまた怒鳴る。
「君が死んだら、死んだ人達は帰ってくるの?もう戻らない思い出が帰ってくるの?違うでしょ!?君は死んだ人の分だけ生きなきゃいけないの。それに……君が死んで、悲しむ人だってたくさんいるんだよ。君が気付いていないだけでね……」
「……ネオン……」
「アヤを倒せば、今の世界樹はとりあえず普通に戻るんでしょ?君の中のヒートが再び暴れなければ、もうこんなことにはならないでしょ?だったら、そのヒートを君が押さえつけておくしかないんだよ!ヒートは外に出れば、周りの人間にどんどん乗り移っていくからね……」
「だけど、俺の魔力じゃ押さえつけられるわけ……」
「そのために私は来たんだよ」
「……え?」
「さっきアヤが言ってたよね、君がヒートを押さえつけられていた理由。」
「あることをしていたせいで……って言ってたか」
「あることってね、私と一緒にいることなんだよ。」
「……なんでそうなるんだよ?」
突然言われたことが信じられず、目を見開いた。
「な、なんでお前といることでヒートを止められるんだよ」
「そのことも今から説明する。」
「ライデン、君はルーンの子孫であると共に、世界を産み出した創造神、大魔術師・フレア・アルバーンの血も引いてるんだよ。」
「……俺が?」
「その魔力は計り知れないもの。世界中の道具に魔力を宿してもお釣りがくるぐらいのレベルだよ。」
「だけど、そんなものは俺の中にあるわけ……」
「君がその力を使えないのは、私がいるせいだよ。」
「……なんで?」
「私は君が作り出した幻だよ。フレア・アルバーンの魔力を注ぎ込んで作った、幻影だよ。」
「……はぁ?」
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