ダーク・ファンタジー小説

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Ghost-Soldier【完結】
日時: 2016/07/08 23:01
名前: レンクル01 (ID: Kv3UCL6v)

開いていただきありがとうございます!

初めましてです、レンクル01と申します。
小説初心者です!低クオリティ回避不能です。
ご了承をお願いします……


シリアスジャンルで書かせていただきます。
多分後半にいくにつれシリアス増えていくと思います
今年は受験生なので、更新はとても遅いと思います。亀です(

この物語は、魔法・シリアス・復讐辺りが出てくると思います。
考案者は私ですが、肉付けはネットやリアルの友達みんなでやってきました。
できるだけたくさんの人に読んでもらうことが目標です!
読んでいただけるととても嬉しいです……!


最近気付きました、1話が長いのでこの小説かなり長いです。(

無事完結しました!ありがとうございました!

<物語進行につれて登場人物紹介を更新します>
(ネタバレ注意)

【ライデン・ヴィエラヒルデ】
男 16歳 黒髪、青ジト目。魔武器はサーベル(雷)
正義感の強い生真面目な青年。
正体は創造神フレアの血を引く大魔術師。一人称は俺。

【ネオン】
女 16歳 青髪ショートボブ、青丸目。魔武器はクレイモア(炎)
明るく馬鹿な楽観的少女。
正体はライデンがフレアの魔力で産み出した幻影兵士。一人称は私。

【イタルータ・ティア=スカーレット】
本名はアイリス・グレイドール。
男 17歳 赤黒髪、赤つり目。魔武器は光線銃2-F(閃光)
やや趣味が女性な社交的エリート兵士。
本性は心壊者で、ライデンを狙っていた。一人称は俺

【ツバキ・アヤカシ】
裏の人格は『アヤ』と名乗った。
女 16歳 黒髪ぱっつんロング、赤丸目。魔武器は弓(桜)
控えめで臆病、健気な和風女性。
裏の人格として魔物を宿していた。一人称は私。

【セイシュン・グリオニオ】
男 17歳 青紫髪+マフラー、赤死に目。魔武器は矛(氷)。
物静かで協調性がない。ツバキ大好き。一人称は僕。

【ムンナ・シャルル=ジルマーズ】
女 17歳 白銀髪1つ結び、緑たれ目。ジルマーズの若き女王。
優しく若干ツンデレな女性。一人称は私。

【リーナ・ストレディオ】
女 17歳 金髪1つ結び+ゴーグル、緑つり目。ジルマーズ監視塔。
姉御肌の万能エリート兵士。だがサボり魔。一人称はあたし。

【ヤジータ・デッドライン】
男 14歳 赤髪アホ毛、黄つり目。魔武器は風神鉈(風)
感情を表に出さないインテリ天才戦士。一人称は俺。

【アイリ・レーシー】
男 14歳 薄茶髪三つ編み+謎の青毛、赤たれ目。魔武器はハープ(音)
ミステリアスな常にこやかな美声美形男子。
その正体は800万人に一人の退魔の魔術師。一人称は僕。

【フィギール・イングニクス】
女 14歳 薄黄髪ツインおさげ(?)+折れた猫耳、黒死に目。魔武器はグローブ。
リーダーシップのある人間嫌いの猫さん。一人称はフィギール。

【ミカン・ライトニング】
女 16歳 オレンジ髪おさげ+白黒リボン、黄ジト目。魔武器は無し、魔術は魔方陣。
眠そうだがやるときはやる魔力の強い女性。一人称は私。

【ミクロ・ニャエンテ】
女 16歳 紺髪1つおさげ+猫耳、黒つり目。魔武器は魔法科学薬品と器具。
科学分野研究生の知的な猫さん。一人称は私。

【レイド・エストリージャ】
女 16歳 金髪メッシュ黒髪ショートボブ+角フード、赤と青のオッドアイ。魔武器は大鎌(星屑)。
狂ったような笑い方のキチガイ少女。
仲間の身代わりとなり死亡。一人称はオレ。

【ユーティア・エルク=セルフィンザ】
男 17歳 薄緑髪+前髪で片目を隠す、赤と青のオッドアイ。身体にルーンを宿す。
身分をあまり口にせず、素朴な雰囲気の優しい王子。一人称は僕。

【シン・カトリュス】
男 18歳 紺髪+耳に青のクリスタル、赤と青のオッドアイ。魔武器は刀(二刀流、海)
静かで生真面目な弟思いの青年。一人称は俺。

【ジン・カトリュス】
男 18歳 赤黒髪+耳に赤のクリスタル、赤と青のオッドアイ。魔武器は刀(二刀流、大地)
おちゃらけた不真面目な兄思いの青年。一人称は俺。

【フレア・アルバーン】
世界の創造神と伝えられているが、その全てが謎に包まれている。





では、よろしくお願いします!


【近況】参照1600越えありがとうございます!

Re: Ghost-Soldier(仮面の狂乱兵 ( No.41 )
日時: 2015/10/23 19:07
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside

巨大な植物が巻き付いたまま崩れていく建物を、俺達は離れた荒野で見ていた。

誰も声を発せず、この距離では届かないか、または身体が正常に動いていないのか、崩れる建物の音も聞こえない。
嫌な静寂が辺りを包んだ。

「……ホントに、あの中に……」
「……レイドの大馬鹿ッ!!」

アイリとフィギールがやっと声を出した。

「レイドの身体にヒートがあったことは不幸と言うべきか、幸運と言うべきか……幸福という選択肢はないな。」

ミクロもやりきれないような顔をする。

「……ですが、なくしたのはレイドだけじゃありませんよ。ツバキ……あの子だって、どうなったのかすらまだ俺達にはわかっていません」

冷静に何をすべきか考えるシン。

「……なんで、こんなことになっちゃったのかなぁ」

ジンの表情からは、いつものおちゃらけた雰囲気はなかった。

「結局この組織を倒したところで何も変わらなかった。ううん……変わったけど、また新しい問題が出てきたんだね。」

ネオンも状況を確認する。
……こういうときだけ、ネオンは兵士の目をしている。

「……ともかく、セルフィンザに戻ろう。報告も兼ねて、もう一度考えないと……」

俺が立ち上がろうとしたそのときだった。



「あはっ、あはははっ」

突然辺りに響いた小さな笑い声は、あいつにそっくりな声だった。
やはり生きてた。建物を出たときにはいなかったが、あいつは自分のヒートを使って結界を開いたんだ。

「アハハハハハハハハハハハハッッ!」

狂気じみた笑い声と共に俺達の間を閃光が駆け抜ける。

「危ねっ!」

ジンが軽く声をあげたが、全員がその閃光を回避したようだ。

「やぁやぁ皆さんお久しぶりですー!ってあれ?今朝会ったっけ?会ってたね!度忘れしてたよあははっ!」

いつもと同じような笑みを浮かべてはいるが、口調が違った。声の高低の幅は激しく、このようなおちゃらけたしゃべり方をすることはほとんどない。

「イタルータ……!」
「あれあれ?あれあれあれあれ?セイシュンどうしたの?すっごく顔色悪いよぉ?風邪引いたのー?」
「ふざけんな!!お前がセイシュンを操ってたんだろ!?」

感情に任せてイタルータに怒鳴るが、イタルータは少し肩をすくめただけだった。

「えー?操る?そんなのどうやって?あーもしかして禁術としてそれが使えるの知ってたとか?そうだったんだー!もうちょっと警戒しておくべきだった?あははは!」

勝手に全部話しているが、イタルータが話していくうちにどんどん彼の笑みは歪んでいっている。

「そうだよー、俺がセイシュンを操ってたんだ……理由?理由なんて簡単さ……」

イタルータはゆっくりと目を開く。




その目は果てしなく黒い闇が何重にも重なっていて、元の赤い色が不気味に輝いていた。




「殺すためだったんだよねー!ライデンを!!」
「やっぱりお前だったのか……!」

ジンが身を乗り出してイタルータを睨みつける。

「あれ?俺の殺気に気付いてたんだねー、そんな気はしてたけどー、俺の仮面の中から感付くなんてすごいよ!誇っていいよ!」
「そんなことはどうでもいい!!何故ライデンを狙っているんだ!!」

ヤジータも声をあげる。

「理由?理由ねぇー……フフフッ、殺すことばっかりに集中してたから忘れちゃった!って信じてもらえるかなぁ……?」
「し、信じられるわけないだろ!?」

理不尽だろ、と俺も反論する。

「うーん、勝負に勝ったら教える、とかでもいいんだよー?」
「……ひとつだけ教えろ……」

セイシュンがまだ動かしにくい身体を引きずってイタルータを見上げる。

「どうしたの?動きづらくない?かなり魔力消費したから……」
「お前は……」






「どうしてイタルータなんだ……?」
「ええ?」

イタルータは目を見開く。
俺も、質問の意味がよくわからなかった。

「なにそれ?なんの話?俺はイタルータで、それ以外の何者でもないよー?」
「……違う」

セイシュンは目を伏せる。

「お前は……昔はイタルータなんかじゃなかった……











そうだろ?『アイリス』」







「あはっ……あははははははははっ!」

イタルータは再び笑い出した。

Re: Ghost-Soldier(【アイリス】 ( No.42 )
日時: 2015/10/24 18:33
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside


「あはははははははははははははははははっ!」

狂った笑い声と共に、イタルータの身体は黒い霞のようなものに包まれた。

そしてそれが晴れたとき、彼の姿は変わっていた。

開いた目は闇を重ね合わせたようなもの。
その目の回りには赤く、血管のようなものが浮き出て見える。
コートはボロボロになっていて、あちこちに何かが引きちぎられたような痕が残っている。
そのコートは黒い霞を残しているかのように伸びている。

……一言で言えば、邪気をそのまま具現化したかのような姿だった。

イタルータはそのままこちらを向いて一礼した。


「皆さんごきげんよう!この姿では初めましてだね?俺はアイリス!アイリス・グレイドールと申します!アハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!」

笑っている彼に、いつものような安心感はない。
その姿も声も、何か心の触れられたくない部分を抉られるような……

「……アイリス……!?」

思わず口をついて出た名前。

「ライデン……知ってるの?」
「はははっ、そうだよ?ライデンが知らないはずないよねぇ?」

イタルータ……アイリスは見下すような目で、挑発的に俺の目を覗きこむ。

「アイリス……アイリス・グレイドール……その名前は……俺の親父が書いてたリストに載ってたんだ。」
「そう!そのライデンの親父さんってのは、実は人体実験の首謀者なんだよね!」

はぁぁ!?と声が聞こえる。

「実はセイシュンは、食人植物産み出してる施設に連れていかれたんだけど、俺はライデンの親父さんが作った施設に行ったんだよ。」

懐かしむような、恨みを再び燃え上がらせるような、そんな目で上を見上げている。

「まさに地獄だったよ!その親父さんはもう死んじゃったみたいなんだけど……そんな犯罪者の息子が普通に幸せになってるって変だと思わない?」

最後にいくにつれ、彼の声は低くなっていく。

「だから俺は決めたんだ!その息子にも同じような地獄を見せてやるってな!それが君を狙ってた理由なんだよねーっ!!あっはは!」

まるでゲームを楽しむ子供のように、またアイリスはケタケタと笑いだす。

「そんなの、ライデンは悪くないじゃん!!それにライデンは……」

ネオンの言葉が終わらないうちに、アイリスは俺にある提案をした。。

「……さぁ、ライデン。俺と勝負してくれるよね?」
「勝負……!?」

ネオン達は俺を心配そうな目で見ている。



元から高い戦闘能力をほこっていたイタルータ……今の俺が、こんな化け物……アイリスに勝てるとは思わない。
それに、こいつの状況からして無事で済むとも思っていない。

だけど……

「……俺が勝とうが死のうが、ネオン達には絶対に手を出さないと約束するならやってやる」
「やめてよライデン!今の彼が約束なんて守ると思うの!?」

アイリが後ろで叫んでいる。

「あいつの目的は俺を殺すことだ。死ぬのも、こいつを戦闘不能にするのも、俺にしかできないことだろ。」

俺はサーベルを抜いた。アイリ達が息をのんだ気がした。

「ふふっ!いいね、約束守るよ!みんなも絶対に手出ししちゃダメだよ?」

アイリスも銃を抜く。



「始めようか……ライデン」

「……やってやる!!」








彼に向かって駆け出すとき、目を真っ白に光らせたネオンの映像が頭に飛び込んできた気がした。

Re: Ghost-Soldier(ヒート同化の真実 ( No.43 )
日時: 2015/10/25 08:26
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside


俺とネオン達を分断するように結界が張られる。
それと同時に俺は駆け出した。

「おっと、急に突っ込んでくるなんて……」

アイリスは両手で銃をクルクルと回しながら、挑発的な笑みを浮かべる。
テロリストとも、食人植物とも違うアイリスのオーラは、底無しの闇のように見えた。

「……」

サーベルを振りおろす。アイリスはバックステップをとってそれを避けるが、続けざまに俺は下にあった刃を思いっきり上に持ち上げた。

その剣先はアイリスの頬を掠める。しかしアイリスは滲んだ血を拭おうともせずにニヤリと笑った。

「どうしたの?こんなもの?」
「なっ……がはっ!!」

アイリスに腹部を蹴りつけられ、少し距離をとる。

『イタルータ』だったときとは基礎筋力も別物だ。

「ほらほらこっちだよー」

アイリスはいつの間にか遠くに移動している。

「ぐ……くそっ!」

勢いよく地面を蹴って再びサーベルを突きつけるが、それもひらりとかわされてしまう。

「遅い遅い!ほら頑張って!」
「舐めるのも大概にしやがれッッ!!」

アイリスが移動した先を見越してサーベルを何度も振るうが、その全てを嘲笑うようにアイリスは避け続ける。

「あ、当たらない……!」
「あれ?攻撃に夢中になってていいのか?」

アイリスの右手には銃が握られている。

「ッ!」

咄嗟に重心をずらして閃光を避ける。

「熱ッッ……!」

右腕の袖は半分が溶けていて、火傷が広がる。

「あははは、右利きの君にはキッツいハンデだねぇ……」

心底楽しいといった風な顔のアイリスには余裕しかないが、正直俺はかなり体力を消費してしまっていた。

「ほらほらこっからが本番だよ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

アイリスは2丁の銃を乱射する。的確に俺の動きを狭める位置で撃ち込んでいる。なんとか避けるのに精一杯で、とても反撃に移れる気がしない。

「ぅぐっ……!!」
「アハハハハハハッッ!もろ受けたね!!」

光線の1つが右胸にもろに当たってしまった。
鋭い痛みと、一瞬景色が遠くなるような感覚に襲われた。

まずい、本気で死ぬ……

「あははは、最期に教えてあげようか?お父さんがなにしてたかさ……?」
「……!?」

その言葉と共に頭に飛び込んできた映像。
手枷をつけた赤毛の少年が、バラバラの死体を見つめていた。












無数の悲鳴と、それよりも響く笑い声が聞こえる。
ガスマスクをつけた男の中に、確かに父親と思える人物がいた。

これは……イタルータの記憶……

手枷と足枷をつけられたまま俯いた少年が注射を打たれる。
数分もしないうちに少年は地面に膝をついて、激痛に耐えるように頭をおさえている。
それは他の子供も同じで、苦痛の叫び声で気が狂いそうになる。そしてそれを嘲笑う白衣の男……






場面が変わった。

男の一人がまた赤毛の少年に注射を打とうとするところだった。

それを打ち込んだ瞬間……






施設が爆発した。






赤毛の少年は鎖に縛られなくなった枷を付けたまま廃墟と化した施設を歩き回っている。
あるのは無惨にバラバラになった死体だけだった。男達だけではない、子供達もだった。














そして引き寄せられるように映像は終わった。

「い、今のは……」
「……まぁ、解説しておくよ。」

アイリスは不気味な笑みで話し始めた。

「俺は、身体にヒートを宿す研究の実験台だったんだ。毎日注射を打たれて、身体の限界が来ていた頃にあの実験失敗。施設は吹っ飛んだけど、俺の身体にはヒートと同化できるだけの器が残ったんだ。」

アイリスは自分の拳を見つめる。

「俺はヒートと同化して、復讐するって決めたんだ……ライデン、お前にな!」

深い闇を宿した目は、しっかりと俺の目を捉えている。

そして構えられた銃を見て、死を覚悟していたとき……








頭の映像に、ネオンの姿が映った。

何かは知らないけど、

必死に俺になにかを呼び掛けていた……

Re: Ghost-Soldier(サーベルと光線銃 ( No.44 )
日時: 2015/10/25 09:09
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside

「……何が起こったんだ」

アイリスも驚愕に目を見開く。
正直、俺も何が起こっているのかわからない。

だが身体とサーベルが異常なまでに軽く、そのサーベルが俺の元の属性である雷と混じって、青白い炎を纏っていることだけだ。

「属性の融合なんて……そんな話聞いたこと……」

ヤジータの声も聞こえる。
戦闘中は夢中になりすぎていて聞こえていなかったが、あいつらは必死に声を発しているようだ。

……このサーベルなら……

「……いける!」
「……チッ」

アイリスに向けてサーベルを振りおろす。
バックステップを踏まれ、剣先はアイリスには届かなかったが、サーベルの炎が意図的にか燃え上がり、アイリスの左手に届いた。

「めんどくせぇまねしやがって……!」
「……なんだこれ……」

まるで雷、炎、サーベルが、俺の意図と合わさって自動的に動いているような気もした。

そのままもう一歩の足を踏み切ってサーベルを突きつける。
今度こそ剣先は届き、右肩辺りをアイリスの血が走った。

「またサーベルが……!」
「ッ……この……!」

アイリスは閃光を撃ち出す。がら空きになっていた右腰を狙われる。

俺の意図に反して、サーベルを持っていた右腕がものすごいスピードで閃光を撃ち返した。

「ライデンなんであんなテニスみてぇなことしてんだ!?」

ジンの声が聞こえる。全くもってそのとおりだと思う。
でも……本当に魔武器が、俺の戦いたいように動いているようにしか見えない。

「ッッ……!」

戦いが進むにつれて、アイリスの目も表情もどんどん変わっていく。
そして閃光が乱射されるが、俺は……俺のサーベルは、次々と跳ね返していく。


「まずいな。アイリス。」
「へ?」

俺の負担が減っているからか、後ろで話している声が聞こえる。

「心壊者の目はヒートとの同化度を図るものでもある。あの目は相当同化……というより、ヒートに身体を乗っ取られつつある。」

シンの説明が、やたら頭に響くように聞こえる。

「おまけに見ろ、右腕がもう黒く染まっている。完全に黒く染まったときに、奴はヒートに生命力を吸い付くされて死ぬぞ。」
「なんだと……!」

ミクロも知らなかったようで驚愕の声をあげている。

「さて、救うにはどうしたらいいんだろうな。」
「……うあぁああぁァぁあぁあああアアあ!!」

アイリスが狂気に満ちた叫び声を上げて銃を乱射する。
そのとき、サーベルは俺に前に出るように促す。


……促す?
何故俺は、サーベルがそう言っていると確信したんだ?


考えるうちに、俺の脚は自然と前へ走り出した。
閃光をさまざまな体勢で避けて、サーベルとアイリスへ突っ込んでいく。
アイリスへと剣先を突き刺そうとするその瞬間に、俺の左肩と右足を閃光が貫いた。
不思議と痛みは感じなかったが、力が抜けるような感覚だった。
そのときサーベルは思い通りに動かない俺の身体を引っ張るように、彼の両腕、そして両膝を切り裂いた。

身体を支えられなくなったアイリスが地面へ倒れこんだとき、俺の視界も一瞬でブラックアウトした。











  ヤジータside


「……勝負あり、だな。」

俺が呟くと、俺達とライデンを阻んでいた結界が一瞬にして消えた。

「アイリ、奴の心壊の治療はできるか?」
「えと……あんなに進行してたら、いくら退魔の魔術師でも……」

やってみます、とアイリはハープを取りだし、魔力を込めながら奏で始めた。
アイリスの身体を蝕んでいた黒い霞は動きを止める。

「……進行を止めることはできてるみたいですね」
「なるほど。さてどうしようか」

シンはサーベルを握ったまま倒れているライデンを移動させる。
俺はそのままアイリスの前に立った。

「ここで俺達全員を相手にするか、おとなしく降伏するか。俺達もお前の仲間だ、むやみに殺したりしない。」

シンがピクリと反応したが、仲間を信じろと鉈に言われたばかりだ。

「何故ですか?ヤジータ殿。奴はもはや人ではない。死が相応しい」
「裏切られても、奴が俺達の仲間であることに変わりはない。」

納得のいかないような顔をしたシンは刀を抜こうとするが、それをジンが制す。

「……ふふふっ」

アイリスが俯いたまま笑う。

「俺は……もう人なんて信じられないよ。どうせ殺すんだろ?」
「そんなこと、俺がさせない」

アイリスの拳銃を握る左腕が少しずつ動いているように見えた。
俺は身構える。

「人に殺されるくらいなら……自分で死ぬよ」

左腕は突然活発に動いて、彼の頭に銃口を向けた。

「……ッッ!!よせ、イタルータ!!」

彼が人差し指を動かした瞬間、俺達を眩しい光が包んだ。

「うわ眩しっ……」
「これは、どういうことだ……!?」

ミカンとフィギールが咄嗟に声を出す。










その光が収まったとき、頭を撃ち抜かれてはいなかったアイリスの左腕にはバラバラになっている拳銃が見つかった。

Re: Ghost-Soldier(『ごめんね』 ( No.45 )
日時: 2015/10/25 09:27
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  イタルータside



目を開けるとそこは真っ黒な空間だった。

死んだのか、とも思ったけどどうやら違うようだ。

俺の前に、二人の男女が並んだ。

「……誰?」

<<僕らは光線銃>>
<<貴方の光線銃>>

なるほど、魔武器の意思とやらか。

「なんで突然俺の前に現れたの?」

<<君を救うため>>
<<貴方をヒートから救うため>>

「へぇ……でも俺はこれから死ぬんだよ?救うもなにもないよ」

<<どうして?>>
<<どうして死ぬの?>>

「誰かに殺されるくらいなら自分で死ぬ。決めてたから」

<<君は殺されないよ>>
<<貴方は殺されないよ>>

「……どうしてそんなことがわかるの?」

<<みんなを信じてるから>>
<<これから貴方を救ってくれると信じてるから>>

「……。」

<<君は僕達の大切なご主人様>>
<<貴方は私達の大好きなご主人様>>
<<ヒートに邪魔されて話せなかったけど>>
<<貴方をずっと救いたかった>>
<<復讐の心から>>
<<壊れてしまった心から>>

「でも俺は……もうなにも信じられない。」

<<大丈夫だよ>>
<<絶対大丈夫だよ>>
<<君が今まで過ごしてきた>>
<<辛いことや悲しいことで埋め尽くされてきても>>
<<幸せだと思ったことが一度でもある>>
<<そんな不安定で美しい>>

<<<<世界を信じて。>>>>

「……俺は……」

<<だから、僕達は>>
<<世界が貴方を救ってくれると>>
<<僕達の願いを叶えてくれると信じて>>
<<最期の仕事をするよ>>

「最期……?」






彼等の後ろに亀裂が走り、黒い壁はガラガラと崩れていく。

<<君はもう苦しまなくていい>>
<<みんな一緒だよ>>
<<君の傍にいることができなくなるのは>>
<<とても寂しいけど>>

<<<<ご主人様の幸せを祈ってるよ>>>>



<<<<ごめんね、サーベルのお兄さん>>>>










完全に壁が崩れたとき、俺は現実に引き戻されたようだった。

霞のかかったような視界に映ったのは、バラバラに壊れた光線銃。
だけど、身体を食いつくされていくような、重い感覚はなくなっていた。


そのまま、視界は真っ暗になった。


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