ダーク・ファンタジー小説

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Ghost-Soldier【完結】
日時: 2016/07/08 23:01
名前: レンクル01 (ID: Kv3UCL6v)

開いていただきありがとうございます!

初めましてです、レンクル01と申します。
小説初心者です!低クオリティ回避不能です。
ご了承をお願いします……


シリアスジャンルで書かせていただきます。
多分後半にいくにつれシリアス増えていくと思います
今年は受験生なので、更新はとても遅いと思います。亀です(

この物語は、魔法・シリアス・復讐辺りが出てくると思います。
考案者は私ですが、肉付けはネットやリアルの友達みんなでやってきました。
できるだけたくさんの人に読んでもらうことが目標です!
読んでいただけるととても嬉しいです……!


最近気付きました、1話が長いのでこの小説かなり長いです。(

無事完結しました!ありがとうございました!

<物語進行につれて登場人物紹介を更新します>
(ネタバレ注意)

【ライデン・ヴィエラヒルデ】
男 16歳 黒髪、青ジト目。魔武器はサーベル(雷)
正義感の強い生真面目な青年。
正体は創造神フレアの血を引く大魔術師。一人称は俺。

【ネオン】
女 16歳 青髪ショートボブ、青丸目。魔武器はクレイモア(炎)
明るく馬鹿な楽観的少女。
正体はライデンがフレアの魔力で産み出した幻影兵士。一人称は私。

【イタルータ・ティア=スカーレット】
本名はアイリス・グレイドール。
男 17歳 赤黒髪、赤つり目。魔武器は光線銃2-F(閃光)
やや趣味が女性な社交的エリート兵士。
本性は心壊者で、ライデンを狙っていた。一人称は俺

【ツバキ・アヤカシ】
裏の人格は『アヤ』と名乗った。
女 16歳 黒髪ぱっつんロング、赤丸目。魔武器は弓(桜)
控えめで臆病、健気な和風女性。
裏の人格として魔物を宿していた。一人称は私。

【セイシュン・グリオニオ】
男 17歳 青紫髪+マフラー、赤死に目。魔武器は矛(氷)。
物静かで協調性がない。ツバキ大好き。一人称は僕。

【ムンナ・シャルル=ジルマーズ】
女 17歳 白銀髪1つ結び、緑たれ目。ジルマーズの若き女王。
優しく若干ツンデレな女性。一人称は私。

【リーナ・ストレディオ】
女 17歳 金髪1つ結び+ゴーグル、緑つり目。ジルマーズ監視塔。
姉御肌の万能エリート兵士。だがサボり魔。一人称はあたし。

【ヤジータ・デッドライン】
男 14歳 赤髪アホ毛、黄つり目。魔武器は風神鉈(風)
感情を表に出さないインテリ天才戦士。一人称は俺。

【アイリ・レーシー】
男 14歳 薄茶髪三つ編み+謎の青毛、赤たれ目。魔武器はハープ(音)
ミステリアスな常にこやかな美声美形男子。
その正体は800万人に一人の退魔の魔術師。一人称は僕。

【フィギール・イングニクス】
女 14歳 薄黄髪ツインおさげ(?)+折れた猫耳、黒死に目。魔武器はグローブ。
リーダーシップのある人間嫌いの猫さん。一人称はフィギール。

【ミカン・ライトニング】
女 16歳 オレンジ髪おさげ+白黒リボン、黄ジト目。魔武器は無し、魔術は魔方陣。
眠そうだがやるときはやる魔力の強い女性。一人称は私。

【ミクロ・ニャエンテ】
女 16歳 紺髪1つおさげ+猫耳、黒つり目。魔武器は魔法科学薬品と器具。
科学分野研究生の知的な猫さん。一人称は私。

【レイド・エストリージャ】
女 16歳 金髪メッシュ黒髪ショートボブ+角フード、赤と青のオッドアイ。魔武器は大鎌(星屑)。
狂ったような笑い方のキチガイ少女。
仲間の身代わりとなり死亡。一人称はオレ。

【ユーティア・エルク=セルフィンザ】
男 17歳 薄緑髪+前髪で片目を隠す、赤と青のオッドアイ。身体にルーンを宿す。
身分をあまり口にせず、素朴な雰囲気の優しい王子。一人称は僕。

【シン・カトリュス】
男 18歳 紺髪+耳に青のクリスタル、赤と青のオッドアイ。魔武器は刀(二刀流、海)
静かで生真面目な弟思いの青年。一人称は俺。

【ジン・カトリュス】
男 18歳 赤黒髪+耳に赤のクリスタル、赤と青のオッドアイ。魔武器は刀(二刀流、大地)
おちゃらけた不真面目な兄思いの青年。一人称は俺。

【フレア・アルバーン】
世界の創造神と伝えられているが、その全てが謎に包まれている。





では、よろしくお願いします!


【近況】参照1600越えありがとうございます!

Re: Ghost-Soldier(伝承 ( No.36 )
日時: 2015/10/21 19:28
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ???




昔々、双子の魔術師がいた。

兄の名はヒート、妹の名はルーン。

この世界の創造神であるフレア・アルバーンが地上を去った後の時代で、初めて現れた優秀な魔術師だった。

しかし、事件は起きた。

兄であるヒートは世界を旅してまわっていた。

そんな中、どこの国にも属していないと言われる小さな集落に辿り着いた。

そこには……集落の中心に位置し、面積の2/3を占めている巨大な図書館があった。

ヒートはもちろん中へと入り、そこにある数々の書物を眺めてまわった。

その書物の中に、ある禁書が眠っていたことなど知りもせずに。


ヒートは図書館を出た後、とある場所へ向かい何かをした。


……え?何かをちゃんと説明しろって?わかったよ。


ヒートは魔力を暴走させて、それを自分の身へと宿らせる禁術を使った。

もちろん、図書館で見つけた禁書に書かれていた術だ。

彼が何故その行動をとったか、今となってはわからないが、恐らく暴走した魔力は通常の魔力よりも遥かにすさまじい力を持っていたからだ。

しかしその暴走した魔力を宿した人間がどうなるか……お前にはもうわかるだろ?

……そう、心壊が起きる。

ヒートはその後、周囲の魔力をどんどん暴走させていった。

それは多くの人間に取り憑き、多くの人間が正気を失っていった。

そして遂に元凶であるヒートは、創造神が産み出した古い魔力を浄化する世界樹を暴走させ、世界中の魔力を暴走させようと考え始めた。

計画を進めていくヒートの前に、妹のルーンが立ちはだかった。

正気を失っているヒートに話が通じる筈もなく、二人はその身体に宿した計り知れない魔力を使って殺し合いを始めたんだ。

通常よりも強い力を持った魔力を宿したヒートの優勢は揺るがなかった。

しかしルーンにも、ある秘策があった。

それは自らの魔力を武器に流し込んで、武器の力、魔術の力を同時に使うということだった。

これが魔武器の原点だね。

果てしなく長い戦いは、ルーンの勝利で幕を閉じた。

ルーンは残った力で暴走した魔力を世界樹に送り、それを浄化させた。

そしてようやく、元の世界を取り戻したってわけだ。

ルーンは生前、最後に世界中の武器の種類ひとつずつに魔力を宿した。

これで、今奴等が使ってる魔武器ができたってわけだな。

しかし、現在世界樹は何故か暴走している。

……お前には理由がわかってるんだろって?そりゃあわかってるよ。

見てたんだからな。

ともかくヒートの思惑を受け継いだ何かが、世界樹を暴走させてるってことだ。

何かを説明しろ?そんなのつまらねぇじゃねえか。

まぁひとつ、ヒントをあげるとするか。

……そんな怖い顔するなって。

『ヒートが宿していた暴走した魔力を受け継いだ人物』ってことだな。

……それだけじゃわからないって?うるせーなもういいじゃねぇか。

仕方ないから、もうひとつやるとしようか。

『ヒートが最後に戦っていた相手はルーン。そして暴走した魔力は宿り主が死んだとき、一番近いところにいた人間に宿ろうとする』。

ってことは、と思うだろ?

ちなみに、両親の魔力を子どもは受け継ぐんだぜ。

……はっ、言ってしまった。

いいや、大ヒントをやろう。

『ヒートとルーンは、蒼い目だった』。

もう終わりだぜ!わかっただろ?

誰が元凶なのか。


じゃあ、そろそろおいとまさせてもらうぜ。

俺?


神様の知り合いとでも言っておくか。

Re: Ghost-Soldier(彼女の本心、そして ( No.37 )
日時: 2015/10/21 12:33
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ヤジータside



……。


……?



真っ白な空間だった。

どういうことだろう。俺はさっきまで食人植物を……



<<だーっ!あんた全然武器のこと考えないんだから!>>



「……?」

脳に直接響いたような声は、俺の目の前から聞こえてきた。


<<ちょっと聞いてるの?ヤジータ!>>

「……風神鉈?」

目の前にいたのは一人の少女。

何故、俺が風神鉈だと思ったのかはわからない。だけど、見た瞬間にわかった。

<<そーよ、あんたの武器よ!>>

相変わらず頭に響く声。

「……ここはどこだ?それにお前……」
<<いいから話を聞きなさい!ったく、あんたってばアタシのこと全然考えてないんだから。アタシはあんたを認めて、あの子からあんたの武器になったのに。>>

早口でまくし立てているが、何を言いたいのかよくわからない。

「……あいつの無念を引き継ぐために、俺にお前は宿ったんじゃなかったのか?」
<<違う!あーもう鈍感なのね!あんたに宿ったのは、あの子の想いを継ぐためよ。>>

「……どういうことだ?」
<<あの子は死んじゃう直前にアタシにこう言ったわ。『ヤジータを助けてあげて』って。『きっとあの子はこの事を一生引き摺ってしまう、だから貴方が彼を支えてあげて』ってね。>>

風神鉈が話した彼女の言葉は、実際に彼女の声で再生されているような感覚になった。

<<だからねヤジータ。あんたは昔のこと考えすぎ。ミクロちゃんを守るのはいいけど、あの子とミクロちゃんを重ねちゃダメ。>>
「……でも、俺はあのとき……」
<<だ か ら!それを考えちゃダメなの。あの子はね、自分のせいであんたが悩んでほしくなかったのよ。あの子の気持ちを汲むなら、あの子の過去を切り捨てて。>>

風神鉈に聞かされた彼女の本心。
だけど、俺は……

<<ヤジータ。あんたはこのまま戦闘を続けたらエネルギー切れで倒れる。そうしたらミクロちゃんを独りにするのよ?それこそまずいんじゃないかしら?>>

……?

<<自覚してないかもだけど、随分ルーンが減ってるわ。アタシを使えなくなるのはもちろん、立ってもいられないんじゃない?そうなる前に、ちゃんと彼女に協力を申し出なさいな。つまらないプライドも、過去の無念も全部捨てて、もっと仲間を信じなさい。>>

……。

<<仲間を信じること。それが、一人でなんだってできるように努力したあなたが忘れていたことでしょう?>>



瞬間白い空間が崩れ、どこかへ堕ちていく。

そしてその先には、鉈をがむしゃらに扱う自分の姿があった。














「…ミクロ。」

目の前に霞がかかっているような気分だが、いったん風で食人植物を吹き飛ばす。

「手伝ってくれ、そろそろまずい。お前の協力があれば、こいつらの一掃は簡単だ。」

後ろで立っていたミクロは一瞬ポカンとした顔をしたが、すぐに肩に乗っていた三郎を降ろして薬品を構えた。

「……ったく、最初からそう言えばよかったんだ。」
「ミクロ、頑張れ!」

鉈を構え直す。食人植物の数は決して少なくはないが、俺ならやれる。


……いや、俺達なら。


「行くぞ!」
「おう!」




同時に駆け出し、食人植物達に襲いかかった。







  ???side

「……君は気付いてるんだよね?」

「……!?」

「俺のことも、ツバキのことも」

「ツバキ……?」

「……あ、知らなかったのか。ごめんごめん、忘れて。」







「……頑張ってきてね」

「は?お前何言って……ッッ!?」

「あはっ……!!」



「アッッハハハハ ハハハハハ ハハハハハハハハハハハハハハ ハハハハハハハハハ ハハハハハハハハ!!」

Re: Ghost-Soldier(操り人形 ( No.38 )
日時: 2015/10/21 12:51
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside

「あー!出口だよっ!」

ネオンは駆け出し、俺もその後をついていく。


長い道も終わり、なにやら広間のような場所に出た。
階段があり、恐らくはあれを登ることで頂上に辿り着けるのだろう。

「ねえライデン!外見てよ。すっごく高いよ!」

ネオンに言われた通り外を見ると、確かにビルの高層ような高さの場所だった。
階段を登った回数を数えていなかったが、恐らくかなりの回数登ったのだろう。

そこへ、アイリとフィギールが来た。

「アイリ、フィギール、無事だったか!」
「うん、食人植物には出くわさなくてね」

アイリが疲れたような顔をする。
次にはミカン、ツバキ、レイドの3人が到着した。

「……あれ?レイドってそこの班だっけ?」
「途中ではぐれちまって、ここに入ったんだよ」
「入れた覚えはない」
「つれねーなぁミカンちゃんよっ!」

……レイドは無駄にテンションが高い。

そしてヤジータとミクロも到着し、残るはイタルータとセイシュンのみになった。

「……あいつら、遅いな。」
「道に迷ったのかなぁ?」
「馬鹿言うな、一本道だぞ?」


そうこうしているうちにセイシュンが到着した。

「……あれ?イタルータは……」

ヤジータが言い終わらないうちに、



セイシュンが矛をこちらに向けて突っ込んできた。

狙いは……俺!?

「……はぁ!?」

咄嗟にサーベルで受ける。
セイシュンは限界を超えているとも思える力で俺を突き放し、矛を構え直した。

「な、なんのつもりだセイシュン!」

問いかけても再びセイシュンは突っ込んでくる。
ギリギリで受け流し、セイシュンは地面に背中を打ってから宙返りをして立った。

……おかしい。

まず戦法が違う。セイシュンは魔武器の能力を最大限活用するために、ここまで近接攻撃は狙ってこない。
そしてセイシュンは体勢を立て直すときに宙返りなんてしない。

ここは……

「おい、お前ら!」

後ろにいる仲間に声をかける。

「ここは俺がなんとかする……お前らは、頂上の機械を止めに行け!」
「えっ!?いや、でも……!」
「早くしろ!相手は一人、複数で襲いかかればそれだけ動きにくくなる!」

それをきっかけに全員が頷き、最上階目指して階段を駆けていった。

「……さて、セイシュン!なんでこうなったのか説明してもらおうか!」
「う……うぅ……!」

うまく声を発せられない様子のセイシュンの目は焦点が定まっていない。
いつものような、遠くを見据えるような目とは全く違う……

間違いない、操られている!

「……どうやって止めるかな……」
「うぁぁあぁぁぁぁぁああッッ!!」

ビキッと音がして、矛に氷が宿る。

俺のサーベルを解放して、雷を宿す。

なんとかして……殺さずに止めるんだ!

Re: Ghost-Soldier(枯れることのない花 ( No.39 )
日時: 2015/10/21 19:26
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside

こちら目掛けて矛を構えるセイシュンにサーベルを向ける。

「セイシュンを操っている人物……あいつしかいない……!」
「……ラ……、ライデン……!」

掠れた声でセイシュンが俺を呼ぶ。
そして次の瞬間に、セイシュンは矛を俺に振りおろす。
サーベルで受けるが、セイシュンはそのまま矛てサーベルを押し込んでいく。


「……セイシュン……!」
「……僕を、殺してくれ……!!君を殺したくない……!!」

絞り出したような声は、セイシュンの本心だった。

「やっぱり、俺を狙っていたってのは……」
「……ッッ!」

突然セイシュンが青ざめ、俺から距離をとる。

「厄介だな……あれだけの馬鹿力使われて、傷つけずに止めるのには無理がある……」

手荒だが、これしか方法がない……サーベルに流れる電流を、そのままセイシュンに向けた。

「ぐっ!?」
「雷に麻痺効果があったのは幸いだったな……」

電流が走り、セイシュンはその場に膝をついた。

「……しばらくは安全だろう。」



サーベルの構えを解いた瞬間、天井が崩れた。

「うわぁぁぁぁっ!」

上の階へ進んでいた全員が落ちてきた。

「お、お前ら!最上階ってこの上だったのか!?」
「そ、そうみたいだった……機械も止めてきたんだが……」

ヤジータに状況を聞き、辺りを見回す。

「……ここ、なんか変じゃないか?」
「そうだな……ところで、セイシュンは?」

麻痺の効果で動けなくなっているセイシュンを指差し、「しばらくは動けないはずだ」と付け足した。

「……セイシュンを操っていたやつって……」
「……ああ。」

この場にはまだ現れていない。

「機械を壊したってことは、もう世界樹の暴走は止まっているはずじゃないか?」

俺が問いかけると、一同は下を向いた。

「いや、残念だがそうじゃないんだ。」

下の階から現れたのは、シンとジンだった。

「無事だったのか!」
「あったりまえだ!……んで話を戻すけど、世界樹の暴走は止まってなかったんだよ。」

施設の機械を壊しても、ヒートの増幅は止められてもルーンの回復はできないってことか……

「恐らく汚染した世界樹自体をどうにかしないといけないんだと思うんだ。」
「世界樹自体って、どうすれば……」





考えるあまり、気づかなかった。

「……ライデンッッ!!」
「なっ……」

他の奴等の死角になる位置で背後から俺を狙っていたセイシュンの姿を。
麻痺効果なんてそんな長い時間使えなかったか、と頭で冷静に分析できてしまう。
ガードも間に合わず、回避にも時間がない。






「……!!」

矛が何かを切り裂いた音がしたのに自分に痛みがないことに気付いて目を開いた。

セイシュンも大きく目を見開いて、広がる血飛沫を呆然と見つめる。

俺を庇って斬りつけられたのは……


「……ツバキ……!!」


セイシュンはその瞬間、糸が切れたように倒れ、ツバキもそのまま倒れこんだ。



「……まずい!」

ミクロとアイリが治療しようと駆け寄るが、次の瞬間……





「フフ、フフフフフフフ……」

ツバキはゆっくりと立ち上がって、含み笑いを続けた。


「やっとね……ああ、ようやく外に出られたわ!キャハハハハハハハハハハハハハ!」



ツバキとは違う姿になった化け物がそこにはいた。
一見人形に見えるが、形のはっきりしない赤い光……目が顔の部分に点り、ツバキの和風な髪型も、黒くパーマのかかったロングヘアーに見える。
足は膝から下が溶けているように存在していない。




「ありがとう……私を外に出してくれて。この姿が一定血を流せば、表と裏の人格が交代する仕組みなのよ……」




化け物は流暢に語る。そして……










「私が、世界樹から産まれた汚染部分の化け物なのでーす☆」




信じられないくらい明るい声が、施設中に響き渡った。

Re: Ghost-Soldier(ヒートを以てヒートを制す ( No.40 )
日時: 2015/10/22 22:47
名前: レンクル01 (ID: vMqsnMSf)

  ライデンside

「フフフッ、教えてあげましょうか?私のこと、ツバキちゃんのこと♪」

化け物はクルクルとその場で回る。
足が無いためにふわふわと浮かんだままだ。

「教えてあげまーす!というか私が教えたいの!知りたいでしょう?どうしてこうなっちゃったのか……ねぇ?」

一人で喋り続ける化け物は回るのをやめ、俺たちに向かって一礼する。

「改めてこんにちは!私は……そうね、ツバキちゃんの名前からとって……アヤ、とでも名乗っておこうかしら!別にそう呼んでくれなくてもいいのよ!」

笑っているような表情を浮かべる。

……俺たちの中に、声を発するものはいなかった。
今の状況を理解できていない、いや……したくないんだ。

ツバキの中に……本当の目的が潜んでいたなんて……

「さてさって、どうして私がツバキちゃんの中にいるのかなんだけど……ちゃちゃっと説明しちゃうねっ!」

化け物はそう言って、自分の経緯を語り始めた。

「私は世界樹が産み出した、食人植物製造マシンみたいなものなの!貴方達が戦っていた食人植物は全て私が産み出したものだったのよ!……多少は、あの変なやつらが改造してたけどね。」

大型機械を一瞥して、話を進める。

「ああ、私とこの組織は全く関係ないの。この人たちは自分から私を手助けする道へと進んでいたのよ。どうしてこうなっちゃったのかなぁ……みんなも嫌な思いたくさんしたよね?でもごめんね!私、こいつらを操った元凶ではないのー!」

強弱高低の激しい声色は、不気味な音だった。

「ヒートにやられちゃった世界樹から産まれた私は、実体のないただのヒートと世界樹が持っていた強大な魔力の集まりだったから、まず身体を探したのよ。するとなんと!身体に魔力を宿して、魔武器も使えるすっごい女の子がいるじゃない!でもね、完全にその子になることは無理だったの……だから、その子の影になったのよ」

その子とは……恐らく、ツバキのことだろう。

「貴方達、後で写真でも見て、この子の影を見てごらんなさい、ちゃんと私が写ってるわ!キャハハ……っと、これは置いといて……この子は、ヒートの塊である私を、自分の中で押し込んでいたの。優しい子よね、みんなに心配かけないために一人で戦ってたんだから。でもそれだと私困るから、大量の血と共に、彼女が私を押し込んでいるルーンが流れ出すのを待っていたのよ。で、今がその時ってわけなの!」

長い髪をいじりながら、俺達を挑発するような声を響かせる。

「私を再び封じるためには、私の中に流れているツバキちゃんを押し込む力、ヒートを血と共に出すことよね。でもそれはきっと貴方達には不可能……私には実は秘策があるのよ!……これも今は置いておきましょう。ともかく、私を倒さないと食人植物は止まらないし、ツバキちゃんも戻ってこないのよ!キャハハッッ!」

化け物は一通り話終えた後大きく息を吐いた。

「……ふざ、けるな……ツバキを返せッッ……!」 

突然俺達の中から声が聞こえた。まだ立ち上がれてはいなかったが、セイシュンが青白い顔を化け物に向けて声を絞り出していた。

「あれ?だから私を倒せばいいのよ?まぁ、今の貴方にはむりだろうけどねー」
「……ッ」

セイシュンは操られていたせいで魔力を使いすぎている自分の身体を動かそうとしながら、悔しそうな顔をする。

「まぁとりあえず……私、めんどくさいから貴方達のこと、ここで片付けていくことにするわ」
「は……!?」

いかにもつまらなそうな顔をした化け物は、俺達を一瞥した。

「だぁって後からいろいろされてもめんどうでしょ?食人植物量産して、さっさと世界を終わらせなきゃ……」
「お前の目的は……!」

世界を終わらせることか、と言葉を繋ぐことはできなかった。

「よぉし、じゃあ……さよなら!キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!」

笑い声と共に化け物の身体から、巨大な蔦や木の根が建物を覆い尽くそうとばかりに出現した。
そして化け物の身体は消え、増殖する植物だけが残る。

「な……なんだこれっ!!」
「ヒートの結界で閉じ込められてるな。俺達は建物に潰されて圧死か。」
「ヤジータ!分析してる場合じゃないでしょ!?」

建物はガラガラと音を立てて崩れようとする。
間違いなく死ぬが、今は結界で外には脱出できない。

「ど、どうすればいいんだっ!?」
「……死ぬしかないっての……!?」
「……。」

ネオンは何かを考えているようだった。








「あーあ。」

レイドの声だった。

「しゃーねーなぁ……」
「え……?」

レイドは両手で魔方陣を展開した。
そして俺達の後ろに、大きな時空の歪みのようなトンネルが現れた。

「俺の中のヒートを使って結界を抉じ開けたんだ。目には目を、ヒートにはヒートをだな。お前らは外へ脱出しろ。」
「……レイド、お前はどうするんだ!?」

レイドの答えはわかっていた。だが、他の奴等も俺も、トンネルを通る気にはなれなかった。

「安心しろ、俺も後で行くよ。」
「ッッ……!!」
「ライデン、行くよ。」

ネオンが急に俺の手を引いた。

「なっ、お前……!!」
「……あの子の覚悟、無駄にしちゃダメだよ……」
「……!」

俺達が走り出したことで、まわりの奴等も次々とトンネルへ飛び込んでいった。
俺とネオンが最後にトンネルへ飛び込むとき一瞬だけ振り返ると、レイドは狂ったと思っていた目をしっかりと開いて、俺達に後を託すように笑っていた。

それが、レイドを見た最後だった。










  レイドside

「……はぁ、バカなことしたなぁ。」

ガラガラと崩れていく建物の中で、自分の通るトンネルだけはヒート不足で作れなかった俺は座りこんでいた。

「……産まれたときから捨てられて、どこに行っても邪魔者扱い、強ければ必要とされると心を壊して強さを手に入れたけど、結局使われただけだったな。」

昔の走馬灯のようなものが次々と甦る。

「でも俺は……あいつらが生きることは、俺が生きた証になる。それだけで充分……俺は自分の人生を生きたんだ……」






そうだろ?神様。





迫る天井を一目見て、そっと目を閉じた。


後は頼んだぞ。








幻影の魔術師。


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