ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

黒いリコリスの教団
日時: 2019/07/01 15:43
名前: シリアス (ID: CQQxIRdY)

初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。

オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!


登場人物


【リコリス教団】

ルシール・アルスレン

本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてレフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。


ミシェル・ヴォーン

教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。


ロベール・ド・カルツ

ルシールの右腕である老神父。種族は人間。
教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。


ルナリトナ

リコリス教団の一員。種族は人間。
錬金術や薬の調合に長けておりその技術を武器とする。
戦闘よりも仲間の援助が得意で剣術はとてもじゃないが苦手。
ディーノと気が合い共同で研究や発明に明け暮れている。


ソフィ・ツヴァイフェル

リコリス教団の一員。種族は人間と悪魔のハーフ。
双剣を使った剣術と黒魔術を得意とする。
悪魔と人間の混血ということで人間からも悪魔からも忌み嫌われているため身分を隠していた。
しかし、相棒のリクに対しては心を許しており行動をよく共にする。
反対に稽古の際に不覚を取らされたミシェルをライバル視している。


リク・フォーマルハウト

リコリス教団の一員。種族は人間。
好奇心が強く誰に対しても明るく接し純真無垢で真っ直ぐな性格。
誰かを守りたいという思いから最強の戦死になろうと努力している。
武器は普段、背中に背負った大剣を使用する。


ジャスティン・リーベ

リコリス教団の一員。種族はエルフ。
礼儀正しく真面目で純粋、人懐っこく誰とでも仲良くしようする性格。
教団に入る前は聖職者で魔を浄化する力で人々を救済していた。
弓を得意とするが武器がなくても戦えるようにと護身術程度だが肉弾戦もできる。


クロム・リート

リコリス教団の一員。種族はエルフ。
賢く冷静で、何事も要領よくこなす優等生。ジャスティンの異母弟。
一方でお節介ともいえるほどの世話焼きな面もあわせもつ。
魔法石の杖を扱い回復魔法や光属性の魔法が得意だが戦闘の際には闇属性や攻撃的な魔法を主に使用する。


カティーア・ヴァイン=トレート

リコリス教団の一員。種族は魔女と天使のハーフ。
19歳になるまで天使だけの小さな村に住んでいたが混血である事が原因で他の住民から迫害を受けていた。
そのため高潔で傲慢な性格と天使をいつも目の敵にする。
しかし、可愛いものやお菓子が好きで褒めると調子に乗る癖がある。
種族が同じという理由でミシェルとは親しくなり本当の姉妹のような関係を築いた。
武器はレイピアだが天聖滅拳(てんせいめっけん)という対天使用の拳法も使用できる。


ディーノ・アインス

リコリス教団の一員。種族はホムンクルス(クローン)。
好奇心が強く知らないものにはかなり興味を示す性格。"やはり俺は天才だ!"が口癖。
武器は魔法のカードで召喚獣を具現化させて戦わせる。
クローンのプロトタイプとして生み出され 人体実験の被験体として扱われてきた。
しかし、ある日生みの親である魔術師に連れられ、魔術師見習いとして修行していた。
ルナリトナと仲が良くしょっちゅう共に新たな発明に明け暮れている。


リベア・グロリアス

リコリス教団の一員。種族は人間。
数は少ないが大らかな感性を持ち基本的に優しい性格。争いや喧嘩が大嫌い。
かつて鬼神、邪神、破壊神などと呼ばれ人々を恐怖に陥れた堕天使アプスキュリテが封印されていた漆黒の魔剣を武器として扱う。
剣の中の堕天使が復活しないよう魔を祓う力を持つレナと共にいる。


レナ=ルナリア

リコリス教団の一員。種族は聖女。
男勝りで勝気、常に強気。抜け目がなく何があろうとも余裕な表情を崩さない意志の強さを持つ。
しかし、あまり他人に特別扱いや色目を使われるのを苦手としているため正体を明かさないようにしている。
女神に生み出された聖女で魔を祓う力を持ち純白の聖剣を扱う。
リベアの持つ魔剣の監視兼護衛のためリベアと共にいる。


テオドール・ヴェル・ドンゴラン

リコリス教団の一員。種族は竜人。
ほとんど全滅してしまった失われた種族、竜人の青年。
物静かで穏やかな性格だがその反面、戦略を練るのが得意な野心家。
戦闘の際は竜化し硬い鱗で覆われた鋼色の巨大なドラゴンになる。
他にも幻惑魔法も使用でき他人を操る事ができる。


【セラフィムの騎士団】


ナザエル・ド・ラシャンス

セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。
紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。
騎士団の中でも謎が多い人物である。


クリスティア・ピサン

セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のナンバー2。種族は『エデンの熾天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
騎士団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『アルビテル』を愛用している。


キルエル

イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『エデンの熾天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。


ナデージュダ・ペトラウシュ

イスラフェル聖団に雇われている暗殺者。種族は『ダークエルフ』。
各地で差別され酷い仕打ちを受けておりダークエルフという理由で両親と妹を人間達に殺された過去がある。
1人生き残った彼女は暗殺組織に拾われ以来、暗殺の世界に生きる事になる。
イスラフェル聖団に雇われる形でルシールと対峙するが実際は聖団に団員達を人質に取られおり無理矢理従わされている状態。
多彩な武器に黒魔術や死霊魔術も扱える。


用語集


リコリス教団

セラフィムの騎士団に不信を抱いた者達が集って結成された秘密結社。
ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。
組織の紋章は黒いリコリス。

セラフィムの騎士団

レフレールの守護を宣言した組織。
大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。
治安維持のためレフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。
組織の紋章は羽の生えた少女。

レフレール

フランス西部に位置する架空の孤島。
1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。
文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。

ル・メヴェル教

レフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。
1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。


……オリキャラ提供して頂いたお客様……

そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様


【お知らせ】

2018年夏の大会では皆様の温かい評価により銅賞を受賞しました!
本当にありがとうございました!腕の悪い素人ですがこれからもこのシリアスをよろしくお願いします!

読みにくいページの修正を開始しました。文章はほとんど変わっておりません。

Re: 黒いリコリスの教団【オリキャラ募集中】 ( No.20 )
日時: 2017/03/07 15:57
名前: ブレイン (ID: EM5V5iBd)


名前:テオドール・ヴェル・ドンゴラン
性別:男
種族:竜人
年齢:26歳
一人称:僕
二人称:あなた、さん付
武器:竜化、幻惑魔法
性格:物静かで穏やかな性格。その反面、戦略家で野心家。掴み所がない。勝てる時は強気に攻めるが、勝てる見込みがないと判断すると、平気で仲間を売り、敵に寝返る。常に張り付いたような笑顔を見せて、敵意が無いことをアピールしている。
容姿:深緑色のロングヘアで、赤い瞳。顔とヒョロッとした見た目から、女の人に見えないこともない。眼鏡をかけている。緑色のローブを着て、その上に白いマントで身体を覆っている。
竜化すると、身長15mの硬い鱗で覆われた、鋼色の巨大なドラゴンになる。
設定:ほとんど全滅してしまった失われた種族、竜人の青年。生き残るために手段を選ばず、仲間や友人を捨ててまで生きてきた。イスラフェル聖団のスパイとして、リコリス教団に潜入しているが、いざとなればイスラフェル聖団を裏切る気満々。幻惑魔法で、他人を操る事ができる。
竜化でドラゴンになる事ができるが戻った後、ひどい疲労感が襲い、15時間程眠ってしまう。
サンプルボイス:
「僕は味方ですよ、安心してください。」
「ま、僕は竜人ですから。」
「僕は保身的ですから、命の保証はしませんよ!?」
「そんな感情、とっくの昔に犬の餌に混ぜてしまいましたよ。」
「死ぬ時は道連れにしますよ、くやしいですもん!」
「ま、頑張った方でしょう。」



初めまして!小説読みました!
ビビビッときて、すんなり読めて、なんというか、面白かったです!これからも陰ながら応援してます!
キャラ投下いいですか?
敵だか味方だかわかりにくいですけど!

Re: 黒いリコリスの教団【オリキャラ募集中】 ( No.21 )
日時: 2017/03/09 20:28
名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)

ブレイン様、素敵なオリキャラの提供心から感謝いたします。
竜人のスパイですか、これはまた新感覚ですね。
なかなか面白い展開になりそうです。喜んで採用させていただきます。
本当にありがとうございました。

Re: 黒いリコリスの教団【オリキャラ募集中】 ( No.22 )
日時: 2019/03/16 09:42
名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)

 涼しい廊下を進み今度は別の場所へ足を運んだ。行き着いた先は鉄製の厚い扉の前だった。ルシールは取っ手を突かみ力一杯に引き時間をかけて開く。ようやく子供1人が入れるスペースができそこへ狭苦しそうに入る。

 そこは誰がどう見ても間違えようがない武器庫だった。教団に所属する団員の武器や防具が無数に保管されている。鉄で作られた剣や斧、槍などが並んでおりその隣に鎧が置かれていた。それとは逆に精鋭達の武器はただの代物とは違い丁寧に保管されていた。壁に描かれた魔法陣の中心に飾られ魔力を補充している。聖なる力がこもった聖剣、見事な作りをしたレイピア、魔法の杖など種類は様々だ。

 武器庫の中にも教団の精鋭達はいた。3人の姿が見える。内容は不明だが輪になり楽しそうに会話を弾ませている様子だった。金属の扉の音で彼らはルシールの存在に気づいた。

「おや、ルシールさんが帰って来たようですね?」

 ローブの中から竜の尻尾を生やした青年が言った。身体の向きを変え手を振り挨拶をする。

「『リベア』、『レナ』、『デオドール』、ただいま!」

 ルシールも笑顔で返事を返す。

「また武器の扉を開けるのに手こずっていたようですね?やはり小さな女の子には堪えますか?」

 デオドールと呼ばれた青年がそのままの表情で年下の少女をからかう。顔を赤らめたルシールはほっぺたを膨らませ

「もう、バカにしないでよ!もう少し大人になったら開けれるもん!・・・・・・ところで3人共、何の話をしていたの?」

 その質問にはリベアが答えた。

「君も知っている通りミシェルとクレイスっていい関係になってきてるでしょ?恋が実るかどうかで互いに予想し合っていたんだ。予想が的中、つまり賭けに勝った人は賞金がもらえるってわけ。ちなみに今は金貨15枚となってる」

「面白そう!私も参加していい!?」

「賭けは子供がやるものじゃないけど負けてもペナルティはないからまあいいかもね。ところでルシールは今までどこ行ってたの?」

 レナがおもむろに聞き返した。

「えっと・・・・・・」

 返答に困る質問にルシールは頭を悩ませる。

「気を悪くしてもいいんだったら教えてあげるけど・・・・・・さっきディーノとルナリトナを不快な気持ちにさせちゃったばかりで・・・・・・」

 その言葉に目の前の3人は表情を変えた。真面目さが浮かんだ顔で背の低い少女を見下ろす。

 最初にリベアが口を開く。

「いいよ話しても。この時代に悪報は常。どんなに酷い事実でも受け止めるよ」

レナも彼の意見に強く同意した。

「そうだね。悪い知らせをいちいち恐がっていたら私達の仕事は務まらない」

 最後にデオドールが

「2人の言う通り、いい事も悪い事も遠慮なく言って下さいよ。僕達は仲間なんですから」

 そう聞いてルシールは話しても大丈夫そうと確信すると言いにくそうに重い口を開いた。

「また、ル・メヴェル教の信者が殺害されたの。まだ若い私より年上の女の子で・・・・・・」

「・・・・・・なるほどね」

 3人は特にこれといった素振りは見せなかったが研究室にいたディーノとさほど変わらない反応をした。嫌な知らせを聞いて後悔したのかやはり彼らも表情を重くする。

「またそんな事件が起きたんですか・・・・・・胸が痛みます・・・・・・」

「しかし何故、犯人はル・メヴェル教の信者ばかりを狙うのかな?レナはこの事件どう思う?やっぱり犯人はセラフィムの騎士団の仕業だと思う?」

「さあね、確かにあの組織がこの国の守護を始めてから変な事件ばかり起こっているけど・・・・・・そう言われると怪しいね」

 レナは長話に少しばかり疲労を感じ傍にあった椅子に座った。テーブルに乗った果実酒をグラスに注ぎ乾いた喉を潤す。

「ここでただ考えていても始まらないな。俺はただこれからの戦いに備えるだけだ」

 リベアが軽く背伸びをし暇そうにあくびをした。気紛れにルシールの頭を撫で鉄の扉の方に足を進める。

「どちらに行く気ですか?」

「訓練場、最近身体が鈍ってきてるんでね。それじゃ」

「リベアが行くんだったら私も行くよ。君1人じゃ色々と危ないからね。話せて楽しかったよ」

 2人はそう言って別れの挨拶をして部屋から立ち去って行った。残った2人は彼らを見送りただその場に立ち尽くしている。武器庫は一段と静かになった。

「さて、楽しい会話がお開きになったところで僕もそろそろ失礼させてもらいましょうかね」

「ミシェルの恋の賭けに私も乗った事忘れないでね?金貨は頂いちゃうよ」

「はいはい、・・・・・・ところでルシールちゃんは何故ここに来たんですか?」

Re: 黒いリコリスの教団【オリキャラ募集中】 ( No.23 )
日時: 2019/03/16 09:53
名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)

 デオドールの質問にルシールは忘れていたと両手を合わせた。よく思い出させてくれたと言わんばかりに部屋の奥へ進んでいった。歩きながらポケットから使いかけ蝋燭ほどの短剣を取り出す。それを全く同じ形をした武器の隣に並べる。

「そんな物騒な物を持って出かけていたんですか?」

 ルシールの行いを知ってデオドールはいい顔をしなかった。腕を組み困った様子で軽く息を吐き出す。

「念には念を入れてね、いつ素性がばれて襲われるか分からないから」

「そうかも知れませんが・・・・・・」

 武器庫に用は無くなりルシールも部屋を出る事にした。同じようにデオドールも背後へ続く。

「扉、開けてあげますよ。」

 彼は前に出て閉じられたばかりの鉄製の扉を片手でいとも容易く開いた。十分に通れるスペースを開けて"お通り下さい"と笑顔でお辞儀をする。

「ありがとう!デオドールって優しいんだね?」

「小さき者に優しくするのは"竜人"として当然の行いですから」


 個室に戻った彼女は汗が滲んだ衣装を脱ぎ壁にぶら下げた。今までと同じ衣服に着替え服装を整える。そして、椅子に座り蝋燭に灯かりをつけ書物を机の上で開いた。白紙のページを開き横にあった羽ペンをインク入れから抜き取った。それは日記だった。ルシールは今日の出来事の内容を書き込んだ。ルシールは羽ペンを元の位置に戻し日記を閉ざし机の上を片付け蝋燭を消した。

 そのまま食堂へ向かう。食堂はルナリトナがいた部屋の向かいの右の3番目にあった。意外と広くカーペットの上に同じ長さのテーブルが置かれていた。薬草とは全く異なる香ばしい香りが食欲をそそる。教団のメンバーは全然と言っていいほどいなかったが調理係はまだ働いていた。つるした動物から肉を切り取り野菜を細かく切り刻む。これから訪れる仲間のために料理を続ける。そこでミシェルと合流し隣同士の席に座った。

 料理人がメニューの描かれたリストを持ってやってきた。長時間働いていたみたいだが余裕そうな表情で食べたい物を作りますよと言った。2人はとりあえず同じメニューを注文した。焼いたブレットにハーブ入りのサラダ、メインのおかずは牛の薄切りステーキ、デザートはブルーベリーのタルトを頼んだ。

「かしこまりました」

 そう笑顔で答え再び調理場へ戻っていった。

 そこへルナリトナがやってきた。同じ姿勢の作業で全身が凝ったのかだるそうに軽く運動した。ポキポキと心地いい骨の音を鳴らしている。何かが足りないと愚痴をこぼしながら

「タイム(ハーブ)入りのスープをお願い、それと適当にパンを2つ」

 調理場の方を向きながらメニューのリストを見ずに軽々しく言った。料理人は健気な表情を保ちながら頷いた。

「お!ルシールもここにいたのか?ミシェルも一緒かい?」

 ルナリトナは2人の前の席にがさつに座り両腕を伸ばした。

「さっきは悪かったね、調合の事になると人が変わっちゃって!」

 そう言って彼女は愉快そうに笑った。まるで二重人格のような性格にルシールは目を丸くする。なんて言えばいいのか思いつけない様子だったが、とにかくいつも通りに接する事にした。

「クレイスくんの病気を治してくれて、ありがとう」

 ミシェルも目を合わせず照れくさそうに顔を赤らめながらお礼を言った。

「どういたしまして!ミシェルはクレイスの事が好きだから当然心配だよね?」

「す、好きじゃないよっ!もうルナリトナさんったら!」

 からかわれ顔を更に真っ赤にしたミシェルを見てルシールも笑った。

 しばらくして3人が頼んだメニューが運ばれてきた。注文した通りのパンと肉、それとスープ。デザートを最後に並べた。料理人は美味しそうなディナーをテーブルに置き上品にお辞儀をした。

「いただきます!」

「主よ、大地の恵みを与えて下さりありがとうございます。」

 軽い言葉と深い言葉を言い3人は銀食器を手に取る。ルシールはナイフとフォークを使いさっそくおかずのステーキを細長く切り焼いた肉を持ち上げ口の中に運んだ。ミシェルはゆっくりとブレットをかじり可愛く口を動かす。

「はあー、やっぱこれだな!」

 苦みの利いたスープに快感を感じルナリトナは爽快な声を上げる。さっきまでの疲れが一気に取り除かれたようなすっきりとした吐息を吐いた。

「ところでさっき何を調合していたの?」

 ルシールが興味を持った口調で聞いた。ルナリトナはよく聞いてくれたとテンションを上げて説明した。

「さっき作っていたのは武器として使用する爆薬だ!凄いだろ!?薬草やアルコールだけじゃなくある物も加えたんだ。何だと思う?『魔法石』さ!」

「魔法石?」

 ミシェルは首を傾げ話の続きを聞く。

「そう、この代物は万能で何にでも用いられる。もちろん"武器"にもね。石ころくらいの大きさでもかなりのエネルギーが蓄積されているから1つあるだけで多くの事が成し遂げられる。この前起きた『ル・メヴェル教会爆破事件』でも魔法石が使われたんだ。それをヒントに今の最新兵器を開発しているってわけ」

「ルナリトナが扱っているのは薬草だけじゃないんだね?」

「悲しい事に植物の力だけじゃ限界があるんだよ。だから"錬金素材"に頼る事もしばしばあるんだ」

「じゃあ、"魔女の血"とか"カラスの羽"とかも使っているの?」

 今度はミシェルが興味津々に問いただした。

「はあ?魔女の血って・・・・・・悪気があって言ったんじゃないのは分かるけど『魔界錬金術』じゃないんだ。あんなの邪法、『黒魔術』と変わんないよ」

 怒ったわけじゃなかったがルナリトナはむっとした顔でミシェルから視線を逸らした。邪悪な術と一緒にされたと解釈してしまったのか軽くしかめっ面をする。

「ほう、貴様は魔界錬金術を侮辱するのか?」

 ルナリトナの背後で女が言った。強きで堂々とした女の声の方向に3人は一斉に視線を向けるといつの間にか2人の男女が立っていた。女は双剣を左右の腰のベルトに括り付けていた。ルシールの身長近くもある見事な両刃の長剣。隣にいた男は逆に友好的な雰囲気を放っていた。正義感が強そうで鍛え上げられた筋肉が印象的だった。背中に大剣を背負い逞しい体つきをしている。

「いいじゃないか『ソフィ』。意見は人それぞれだよ」

「『リク』・・・・・・その通りかもしれないが・・・・・・」

 ソフィは納得できない様子で席に座った。調子のいいリクにリストを進められ料理人を呼んだ。

Re: 黒いリコリスの教団【オリキャラ募集中】 ( No.24 )
日時: 2019/03/16 10:02
名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)

「ソフィさんだ・・・・・・」

 ミシェルは気まずそうに誰にも聞こえない声で呟いた。彼女との関係が良くないのか見た途端体を震わせる。怯えた表情を隠せないままルシールにそっと寄り添った。

「ミシェルも一緒か、貴様とはまた共に稽古をしたいものだな」

 ソフィは真面目な顔でミシェルを集中的に見つめた。鋭い眼差しが強いプレッシャーを引き立てる。ミシェルは一層強く体を震わせ涙目になった。

「ミシェルはまだ幼いんだから本気でやったら可哀想だよ。ほら、この子恐がってるじゃないか」

リクが微笑みまずは食事を楽しもうと前向きに事を進める。

「私はあの屈辱がたまらなくて仕方ないのだ。私ほどの誇り高き戦士がこのような幼子に不覚を取るとは・・・・・・!」

「それだけミシェルも成長しているって事、勿論ソフィのお陰でね」

 リクの褒め言葉にソフィはやっと苦笑に近い笑った顔を見せた。なんと言い返せば分からいままクールに自分の髪を撫でた。

「そういえばルシール、ロベール神父が貴様を呼んでいたぞ。何かしら話があるらしい。晩餐が終わり次第上階の部屋に向かえ」

「はいはいちゃんと行くから」

 上から目線の発言を気にせずルシールは頷いた。急ぐ様子も見せず残り僅かとなったステーキを食べる。

「ところでルナリトナ、さっきの発言は聞き捨てならないな」

 ソフィは今度はルナリトナを睨みつけた。

「魔界錬金術をバカにするなって事でしょ?」

 ルナリトナはどうでもよさそうにいい加減な口調で言った。

「魔界錬金術は強力な武器だけじゃなく紋章生物も造り出せる優れた技術なのだ。しかもだな・・・・・・」

「しかも・・・・・・?」

 興味を全く抱かず相手に目も合わせる事無くスープを啜る。

「失敗した物でも決して無駄にならない。どんな物でも役に立つのだ」

ルナリトナはああそうとだけ声を出し

「どんなに素晴らしい理由を並べても邪法は邪法。黒魔術や『死霊術』と同じ」

「・・・・・・なんだとっ!?」

 ソフィはカッとなり勢いよく席から立ち上がった。無理矢理倒された椅子の大きな音が食堂に響き渡る。ルシールはステーキを床に落としミシェルは隣にいた彼女に抱きついた。

「ちょっと落ち着きなよ、ルナリトナはルナリトナの考えがあるんだから」

 リクは相変わらず冷静に相棒の怒りを鎮まらせる。流石の彼もこれは不味いと思ったのか少々焦りを見せた。

「ケンカなら稽古場でやってほしいな・・・・・・」

 最後の肉を食べそこない機嫌を損ねたルシールが呟いた。

「私達が崇拝しているル・メヴェル教はどうなのだ?」

 ソフィは口論をやめる気はなく、今度は教団の掟の1つに対して悪く言った。

「アルテュール・ル・メヴェルは1枚の金貨と引き換えに異質な力を与えるというがその力こそ黒魔術だと言う者達もいる。実際、このかつての教えに救われた人々がいるなど聞いた事もない。魔界錬金術が邪法ならこの物乞いの神も邪の象徴ではないのか?」

 その言葉に反論できずここにいる全員が驚愕の視線をソフィに浴びせた。掟に背く暴言を吐いて驚いているのか正論を感じ深く同感を抱いているのかは分からない。複雑とも言える表現しようのない空気にしばらく沈黙が続いた。

「・・・・・・どちらも違うと思います。」

 静寂に包まれる空気の中でやがてミシェルが口を開いた。

「私は魔界錬金術というのが何なのかは知りません。聞いていて分かったのはとても強力で頼もしい魔科学の一種だという事です。確かに魔界という悪魔が住まう世界の技術と聞いて邪悪なイメージもあるかもしれません。だけど、誰のため・・・・・・例えば大切な仲間のためにその力を使えるなら正法とも言えるのではないでしょうか?ル・メヴェル教も同じです。黒魔術も善用すれば必ずいい結末にだって繋がると思います。そうだと信じているから私達はル・メヴェル教を崇拝しているのでは?違いますか?」

 大人のような意見に静かだった食堂は尊敬の声と拍手の音で賑やかになった。"おー!"とミシェルを讃美し彼女を中心に盛り上がる。流石のソフィもこれには反論のしようがなかった。珍しく相手の理論を認める様子を見せた。

「凄いよミシェル!」

 今度はルシールが無邪気な子供のように彼女に抱きついた。ミシェルは照れているのが誰にでも分かるくらい顔面を赤くする。下を向き恥ずかしそうに口をにやけさせる。

「ほんとほんと、前から思ってたんだけどミシェルっていろんな意味で優秀だよね?」

 ルナリトナも上機嫌そうに言って苦いスープを飲み干す。直後に料理人に声をかけ今日のヒーローにケーキを作ってと頼んだ。料理人は喜んでと嬉しそうに調理場に飛び込んでいった。リクはソフィの肩に手を乗せ2回軽く叩くと

「ソフィのライバルはやっぱり凄いよ。流石、君が目をつけただけの事はある」

 リクも温かく言った。

「ミシェル、お前は私にとって1番の好敵手になるだろうな・・・・・・」

 ソフィも彼女を見ながら悪くない言葉を呟いた。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。