ダーク・ファンタジー小説
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- 黒いリコリスの教団
- 日時: 2019/07/01 15:43
- 名前: シリアス (ID: CQQxIRdY)
初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。
オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!
登場人物
【リコリス教団】
ルシール・アルスレン
本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてレフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。
ミシェル・ヴォーン
教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。
ロベール・ド・カルツ
ルシールの右腕である老神父。種族は人間。
教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。
ルナリトナ
リコリス教団の一員。種族は人間。
錬金術や薬の調合に長けておりその技術を武器とする。
戦闘よりも仲間の援助が得意で剣術はとてもじゃないが苦手。
ディーノと気が合い共同で研究や発明に明け暮れている。
ソフィ・ツヴァイフェル
リコリス教団の一員。種族は人間と悪魔のハーフ。
双剣を使った剣術と黒魔術を得意とする。
悪魔と人間の混血ということで人間からも悪魔からも忌み嫌われているため身分を隠していた。
しかし、相棒のリクに対しては心を許しており行動をよく共にする。
反対に稽古の際に不覚を取らされたミシェルをライバル視している。
リク・フォーマルハウト
リコリス教団の一員。種族は人間。
好奇心が強く誰に対しても明るく接し純真無垢で真っ直ぐな性格。
誰かを守りたいという思いから最強の戦死になろうと努力している。
武器は普段、背中に背負った大剣を使用する。
ジャスティン・リーベ
リコリス教団の一員。種族はエルフ。
礼儀正しく真面目で純粋、人懐っこく誰とでも仲良くしようする性格。
教団に入る前は聖職者で魔を浄化する力で人々を救済していた。
弓を得意とするが武器がなくても戦えるようにと護身術程度だが肉弾戦もできる。
クロム・リート
リコリス教団の一員。種族はエルフ。
賢く冷静で、何事も要領よくこなす優等生。ジャスティンの異母弟。
一方でお節介ともいえるほどの世話焼きな面もあわせもつ。
魔法石の杖を扱い回復魔法や光属性の魔法が得意だが戦闘の際には闇属性や攻撃的な魔法を主に使用する。
カティーア・ヴァイン=トレート
リコリス教団の一員。種族は魔女と天使のハーフ。
19歳になるまで天使だけの小さな村に住んでいたが混血である事が原因で他の住民から迫害を受けていた。
そのため高潔で傲慢な性格と天使をいつも目の敵にする。
しかし、可愛いものやお菓子が好きで褒めると調子に乗る癖がある。
種族が同じという理由でミシェルとは親しくなり本当の姉妹のような関係を築いた。
武器はレイピアだが天聖滅拳(てんせいめっけん)という対天使用の拳法も使用できる。
ディーノ・アインス
リコリス教団の一員。種族はホムンクルス(クローン)。
好奇心が強く知らないものにはかなり興味を示す性格。"やはり俺は天才だ!"が口癖。
武器は魔法のカードで召喚獣を具現化させて戦わせる。
クローンのプロトタイプとして生み出され 人体実験の被験体として扱われてきた。
しかし、ある日生みの親である魔術師に連れられ、魔術師見習いとして修行していた。
ルナリトナと仲が良くしょっちゅう共に新たな発明に明け暮れている。
リベア・グロリアス
リコリス教団の一員。種族は人間。
数は少ないが大らかな感性を持ち基本的に優しい性格。争いや喧嘩が大嫌い。
かつて鬼神、邪神、破壊神などと呼ばれ人々を恐怖に陥れた堕天使アプスキュリテが封印されていた漆黒の魔剣を武器として扱う。
剣の中の堕天使が復活しないよう魔を祓う力を持つレナと共にいる。
レナ=ルナリア
リコリス教団の一員。種族は聖女。
男勝りで勝気、常に強気。抜け目がなく何があろうとも余裕な表情を崩さない意志の強さを持つ。
しかし、あまり他人に特別扱いや色目を使われるのを苦手としているため正体を明かさないようにしている。
女神に生み出された聖女で魔を祓う力を持ち純白の聖剣を扱う。
リベアの持つ魔剣の監視兼護衛のためリベアと共にいる。
テオドール・ヴェル・ドンゴラン
リコリス教団の一員。種族は竜人。
ほとんど全滅してしまった失われた種族、竜人の青年。
物静かで穏やかな性格だがその反面、戦略を練るのが得意な野心家。
戦闘の際は竜化し硬い鱗で覆われた鋼色の巨大なドラゴンになる。
他にも幻惑魔法も使用でき他人を操る事ができる。
【セラフィムの騎士団】
ナザエル・ド・ラシャンス
セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。
紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。
騎士団の中でも謎が多い人物である。
クリスティア・ピサン
セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のナンバー2。種族は『エデンの熾天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
騎士団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『アルビテル』を愛用している。
キルエル
イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『エデンの熾天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。
ナデージュダ・ペトラウシュ
イスラフェル聖団に雇われている暗殺者。種族は『ダークエルフ』。
各地で差別され酷い仕打ちを受けておりダークエルフという理由で両親と妹を人間達に殺された過去がある。
1人生き残った彼女は暗殺組織に拾われ以来、暗殺の世界に生きる事になる。
イスラフェル聖団に雇われる形でルシールと対峙するが実際は聖団に団員達を人質に取られおり無理矢理従わされている状態。
多彩な武器に黒魔術や死霊魔術も扱える。
用語集
リコリス教団
セラフィムの騎士団に不信を抱いた者達が集って結成された秘密結社。
ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。
組織の紋章は黒いリコリス。
セラフィムの騎士団
レフレールの守護を宣言した組織。
大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。
治安維持のためレフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。
組織の紋章は羽の生えた少女。
レフレール
フランス西部に位置する架空の孤島。
1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。
文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。
ル・メヴェル教
レフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。
1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。
……オリキャラ提供して頂いたお客様……
そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様
【お知らせ】
2018年夏の大会では皆様の温かい評価により銅賞を受賞しました!
本当にありがとうございました!腕の悪い素人ですがこれからもこのシリアスをよろしくお願いします!
読みにくいページの修正を開始しました。文章はほとんど変わっておりません。
- Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.36 )
- 日時: 2019/03/19 17:19
- 名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)
「どうだった?」
ルナリトナが横を向いて聞いた。
「手前の端に2人、向こうの端に3人、そして右脇に1人に左脇に2人。全員が長剣とクロスボウを持っている。それと見た事もないかっこいい鎧を着てた」
「計8人ですか・・・・・・いささか厄介ですね」
ジャスティンも苦戦を想定したように呟く。
「かっこいい鎧だと?どんな感じの物だった?」
「えっと・・・・・・首から下まで白銀色で、それから胸に翼と十字架のマークがあった」
「なるほど、奴ら『メシアンの衛兵』か」
カティーアが数回頷き目つきを更に鋭くした。
「メシアンの衛兵?」
真後ろでその名を耳にしたミシェルが詳しく知りたそうに首を傾げる。
「メシアンの衛兵は天使共の数多い騎士団の1つだ。翼の生えた十字架を象徴とし主に教会や修道士の守護、反乱を起こした堕天使の鎮圧などを生業としており戦闘でも多彩な実力を発揮した。騎士として加われるのはそこそこ位の高い天使だけ、一員と認められた者は洗礼を受け高性能な武器と例の鎧を与えられるのだ」
詳しい説明にルシールとミシェルはへえ〜と声を上げそれ以外は黙っていた。
「カティーアってさっきの事といい随分天使に詳しいんだね?」
「ああ、19の年齢になるまで天使だけの村に住んでいた。今話した騎士団の徴兵はそこでも行われていたからな」
カティーアはあまり言いたくなさそうな口調で短い理由を話した。
「力説は終わったか?ならさっさと次に進もう」
ルナリトナが待ちきれない様子で仲間を促す。
「そうだね、じゃあまずは手前の2人を排除しよう」
「どうやって?」
「私に任せて下さい」
ジャスティンは質問に答え堂々と前に出る。そして自分以外の団員達にもう少し窓から下がるよう指示を出す。彼女だけがそこに近づくと小鳥のさえずりに近い口笛を吹いた。
「・・・・・・何だ?」
壁の向こうから見張りの声がした。今の口笛に気づいたようで1人こちらへやって来る。
「こっちに来るよ!?」
「しっ!静かに・・・・・・!」
「今のは誰かの口笛か?それとも鳥が・・・・・・」
途端に天使は首を掴まれた。そのまま外へ引きずり出され抵抗する間もなく壁に叩きつけられる。
「がっ・・・・・・!?」
勢いよく背中を圧迫され目と口をカッと開いたまま涙と唾液を垂らした。次の瞬間、苦痛の顔面に拳が深くめり込んだ。頭蓋骨が砕ける音がして天使は絶命、一生を終えた。
「1人排除しました」
「・・・・・・」 「・・・・・・」
瞬く隙もない瞬殺を一部始終見ていたミシェルとルナリトナは身体を凍りつかせる。
「ははっ・・・・・・君が味方でよかったよ・・・・・・」
痩せ我慢の笑いと震えた口ぶりの彼女にジャスティンはニコッと笑みを見せると
「私は肉弾戦も得意なんです。接近戦闘が苦手な弓使いにとっては必要不可欠な武術とも言えますね」
そう淡々と答え殺したばかりの死体を引きずり後ろへ隠す。
「むっ?あやつはどこに行ったのだ?」
中からまたしても見張りの声がした。どうやら仲間が消えた事に怪しさを抱いているらしい。真っ直ぐこちらに近づいてくる。
「また来るよ・・・・・・!?」
ミシェルが小声で言った。
「さては、外に出てさぼっているのか?」
白く長い髪をした衛兵が呆れながらブツブツと窓から顔を出した。途端に天使は何故か黙り込んで気の抜けた表情を浮かべ動かなくなった。目から光が消え人形のように身体を硬直させ、直後に大量の血を吐き出す。よく見ると首からも赤い体液が狭い屋根に流れ落ちていた。ルシールの手が見張りの首に当たっている。彼女は相手が事切れたのを確認すると手首に隠したブレードを抜いた。
「目にも止まらぬ早業だったな。流石は教団の長だ」
カティーアは感心しながら2人目の死体を外へ引きずり出し同じく背後に隠す。
「えへへ、なかなかの腕前でしょ?これは私がもっと幼かった頃に貰った物なんだ」
照れ臭そうにルシールは頭をかく。ブレードを引っ込め手に付着した血を払い落とす。
「これで手前は制圧、残るは6人だね?次の作戦は?」
ルシールは再び教会の中を覗いた。上階では相変わらずメシアンの衛兵による見張りが続けられ像のようにその場を動かない。どうやら向こうは味方が排除された事に気づいていないようだ。すぐに窓から離れ顔を出すと
「天使達は仲間が死んだ事が分かっていない。このまま続けよう」
彼女はルナリトナの要望通り次の作戦を練る。
「両脇の奴らはともかくとして最も厄介なのは向こうに陣取る3人だよ。叫ばれたら一巻の終わり、下に入にいる標的に気づかれちゃう」
「確かにそこが1番の難問だな」
「私には弓がありますが一気に3人も仕留めるのは無理に近いかも知れません」
「ちっ、こちらは剣士がほとんどか・・・・・・飛び道具を持っている者は他にいるわけないだろうな?」
舌打ちをするカティーア。ふと、ルナリトナの持った武器に視線が重なった。
「ルナリトナ、貴様は確か色々な薬品を扱っていたな」
「・・・・・・?そう・・・・・・だけど?」
「どのような類の物を持って来た?」
ルナリトナは腰のポーチに手を入れ他の様々な道具を1つずつ取り出した。それを両手に抱えよく見えるように差し出す。どれもこれも見ただけで何なのかを判断する事は出来ない代物ばかりだった。分からないだろうと思ったので簡単な説明を始める。
- Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.37 )
- 日時: 2019/03/23 08:09
- 名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)
「まずは改良油で作ったお手製の火炎瓶、こっちはマグネシウムを用いた閃光玉。ちなみにこれはピンを外すと噴射口から煙が出る煙幕、そして奇襲作戦のために徹夜で作成した爆薬」
「それだ!」
カティーアは何かを閃いたのかいつもの性格を捨て表情を和ませた。団員達は意味が分からずひとまず彼女に注目を浴びせる。
「『煙幕』は使えるぞ。それで端にいる天使共の動きを止められる」
それを聞いたルシール達は流石と言わんばかりに納得した。確かな良策に反対意見を唱える者は誰もいない。
「そうか!そのすきに脇にいる天使達を片付ければ・・・・・・!」
「その通りだ。今回は珍しく考えが合ったな」
早く戦いたいのかカティーアはレイピアを振り回す。
「凄いよお姉ちゃん!私もいつかお姉ちゃんみたいに賢くなりたい!」
「あまり褒めるなミシェル、照れるのはあまり慣れてないのだ」
嬉しそうなミシェルの前で彼女は赤らめた顔を隠す。他の団員も笑いにつられる。
「カティーアさんのお陰で道が開けそうです。さあ、作戦を実行しましょう」
奇襲部隊は見張りの視界に入らぬよう慎重に建物内へ侵入した。1人、また1人と音を立てず中に入りすぐさま手すりの影に身を隠す。全員が入り込むと
「準備はいい?」
「いつでもオーケーだ」
ルシールは手で後ろの列へ合図を送る。ルナリトナは手に持っていたいくつかのスモークのピンを抜く。それを思いきり投げつけた。スモークは噴射口からしゅーっと音を立てながら全て目標に落下した。次の瞬間、大量の白煙が噴き出し衛兵を含む一帯を全て包み込んだ。煙の中から激しく咳き込む声が聞こえてきた。
「何がおこ・・・・・・ぎゃえっ!?」
異変に気づいた1人の天使の背中を瞬間的に射貫く。矢を放ったばかりの弓を構え倒れる敵を睨むジャスティンがいた。同時にミシェルとカティーアが反対へ回り込む。
「貴様ら、どこから!?」
カティーアは衛兵の斬撃をかわし背後を見ずに敵の首を突く。鋭く尖ったレイピアの先端が長く喉を貫通した。ミシェルも先を駆け抜け自分より背の高い相手に突っ込む。力強く短い剣を振り下ろしたがいとも容易く防がれてしまった。そのまま弾き飛ばされ不覚にも武器を手放し倒れ込んだ。
「ガキがっ!なめるなっ!」
衛兵が殺意に狂い長剣を振り上げる・・・・・・が、それは頭上に落ちてこなかった。剣は全くの見当違いな地面に落下し甲高い金属音を響かせた。
「が・・・・・・ああ・・・・・・!?」
覆った腕をどかし見上げてみると衛兵の様子が可笑しい。気がつくと心臓の真ん中にレイピアが刺さっていた。血を吐き出し体を震わせると座り込む形で息絶える。
「大丈夫かっ!?」
後ろからカティーアが駆け寄って来た。
「カティーアお姉ちゃん・・・・・・!」
「危なかったな、怪我はないか?」
カティーアは手放した剣を拾い手渡すとミシェルを立たせる。彼女は事切れたばかりの遺体からレイピアの抜き取とり付着した血を掃った。
「ぎゃっ!」
「ぐぇっ!?」
煙に中で不意を突かれた衛兵の苦痛の声が聞こえた。直後にドサッと3回倒れる音がした。
「ふう〜、煙の中は息苦しかった。でも上階は制圧したよ」
ちょうど全て見張りを排除したルシールが現れた。ガントレットをはめた右手は敵のどす黒い体液が滴り落ちている。
「本当にやり遂げてしまいましたね。カティーアさんのお陰です」
ジャスティンもルナリトナもすぐに合流した。
「下の連中には気づかれてないか?確かめる事にしよう」
全員、標的のいる下の階を覗き込む。真下には十数人ほどの上階と同じくメシアンの護衛がいる。どうやら見たところこちらの侵入に気づいていない様子だった。像の傍で跪いているのがアルベルナで間違いないだろう。彼女はじっと動かず祈りを続けている。
だが、その後ろにはもう1人誰かが立っていた。まわりとは違い背中に翼はなく天使ではなかった。性別は多分女性、肌は黒く耳が尖っており背は結構なほど高い。青い軽装鎧を着ており無数の武器を服の一部のように身に着けていた。遠くから見下ろしてもただならぬ闘気と殺気が伝わってくる。
「おい、なんか強そうなのがいるぞ?」
ルナリトナが仲間達に言ってすぐに向き直った。
「外にはいませんでしたね・・・・・・標的がここに来る前から教会の中にいたのでしょう」
「あの者は『ダークエルフ』か・・・・・・恐らく奴は騎士団が雇っている傭兵だろう。あれが見掛け倒しじゃなければかなりの手練れだな」
「どうするルシール?それが本当なら勝ち目はないよ。そんな恐い奴がいるなんて聞いてないし作戦を中止した方が・・・・・・」
恐がり出したミシェルを隣にルシールは首を横に振り堂々と
「任務はこのまま続けよう。せっかく皆で力を合わせてここまで来たんだし。私達がやめたらディーノやレナ達に怒られちゃうよ?」
「ミシェル、怖気づいたならここに残り私達の戦いを見物していろ。万が一こちらが敗れたら屋根から逃げればいい」
やる気に溢れるカティーアは早速、次の行動をどうすべきか問いかける。
「次はどんな策を練る?」
「訓練場で決めた通り、ルナリトナが外に爆弾を落とし教会の見張りを外へ誘導する。そして標的の不意を突く。私は仲間の力を信じてる。だからきっと上手くいくよ」
ルシールもやる気満々にすぐさま質問に答える。
「私もルシールさんの意見に賛成です。ここで逃げたら確実に後はありませんしこれまでの努力が全て無駄になるでしょう」
ミシェル以外の団員達は戦意を燃やしていた。不利だと分かっていても恐れを見せず堂々としている。彼らはここからが本当の戦いだと奇襲に重要なルナリトナにここに残るよう指示した。彼女はよしきた!と承諾し爆薬を取り出すと早速準備に取り掛かる。残りの者は下階に続く螺旋階段の方へ行く。
- Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.38 )
- 日時: 2019/03/23 08:12
- 名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)
「本当にここでお留守番してるつもりなのかい?」
ぽつんと立ち尽くすミシェルにルナリトナは言った。異様な色の薬品が入った瓶の詰め合わせに金属線を繋げる。
「・・・・・・だって、恐いから・・・・・・私はルシール達みたいに強くないしさっきだって足手まといになった・・・・・・」
不安を隠せないミシェルは仲間に聞き返した。
「ルナリトナは恐くないの・・・・・・!?あんな強そうな相手が・・・・・・!?」
「・・・・・・」
ルナリトナはすぐには答えなかった。何も言わず爆薬の準備を済ませ最後の点検を終えた。立ち上がり彼女に振り替えると
「勿論、恐いよ。君と同じく号泣したいくらいにね」
ルナリトナは泣く直前のミシェルに寄り添いそっと頭上に手を置いた。
「でもね、命懸けで戦う仲間を捨てて自分だけ助かるのはもっと嫌だ。そんな情けない生き方をするくらいならあっさりと殺された方がいい」
「・・・・・・」
「ミシェル、君は何のために教団に加わったんだい?」
ミシェルは鼻を啜り涙を拭った。言いにくそうに重い口をに開く。
「仲間のため・・・・・・正義のため・・・・・・」
その精一杯の一言にルナリトナは"ちゃんと分かってるじゃないか"と微笑む。更に言葉を付け加えた。
「君は小さくても教団のナンバー2だ。僕達の大切な仲間でこれからもずっと必要になる。だから勇気を持って一緒に戦おう。皆が君を頼りにしているはずだ」
「ぐすっ・・・・・・分かった・・・・・・!」
少女は剣を強く握りしめ頷いた。ルナリトナはミシェルを短く抱きしめ
「役目を果たしたらすぐに助けに行くから。誰も死なせはしない!」
と背中を押し階段から姿が見えなくなるまで小さな仲間を見送った。煙は晴れ上階はさっきっよりも静寂に包まれた。床に広がるまだ生温い血の臭いが漂う。
「僕の方こそしっかりしなくちゃ・・・・・・じゃあ、始めるとするか・・・・・・」
大量に転がる死体の傍でルナリトナは緊張気味に呟いた。
一方、止まない歓声で賑やかな外では民衆に紛れる団員達が今か今かと待機していた。落ち着きを失い武者震いする者、じっと開戦の瞬間を待つ者、奇襲部隊の安否を心配する者。それぞれが違う思いを抱きながら戦いの幕開けを待ちわびていた。
「奇襲はまだか?あまり時間が経つとやる気が消え失せてしまうぞ」
「大丈夫、ルシール達はきっと成し遂げてくれるさ。気楽にいこう」
ソフィは戦いたい一心で腰に収めた双剣のグリップを握りしめる。リクは冷静に腕を組みながら教会の上を見上げていた。
「ルナリトナ、現れないね?返り討ちにされて死んじゃったのかな?」
他の位置でリベアが退屈そうに愚痴を零す。
「いや、嬢ちゃん達は絶対に生きてる。賭けてもいい」
「そうだよ。ルシールは強いしカティーアだっているから簡単にはやられないはず」
ディーノもレナも同じ気持ちだった。
「あ!」
その時、リベアが何かに気づき教会の上を指差した。2人もそれに反応し彼の指の先を見上げる。すると教会の窓が開き中からルナリトナの姿が見えた。彼女は大きな爆弾を抱えながら地上をこっそり覗いている。今から持っている物を落とすつもりのようだ。
「間違いない!あれはルナリトナだ!」
「やり遂げてくれたか!」
ルシール達の成功を確信しリクとソフィが嬉しそうに叫んだ。
「リベア、レナ!武器の準備をして配置につけ!ちびっ子があれを落としたらすぐに奇襲を仕掛けるぞ!」
ディーノも隣にいた2人を促し自身も役目を果たすため人ごみを掻き分けて言った。
「とうとう始まるんだな・・・・・・!やばい、武者震いが止まらない・・・・・・!」
「リベア、死なないでね?」
団員達全員が民衆の中から抜け出し隠れて戦いに備える。影からルナリトナのタイミングを見計らい戦いの火蓋が切って落とされる瞬間を待つ。
「さあ、宴の始まりだ!」
ルナリトナが高い位置から建物の入り口に向けて爆薬を投げ捨てた。それは垂直に落下し見張りに立っていた2人の天使の間にドスンと打ち付けられる。次の瞬間、中身の薬品に衝撃が伝わり大きな爆発を引き起こした。眩い光を一瞬だけ放ち爆音、炎、黒煙を広範囲に広げた。衝撃波の輪が教会の扉を粉砕、反対にいた民衆達が後ろに飛ぶように一気に倒れ込む。
その場にいた天使達は粉々になり消し飛んだ。空に舞い上がった手足や肉、血が雨のように降り注ぐ。爆発の近くにいた者は原形を留めずただの肉片と化した。失った部位の傷口を押さえ悲痛に唸る天使も数人いた。民衆達は前に広がる光景を見て何が起きたのか理解できず爆発の跡から視線を離さなかった。だがすぐに状況を飲み込むと
「爆発だっ!教会が爆発したぞっ!!」
誰かが叫んだ。それが伝言ゲームのように全域に伝わる。歓声に満ちていた建物付近は恐怖と混乱の地獄と化し人々はその場から逃げ出そうと前の列の人間を押し倒し踏みつける。皆、自分の命を落としたくないと必死に人を掻き分け我先にと遠ざかる。
「敵襲だ!守りを固めろ!誰1人教会に侵入させるなっ!!」
敵の衛兵隊長が左右を交互に向き号令を呼びかける。爆風の被害を免れた天使達がすぐさま建物の入り口に集まり彼を取り囲んだ。全員が武器を構え守護の陣形を組むと前方を警戒する。数分も経たないうちに人の群れは消え去っていく。あれだけ多かった街はやがてすっかりと静かになった。誰もいない無人の一帯で天使達が点々と立ち尽くしていた。
- Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.39 )
- 日時: 2019/03/23 08:15
- 名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)
「くそっ!敵はどこから来る・・・・・・!?」
衛兵隊長が誰の姿もないあちこちを鋭い視線で睨む。不意を突かれた天使達は突然の襲撃に怯えていた。次はどんな攻撃を受けるか分からない戦況に震えを隠せなかった。
「オーバーフレアッ!!」
「ダークレインッ!!」
突如、誰かがどこからともなく攻撃魔法の呪文を大声で唱える。天使達がその叫びのした方へ一斉に視線を向けたが既に手遅れだった。灼熱の炎の竜と黒い無数の矢が天使達を襲い飲み込む。
「ぎゃああああ!!」
「ぐああっ!」
「ぎゃえっ!!」
生きた黒こげの塊が炎の中から這い出してきた。全身を深く焼かれ美しかった容姿は最早どこにも見当たらない。踊り狂うように動き回り最後は倒れて動かなくなった。背中に生えた翼の羽がちりちりと灰と化す。闇色の矢の雨は心臓や腹部、目や脳天に突き刺さり貫通した。たちまち蜂の巣にされ傷穴から噴き出した血が地面に広がり深紅のアートを作り出した。標的が死んでも尚、容赦なく死体に撃ち込まれる。
天使達はまたしても不意を突かれ抵抗する間もなく大半が死に絶える。衛兵隊長も無残に殺され醜く変わり果てた肉体を晒した。生き残った者は僅か、そのほとんどが致命傷で戦えなくなった負傷者達だった。
「今だ!一気に斬りかかれっ!」
ソフィとリクを先頭に隠れていた団員達がぞろぞろと飛び出した。彼らは殺意の眼差しを向け劣勢の軍団に突撃する。
「教団に勝利をっ!!」
「レフレールの自由のためにっ!」
教会の前は瞬く間に戦場となった。互いの勢力による交戦が幕を開け殺し合いが始まった。剣や槍が打ち合う甲高い金属音が鳴り響く。
「負傷兵や逃げる敵には構うな!歯向かう者とのみ戦え!」
勢いのいい斬撃をソフィが双剣で受け止める。短い唾競り合いの後、相手の剣を弾き落として右手の剣を腹部に突き刺した。刃は背中を貫通し白い戦服に血がじわじわと広がる。うずくまったところをもう片方の剣で首を刺し止めを刺す。
「見事だソフィ!」
近くで見ていたリクが楽しそうに言った。彼もまた自分の身長近くある大剣を振り回して天使達を蹴散らした。
「リベア!先頭に2人!」
「はいはい、言われなくても分かっているよ」
リベアはおもむろに返事をして鞘に納めていた剣を抜いた。
「堕天使アプスキュリテが封印されし漆黒の魔剣の刃を目にした時がお前達の最期だ」
天使達は捨て身の覚悟で同時に斬りかかる。リベアは最初の攻撃を避け次も簡単にかわす。敵が三度目を振り下ろそうした時、先手を打たれ剣は横にずらされた。大きな隙を曝け出してしまい左の肩に刃がめり込む。魔剣はそのまま肉を裂き心臓を真っ二つに切り裂く。返した刃は片方の天使の顔を切り裂き惨い傷を作った。顔面を押さえ悲痛の声を上げながら敵が背を向けても容赦せず取り押さえそのまま喉を切り裂く。
「こんな小規模な戦、私には物足りないな!」
楽しそうにレナも相棒に負けずと敵の剣を受け止める。容易に打ち負かし一瞬の隙に聖剣を大振り、翼を見事に斬り落とす。止めに剣を腹部に貫通させ思いきり投げ飛ばした。
「奇襲作戦は成功だ!これでルシール達も戦いやすくなるだろう!・・・・・・おっと!」
ディーノとクロムは大勢に囲まれていた。八方から剣先を身体の手前に向けられ逃げ道はない。それでも彼らは互いに背をつけ合い余裕の笑みをこぼしていた。
「ここが片付いたら急ぎ姉さん達のもとへ急ぎましょう!」
「そうするべきだろうな。だが、まずはここにいる鳩共を全員地獄に送ってからだ!」
2人は武器に魔力を込め呪文を叫び再び魔法を解き放つ。光と闇が混ざり合い異質で強力な衝撃波が生み出された。それは瞬く間に広がり包囲網を吹き飛ばす。
教会の中も騒然としていた。優秀な兵士達でも予想すらしていなかった出来事に冷静さを失う。そんな不況にも関わらずアルベルナは動こうともせずじっと跪いていた。その場から離れず聖母の石像の前で祈りの姿勢を保ち続ける。すぐ傍でダークエルフの護衛が仁王立ちしていた。恐ろしいくらい動揺の素振りを見せず冷静だった。
「一体、誰が攻めてきたんだ!?この国の兵士達か!?」
落ち着きを失った天使達の話声が聞こえる。
「いや、レフレール政府は我ら騎士団の併合に同意したはずだ!そんなのはあり得ない!」
別の天使達が
「おい!外の状況はどうなってるんだ!?」
「分からん!戦火が激しくどちらが優勢なのか判断できん!」
「我々の命に代えてでもアルベルナ様をお守りするんだ!」
するとダークエルフが目を大きく開き自分より背の低い衛兵達を見下ろしながら
「お前達全員は外で戦っている味方の救援へ向かえ」
と堂々とした声で命令した。
「し、しかし・・・・・・!」
「心配するな。私1人でアルベルナを十分に護衛できる。お前達の助けなど不要だ」
「・・・・・・分かりました」
言われた通り衛兵達は急ぎ外の救援へ出向き走り去っていく。教会の広間はアルベルナとダークエルフだけが取り残された。ルシール達はその様子を螺旋階段の影から窺っていた。
「どうやらメシアンの衛兵は全員いなくなったな」
カティーアが広間を確認する。
「絶好調だね?勝利の女神のご加護がついてるんだよきっと」
ルシールも後ろに着く仲間達の方を振り返り嬉しそうに言った。
「ここまであっさり上手くいくと逆に恐ろしいな。裏をかかれてるなんて事、なければいいが・・・・・・」
「このまま行きましょう。標的は目の前、またとないチャンスです」
ジャスティンが弓に矢を乗せ皆を促す。
- Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.40 )
- 日時: 2019/03/23 08:18
- 名前: シリアス (ID: FWNZhYRN)
そこへミシェルが降りてやって来た。短い剣をしっかりと握り締め必死に涙を抑えている。ルシール達の視線が少しだけ彼女に向けられる。そして全員が優しい笑みを浮かべた。
「ミシェルもやっとご到着だね」
「結局逃げなかったのか?・・・・・・ふっ、お前なら来ると思っていた」
カティーアは尊敬の目で妹同然の仲間を見下ろす。頬に残った涙を拭い髪を撫で下ろした。
「ところでミシェルさん?ルナリトナさんは?」
ジャスティンが問いかける。
「爆弾を落としたからもうすぐ来ると思うよ?」
「そっか、じゃあ行こうか?」
ルシールは鞘から剣のグリップに手を伸ばし銀の刃を抜いた。それに合わせるように皆が戦う準備を整える。
「いよいよ本番だね。皆、準備は出来た?」
「私はいつでも行けます。外で戦う皆さんのためにも負けられません」
「ミシェル、私の前から出るな。分かったな?」
4人は螺旋階段の入り口から出て広間へ足を踏み入れ敵に姿をさらした。油断を捨て武器を構えながらゆっくりと標的に近づていく。教団の戦士達は横一列に並ぶと追い込む形で立ち塞がる。
「・・・・・・」
ダークエルフは沈黙したまま相手の動きをただ窺っていた。まるで最初からルシール達の存在を認識していたかのような余裕に満ちている。姿勢はそのままで攻撃態勢に移る気配はまだない。だが、見つめられるだけで精神に圧力がかかる。
「アルベルナ・クディニー、レフレール解放のため、お前の身柄を拘束する」
ルシールが声を鋭くし刃先を彼女の背に向ける。
「・・・・・・やっと、来ましたね。待ちわびていましたよ。あなた達が来ることは最初から分かっていました」
アルベルナは礼儀正しい口調で静かに言葉を発した。目蓋を開けそびえ立つ石像をゆっくりと見上げる。そして、組んでいた両手をほどき立ち上がった。
「私を拘束するだなんて野蛮、慈悲の欠片もありませんね?」
身体の向きを変えこれから剣を交える者達を睨みつけた。宝石のように美しい緑の瞳に目の前の敵が映る。だが、彼女は怒らず泣いていた。目から出た涙がそっと頬を伝っていく。
「あなた達は罪のない同胞達の命を奪った。彼らの苦しみの声が聞こえないのですか?」
「たわけた言い草だな。散々、他者を迫害しておきながら自分達だけは許されると思っているのか?」
カティーアは強気な態度で二歩、前を行き
「貴様ら天使共は罪なき多くの種族を虐殺した。魔女、エルフ、ドワーフ、獣人、無残に粛清された者達は数えきれん。それに飽き足らず今度は人間の欺き利用し支配を目論んでいる。その行為に加担している貴様は最早、大天使とは呼べん。ただの堕天使、れっきとした悪魔だ」
と形相を鋭くし怒りの台詞を吐いた。しかし、虐殺者呼ばわりされてもアルベルナは特にこれといった反応を示さなかった。
「・・・・・・言いたい事はそれだけですか?」
彼女は侮辱を差し置いて剣の鍔を指で押し上げた。悲し気な顔色と視線を変えぬままグリップを握り鞘からゆっくりと抜いた。幾度もの戦果を上げた聖剣の長い銀刃が姿を現す。磨かれた鏡のように光を反射しそれは美しく輝いた。ルシール達も相手の動きに合わせ全員が武器を構えた。両者共、すぐには斬りかかろうとはせず睨み合いながら互いの様子を窺う。隙を見せれば終わり、広く静かな空間に緊張感が漂う。
「待て、アルベルナ」
ふとダークエルフが天使の名を呼び前に立ち塞がった。護衛は背後を振り返える事なく
「最初に私に戦わせろ。お前を守る義務があるからな」
「これは私の戦いです。同胞を殺した仇を討つのは大天使である私の役目」
アルベルナは護衛の意見に納得しなかった。おもむろに返事を返し前へ出ようとしたがダークエルフは手を差し向け止めさせる。
「先頭が主君、最後に護衛が戦に出向くと言うのは可笑しな話だろう?そのような情けない行為、暗殺者の長としての私の誇りが泣くと言うものだ。心配はいらん、こ奴らは少しは戦えるようだが所詮は自警団気取りの見習いに過ぎん。ほとんどが子供、私の敵ではない」
ダークエルフは話の後半を嫌み口調に変えルシール達を見下す。
「ほう、見習いか・・・・・・このカティーア・ヴァイン=トレート、随分となめられたものだな?面白い、腕と脚を斬り離され両目を奪われてもその挑発を再び吐き捨てられるかどうか試してみるとしよう」
カティーアは今すぐにでも戦いたい一心だった。抑えきれない好戦の眼差し、斬り合いを楽しみとした笑った口、歯ぎしりを見せる。血に濡れたレイピアを器用に振り回し巧みな剣の腕を知らしめた。
「私を殺したいなら殺せばいい。だが、私に挑んだ者達は大勢いたが全て返り討ちにされた。大の男が女々しく命乞いをした時は笑いを堪えるのに必死だったぞ?」
嘲笑った笑みでダークエルフは丸腰に手を広げ余裕さをアピールする。
「あなたは天使じゃないよね?ダークエルフなんでしょ?」
今度はルシールが聞いた。
「よく分かったな?ちびっ子にしてはなかなか賢い。感心した・・・・・・がそれがどうかしたのか?」
からかわれたルシールは質問を続ける。
「あなたはエルフなのにどうして自分達を迫害した天使達に従っているの?」
ダークエルフは鼻で笑い真面目に問いかけた少女を見下ろし
「そんな事、聞いてどうする?冥土の土産にするつもりか?・・・・・・だがお前には中々の嬉しさを感じたぞ?褒美に少しだけ、私の事を教えてやろう」
ダークエルフは騎士団につく理由を語り始めた。
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