ダーク・ファンタジー小説

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【不定期更新……】カラミティ・ハーツ 1 心の魔物
日時: 2017/09/17 14:49
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

 目次(随時更新)
(章分けをし、一部形式変更)

第一章 始まりの戻し旅 >>0>>3-7

Ep1 心の魔物 >>0
Ep2 大召喚師の遺した少女 >>3
Ep3 天使と悪魔 >>4
Ep4 古城に立つ影 >>5
Ep5 醜いままで、悪魔のままで >>6
Ep6 悔恨の白い羽根 >>7


第二章 訣別の果てに >>8-11>>14

Ep7 ひとりのみちゆき >>8
Ep8 戦いの傷跡 >>9
Ep9 フェロウズ・リリース >>10
Ep10 英雄がいなくても…… >>11
Ep11 取り戻した絆 >>14


第三章 リュクシオン=モンスター >>15-17

Ep12 迫る再会の時 >>15
Ep13 なカナいデほしいから >>16
Ep14 天魔物語 >>17


第四章 王族の使命 >>18-25

Ep15 覚醒せよ、銀色の「無」>>18 
Ep16 亡国の王女 >>19
Ep17 正義は変わる、人それぞれ >>20
Ep18 ひとつの不安 >>21
Ep19 照らせ「満月」皓々と >>22
Ep20 常闇の忌み子 >>23 (※長いです)
Ep21 信仰災厄 >>24
Ep22 明るいお別れ >>25


第五章 花の都 >>26-36

Ep23 際限なき狂気 >>26 (※長いです)
Ep24 赤と青の救い主 >>27
Ep25 極北の天使たち >>28
Ep26 ハーフエンジェル >>29
Ep27 存在しない町 >>30
Ep28 善意と掟と思惑と >>31
Ep29 剣を取るのは守るため >>32 (※長めです)
Ep30 青藍の悪夢 >>33 (※非常に長いし重いです)
Ep31 極北の地に、天使よ眠れ >>34 (※長めで重いです)
Ep32 黄金(きん)の光の空の下 >>35
Ep33 忘れえぬ想い >>36


第六章 動乱のローヴァンディア >>37-49

Ep34 予想外の大捕り物 >>37
Ep35 緋色の逃亡者 >>38
Ep36 帝国の魔の手 >>39
Ep37 絡み合う思惑 >>40
Ep38 再会は暗い家で >>41
Ep39 悪辣な罠に絡む意図 >>42
Ep40 鏡写しの赤と青 >>43
Ep41 進むべき道 >>44
Ep42 想い宿すは純黒の >>45
Ep43 それぞれの戦い >>47
Ep44 魔物使いのゲーム >>48
Ep45 作戦完了 >>49


第七章 心の夜 >>50-55

Ep46 反戦と戦乱 >>50
Ep47 強制徴兵令 >>51
Ep48 二人が抜けても >>52
Ep49 嵐の予感 >>53
Ep50 Calamity Hearts >>54 (※非常に長いし重いです)
Ep51 明けの見えぬ夜 >>55


第八章 時戻しのオ=クロック >>56-

Ep52 巻き戻しの秘儀 >>56
Ep53 好きだから >>57


 はじめまして、藍蓮と申します。ファンタジーしか書けない症候群です。よろしくお願いします。
 あるゲームのキャラクター紹介から想を得た、設定はそこそこ作ったとある物語の、プロローグを掲載しました。続く予定です。
 それではでは。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ——人は、心を闇に食われたら、魔物になる——。

「魔導士部隊、位置に着け!」
 高らかに響くラッパの音。リュクシオンは隣を見た。
「ついに来ましたね、この時が」
「ついに来たな、総力戦が」
 彼の隣に立っているのは、この国の王。王は難しい顔をして、リュクシオンに言った。
「リューク、いけるな?」
「はい、あと少しで準備ができます。しばしお待ち下さい」
「頼りにしてる」

 この国、ウィンチェバル王国は、小さい割には資源が豊富だ。ゆえに、これまで多くの国々から狙われ、侵略されてきた。それをすべて退けられたのは、ひとえにこの国の魔導士部隊のおかげである。
 それなりの侵略ならこれまで何度かあったが、今回のは規模が違う。
 まだ肌寒い季節だ。リュクシオンはマフラーに顔をうずめながらも、考える。
 (よりによって、ローヴァンディア、あの大帝国だと? 桁が違う。だからこそ、僕は……!)
 願った。「力を」と。状況すべてを打破する力をと。何もできない自分が嫌で。国が侵略されていくのを、見ているだけしかできなくて。その思いは日増しに強くなり、内側から彼を苛み続けた。
 そして、その願いは、叶った。理由はわからない。ただ、ある時から急に、召喚術が使えるようになった。
 リュクシオンは神を信じない。信じても無駄。助けは来ない。そんな世界に生きてきたから。
 しかし、彼に起きた奇跡は。何もできなかった彼が、急に「力」を手に入れた理由は。神の御業というよりほかになかった。

 そして今、彼はここにいる。その力を見初められ、王の側近として、ここにいる。力がなければ、決して昇りえぬ地位に。望んでこそいなかったが、決して悪くは無い地位に。
 ——だから、利用させてもらうよ。
 この状況を打破できる、唯一無二の召喚術。国を守るために過去の文献をあさり、そして見つけた、とある天使の召喚呪文。
 それの発動には、長い長い準備が要った。リュクシオンは寝る間も惜しんで準備し続け、ついに、術の完成が迫る。
 ——国を守りたい。思いはただ、それだけなんだ。
 そして——。
 
 太陽が、月に食われた。

 日食だ。しかも、皆既日食だ。昼の雪原はあっという間に闇に閉ざされ、凍える寒さが人々を打つ。
「——今だ!」
 リュクシオンは声を上げた。突き出した手に、集まる魔力。
 皆の視線が、彼に集中する。
「現れよ——日食の熾天使、ヴヴェルテューレ!」
 神の域にさえ達したとされる究極の天使が今、リュクシオンの「仕掛け」に導かれ、彼の敵を滅ぼすため、外へと飛び出す——!
 が。

 ——崩壊は、一瞬だった。

「あれ……うそだろ……」
 白い、白い光が視界を埋め尽くした。天使はこの世に顕現した。そこまでは構わない。
 だとしても。
 ——この、目の前に広がる無数の死体を。一体どう説明すればいい?
 見知った顔。あれは魔道師のアミーだ。あっちは友人のルーク。
 ——さっきまで隣にいた、リュクシオンの王様。
 みんなみんな、死んでいた。敵味方の区別なく。リュクシオン以外、皆殺しだった。死んだその目には恐怖の色があった。
 ——国が、滅んだ。守ろうと、あれほど力を尽くした国が。リュクシオンの王国が。守りたかった全てが。
 リュクシオンの、積み重ねてきたすべてが。
 存在意義が。
「……あ……嗚呼……ぁぁぁぁ嗚呼ああ嗚呼あ!」
 地にくずおれ、獣のように咆哮する。
 ——天使は、破壊神だった。
 確かに相手も全滅したが、彼が望んだのはこんなことじゃない。こんなことなんかじゃ、ない。
 平和を。愛する国に平和を。そう、心から思っていた。だからこそ、力を望んだ。愛するものを、国を、守る力を。
——コンナコトジャナカッタ。
 絶望に染まる召喚師の頬を、涙が伝った。赤い、紅い、赫い。血の色をした、絶望の涙が。
「ア……アア……ァァァアアアアアアアアアア!」
 壊れた機械のような声とともに、彼の世界は崩壊した。
「ァ……ァぁ……ァぁァぁァぁァぁァぁァ…………」
 その身体が、闇色の光とともに、変化していく。
「ァ……ぁ……」
 背はこぶのように盛り上がり、体中から毛を生やしたそれは。もはや人間ではなかった。
「……ァ……」
 幽鬼のようにのっそりと動き出したそれは、魔物そのものだった。
 その瞳に、意思は無い。理性もない。何もない。
 そのうつろな姿は、大召喚師のなれの果て……。

 ——人は、心を闇に食われたら、魔物になる——。

 王も貴族も召喚師も。なんびとたりとも例外は無い。
 ひとたび心が闇に落ちれば、一瞬にして、魔の手は伸びる。
 そして魔物となった者は、己の死以外ではその状態を解除できない。
 これまでもあった。そんな悲劇が。魔物となった大切な人を。自ら手に掛ける人たちが。
 悲劇でしかない。ただ悲劇でしかない、この世界の絶対法則。

 ——人は、心を闇に食われたら、魔物になる——。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ……いきなり大変なことになっていますが、まだ続きます。次の舞台は移って、この国の外になります。魔物となったRも今後、深く関わっていきます。よろしくお願いします! 〈続く〉

カラミティ・ハーツ 1 心の魔物 Ep40 鏡写しの赤と青 ( No.43 )
日時: 2017/08/29 02:23
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

 主人公が消えたので、必然的にエルヴァイン視点で書くことになります。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「……話は理解したわ。でも……」

 グラエキアは、不安そうに、自分を縛る鎖を見た。
「私だって自己防衛くらいはできるわよ。でも、あなたやフェロンみたいな『戦士の勘』みたいなのはないから、不意打ちへの対応は正直言って微妙ね……。不安を感じるのは、おかしいかしら?」
 いつも堂々としていたグラエキアだけれど。今の彼女は少し、泣き出しそうだった。不安に怯えた、年相応の女の子みたいだった。
 エルヴァインは、そんな彼女の白い手に触れて、言った。
「大丈夫だ、すぐ帰る」
 と、言いたいところなんだが……と、彼は言いよどんだ。
「……こうなった以上、僕もリクシア救出の一味に加わろうと思う。しかし、君を一人にはしない。僕じゃないけど……それに、うまく交渉できるかわからないけど……。『反戦部隊』から何人か、そちらの護衛に回るよう頼んでみる」

「私だって戦いたい!」

 珍しく、グラエキアがわがままを言った。
「ヴィーカでは思う存分戦えたわ。でも……今の私ではただの足手まとい。そんなのは嫌よ。……この鎖さえなければ……」

「外すなよ、グライア」

 エルヴァインが、彼女に対しては珍しく、鋭い声で言った。
「外してその魔物を野に解き放つくらいなら、いっそのこと、殺してしまえ」
「…………わかってる」
「一体どうした? グライアらしくないぞ」
「……無力な自分が、嫌いなだけよ」
 呟いて。その口元に、いつもの笑みを刷いた。
 強気で勝ち気で。奥に鋭い知性の宿る顔。
 その顔の奥に、沢山の感情を隠して。

「行ってらっしゃい、ルヴァイン」

 彼を、彼の名の由来となった、新月の神の名で呼んだ。
 それに、笑って。

「行ってくる、シャライン」

 グラエキアを、彼女の長い名に隠された、満月の神の名で呼んだ。

 この悪辣な罠を。
 絶対に破壊してみせる。


  ◆


 記憶力には自信がある。
 だって、あのグラエキアの長すぎる名前を、覚えられたくらいだから。

 そして今、彼は。あの家の前にいる。
 ノックをしようと扉へ向かった。

 コン……コンコン! コンコン! コン。

 独特なノック方法で、彼は扉をたたいた。
 この複雑なのックは招かれざる客対策なのだろう。この通りにノックして入らない人間は、殺される可能性だってありそうだ。自分ならそうする。

「合言葉は?」
「エルヴァイン・ウィンチェバル」

 ここはあえて変えて言った。
 しばらく返答に間があったが、やがて。
「……入れ」
 返答があった。
 失礼する、と声をかけて。彼は家へと入る。

「で? 何の用だ。そちらの用事はすんだのか?」
 少し不機嫌そうに、アルヴァトが問うた。
 ああ、と彼は答える。
「そこで問題が発生したんだ。そっち絡みのことだよ」
 アルヴァトの目が、つと細くなる。
「……貴様、僕たちの話をもらしたりはしていないだろうな」
「そう思われたのは心外だな?」
「で、用件は」
「リクシア……あの白い少女がさらわれた」
「……それで?」
「『アルヴァト』を指定した場所に明後日の明朝までに連れてこなければ、彼女は殺されるようだ」
「だから?」

 エルヴァインは、頭を下げた。

「協力してほしい。あんたに死ねと言っているわけではな……」
「断る」

 彼はあっさりと否定した。

「自分のせいであんたたちが巻き込まれたのは認める。だがな、僕の命は。見ず知らずの誰かにあげられるほど、安くはないんだ」

 エルヴァインは、自分の愚かさに気づいた。
 確かに彼は鏡写しかもしれないが、自分と何もかもが完全に同じということは、あり得ない。彼は赤の他人だ。不思議な運命のめぐりあわせでただ偶然出会っただけの、赤の他人なのだ。……エルヴァインとまったく同じ考え方なんて、するはずがない。

 やはり、自分も単騎で乗り込むしかないのか。先に行った、フェロンのように。
 しかし、それでも浮かぶ笑み。


「……上等だ、逆境がどうした。そんなもの……乗り越えればいいだけの話だろう」


 地獄も逆境も苦難も。これまで数多、乗り越えてきたのだから。
 今回も、これまでと同じようにすればいだけで。

「邪魔したな」

 覚悟を決めて、立ち去ろうとした。
 その背中に。





「……なら、おれが行くッスよ?」





 声を掛ける、人物。
 暗闇の中、浮かびあがったのは。

 赤髪青目。




 ——もう一人の、アルヴァトだった——。





「いや、違うって。おれアルヴァトじゃないッス」

 彼はあわててそう笑った。
 アルヴァトが、ものすごい形相で彼を睨んだ。
「……勝手に出てくるな貴様」
「だってリーダー、無責任っつーか、人でなしっつーか」
「何だと?」
 助けてあげりゃーいーじゃん、と彼は陽気に笑った。
「あんたならできるだろーって。あんたの作戦なら、誰も死なずにできるだろーって、おれ、信じてたんスよ。でも、あんたがあまりに冷淡なんで、我慢できなくって出てきちゃったんス」
 陽気なもう一人のアルヴァトは、呆然としたまま固まっているエルヴァインに、握手を求めるかのようにその手を差し出した。
「おれ、ダルキアス。ダルクって呼んで欲しいッス。アルヴァトとは他人の空似なんだけど、外見そっくりだから時々影武者やってんの。だから、『行く』って言ったわけッスよ」
 エルヴァインはその手を握り、なるほどとうなずいた。
 しかし。外見は確かにそっくりだが、中身までも騙せるものかな?

 その疑問を先取りするように。

「ウォッホン! 僕はアルヴァト、『指導者』であ〜る!」

 ……ナニモノカの真似をしはじめた。

 馬鹿か? こいつ馬鹿か? これのどこがアルヴァトなんだ?
 彼と鏡写しであることを半ば自覚しているエルヴァインにとって、この演技はあんまりだと思った。ある意味エルヴァインを馬鹿にしている。

 その様を見て、アルヴァトは呆れたように溜め息をついた。

「……わかった、協力してやる。ただし、勘違いはするな。僕はあんたのために彼女を助けるわけじゃない。半分は自分のためもあるし……。僕が行かないと言い出したら、この馬鹿、本気でそのまま行っちゃいそうだしな」
「百も承知だ」
 エルヴァインは、強くうなずいた。
「ところで頼みたいことがある」
「……今度は何?」
「あの石の家に、訳あって親友の少女を残している。……悪いが、近接戦闘が得意な奴を、彼女の護衛として置いてもらいたいが、構わないか?」
「……身の程知らずって知ってるか?」
「状況が状況だろう?」
「僕は人材派遣屋じゃないぜ」
「臨機応変な対応を望むね」
「……仕方ない、鏡。付き合ってやる。……いっそ、地獄の果てまで、な」
 苦笑いして、肩をすくめて。
「リューノス!」
 闇に向かって、声をかけた。すると。
「……話、理解した。僕が行けばいいの……?」
 真っ白な髪と真っ白な瞳を持つ、腰に茶色のポーチを提げた、華奢な印象の少年が現れた。
 それを見て。
「……近接戦闘要員と、僕は言ったが?」
 エルヴァインが、呆れたような声を上げた。
 その言葉に、リューノスと呼ばれた少年は、感情の読めない顔で答えた。
「僕……戦える。僕……珍しい、爪使いなんだ」
 言って。彼はポーチから、一組の鉄の爪を取り出した。
 ……若干不安要素はあるが。アルヴァトが言うなら大丈夫なのだろう。彼は信頼できる。
「リュー、行ってきてくれ。場所はわかるな? ……では」
 彼がそのまま家を出るのを確認すると、アルヴァトは不敵に笑った。





「作戦会議といこうじゃないか」





  ◆





 バルチェスター、王宮——。



「——せ、せせんせんせん宣戦布告ゥ!?」



「うん、落ち着こうか宰相(笑顔)」

 宣戦布告に揺れる城内。バルチェスター王エルーフェンは、大騒ぎを始めた宰相をなだめていた。
「いやいやいやいや!? 落ち着ける訳がないでしょう!? だってあああのローヴァンディアですぞ!? あの帝国が攻めてきたのですぞ!?」
「いいから落ち着こうか(二回目)」

「うるさすぎて困るんですけどもー」

 その横で。王と瓜二つの見た目の女が、呆れたようにつぶやいた。
 王の双子の妹である、エルーシェンである。
「正直そんなのどーでも良くなーい? 兄様、こんな宰相なんてほっといて」
「うん、そうしようかエルーシェン(笑顔)」

 ……常識人の宰相は、苦労人でもあった。

「……へ、陛下!? 姫殿下!? ちょ、ちょっと、ちょっとお待ちくだされぇぇぇえええええええええええええ!」
「逃げようか、エルーシェン」
「宰相面倒くさいから嫌いですわー」
 追いかける宰相。逃げる双子王族。
 王宮は、戦時中でも平和だった。


 しかし、追いかけるだけの宰相は知らない。


(さてさてついに動き出したねぇ。鬼が出るか蛇が出るか……。こりゃぁ、大仕事だ)
(不穏なうわさが飛び交っているみたいですの。至急真実を確認いたしますわ)





 ……うつけうつけとさんざん罵られたこの双子は。





 ——決して、ただの馬鹿ではあり得なかったことを。





(王たるもの!)
(常に民のことを考え、流される涙を一滴でも減らす! でしたわね)
(動向を見て、それから)
(反撃開始ですわ。黙って見ていて?)





 双子王族も、動き出す。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 どーも、藍蓮です。
 
 エルヴァインとアルヴァトの掛け合い書くの楽しかった……!
 鏡写しの赤と青。そっくりな二人が話すと、台詞ばっかりの応酬が続くわ……。
 『赤と青』って、「極北の天使たち」の双子天使とかぶっているような気がしますけれど……。偶然です、気にしないでください。

 なんか場面展開が微妙なので、下手に次回予告はしませんけれども。
 ……次の話に、請うご期待!

カラミティ・ハーツ 1 心の魔物 Ep41 進むべき道 ( No.44 )
日時: 2017/08/29 22:41
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

 場面が錯綜します。ご注意を。
 また、内容が上手く浮かばなかったため、この話は下手くそです。
 ……ご了承ください。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

  ◆

「はあっ、はあっ!」


 ——フェロンは、走っていた。



 ……そして、かつてないほどに怒っていた。



(ローヴァンディア……あの帝国がッ!)


 卑怯な手段で、幼馴染の少女を奪われた。
 その方法を知った時、これまで常に彼を律していた枷(かせ)が、一気に弾け飛んだ。
(『アルヴァト』? 知るかそんなの! とにかく僕は——!)
 救わなければならない。幼馴染のあの少女を。
(アリアンロッドは動けないみたいだしな……)
 手紙に書かれていた場所を。馬を借りて、必死で目指して。

 そんな彼は、知らない。知るはずがない。





 その先に、さらに罠があった、なんて、ね。





  ◆





「で? 作戦会議と大口叩いたんだ、何か策はあるのか?」

 エルヴァインが、暗い瞳でアルヴァトを睨んだ。いや? と彼は首を振る。
「いきなり策なんてあるわけがない。……まずは、座れ」
 彼は、そこらに置いてある椅子の一つを指した。
 エルヴァインは、仏頂面でそこに座る。
「状況を整理しようか」
 言って、アルヴァトは暗い部屋に、大きなランプをともした。

 そうして初めて、浮かびあがる部屋の全容。

 そこは、居間のようだった。大きくて広い。幾つもの小机があり、中央には大きな机がある。壁には作りつけらしい本棚があり、そこから本がごまんとあふれている。
 そして。
 居間のような大きな部屋には。沢山の椅子が所狭しと並んでいて、その多くに人が腰かけていた。そのほとんどが少年少女だった。
「紹介する。我らが『反戦部隊』のメンバーだ」
 アルヴァトがそちらの方を見ると。皆、それぞれの方法で一礼した。
「生憎と一人一人紹介している暇はない。とりあえず……手紙には何と?」
 アルヴァトが問うた。こうなることを予期していたから、エルヴァインは、そのまま手紙を彼に突き出した。
 そこには。

【石の家の住民へ
 お嬢ちゃんは捕えた。明後日の明朝、処刑する。返してもらいたくば『アルヴァト』を差し出せ。ヴィーカの廃墟でそちらを待つ。
                                  誘拐犯】
 
 とあった。

 エルヴァインが怒るのは、アルヴァトを潰すためだけに、赤の他人まで巻き込まれたこと。そしてその相手が、リクシアだったこと。

 それを見るなり、アルヴァトは言った。
「そう言えば、人数指定はないな?」
「確かにないな……。だが、ぞろぞろ引き連れていっても、警戒されるだけだと思うぞ?」
「わかっている。僕が連れていくのは二人だけ……。一人はあんただ、エルヴァイン。もう一人は……」
 アルヴァトは、力強く微笑んだ。

「お前だ、アリオン」

「え? 選んでくれるわけ?」
「相棒だろう?」
 というわけで、と彼は話を締めくくった。
「作戦会議とは呼べないような代物だったが、メンバーはこれで行きたいところ」
 あっさり決まったそれに、エルヴァインは反論する。
「そんな少人数でいいのか?」
「精鋭ぞろいだ。あんたも頼る」
「単騎で来いとか言われたら?」
「自分で事態を切り抜ける。あんたほどではないかもしれないが……。剣はそれなりにできるからな」
「このメンバーで、例の場所へ?」
「不満か?」
「いいや?」
 エルヴァインは、暗く笑った。
「十分だ」


  ◆


「……あなたが、グラエキア……?」
「そうよ? ということは、あなたが『反戦部隊』の子?」

 石の家では。グラエキアが、新しい客人を迎えていた。

「僕は……リューノス。爪使い……」
「よろしくね、リューノス」
「よろしく……」

 リューノスは手に鎖を巻きつけたグラエキアと、それにつながる鎖で編まれた檻の中にいる魔物とを不思議そうに見比べたが、余計な詮索はしなかった。

「とりあえず、護衛」
「任せるわね」

 グラエキアは、天を仰いだ。
(早くこの事態が終わればいいのに……)

 しかし、そう簡単には。終わるはずがなくて。





 グゥゥウァァァアォォォオオオオオオオオオオオオ!





 平和だったこの町に。
 魔物の咆哮がとどろいた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 どーも、藍蓮です。

 今回はグラエキア編にしようと思ったのに、下手に作戦会議を入れてしまったせいで、ただいま駄文量産中です。すみません。

 罠があるとは知らず、リクシアのためにひた走る半貌の剣士。
 進むべき道の決まった、鏡写しの赤と青。
 ほっとしたのもつかの間、新たな脅威に立ち向かう漆黒の鎖。

 それぞれの物語はどう進むのか?
 ……次の話をご期待下さい。

カラミティ・ハーツ 1 心の魔物 Ep42 想い宿すは純黒の ( No.45 )
日時: 2017/08/30 15:20
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)


※ 閲覧数400記念の短編は、話が浮かばないのでとりあえずは保留にします。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 グゥゥウァァァアォォォオオオオオオオオオオオオ!



 轟いた咆哮。
 一つではない。
 幾つも、幾つも。
 魔物の、咆哮。

 ——戦争が、はじまった!?

 はっとなり、グラエキアは辺りを見回した。
「リューノス!」
「わかってる。でも、他の人は、守れないから」
 言って、リューノスはポーチから一組の爪を取り出し、それぞれの手にはめた。

 石の家。その扉が。ミシッと軋んだ。

「来る!」
「言われなくたって!」
 叫び、リューノスは飛び出した。
 轟音を上げて扉がはじけ飛び、木製のそれは木屑になる。
 現れたのは、優に人の身長の倍は越えそうな魔物。
 それが、白い少年に跳びかかった。

「……ッ!」

 グラエキアは唇を噛む。
 本当は今すぐ援護したいところだが、今の戦場は狭すぎて。
 彼女が黒の鎖を撃っても。それは魔物でなく、リューノスに当たる可能性の方が高い。

 それでなくても、町のあちこちで上がる悲鳴。

 戦争だ、侵略だ! そんな声が各地でして。
 グラエキアなら、まだ被害を食い止められるかもしれないのに。
 つながった鎖。リュクシオン=モンスターと、自分を縛る鎖が。
 彼女の自由を阻害する。

 目の端で。戦う少年が、魔物の腕の人薙ぎで、大きく吹っ飛ばされたのを見た。助けるために駆け寄ろうとするが、鎖の長さが微妙に足りない。吹っ飛ばされた少年は、それでもその爪を構えて敵を迎え撃つ態勢。しかしこのままでは勝ち目がない。

 彼は決して。弱いわけではなかった。
 しかし。フェロンやエルヴァインには、まだまだ劣る。

 瞬間、うつろだった少年の瞳に鋭い光が宿り。身につけた爪が身体と一体化した——かのように見えたが。





(嫌よ嫌ッ! 無力なまんまの自分なんて! 誰も助けられないままなんて! 私は違った! 私はこんなに——こんなに弱くなんて、なかったんだッッッ!!!!!)







 グラエキアの方が、早かった。







「打ち砕け!」


 駆け寄って。伸ばされた鎖が。


 魔物の身体を、がんじがらめに縛りあげた。


 そこまで、行けなかったはずなのに。


 振り返れば。檻と自分とをつなぐ鎖が、切れていた。


「あ…………」


 呟いたが。リュクシオン=モンスターに、動きはなくて。


 見ると。漆黒の鎖が。










 ——グラエキアの操作なしで、勝手にうごめいて、リュクシオン=モンスターを拘束していたのだった——。









 ——つかんだ。


 ひそかな確信を持って、彼女は心の中で快哉(かいさい)を上げる。
 これまで自分を縛っていた鎖。それの、完全な制御法を。

「……グラエキア……?」


 リューノスの、困惑した声に。


 いつもの不敵な笑みを浮かべ、答えた。


「……戦えるわ」


 先ほどまでリューノスを襲っていた魔物を。何の躊躇もなく絞め殺して。


「私、戦える! だから、行きましょ! 他の魔物を駆除するのよ!」


 うん、と少年はうなずいて、立ち上がる。
 その足が少し、ふらついた。
「大丈夫? 怪我したの?」
「……なんてことない」
 その足で、しっかりと立って。
 縛めから解放されたグラエキアに、首をかしげて問うた。

「……救世主気取りの、始まり?」

 その言葉に、グラエキアは思わず吹き出した。
 言い得て妙だ、救世主気取りとは。攫われたあの子の専売特許じゃなかったのか?
 笑って、外へ歩き出しながらも。
 グラエキアは答えた。










「私たちで、この町(せかい)を救うのよ」











 鎖は鎖で勝手に動く。
 切り離したって、問題ない。
 自分の想いが。自分の力が。
 仮令この場を離れても。
 あの魔物を。リュクシオン=モンスターを。
 縛ってくれるから。

 ——自由に動ける!


  ◆


「行くぞ、あの廃墟に」

 アルヴァトの号令によって、リクシア救出隊三人は、午後の町を行く。
 この町で一晩待ってもよかったが、救出は早い方がいいというエルヴァインの案を採用したのだ。
 メンバーは、赤のアルヴァト、橙のアリオン、


 ——そして、青のエルヴァイン。


 アルヴァトとアリオンは、巻き込んでしまったことへの責任を果たすため。
 エルヴァインは、恩人に恩を返すため。
 それぞれの理由は違ったが。目指す目的は同じだった。
 町で馬を借り、そのまま駆ける。


 ——この町が魔物の集団に襲われるのは。それからわずか、四半刻後——。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 う〜ん、本当はもう少し長引くはずだったのですが。


 藍蓮です。今回はグラエキア編をお送りします。
 
 目覚めた新たなる力。動き出す救出部隊。
 ヴィーカの廃墟で、何が起こる?

 次回の話に請うご期待!

Re: カラミティ・ハーツ 1 心の魔物 ( No.46 )
日時: 2017/08/31 03:03
名前: アンクルデス (ID: jtgLtval)

お疲れ様です^^

グラエキアさんの鎖って本人から切り離しても操作できるんですか?

色々と便利な能力ですね!

オリキャラ投稿のほうもありがとうございます!!

カラミティ・ハーツ 1 心の魔物 Ep43 それぞれの戦い ( No.47 )
日時: 2017/08/31 16:11
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

 >>46
 いえいえ。そういうの、楽しいので!
 返信はリク・依頼掲示板の方に載せましたよー。
 素晴らしい企画をありがとうございます!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「こんなものね」

 グラエキアの鎖は、魔物を見つけるたびに魔物をがんじがらめにとらえていく。それにリューノスがとどめを刺していく。とどめを刺された魔物は人間になるが……。今更そんなこと、気にしていられない。

 そうやって、魔物を倒すうち。
 リューノスを呼ぶ声があった。

「リュー!」

 そこにいたのは赤い髪の——アルヴァト? いや、違う。

「……ダルク」
 
 グラエキアはまだ知らないが、彼はアルヴァトの影武者、ダルキアスだった。
「この人だれ?」
「ダルキアス。アルヴァトの影武者……」
 グラエキアの質問に、相変わらずなリューノスが答えた。

「へぇ、あんたがグラエキア!」

 ダルキアスと紹介された、赤髪の少年は無邪気に笑った。

「よろしくッス!」
「ええ」

 とは言ったものの。いつしかのヴィーカ戦ほどではないが、数が多い。軽く十は下らない量だ。本当なら、自分はこの魔物たちすべて倒し終わらなければ次へ行ってはならないのだろうが……。
 先へ行っただろうエルヴァインや、勝手に飛び出したフェロンや、さらわれたリクシアのことが頭から離れない。

 ——あの人たちに出会う前なら、こんなことにはならなかったのに!

 そんな動揺を知ってか知らずか。ダルキアスが陽気に笑った。
「気になるんなら、おれたち置いて先へ行けば?」
「でも……」
「おれはただの脳筋で馬鹿で役立たずだから、アルのところ行っても邪魔だから、アルを案じても行かないッスけど。あんたなら頭よさそうだし、鎖? それもめっちゃ便利じゃん? だからあんたが行けばいいッスよ。あんたが鎖で縛ってくれたおかげで、後は簡単ッス!」

 行け行けゴーゴーと、その背中を押した。
 駄目押しをするかのように、リューノスがつぶやいた。

「……仲間一人救えないで、救世主なんてあり得ない」

 その言葉に、強く笑った。


「じゃあ、後は任せたわ。……行ってくる」


 鎖の先端で、背後を狙った魔物の胸を、貫きながらも。
 石の家に残したリュクシオン=モンスターを若干案じながらも。
 エルヴァインを——大切な仲間を、ただ想って。

 グラエキアは、駆け出した。


  ◆


 ——落ちた。


 そう気づいた時には、もうすでに遅くて。
 彼の身体は大きく放り出され、そのまま大地に叩きつけられた。
「うぐぅッ!」
 思わずうめき、上を見た。
 かなり大きな落とし穴だ。

「……嵌められた、か」

 あらかじめ。自分がここに来ることが、予想されていたようだ。
 しかも、それだけではなくて。

「何……だと……」

 その周りには、何十体もの魔物がいて。
 でも、ちっとも動かなくって。

 上から慇懃な声が聞こえた。


「ごきげんよう、緑の戦士」


「誰だ貴様はッ!」
 フェロンは、逆光で見えない穴の上を、睨んだ。
 声は大げさに笑った。
「おやおや、いきなりそんなに敵愾心むき出しにしなくても。しっかり料理して差し上げますよ」
 その声は、聞き覚えがあった。
 あの日。あの逃亡者を救った日。赤髪の彼を追いかけていた男の声だ。
「……あの時の」
「覚えてらっしゃいましたか。それはそれは嬉しい限り」
「……リクシアを返せ」
「ああ、あの少女のことですか? 返しますよ、『アルヴァト』さえ来れば、ね」
「だからそいつは誰だッ!」

「わかる前に、あなたは死にます」

 行って、男は。口笛を吹いた。
 すると、動かなくなった魔物たちが、動き出す。


 ——フェロンを引き裂くために。


「貴様ァッ!」
 
 叫び、腰から片手剣を引き抜いた。
 男は笑った。
「さあ、我らが研究の集大成。魔物の軍隊、モンストル=アーミーの実力を、とくとその身で味わいなさい。うまくいけば、皇帝陛下にお知らせして、たっぷり報酬でもいただきましょうか、ね」
 言って、彼は哄笑しながらも、その場を後にした。

 魔物たちの真紅の瞳が、半貌のフェロンを睨みつける。
 フェロンはかつての記憶を思い起こし、己の身体から内なる力を呼び寄せた。





「我こそは! 殺人剣のF!」





 リクシアと再開する前。そう呼ばれ、狂ったように戦いを求めていた自分。
 思い出したくもない、半貌になった理由。
 しかし、あの日の自分は、強かったから。
 生き残るために、生き延びるために!

 絶望的な戦いの中に、自ら飛び込んだ。


  ◆


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 どーも、藍蓮です。

 最近は2000文字に届かない話が多くて、色々と悩んでおります。
 今回も例にもよって短編となってしまいましたが、皆さん、どうでしたか?
 次もしくは次の次くらいに、決戦になりそうな予感がします。
 
 立ち上がったグラエキア、罠に嵌められたフェロン。
 物語の行方は——?

 次の話に、請うご期待!


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