ダーク・ファンタジー小説
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- Change the World 【カキコ版・旧】
- 日時: 2019/03/27 13:31
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
削除の理由は【大切なお知らせ】を参照。
(大会入賞は削除対象外のようです。こちらはカキコ版として残しておきます)
2017年の小説大会で銅賞を受賞しました。
・見直しをサボっているため、最初と今で地名や内容が異なる場合があります。
発見次第、直していく予定です。*ただいま修整中
・小説家になろう でも連載開始しました。
これは、人と幻獣の絆の物語。
悪逆非道な帝国により離ればなれになってしまった少年少女たち。
だが、長い時がたち再会する。
──そんな時だった。
あの帝国が再び動き出したのだった。
少年少女たちはそれぞれの思いを持ち旅立つ。
帝国を止める事を
これ以上悲しむ人を増やさない事を目的にしながら……
そして知ることとなる。宿敵の目的、幻獣の覚悟を。
以上、あらすじです。
ーお知らせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始しました
連載が少し遅れ気味です。
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メインキャラクター
レオン・ハイレゾ
主人公。17歳。武器は剣。魔法の属性は無。乗り物に酔いやすい。
小動物に好かれやすい。髪色は黒い。姿は簡単にいうと、少女漫画で出てくるクールなイケメン。白いTシャツに黒いライダースジャケットを羽織り、チャックは前回。暗めの色のジーンズをはいている。料理好き。
ミント・グリーンティー
みんなのお姉さん的存在。17歳。武器は鞭。魔法の属性は風。
髪色は薄緑。ポニーテールでまとめている。デニムシャツワンピースの中に黒色のロゴが入った白いTシャツを着て、ミニスカぐらいの丈のデニムをはいている。
オリガ・ハイウィンド
頭にうさ耳に縛りをしたバンダナをつけている。16歳。武器は槍。
魔法の属性は氷。レオンに片想い。髪色は空色(水色)で肩までのショートカット。カーキ色のミリタリーシャツの下に白いレースのシャツ。それにショートデニムをはいている。(踝辺りまでのスパッツも)フーの世話役(一応このメンバーの中では飼い主となっている)
フレイ・ウォーリア
緑の国の現国王。フレイヤとは双子の兄。17歳。武器は己の拳。魔法の属性は火。
やる時はやる男。ボケる時はボケる。金髪で前髪を上にあげているためソフトリーゼント風。動きやすさを求めた服装で、ゆとりのある白いハーフパンツ(膝丈)に白いタンクトップ。その上に目に優しいくらいの紅色の半袖のジャケット(ロゴ付き)を着ている。
フレイヤ・ウォーリア
なぜか森の中で暮らしていた。フレイの双子の妹。17歳。武器は銃。魔法の属性は土。
兄に突っ込みを入れたり(蹴る、殴るなど)など止め役。金髪で長い髪を肩辺りでツインテールにしている。(おさげに入るのかな?)白いワンピースに腰辺りにベルトをしている。ベルトについているのは武器の銃。黒いスパッツをはいている。
シド・メロ
元帝国ラーミナ特殊部隊の一員。追放されて雪の国へ。19歳。一応医者。武器は双剣。魔法の属性は雷。
髪色は銀髪でストレート。服装は脛まである白衣着て、中には薄緑のシャツにネクタイをしている。ズボンは茶色。白衣を脱げば学生のような格好。飛空艇の基礎プログラムや部品にとても詳しい。
ジュリィ・ティーク
さすらいのギャンブラー(一応踊り子)。妹がいる。19歳。魔法の属性は水。
武器はタロットカード。髪色は茶色で長く、毛先は鋭い。服装は白い肩出しガウチョ風のシャツに赤茶色っぽい膝下まであるスカートのような物をはいている。(長い布を履く物にした感じのやつ)くるりと回るとスカートのような物が綺麗に舞い広がる。
こんな感じで頑張ります!
初投稿のため、少し物足りないと思います。
目次
一気に読みたい方>>1-
第1章 良くも悪くも再会 >>2-15 (途中コメントもあり)←ありがとうです!
1話>>2 2話>>3 3話>>6 3.5話>>7 4話>>8 4.5話>>9 5話>>15
第2章 皇帝の野望を知れ>>16-25
6話>>16 7話>>17 7.5話>>19 8話>>20 9話>>21 9.5話>>22 10話>>23 >>25
第3章 真実>>26-38
11話>>26 12話>>27 13話>>28 14話>>29 15話>>31 16話>>32 17話>>33 18話>>36
19話>>37 20話>>38
第4章 それぞれの思い>>39-94
20.5話>>39 21話>>41 22話>>42 23話>>43 24話>>44-45 25話>>46 26話>>47 27話>>48
28話>>49 >>51 29話>>55 29.5話>>56 30話>>58 31話>>65 32話>>66-69 (とても長いです…)
33話>>71 >>74 34話>>75-76 35話>>77 36話>>78 37話>>79 38話>>82 39話>>83
40話>>84 41話>>85 42話>>86-87 43話>>88-89 44話>>92 45話>>93 46話>>94
第5章 恩返し(仮題名)
47話>>95
第4章から、章の区切り方を変えました。(今までは『再会編』など1つの編で1章。今は3つぐらいの編が合わさって1章。)
もしかしたら、フィルタリング機能でこの小説が書けなくなるかもしれません。
ですが、かけるだで書きます。
コメントはバシバシしていいですよ! (してくれた方が嬉しいです…)
返信を必ずしますのでお気軽にどうぞ
☆この小説の歴史☆
2017.8.26 開始
8.28 番外編を別スレで開始(URLで行けます)
8.28 閲覧数100突破。
8.29 第2章開幕。
8.31 キャラ情報更新
9.11 閲覧数150突破。
9.24 第3章開幕。
9.25 閲覧数200突破。
10.16 閲覧数250突破。
11.1 リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始。
11.2 閲覧数が気がついたら300突破
11.3 もう閲覧数350突破。更新できなくていつもすみません…
11.7 閲覧数400突破。
11. 16閲覧数450突破。
12.7閲覧数550突破。
12.18閲覧数600突破。今更だけど第4章開幕(書き忘れてた)
12.27閲覧数650突破。
12.30閲覧数700突破。
12.31キャラクター投票開始
1. 1閲覧数750突破! 今年もよろしくお願いします
1.13閲覧数800突破!
1.22閲覧数900突破
2. 5閲覧数1000突破!!
2. 6 2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞
5.22第5章開幕
6. 5閲覧数2000突破!物語も折り返し地点へ
8.3小説家になろうで連載開始
- Re: Chage the world ( No.74 )
- 日時: 2018/03/04 19:01
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
33.5話 情けない
「そろそろレヴェリーに行くね。ミントの分も頑張る」
昔、よく遊んでいたジャングルの中の海の見える崖にオリガはいた。
思い出の場所… 今はミントの墓標があるこの場所をあとにしようとしたその時だった。
「…誰」
誰かの気配がする。
しかし、周りを見ても誰もいない。ジャングルの木にでも隠れているのだろうか。
念のため槍を取り出し構える。
すると何かの音が後ろから聞こえた。
…後ろだ!
氷球を音のした方へ放つ。
誰もいないはずなのに、氷球がバリアにぶつかり消えた。
そのバリアが消えると同時に現れたのは…
「パナソ… 」
「久しぶりだね」
皇帝の側近にして、帝国を影から操る者パナソだった。
「自我を取り戻してしまうとは… 残念だよ」
「あんたの思い通りには、私はならないよ」
最後にあった頃のパナソとは雰囲気が違かった。
皇帝がいないから? それとも1対1だから?
なんだか、嫌な予感がする。
「私に何の用?」
「君に刻まれた刻印を完全なものにする。それが用だ」
パナソの周りに10本ほどのナイフが現れる。
私の刻印に用があるならさすがに殺されはしないだろう。
刻印のおかげで力は強くなり、辺りのモンスターは楽に倒せるようになった。
でも、また捕まってしまったら刻印にきっと私は蝕まれ、みんなに迷惑をかけてしまう。
どうにかここをやり通さなければ。
飛んでくるナイフを弾き飛ばしなら攻撃する。
「あんたは結局何がしたいの」
「一族の使命を果たしたいだけさ。だから、帝国を利用しているんだ」
「使命って何なの」
「『神を超える者を作る』そう聞けば大体わかるだろう?」
昔話のような何かに、そのような使命を背負った一族がいたような気がする。
確かその一族の名は『ホウフハの一族』。実在しているのか不明だったはずだ。
よくは思い出せないが、世界に関わることであるには変わらない。
もっと、情報を集めなければ…
「キャッ!」
幅の広いジャングルの木に打ち付けられる。衝撃のせいで足が動かない。
…また私はダメだった。1人ではダメだった。
迷惑をかけたくない。その一心でここまで生きていたが、私はいつも助けられてばっかりだ。
情けない。こんなの… 情けなさすぎる。
刻印が紅みを増す。前回よりも効果があるらしい。
まわりがだんだん暗くなっていき、見えていた景色に向かって手を伸ばす。
しかし後ろから伸びてきた赤黒い帯のような物が私に巻きつき、暗い空間へと更に引きずりこむ。
目に溜まっていた涙が流れると同時に、私の意識がとぶ。
- Re: Chage the world ( No.75 )
- 日時: 2018/03/06 21:33
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
34話 俺の思い
「オリガ!」
ミントの墓標がある崖に俺は来た。
そこにいたのは、木に寄りかかるように寝たオリガだった。
「何があったんだ…?」
近寄ってみる。
脈はあるが、反応がない。体も冷え切っている。ただ、生きているだけ。
… やはり、そうだったか。
少しだけ見える腹にある刻印が赤黒く気付かないほどにひかる。
原因は予想通りだった。
…あの時、刻印を完全に封じ込め消し去っていたら。
オリガはきっとこんな風に苦しまなかっただろう。
また、できなかった。
後悔しか胸には残っていなかった。
そんな時、足元を突く何かに気がつく。
「クゥ〜」
「フー…」
「ワゥ、ワン、ワン! ワゥ」
まだ、全てが終わったわけではない。
勝手に諦めていた俺に、鳴き声と動きでフーが伝えてくれているような気がする。
小動物に励まされるなんて、なんてダサいのだろう。こんなものだから、守りたいものも守れないのだろう。
「フー、ありがとな」
「ワゥ」
気が晴れないままオリガを背負い、アジトへと向かう。
背中から、かすかなあたたかみが伝わってくる。向かう途中に目を覚まして、ごめんとか言ってきそうだと考えさせられる。そしたら俺はどう言い返そう。なんでもいいか。
なんでもいい… そう思えるのも笑って包んでくれるオリガのおかげなのだろう。
だからもう一度話す事ができるなら、隠したりとか誤魔化したりとかしないで話そう。素直に話そう。たくさんあるんだ、伝えたい事。
フレイとかミントに俺は変わったとよく言われた意味が、よくわかったような気がする。
今まで他人の心配なんか、どうでも良いと思っていた。なぜなら大丈夫だと思え、信じられたから。でもそれは自分に言い聞かせていたものだった。一度考えると止まらなくなる… それが俺だから、自分の心、気持ちに嘘をついてそう考えていた。
だけど大切な人を失いかける事で気づけた。それだと失い続けるだけだって事を。
オリガを救いたい。たくさんの『ありがとう』を伝えたいから。あの笑顔を取り戻したいから。
俺にとって大切な人だから。
アジトが前方に見えてきた。飛空挺のエンジンが音を立て起動しているのがわかる。
世界の中心とも言われるレヴェリーに行けば、この刻印だってきっとどうにかなる。
わずかな望みをかけ、みんなの待つ飛空挺へ向かった。
- Re: Chage the world ( No.76 )
- 日時: 2018/03/11 22:36
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
34.5話 焦らずに
「やっぱりそうだったんだね」
ユピテル号のコックピット。
操縦席に座りコーヒーを飲んでいるシドに、オリガの刻印について話していた。
シドはあの監獄から脱出した時には、刻印の存在には気づいていたらしい。
さすが医者。体調だけではなく変化にも気づけてしまうとは。
「あの刻印は、いくつかの他の種類の刻印が合わさってできてるっぽい。専門じゃないから対処法はわからないけど、どんな効果があるのかぐらいはわかったよ。」
シドはコーヒーの入っていたマグカップを横にある備え付けのミニテーブルに置くと、刻印について話してくれた。
「一つ目は能力向上。これは特に害はないから問題ないはず。二つ目は自我を封じ込める効果があるやつ。これのせいでオリガは眠ってしまっているんだと思う。三つ目は魔封剣のおかげで消えてきていたみたいだけど、回復し始めてる、刻印をつけた者… パナソに操つられる効果があるやつだね。前、監獄で戦ったって言ってたよね。その原因はきっとこれ。まぁ他にもあるみたいだけど、今一番効いているのは二つ目に言った自我を封じ込めるやつだか…」
「オリガを助けるには、俺はどうしたらいいんだ?」
ついつい話をそらしてしまった。
だがそれは、今一番俺が聞きたいことだった。
刻印の責任などは俺にある。その他にもいろいろある。
でも、今の自分の心にあるのはオリガを助けたいという気持ち。
シドはスマホを取り出すと、誰かの連絡先を探しているようだった。
「レヴェリーに刻印について詳しい知り合いがいたはずなんだ。その人ならきっと知ってるはず。だから、そんなに焦らなくても大丈夫」
「そ、そうか… すまなかった」
とりあえず待つ。レヴェリーに着くまで待つ。それが今の俺にできること。
何もできていないように感じてしまって、少し悔しいような気がする。
そんな思いをしていたのは、焦っていたからだろう。
少し落ち着こう。焦っていたら、気づけたはずのことにも気づけないのだから。
- Re: Chage the world ( No.77 )
- 日時: 2018/03/14 22:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
35話 魔法的状態異常専門
前方に、今まで見てきた中で一番大きな城が見えてきた。
城の周りには様々な大きさの家や店が立ち並び、飛空艇発着場や駅のホームまである。
その地に住む者ではないからわからないが、地方に住む者から見た感じだと不便なことが一つもないように感じる。
発着場にユピテル号を停め降りた時、どこからか声がした。
「シドさ〜ん、やっほ〜」
声のする方へ視線を移すとコッチコッチと手招きをしている女性が、飛空艇発着場の地上入り口の奥に立っている民家の前に立っていた。
「ん…? あれって…」
「どうした?」
フレイが目を見開いて女性の方を見る。
そんなに見ても距離があるため近くに行かないと無意味だとジュリィが話そうとした時。
フレイが小声で
「やべ… 何言われても覚悟しとかなきゃ」
と言ったのが聞こえた。
フレイがこんな風に言う時は、何かを忘れてしまったり怒られることをしてしまったりした時だけだ。
…ということはあの女性と知り合いということになる。
「シドさん、お久しぶりです。あと、フレイ! たまには連絡ぐらいちょうだいって言ったよね?」
「ご、ごめんな。最近忙しかったからよ…」
「ま、それは置いといて。初めまして、刻印などの魔法的状態異常専門のルミルです。みなさんと私、同い年なんですってね。フレイやシドさんからいろいろ聞いていますので、とりあえず、中にどうぞ」
栗色の長い髪に黒のスーツ。そして、魔法的状態異常を専門とする珍しい医者。俺達と同い年には思えないぐらいしっかりしていて大人びいている。
背負っていたオリガをベッドに寝かせ、こうなってしまった経緯をルミルに話す。
ルミルは1冊のノートを取り出し、刻印を見ながら話したこと、状態などを書き込んでいく。
「なるほどね。」
「どういう状態なの?」
「刻印は外からじゃ消せないみたい。そして、刻印の力にこの子が負けちゃうともう前のようには戻れない。
結構、危ない状態だね。これ作り出したやつ、かなり凄腕だよ…」
外からは消せない。ならばどうすればいいのだろうか。
「どうやったら消せるんだ?」
「刻印に宿ってる主を中で倒す。それしかないかな」
「中って… どこ?」
「この子の精神世界… っていうのかな。急に言うのもあれなんだけど、今から1人、この子の精神世界へ行ってくれないかな? 意識だけ精神世界に飛ばすんだけど」
「そんなら、こいつがやってくれるぜ」
「ちょ、おい!」
フレイが俺の背中を押す。
それは、俺に任せるということに等しかった。
周りを見ると、皆任せたという顔をしていた。
「君が行くの?」
いったん深呼吸をし、ルミルの質問に俺は答えた。
「ああ。俺が行く」
と。
- Re: Chage the world ( No.78 )
- 日時: 2018/03/18 02:37
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
36話 精神世界での救出
「わかったわ。じゃあ、これから言うことをよ〜く聞いてね」
そして言われたのは2つ。
1つ目は精神世界にいられる時間は限られていること。他者の精神世界に意識を飛ばすという事は、様々なリスクを負うということになる。またルミルの魔力を使うためでもある。ルミルによると、「魔力が無くなっちゃったらどうなるかわからない」という。強制的にこちらの世界へ戻るか、精神世界に閉じ込められるかのどちらかであるらしいが、もし閉じ込められた場合は、こちらの世界との繋がりが消えてしまうため一生戻れないらしい。
2つ目は、刻印に宿っている主を倒す事。これをしなければ助けても刻印が消えないため意味がないらしい。ある意味一番重要だ。
「…というところかしらね。私もあんまりやった事ないから必ず成功するとは言えないけれど、準備はいいかな?」
「とっくにできている。よろしく頼む」
「フレイとは違って頼もしいね。じゃあ、始めるわ」
「違ってってなんだよ…」と隣でフレイがつぶやく。ガンガン突っ走って行く、あまり考えないタイプなのだからそう言われてもしょうがないと思う。
さて、行くか。
目を開くと、先程の場所とは違う場所にいた。
あたりは真夜中の外のように暗く、見る限り何もない。
…ここがオリガの精神世界。
元からこのようなのか、刻印によってこうなってしまっているのかはわからない。
俺の精神世界もこのようなものなのだろうか。
「聞こえる?」
「聞こえてるぞ」
ルミルの声がどこからか聞こえた。
「よかった〜 そっちに声聞こえるみたいね。何かこっちから連絡があるときは、今みたいに話しかけるから驚かないでね」
「了解」
遠くの方で、何かの重い音が鳴ったのが聞こえた。
それが刻印に宿っている主なのだろう。とりあえず、音のなった方向へ行く事にした。
真っ暗な空間の向こうに、重い音の正体… 刻印に宿っている主らしきモンスターが見えてきた。
そのモンスターの全長が見えるあたりまで来た。距離は数十メートルあるだろう。
そこで俺は剣を構えさらに近寄る。
「テキヲカクニン… コレヨリ… セントウタイケイ二… プログラムヲヘンコウスル…」
赤く光る目に、赤黒い石レンガの体。額には『EMETH』という文字があるモンスター… ゴーレムが腕を振り下ろし襲ってきた。
振り下ろされた腕に潰されてしまったら終わりだろうと思いつつ剣から水龍をゴーレムに放つ。しかしゴーレムの動きは止まるどころか遅くもならず、威力を増すばかりだった。
ん…? あれは…
ゴーレムの大きな体の隙間から見える背後に大きな球体が浮いているのが見えた。大きな球体の周りを、時々囲むようにゴーレムの体と同じ色の稲妻発生しているのがわかる。その球体の中の中心に、仰向けになっている人影が見えた。
オリガ… なのか?
稲妻のせいではっきりとは見えない。だがここはオリガの精神世界。俺を除いてここに入れる人間はオリガしかいないはずだ。
「助けてやるからな、待ってろよ」
しかし、ゴーレムの体は石レンガ。オマケに何かの魔法もかかっているせいか、剣による物理攻撃は聞いていないようだった。
このままじゃ、刃がダメになってしまう…
ただでさえ傷を負っているこの剣。そこから刃が駄目になってしまっては使い物にならない。
何か、方法はないのか…
そうだ、外の世界の奴らに聞けば何か変わるだろう。
「ルミル、聞こえるか?」
「はい! なんでしょう?」
「主はゴーレムだ! 額には『EMETH』って光って書いてあって、赤黒い石レンガの体だから俺の剣が効かない。何か方法はないか?」
「ちょっと待ってくださいね」
ゴーレムの攻撃を避けつつルミルの返答を待つ。一瞬がいつもよりも長く感じる。
「額には『EMETH』って書いてあるって言いました?」
「言ったが、何か関係はあるのか?」
「どこかで聞いた事があるんです。ゴーレムの額の文字について。確か、『EMETH』は『真理』と言う意味なのですが、最初のEを無くすと『METH』となって、意味が『彼は死んだ』となるとゴーレムは泥に戻るという事だったはずです」
「わかった、試してみる」
振り下ろされた腕から肩の方へ登り、ジャンプして最初のEへ剣を振り下ろす。するとEの光が消え、『METH』となった。
「ジメツプログラム… キョウセイハツドウ… コレニヨリ… ゼン… キ… ノウヲ… テ… イシス…ル…」
ゴーレムは足の方から泥となっていき、全てが泥となるとその泥も消えた。
残るは球体のみ。球体は未だに稲妻を発生している。
球体を割るしかないな。
剣に魔力を込め、聖なる光を宿らせる技… 『剣舞技 聖臨』
そして、ジャンプし剣を球体に振り下ろす。球体は割れ、中にいた人影… オリガは目をつぶったまま仰向けでその場にゆっくりと落ちていく。そこへ俺は走っていき、オリガを受け止めた。
これって、お姫様抱っこ状態じゃないか…
フレイに見られていないのが幸いだ。しかし、外の世界からこちらを見ていたとすれば…
まぁ、ルミルの言動からすると、こちらの世界の様子は見えていないようだったが。
オリガをその場に寝かし、様子を見る。
このようにしたのは今回で2度目だ。
チラリと見える腹にはもう、刻印は無くなっていた。
急にあたりが光に包まれ、その眩しさに目を閉じた。
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