ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Change the World 【カキコ版・旧】
日時: 2019/03/27 13:31
名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)

削除の理由は【大切なお知らせ】を参照。
(大会入賞は削除対象外のようです。こちらはカキコ版として残しておきます)

2017年の小説大会で銅賞を受賞しました。
・見直しをサボっているため、最初と今で地名や内容が異なる場合があります。
発見次第、直していく予定です。*ただいま修整中
・小説家になろう でも連載開始しました。


これは、人と幻獣の絆の物語。


悪逆非道な帝国により離ればなれになってしまった少年少女たち。
だが、長い時がたち再会する。

──そんな時だった。

あの帝国が再び動き出したのだった。

少年少女たちはそれぞれの思いを持ち旅立つ。
帝国を止める事を
これ以上悲しむ人を増やさない事を目的にしながら……

そして知ることとなる。宿敵の目的、幻獣の覚悟を。

以上、あらすじです。

ーお知らせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始しました
連載が少し遅れ気味です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

メインキャラクター

レオン・ハイレゾ
主人公。17歳。武器は剣。魔法の属性は無。乗り物に酔いやすい。
小動物に好かれやすい。髪色は黒い。姿は簡単にいうと、少女漫画で出てくるクールなイケメン。白いTシャツに黒いライダースジャケットを羽織り、チャックは前回。暗めの色のジーンズをはいている。料理好き。

ミント・グリーンティー
みんなのお姉さん的存在。17歳。武器は鞭。魔法の属性は風。
髪色は薄緑。ポニーテールでまとめている。デニムシャツワンピースの中に黒色のロゴが入った白いTシャツを着て、ミニスカぐらいの丈のデニムをはいている。

オリガ・ハイウィンド
頭にうさ耳に縛りをしたバンダナをつけている。16歳。武器は槍。
魔法の属性は氷。レオンに片想い。髪色は空色(水色)で肩までのショートカット。カーキ色のミリタリーシャツの下に白いレースのシャツ。それにショートデニムをはいている。(踝辺りまでのスパッツも)フーの世話役(一応このメンバーの中では飼い主となっている)

フレイ・ウォーリア
緑の国の現国王。フレイヤとは双子の兄。17歳。武器は己の拳。魔法の属性は火。
やる時はやる男。ボケる時はボケる。金髪で前髪を上にあげているためソフトリーゼント風。動きやすさを求めた服装で、ゆとりのある白いハーフパンツ(膝丈)に白いタンクトップ。その上に目に優しいくらいの紅色の半袖のジャケット(ロゴ付き)を着ている。

フレイヤ・ウォーリア
なぜか森の中で暮らしていた。フレイの双子の妹。17歳。武器は銃。魔法の属性は土。
兄に突っ込みを入れたり(蹴る、殴るなど)など止め役。金髪で長い髪を肩辺りでツインテールにしている。(おさげに入るのかな?)白いワンピースに腰辺りにベルトをしている。ベルトについているのは武器の銃。黒いスパッツをはいている。

シド・メロ
元帝国ラーミナ特殊部隊の一員。追放されて雪の国へ。19歳。一応医者。武器は双剣。魔法の属性は雷。
髪色は銀髪でストレート。服装は脛まである白衣着て、中には薄緑のシャツにネクタイをしている。ズボンは茶色。白衣を脱げば学生のような格好。飛空艇の基礎プログラムや部品にとても詳しい。

ジュリィ・ティーク
さすらいのギャンブラー(一応踊り子)。妹がいる。19歳。魔法の属性は水。
武器はタロットカード。髪色は茶色で長く、毛先は鋭い。服装は白い肩出しガウチョ風のシャツに赤茶色っぽい膝下まであるスカートのような物をはいている。(長い布を履く物にした感じのやつ)くるりと回るとスカートのような物が綺麗に舞い広がる。

こんな感じで頑張ります!
初投稿のため、少し物足りないと思います。

目次

一気に読みたい方>>1-

第1章 良くも悪くも再会 >>2-15 (途中コメントもあり)←ありがとうです!
1話>>2 2話>>3 3話>>6 3.5話>>7 4話>>8 4.5話>>9 5話>>15

第2章 皇帝の野望を知れ>>16-25
6話>>16 7話>>17 7.5話>>19 8話>>20 9話>>21 9.5話>>22 10話>>23 >>25

第3章 真実>>26-38
11話>>26 12話>>27 13話>>28 14話>>29 15話>>31 16話>>32 17話>>33 18話>>36
19話>>37 20話>>38

第4章 それぞれの思い>>39-94
20.5話>>39 21話>>41 22話>>42 23話>>43 24話>>44-45 25話>>46 26話>>47 27話>>48
28話>>49 >>51 29話>>55 29.5話>>56 30話>>58 31話>>65 32話>>66-69 (とても長いです…)
33話>>71 >>74 34話>>75-76 35話>>77 36話>>78 37話>>79 38話>>82 39話>>83
40話>>84 41話>>85 42話>>86-87 43話>>88-89 44話>>92 45話>>93 46話>>94

第5章 恩返し(仮題名)
47話>>95

第4章から、章の区切り方を変えました。(今までは『再会編』など1つの編で1章。今は3つぐらいの編が合わさって1章。)

もしかしたら、フィルタリング機能でこの小説が書けなくなるかもしれません。
ですが、かけるだで書きます。

コメントはバシバシしていいですよ! (してくれた方が嬉しいです…)
返信を必ずしますのでお気軽にどうぞ

☆この小説の歴史☆
2017.8.26 開始
8.28 番外編を別スレで開始(URLで行けます)
8.28 閲覧数100突破。
8.29 第2章開幕。
8.31 キャラ情報更新
9.11 閲覧数150突破。
9.24 第3章開幕。
9.25 閲覧数200突破。
10.16 閲覧数250突破。
11.1 リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始。
11.2 閲覧数が気がついたら300突破
11.3 もう閲覧数350突破。更新できなくていつもすみません…
11.7 閲覧数400突破。
11. 16閲覧数450突破。
12.7閲覧数550突破。
12.18閲覧数600突破。今更だけど第4章開幕(書き忘れてた)
12.27閲覧数650突破。
12.30閲覧数700突破。
12.31キャラクター投票開始
1. 1閲覧数750突破! 今年もよろしくお願いします
1.13閲覧数800突破!
1.22閲覧数900突破
2. 5閲覧数1000突破!!
2. 6 2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞
5.22第5章開幕
6. 5閲覧数2000突破!物語も折り返し地点へ
8.3小説家になろうで連載開始

Re: Change the world ( No.109 )
日時: 2018/07/07 18:42
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

シャドーさん

あ、了解です。
男性ではなく、男の子に直しておきます。

Re: Change the world ( No.110 )
日時: 2018/07/26 21:52
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

55.5話 帰るべき場所

帝国に戻ったディールは、城の長い洋風の廊下を歩いていた。
この長く親しんだ廊下とも、あと少しで別れを告げなくてはいけないのだろう。
なんだか、寂しい。

「どこ行ってたの?」

優しく暖かな声──イサチだった。

「ここでは言えない。『いつもの場所』へ行こうか」
「……気になるなぁ。ま、いっか」

イサチはリガンとは一緒ではないようだ。
基本イサチは回復専門のため、誰かと共に任務をこなすことが多い。
ならば、今日はオフの日という事になる。
──命令無視と言ったが、私も今日はオフの日だった。

城の西の棟。軍事関係の部署が固まる西の棟の片隅に『いつもの場所』はある。
そこでは作戦会議や休憩など色々な事をしていた。

「ここもすっかり寂しくなっちゃったね」

昔はここで悪ふざけをよくしたものだ。騒がしいと先輩から言われたこともある。リガンとジンが原因なのだが、連帯責任ということでまきぞいをくらうこともあった。

「出会いは別れへの始まり、とよく言う。だがあの別れ方は良くなかったな」
「引き止めていたりしてれば、きっとジンは生きていたんだろうね」
「スピカもな……」

彼ら2人は、帝国をそれぞれの思いで抜けた。ジンは帝国の外れてしまった道を外から正しく戻すため、スピカは深くは語ってはくれなかったが『私の使命を果たす』と言っていた。

──ふと、抜けた次の日の記憶が蘇る。

彼らは殉職と帝国内の連絡でされているが、その連絡が来たのは彼らが抜けて夜が明けた時。つまり、任務で命を失ったことを意味する殉職は嘘となる。このことから私は、『帝国は彼らを消す準備をしている』のだろうと予想した。
その予想は残念なことに当たってしまった。更に翌日、私とシドの元に彼ら2人を消す命令が下った。
拒否権は無かった。なぜ、私達なのかと軍令部長に問うとリガンとイサチを加えると感情が邪魔をして任務に支障が出るとのことだった。
感情を押し潰し、シドはスピカを、私はジンを探した。というのは報告書の内容。実は私達には作戦があった。
実際、彼らは大切な仲間だ。だから、ターゲットと出会った時にわざと見逃すという作戦をたてた。
しかし私は、ジンと戦う事になってしまった。私達が見逃すことを上は考えていたらしく、見張りがいたのだった。
そして、ジンの後輩──レオンに致命傷を与えてしまった。更に私も重傷を負った。
その判断は正しかったのだろうか? 今もわからない。

「でも、スピカは生きているかもしれない」

重傷を負い、治療を受けて容体が安定した1週間後。
私は、『いつもの場所』へ行った。すると、シドの可愛がっていた軍令フーが1枚の手紙を持っていた。
リガンとイサチが来てからその手紙を読んだ。ここにいる者でしか見られないようにして。
手紙の差出人はシドだった。内容は、彼らと同じく帝国を抜けるということと作戦は成功したということだった。
シドの今までの功績からして、上から絶大な信頼を得ていた。だから私のように見張りに来た上官は、仕事をせずにどこかへ行ってしまったという。そして、スピカを見逃したあと自らも行方をくらました。

「シドはやっぱり、飛空挺技師としても特殊部隊の一員としてもすごかったな〜 まさか、あんな理由であんな風に抜けるとは思わなかったけど」

シドが抜けた理由。それは、戦いで使うためだけの飛空挺をこれ以上作りたくはないということと、仲間を傷つける仕事はしたくないというものだった。そこからはシドの優しさが伝わってきた。

「今考えれば、抜けた彼らは自分の意志を貫くために抜けたのだな」
「……私だってそうしたかったよ。でも、ね」

ここに残る私達はそれぞれ抜けられない理由があった。
先ほど、レオン達に話したものだ。

「さて本題へ戻るか。私はシドの元へ行ってきた」
「……言ってくれたんだ。私達の思い」
「残りは少ないからな。彼らも、真実へと近づいている」

彼らの今までの言動からして、パナソの目的、自分が孤児となった理由、幻獣の思い、世界についてわかっていた。ただ一つ、わかっていないのは神の本当の目的。
神……創造神は『神を超えるもの』を作って何をしたいのだろうか?
未だ世界にホウフハの一族によって試練を与え続けているという。もしかして、皇帝の目的は、扉を開いて力を手に入れるのではなく、帝国が世界と戦うことで……

「なんだ!?」

目の前が真っ暗になった。まるで、よく聞く狭間の世界のように。

「わかっちゃったみたいだね」
「!?」

声のする方へ振り向く。するとそこに立っていたのは

「スピカ…… なのか?」
「そうだよ。タイチョーがいいところまで行ったから出てきちゃった、テヘ」

少し照れている金髪のスピカだった。
いいところとは、なんなのだろう。

「いいところと言うのは?」
「創造神のやってる事。まぁ、パナソがやっている事だけどね」
「やはり、帝国が世界と戦っているのは……」
「そう。それは世界への試練。『神を超えるもの』を育て、見つけるためのね」
「そうか。ならばこの世界から出るにはどうすればいい?」
「私、衝撃的な事言ったよね!? そこスルーなの!?」

目の前で騒がれても困る。衝撃的だったが私にとって時間のほうが大切だ。

「そんなに聞かれたいのか。ならば、なぜそれを知っている?」
「うーん、どこから話せばいいか……」
「ならばいい。では──」
「あぁもう! ちゃっちゃと話します! 私の目は、創造神の目だからなの!」
「つまり、スピカが見ているものは創造神も見えているという事か」
「よくわかったねー まぁ、簡単に言うと創造神が乗り移っているってこと。創造神がタイチョーの前に現れたいって思ったから私がここに現れたの」

創造神が私の前に? 明日どうなってしまうのだろう。

「で、現れた要件は── ん?」

瞬きにも似た短い間、スピカと瓜二つの女性が見えた。
違いは蒼いドレスだけ。顔つき、目の色、髪型、身長は全く同じように見えた。

「大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫だ」
「で、現れた要件は『扉の守護者』にならないかってこと。なるには、命を失うしかないけどね」

『扉の守護者』。その扉とは、どの扉だろうか。
民家の扉か、城門か。まさか、扉職人になれとか言わないだろうか。

「あ、扉って狭間の世界への扉。つまり世界と世界をつなぐゲートの事だよ?どの道、扉は開かれる運命だけど今はダメ。しかも扉は認められたものしか開けてはならない。『扉の守護者』の役目はその名の通り扉を守ることと、開けようとする者、その先へと向かおうとしている者の実力を確かめること。どう?」
「少し考えさせてくれ」

期待は裏切られたが、やりがいはある仕事だろう。
さきほど命を失えばなれると言っていたが、もうじき失うため問題ない。
神が私を扉までこれた実力を確かめる者にしたいと言っているのだから、強者を相手にできるかもしれない。でも──

「私は遠慮しとく。この命、失った後はどこへ行き着くのか、そもそもどこかで存在できるのかわからない。だが、私は少し休みたい。今までを振り返る時間が欲しいのだ。というか、管理人はいなくていいのか?」
「管理人はもういるよ。ジン君の後輩の緑髪の子。あの子、自分の命がもたないってこと知っていたみたい。最後まで仲間にも他人にも隠していたみたいだけど。誰よりも早くに真実に気づいたみたいだからこんな感じで誘おうって思ってら、あの子から出てきてくれたの。『命尽きても、役に立ちたい。仲間も、世界も大好きだから』ってね。で、ダンチョーはいいのね」

深く頷く。この短い19年間の人生。いろいろなことがあった。
だから、いいんだ。

「じゃあ、次会うときはいつになるかわからないけれど約束しよう。再会の約束を」
「もちろんだ。出会うなら『いつもの場所』でな」

スピカがこれまでにない笑顔で頷き返す。
いつだって、私達の帰るべき場所はあの場所だ。
ずっと忘れない。


「大丈夫?」
「──ん? あ、大丈夫だ」

気がつけば元の場所に戻っていた。
イサチが心配そうに見つめてくる。

「イサチ、あとでリガンに言っておいてくれ」
「きゅ、急になに?」
「帰るべき場所はいつだって『いつもの場所』だとな」
「う、うん」

イサチは私が本当に言いたいことがなんだったのかわからずにどこかへ向かった。
今はわからなくたっていい。でも、覚えていて欲しい。
この『いつもの場所』こそが思い出の現れであり、たどり着く帰るべき場所だということ。そして、こここそが──

「私達が存在した証拠。生きた証だからな」

夕陽が窓から差し込む部屋でただ1人、ディールは呟いた。

Re: Change the world ( No.111 )
日時: 2018/07/24 09:23
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

56話 あっさりとした別れクル

「で、君達は何をしに来たの〜?」
「ルガイアが竜牙村を荒らしているの。その原因はこの屋敷の人なら知っているって聞いたから来たんだけど…」

こういう年齢の子の相手にはフレイヤがちょうどいい。

「そうなんだ〜 それは悪型になったガルダヌスが原因だよ〜 だってお母さんと子供に逃げられてガォ〜ってなっているみたいだから」
「なんか現実的っ!?」

何が原因で夜逃げされたのかは知らないが、気が荒くなっており、縄張り意識がいつもより高くなっていたのだろう。基本、あのようなモンスターは縄張り内に別のモンスターが入ってきても自分より弱く、敵意さえなければ襲いはしないはずだから。

「さっきのガルダヌス、もしかして……」
「ここに来る前にいたの? この森にいるのは一匹だけだから、倒したり、追っ払ったりしたらもう大丈夫なはずだよ〜」
「一件落着、なんだな」

ルドは頷く。これで竜牙村も大丈夫だろう。

「あ!」
「どうしたの?」
「ルガイアが戻ってきているよ〜 僕、仲良しだからすぐわかるんだ〜」

窓の方を見ると、山ベリーをたくさんのルガイアが食べている。
いつもと変わらない顔だが、久しぶりに好物を口にしたのだから胸は高鳴っているだろう。人間と同じ感じ方ならば。

「じゃあ、オレ達も帰ろうぜ」
「もう夜だよ〜 夜はルガイアが凶暴になるから朝の方がいいよ〜」

先ほどまで夕方だったのだが、外は暗くなり始めている。

「泊めてくれるの?」
「もちろん! どこを使ってもいいよ〜 楽しんでいってね」
「楽しむ……?」

とりあえず俺達はここで泊まることにした。
夕食を作り、皆で食べた。厨房の広さ、施設の充実さには驚きを隠せない物だった。しかし、古いものばかりなのが残念だった。

──そして、今に至る。

ふかふかのベッド、充実した部屋。なんの不自由さを感じない部屋だ──と思っていたのだが、なにか横に気配を感じる。
恐る恐る目を覚ますと、ルドとフーの姿があった。

「──っ!?」
「作戦成功だね〜 」
「ワゥ」

どうやらフーとルドで俺を脅かそうとしていたらしい。
やるならきっとジュリィの方がいい、と心では思うが、夜中に悲鳴をあげられても困る。俺で良かった。

「何しに来たんだ?」

頭の後ろ側をポリポリとかき、ベッドに座る。

「お兄さんから幻獣に似た匂いがしたから、誰も気づかない今に聞こうかな〜って思って」
「なんでわかるんだ?」
「僕の友達がそう言ってて嗅いでみたら、匂いがしたから〜」

なんという嗅覚。俺自身でもわからない匂いもわかってしまうだなんて。

「友達?」
「うん、カーちゃんだよ」

ルドはポケットから緑色の石を取り出した。
薄暗い室内のため、はっきりとは見えない。しかし、次の瞬間、その石が何なのかがはっきりとわかった。

「魔石だと……」
「招ぶからまってね〜」

石──魔石が緑色に輝く。それは風属性の幻獣を召喚するときに見かける特有の光だった。

「出ておいで〜 カーバンクル」

出てきたのは小型のウサギのような生物。何に例えればいいのかわからない。
額には、緑色の宝石が付いている。
伝承などで聞くカーバンクルは、紅色の宝石をつけていると聞くが……

「何かついてるクル?」
「しゃ、喋った!?」
「喋るクル! みんな喋れるクル!だからカーも喋れるクル!それで何か疑問に思っているみたいクルけど、何クル?」
「額の宝石、紅じゃないんだな」
「カーも元は紅だったクルよ。でも、こっちの方が好きなんだクル! 風魔法も使えるクル! 元は無属性だったのに、風属性にされてしまったクルけど」

どうやら、自分で色を変えられるらしい。そして、色によって使う魔法もかえられるらしい。都合のいいやつだ。
気づけば、カーバンクルは浮いていた。

「ディン坊から聞いているクル。君達は魔石を集めているみたいクルね。それにカー達の願いも知っているみたいクルけど、1つ聞いていないことがあるクル」
「なんだ?」
「もし、扉が開いてしまったらってことクル まぁ、管理人がしっかり者だからってことでディン坊は言わなかったクルけど」

扉が開いてしまったら。そんな事を深く考えた事などなかった。
開いてしまったら、世界がどうのこうのとは聞いていたが大丈夫
だろうとしか思っていなかった。なぜなら、俺達には幻獣が付いているのだから。

「開いてしまったら、カー達を全員召喚するクル。そしたらカー達が命かけて閉じるクル」

その言葉には、覚悟が込めてあったような気がする。
『命をかけて』など、幻獣が滅多に言う事はない。なぜなら、そこまでしてやる事などあまりないのだから。

「そしたら、お前らだって消えてしまうだろ?」
「どの道消える事は決めてあるクル。この世界にカー達はもう必要ないクル。世界はもうじき変わるクル。この先はまだ言えないクルけど」
「それってほんと〜?」

先ほどまで黙っていたルドが、いつもと変わらない口調でカーバンクルに問う。
聞いていないように思えて、聞いているようだ。

「まだ寝てなかったクルか?」
「うん、いろいろ聞こえちゃって…… で、カーくん消えちゃうの〜?」

見た目と精神年齢が同じならば、内容は深く理解できていないだろう。
事の重要性、消えるの本当の意味。それを知った時、この子はどうなってしまうのだろう。

「ちょっと旅に出るクル。もしかしたら、帰ってこれないかもしれないクル」
「そんな〜 僕、寂しいな〜」
「大丈夫クル。カーはいつでもそこにいるクル」

カーバンクルはルドの胸に前足を当てる。それは、心を示していた。

「ルドは1人じゃないクル。困ったら竜牙村の人に聞くクル」
「わかったよ〜 カーくんも僕の事、思い出してね」
「もちろんクル。じゃあ、先に寝ててクル。おやすみクル」
「おやすみ〜 お兄さんは行ってらっしゃいだね。僕、朝は遅いから」
「ああ。良い夢を」

ルドが退室する。
うとうとしていて、歩きがしっかりしていなかったが幽霊なので大丈夫だろう。

「それで良かったのか?」
「もちろんクル。カーは寂しいけれど、寝てる間にルドの記憶を少し書き換えるクル。カーは、人形で、今までの思い出は夢にするクル……」
「それがあの子のためか?」
「大きくなって真実を知るよりも、全部なかった事にして前に進んだ方がいいクル。だから」
「そうか……」
「でも、カーはカーに似た人形に、カーの思いを閉じ込めたクル。夢の最後に『すべてを知りたくなったら、カーの名前を呼ぶクル』って伝言したクル。いつになるかわからないクルけど、思い出すきっかけは与えたクル」

いつの間にか、書き換え作業が終わったらしい。
本人がこれでいいと言っているのだから、俺は口出しできない。
でも何かが納得いかない。

「納得できないクルよね。でもカーが決めた事クルから」
「わかっている。きっと俺が納得いかないのは、全部なかった事にするってとこだと思うんだ。でも、あんたが決めた事だからな」
「話がよくわかるクルね〜 さすが、王選を勝ち抜いたディン坊の息子クルね」
「オーディンの事はよくわからないけどな」

カーバンクルはオーディンをディン坊と呼ぶ事から、オーディンよりも年上なのだろう。考えられないが。
カーバンクルは大きなあくびをして、再び話し始めた。

「そろそろ寝るクル。次は、ウェンディのところに行くといいクル。ま、寝るクル。おやすみクル」
「また明日な」

カーバンクルが魔石へと戻る。
それを確認すると、俺も眠りについた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ルドはベッドで寝ていた。
いつも隣にいたカーバンクルは、カーバンクルに似た人形になっていた。
目覚める時は、かつてのように動かない。更に動いた事をルドは『知らない』。
だが、ルドは悲しんでいない。

──記憶がなくても心が覚えている、のだから。

Re: Change the world ( No.112 )
日時: 2018/07/26 21:22
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

57話 再び活躍のB・T・U

「あら、お帰り〜」
「アミュさん、村は?」

竜牙村に戻ると、アミュさんがいた。

「大丈夫そう。急にルガイアが帰って行ったから、ビックリしちゃった」
「森の異変に気付いたんだね〜」
「とりあえず、報告は私がしとくよ。そして、ありがとう。村を代表して言わせてもらうよ」

アミュさんが一礼する。こんな風にお礼をされたのは初めてで少し戸惑う。
今後も、このように感謝される事をしたいものだ。

「じゃあ、行きますね」
「どこへ?」
「海底神殿ってとこ。アタシ達の旅の目的の1つは、魔石集めだからな」
「海底神殿ね〜 まずはノーグルリーチ村に行ったほうがいいよ。行けばわかるから」

ノーグルリーチ村。確か、緑の国から東に行った谷底の村だ。近くには遺跡があって、そこへ行くものは何かをすると聞いた事がある。

「じゃあ、行こうぜ」
「行ってらっしゃい!」

アミュさんは前と同じように見送ってくれた。
しかし、飛空艇のあるムスプルヘイムまで戻るにはかなりの時間がかかる。
行きの時に使った、『あいつ』がいてくれれば── と思った瞬間、フレイヤがいつの間にか持っていた笛を吹いた。
その音は遠くまで響いた。すると地平線の向こうから何かがやって来た。

『あいつ』が来たのだ。ビューティー・チャーミング・ウツクーシーが。

「はい、いい子いい子〜」

ビューティー・チャーミング・ウツクーシー──略してB・T・Uはあの短時間でフレイヤのペット、いや、手下となっていた。

「やっぱ、ハンパないって」

フレイがボソッと俺に話しかけてきた。なんだか、どこかで聞いた事のあるような……?

「ま、また俺を巻き沿いにするのかよッ!」
「え、別によくね? オレ達、仲いいし」
「仲はいいのは認めっけど、誤解を招くだろ!」

「お兄ちゃんどうしたの〜? レオンも珍しく熱くなっちゃって」
「なんでもないぜ!」「なんでもない!」
「ハモってる」

フレイヤは俺達が話していた内容を深くは知らないようだった。それどころか、くすくすと笑っている。

「さっさと乗ろうよ、ここ地味に暑いし」
「だな! フレイヤ、頼んだ」
「はいはーい、お任せを」

来た時と同じ道を使い、トーゲ・ンガをぬけ、ムスプルヘイムまでついた。

「ありがとう、ビュー」

まるで敬礼をしているかのように、B・T・Uは背筋を伸ばしピシッとして足早に帰って行った。

「温泉入りたかったな〜」

飛空艇へと向かうため、ムスプルヘイム内を歩く。今回も次の予定が入ってしまい温泉など観光を楽しむことができなかった。

「最近は緑国襲撃戦で大きなダメージがどちらにも残っていますから、帝国もすぐには動かないと思うよ。入るチャンスはある」
「なんかシドのその言い方だと、私らが働いてないみたいに聞こえる…… けれどホント!?」

オリガが目を輝かせる。『決めるのは俺だ』と伝えるかのようにシドはこちらを見て『どうする?』と口パクで言ってきた。

「たまにはいいかもな、入るか」
「ヒャッホーイ!」

1番喜んだのはフレイだった。

「じゃあ、行ってきます!」

女性陣は地図看板の下にあったパンフレットを持ってどこかへ行ってしまった。
このようなこと、以前にもあったような気がする。

「んで、どこ行く、どこ行く?」
「子犬か! 少し落ち着け」
「だって世界一の観光都市だぜ! 興味ないのか?」
「別に、興味はある。だが、フレイ、はしゃぎすぎだろ」
「普通にそんなこと言わないでー! 滅多に行けないからさ、プライなベートで」
「一国の主人だもんな、一応」
「おぉ、わかってんな! って、一言多いぜ」

親友ということもあってか、フレイが緑の国の王だったという事を忘れていた。
おまけに、反乱軍の長、つまり俺達の上官だという事も忘れていた。
しかし、今までの行動、他人からの接され方から皆誰もが王として扱っていないような気がする。まぁ、本人がそれでいいと思っているようなので気にする事ではないだろう。

「レオン、シド、準備はいいか? 今回はオレに任せてくれ!」
「準備はできてるよ。どこに行くんだい?」

フレイは後ろに振り向き、『温泉卵専門店』と書かれた看板を指差す。
和風とやばれるジャンルの建物が並ぶ中、瓦屋根の上にある黄色の看板が異様さを表している。目立つため興味を持ちやすいが、雰囲気は壊れている。

「温泉卵。食べてみないか?」
「賛成だ」
「だろ! 美味そうだし」

温泉卵。ゆで卵とは違い、トロッとしていると聞く。
少し、楽しみだ。
俺達は温泉卵専門店へと足を運んだ。

「いらっしゃいませー 何個ですかー」
「3つ!はい、これ」
「温玉3つ入りましたー」

店員は代金を受け取ると、奥へ去っていった。
カフェのように配置された立ち食い用のテーブル。椅子がないのは室内が狭いからだろう。和と洋が入り混じっていると感じるのも、それが原因だろう。

「お待たせしましたー 特性温泉卵3つです」

エッグカップに入った温泉卵。テーブルに備え付けられている出汁醤油を数滴かけ、スプーンで口に運ぶ。

「美味しい……」
「やっぱ、温泉だと一味違うな〜 風呂で手作りしたやつよりも美味いし」

とろ〜りとした白身に綺麗なオレンジ色の黄身。そこに醤油の出汁が効いている事で旨味が増す。

「もっと大きいので作ったら……」
「それは無理だな。黄身まで熱が行く前に白身が固まる恐れがある」
「さすが料理人……」

実際に作った事がないので正確にはわからない。しかし、予想はつく。
最後の一口を食べ、カップを片付けるとスマホが鳴った。

「もっしもーし、私達、やりたいこと全て終わったから飛空挺の方向かうね」
「了解。俺達も向かう」

電話を切る。毎回、このようなタイミングの良さはなんなのだろうか。

「なんだって?」
「飛空挺の所に向かうだとさ」
「タイミング良すぎだろ……」

そんな会話を交えて歩いていく。
そして飛空挺内にて合流した。時刻は昼頃だろう。

「さぁ、ノーグルリーチ村へレッツゴ〜!」
「そんな簡単に言うけど、あそこは谷底だから飛空挺では行けないよ。緑の国で停めて、マゾア川を渡って山を歩いて行くしかないからね」
「──マジか」
「うん、マジ」

今回も険しい坂や道を通らないといけないようだ。こんな時にまたB・T・Uが来てくれれば、と考えてしまう。人間、楽したいものだという意味がよくわかる。

「歩かなくても大丈夫だよ。これ使えばビューはすぐ飛んでくるから〜」

一瞬、フレイヤが何を言っているのかわからなかった。なぜなら、遠く離れたところからB・T・Uが飛んでくると言ったからだ。

「これさ、私がビューを運転している時に作ったの。吹けば瞬間移動魔法が対象に発動して、目の前に出てくるんだ〜 まだ完成品じゃないから目の前には出てこないけれど」
「すごいよ、フレイヤ! 見たことない、こんなの」
「えへへ、まぁ見たことないのもわかるよ〜 だってこれ、世界に2つしかないもん。」
「そうなると、もう1つは?」
「もう1つは、フォレストリーさんが持ってる。私の育ての親だよ〜 教えてもらったの」

そうなるとやはり聞きたいことがある。

「量産したりできないの? 世界で必要としている人が絶対いると思うんだけど……」
「それは無理かな〜 術式組むのも大変だし、なにか間違えると対象の生き物に多大なストレスがかかっちゃうから」
「そうなんだな。で、そのフレイヤが持ってんのは話聞く限り使えるみたいなんだがどうなんだ?」
「前に読んだの見たでしょ? 無事だったから大丈夫。だから、心配せずに行きましょ〜!」

あれは無事と言っていいのだろうか。忠実な手下とはいえ、なにか間違えたら出会った当初みたいになると感じて不安なのではないだろうか。

「じゃあ、緑の国に出発!」

フレイヤの掛け声に合わせたかのように艇体は空中に上がり、サウス大陸の方へ飛んで行った。

Re: Change the world ( No.113 )
日時: 2018/07/29 11:48
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

58話 遺跡? 神殿?

緑の国に飛空艇を停め、笛でB・T・Uを呼び、山を越えた。
そして目の前にあるのはノーグルリーチ村。ファントム・パンプキンや薬草の産地でよく知られた村だ。

「そーいえばさ、なんでアミュさんは海底神殿に来る前にここへ行けって言ったんだろうね」
「単純な話で、海底神殿の鍵がここの近くの遺跡にあるからだよ」
「おぉ、さっすが〜 物知り〜」
「褒められている気がしません……」

「あ、ごめんクル。ウェンディの場所の鍵、ここじゃなかったクル」
「は? っていつの間に!?」

いつの間にか足元にカーバンクルがいた。
魔石から幻獣は自分で出られないのでは無いのだろうか。

「なんで出てきたんだ?」
「カーは『魔石に戻る』なんて一言も言って無いクル。君たちが勝手に解釈しているだけクル。実際にはカーは透明になっただけで、今までの会話は全部聞いていたクル」
「ふ〜ん。で、どういう事?」
「クル?」
「ウェンディーネのいる場所の鍵が、ここじゃない事!」
「あ、それはクルね……」

カーバンクルは震えながら話してくれた。
ここの近くにある遺跡にある秘宝は、ウェンディーネのいる海底神殿ではなくリヴァイアサンのいる海底神殿の鍵であるらしい。
さらに、ウェンディーネのいる海底神殿は神殿ではなく遺跡らしい。なので鍵もいらないらしい。おのれ、カーバンクル。言い間違いおって。

「ごめんクル…… でも、君たちをウェンディのところへ導いたのはリヴァイアサンのところへ案内するためクル。ウェンディがいないとあの長いやつ目覚めないクルから。まぁと・も・か・く、海底神殿の鍵を取りに行くクル!カーは戻るクル!」

今度こそ、カーバンクルは魔石へ戻った。


村に入る。すると地図看板に丁寧な事に『遺跡見学者はフォーチュンベルへ』と書いてある。とりあえずフォーチュンベルと呼ばれる店へ入る事にした。

「いらっしゃいませ〜」

店というよりはカフェだった。カウンターは2種類あり、食べ物を頼む方と遺跡見学の受付で分かれている。

「いらっしゃいませっす。見学っすね〜」
「正確には秘宝を手に入れにきたんだけど……」
「あれ、そうなんっすか? 守っているやつちょーヤバいっすよ。だから見学ってしてるっす」
「ヤバいんだ… 」
「そうっす。なんで必ず同行者をつけてるっす。今は……」

黒髪の身長の高い男はカフェを見渡す。どの店員も忙しそうだ。

「特別だい、だい、大サービスでこの店長の俺が可愛い君達のためについて行ってあげるよ!」

目の前の男は「よし、決まった」とつぶやく。
さっきまでの落ち着きはどこへ行ったのだろうか。ジュリィが呟いた瞬間あたりからハイテンションになっている。

「可愛いってオレらも入るのか!?」
「んなわけ無いでしょお兄ちゃん!」

フレイヤのストレートパンチがフレイの腹に直撃する。
きっとフレイヤは相手が身内のため手加減などしていないだろう。鍛えているフレイでさえ、その場にうずくまってしまったのだから。

「入って無いっすよ。俺が言ったのは君達の3人に向けてさ」

男は女性陣を見てウインクした。この男──チャラ男に入いるのでは無いだろうか。どういうものがチャラいというのかは本当にはわからないが。

「ジュリィ、私も入っているみたい」
「ま、まぁそうだな」

ジュリィはフレイヤにどう対応していいのかわからないらしい。フレイヤは、こういう人でも誰でも仲良くできる。さらには疑いもしない。内心ではどう思っているのかわからないが。

「どうした、水色の髪の嬢ちゃん」
「なんなの……」
「ん?」
「なんで私らがあんたよりも弱い前提になってんの? こんなやつに私、負ける気がしないんだけど」
「うぅ……」

オリガが笑いながら話したと思ったら、白い目で男を見つめている。
怒っているというよりは、見下しているのだろう。

「お客様、避けて!」

声の通り、左右へ移動する。
するとモップが飛んできて、男に直撃する。

「痛いっすよ!」
「店長の言動の方が別の意味で痛々しいわ! あ、お客様大変ご迷惑をおかけしました。このチャラいくせに店長が務まって店が繁盛しているおかしなアグラル・サンゼ店長に変わってお詫び申し上げます」

モップを投げたと思われる赤髪の女性が深々と頭をさげる。
この人の方が客を相手にしたほうがいいのでは無いだろうか。

「リアちゃん、手加減はしてよ…… 顔が真っ赤っすよ」
「そこらの薬草でもすり潰して塗ってきなって」
「そうするっす」

アグラルと呼ばれた店長の男は、店の奥の方へ去って行った。

「話は聞いていたよ。秘宝を取りに行くんだってね」
「同行者がなんとかって言ってたけど、なんなの?」
「この村の決まりで、遺跡に行くには認められた同行者が必要になってるの。それは見学者をモンスターから守るためと、秘宝の間に近づけないようにするため」
「近づいちゃ、ダメなのか?」
「秘宝に守り神がいるの。トゥスルムと言って人間に近い竜人なんだ。秘宝に近づく者は容赦無いからね、同行者が必要なの。まぁ、本当は同行者がいても秘宝の間には行っちゃダメなんだけど、きみたちなら大丈夫さ」
「結局、僕達の同行者は?」
「わたし。ここで1番強いって言われているんだ。あ、そうそうわたしはリア・メルリ。よろしくね」

差し伸ばされた手を掴み、握手する。カフェの制服姿のためどのくらい強いのかは想像できない。でも、この自信なら強いのだろう。

「さぁ、行こっか」

リアを先頭にして、俺達は遺跡へと向かった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26