ダーク・ファンタジー小説
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- Change the World 【カキコ版・旧】
- 日時: 2019/03/27 13:31
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
削除の理由は【大切なお知らせ】を参照。
(大会入賞は削除対象外のようです。こちらはカキコ版として残しておきます)
2017年の小説大会で銅賞を受賞しました。
・見直しをサボっているため、最初と今で地名や内容が異なる場合があります。
発見次第、直していく予定です。*ただいま修整中
・小説家になろう でも連載開始しました。
これは、人と幻獣の絆の物語。
悪逆非道な帝国により離ればなれになってしまった少年少女たち。
だが、長い時がたち再会する。
──そんな時だった。
あの帝国が再び動き出したのだった。
少年少女たちはそれぞれの思いを持ち旅立つ。
帝国を止める事を
これ以上悲しむ人を増やさない事を目的にしながら……
そして知ることとなる。宿敵の目的、幻獣の覚悟を。
以上、あらすじです。
ーお知らせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始しました
連載が少し遅れ気味です。
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メインキャラクター
レオン・ハイレゾ
主人公。17歳。武器は剣。魔法の属性は無。乗り物に酔いやすい。
小動物に好かれやすい。髪色は黒い。姿は簡単にいうと、少女漫画で出てくるクールなイケメン。白いTシャツに黒いライダースジャケットを羽織り、チャックは前回。暗めの色のジーンズをはいている。料理好き。
ミント・グリーンティー
みんなのお姉さん的存在。17歳。武器は鞭。魔法の属性は風。
髪色は薄緑。ポニーテールでまとめている。デニムシャツワンピースの中に黒色のロゴが入った白いTシャツを着て、ミニスカぐらいの丈のデニムをはいている。
オリガ・ハイウィンド
頭にうさ耳に縛りをしたバンダナをつけている。16歳。武器は槍。
魔法の属性は氷。レオンに片想い。髪色は空色(水色)で肩までのショートカット。カーキ色のミリタリーシャツの下に白いレースのシャツ。それにショートデニムをはいている。(踝辺りまでのスパッツも)フーの世話役(一応このメンバーの中では飼い主となっている)
フレイ・ウォーリア
緑の国の現国王。フレイヤとは双子の兄。17歳。武器は己の拳。魔法の属性は火。
やる時はやる男。ボケる時はボケる。金髪で前髪を上にあげているためソフトリーゼント風。動きやすさを求めた服装で、ゆとりのある白いハーフパンツ(膝丈)に白いタンクトップ。その上に目に優しいくらいの紅色の半袖のジャケット(ロゴ付き)を着ている。
フレイヤ・ウォーリア
なぜか森の中で暮らしていた。フレイの双子の妹。17歳。武器は銃。魔法の属性は土。
兄に突っ込みを入れたり(蹴る、殴るなど)など止め役。金髪で長い髪を肩辺りでツインテールにしている。(おさげに入るのかな?)白いワンピースに腰辺りにベルトをしている。ベルトについているのは武器の銃。黒いスパッツをはいている。
シド・メロ
元帝国ラーミナ特殊部隊の一員。追放されて雪の国へ。19歳。一応医者。武器は双剣。魔法の属性は雷。
髪色は銀髪でストレート。服装は脛まである白衣着て、中には薄緑のシャツにネクタイをしている。ズボンは茶色。白衣を脱げば学生のような格好。飛空艇の基礎プログラムや部品にとても詳しい。
ジュリィ・ティーク
さすらいのギャンブラー(一応踊り子)。妹がいる。19歳。魔法の属性は水。
武器はタロットカード。髪色は茶色で長く、毛先は鋭い。服装は白い肩出しガウチョ風のシャツに赤茶色っぽい膝下まであるスカートのような物をはいている。(長い布を履く物にした感じのやつ)くるりと回るとスカートのような物が綺麗に舞い広がる。
こんな感じで頑張ります!
初投稿のため、少し物足りないと思います。
目次
一気に読みたい方>>1-
第1章 良くも悪くも再会 >>2-15 (途中コメントもあり)←ありがとうです!
1話>>2 2話>>3 3話>>6 3.5話>>7 4話>>8 4.5話>>9 5話>>15
第2章 皇帝の野望を知れ>>16-25
6話>>16 7話>>17 7.5話>>19 8話>>20 9話>>21 9.5話>>22 10話>>23 >>25
第3章 真実>>26-38
11話>>26 12話>>27 13話>>28 14話>>29 15話>>31 16話>>32 17話>>33 18話>>36
19話>>37 20話>>38
第4章 それぞれの思い>>39-94
20.5話>>39 21話>>41 22話>>42 23話>>43 24話>>44-45 25話>>46 26話>>47 27話>>48
28話>>49 >>51 29話>>55 29.5話>>56 30話>>58 31話>>65 32話>>66-69 (とても長いです…)
33話>>71 >>74 34話>>75-76 35話>>77 36話>>78 37話>>79 38話>>82 39話>>83
40話>>84 41話>>85 42話>>86-87 43話>>88-89 44話>>92 45話>>93 46話>>94
第5章 恩返し(仮題名)
47話>>95
第4章から、章の区切り方を変えました。(今までは『再会編』など1つの編で1章。今は3つぐらいの編が合わさって1章。)
もしかしたら、フィルタリング機能でこの小説が書けなくなるかもしれません。
ですが、かけるだで書きます。
コメントはバシバシしていいですよ! (してくれた方が嬉しいです…)
返信を必ずしますのでお気軽にどうぞ
☆この小説の歴史☆
2017.8.26 開始
8.28 番外編を別スレで開始(URLで行けます)
8.28 閲覧数100突破。
8.29 第2章開幕。
8.31 キャラ情報更新
9.11 閲覧数150突破。
9.24 第3章開幕。
9.25 閲覧数200突破。
10.16 閲覧数250突破。
11.1 リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始。
11.2 閲覧数が気がついたら300突破
11.3 もう閲覧数350突破。更新できなくていつもすみません…
11.7 閲覧数400突破。
11. 16閲覧数450突破。
12.7閲覧数550突破。
12.18閲覧数600突破。今更だけど第4章開幕(書き忘れてた)
12.27閲覧数650突破。
12.30閲覧数700突破。
12.31キャラクター投票開始
1. 1閲覧数750突破! 今年もよろしくお願いします
1.13閲覧数800突破!
1.22閲覧数900突破
2. 5閲覧数1000突破!!
2. 6 2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞
5.22第5章開幕
6. 5閲覧数2000突破!物語も折り返し地点へ
8.3小説家になろうで連載開始
- Re: Change the world ( No.94 )
- 日時: 2018/05/19 20:09
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
46話 運命に抗え
「話したい事があるとやらを言っておらぬかったか?」
「… 忘れていただけだ。」
おっと危ない。本当に忘れていた。
なぜなら、話された事が衝撃的だったから。
聞きたい事がたくさんある。
やはりここは1番知りたいことをストレートに聞くべきなのだろうか。
1番知りたいことーーー俺と幻獣との繋がり。
それがわかれば幻獣界の民とか、生命の輝きについての事をより深く聞けるはずだ。
しかし、オーディンも俺に『話したい事がある』と言っていた。
それと俺の知りたいことは関係あるのだろうか。
「ここに来るまでの間、俺のことを『幻獣界の民かもしれない』ってヴェルとかが言っていたんだ。俺には孤児院にいた頃よりも前の記憶はない。知っているはずの人はもういない。だから幻獣王のあんたなら… って思ってな。つまり、俺と幻獣の繋がりを知りたいんだ」
「ほう、そうか」
オーディンは辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
それほど重要なことなのだろうか。
「『幻獣界の民かもしれない』と言ったな。確かにお主は幻獣界の民だ」
「じゃあなぜ新世界にいるんだ?」
自分が幻獣界の民だというのは、薄々そんな気がしていた。
だからこそ思いつく疑問を投げかける。
「幻獣界には人間が誰1人おらぬかっただろう」
この世界に来た時のことを思い出す。
人の気配がなく、民家が立ち並ぶ静寂に満ちた夜の世界ーーーそれが第一印象でもあり、事実だった。
「この世界に人がいないのは、我々が追い出したからだ」
「追い出した? なぜだ?」
「お主達に言った通り、我々は消えることを選んだからだ。この世界は幻獣がいる事で成り立っている。つまり我々、幻獣が消えるということはこの世界が消えるに等しいのだ」
「残された人々はどうなるんだ?」
「世界が消え、残された人々は狭間の世界へ行き着くがそこから出られなくなる。要するに、その残された人々のために追い出したのだ」
救われた、と言っても過言ではなかった。
もしかすれば、などとこの話を聞いたことで少ない希望を持てた。
残された人々が新世界にいる。ということは両親に会えるかもしれない。
普通に旅が終わっても暮らしていけるかもしれない。
「しかし… お主は消える可能性がある」
「……え?」
その希望は、すぐに壊れてしまった。
俺が幻獣が消えるのと同時に消える可能性がある……?
いや、『可能性がある』と言っているだけだ。
言動からすると、消えないという事もあるとも言っている。
ただ、言われたことについて受け入れられない。
「なんでだ?」
「それを話そうと思ってここへ呼んだのだ。すぐに信じてはくれなくてもよい。ただ、受け入れてほしい…」
すでに前に言われたことが受け入れられないのだが。
オーディンは一息吐くと意を決したように言う。
「お主は……我と血が繋がっておる」
『血が繋がっている』という事は俺の親族と言うことになる。
確かにすぐには信じられるようなことではなかった。幻獣と人、種族は違うのにそのような事はあり得るのだろうか。
いや、あり得る。竜人という人と竜の血を引く種族がその証拠だ。
「正確に言うと、お主は我の息子だ。そのためだろうが、お主の体には幻獣の血が濃く流れている」
血。話を聞いて思い出す。シドに初めてあった時のことを。
かなりの重傷を負ってジンにより、雪の国のシドの診療所とも言える小さな家に運ばれた。
意識が朦朧としていて詳しくは覚えていないが、出血が酷く輸血しないといけなかったらしい。
しかし、俺の血が珍しく2種類あり、片方の物しかなかったとのちに聞いた。
きっと片方の物は人間の血の事であり、なかった物が幻獣の血なのであろう。
そう考えるとオーディンの話したことに説得力がつく。まぁ、幻獣王なのだから真実なのであろう。
「他の幻獣の民は消えないのか?」
「幻獣の血を引いているのはお主のみ。幻獣の民とは新世界、古世界から迷いやってきた者でここに住むことを選んだ者のことを指す。全ての幻獣の民が幻獣の血をひいているわけではないのだ」
「つまり、俺が幻獣の血をひいているから消える可能性があるんだな」
オーディンは静かに頷く。
もし、俺が消えたらどうなるのだろうか。消えた時、感情や記憶も失ってしまうのだろうか。
ただ確実にわかるのは、オリガとの約束を守れないこと。
「約束……守れないな」
「そう決めるのはまだ早い。我は『可能性がある』と言ったのだ」
全てが決まったわけではない。なのになぜ諦めようとしていたのだろう。
そんな自分が悔しくて目線を伏せる。
「消える運命、かもしれぬ。だがその運命に抗おうとする力こそが人間の力であろう」
オーディンが俺を励まそうとしているのが伝わってくる。
『運命に抗う』、響きだけでなぜだかかっこいいと思ってしまう。まぁ、それは置いといて。
目線を戻し、俺の思いを伝えようと声を出そうとした途端、
「やる気になりおったな。運命とは抗えるもの。お主の力見させてもらうぞ」
目を見て伝わったのだろうか、小さく微笑み言った。
「最後の最後までちゃんと見てろよ、今まで見なかったぶんな」
「もちろんだ」
「じゃ、俺、行くから」
「行ってらっしゃい」
最後の言葉には何やら温もりを感じた。
ちゃんとゆっくり話せるのはこれが最後かもしれない。でも、思いを伝えることができた。そのことだけで満足だ。
後ろにある大きな扉を開く。その先には未来に無限の可能性があることを示すかのように明るく、眩しかった。
まるで勇気づけるかのように。
しかし『消える可能性がある』という事をみんなに言う勇気はない。特にオリガには言えない。
だってオリガの思いを聞いてしまったのだから。
複雑な気持ちを胸に、扉の奥へ踏み出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰もいなくなった部屋にただ1人佇むオーディン。
ここに残されているのは冷たい夜空と無機質な大理石。そして、息子ーーーレオンの思いという名の覚悟。
彼にあの事を言って良かったのだろうか。それは言ってしまった今でもよくわからない。
『真実は言ってしまった方がいい。人はそこから進もうとするから』
誰もいないはずなのに、愛する妻ーーーレオナの声が聞こえたような気がする。
いつもそうだ。困った時、つまづいた時に彼女の声が聞こえたような気になる。それはきっと胸に刻まれ、記憶に残っている言葉だからだろう。
彼女はオーディンにとって大切な人であり、支えてくれた人でもあった。
種族は違う。あの頃はそんな事どうでも良かった。
ただ、彼女のそばで……
そこで不意に思う。彼にもそのような人がいるのだろうか。
言動からするにいるのだろうと思える。それが仲間なのか、大切な人なのか……
気になるが彼も年相応の事をしているのだと思う。
「レオナ…… そちらへ行くのはもう少しだけあとになりそうだ。見ているかはわからないがそちらへ行く時は、とびっきりの土産を持って行こうと思う。それまで寂しい思いをさせるが、待っていてくれ」
オーディンは満月に向かって語りかけた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回から『ー』(ダッシュって言うんだっけ…?)を使いたかったのですが、そのような形状の物がたくさんあってわからないためよく「ソーダ」などで使う『ー』を使う事にしました。
『ー』が三つ連続で使われている時は、本来ならダッシュを使っているところです。
もしキーボードのどこを押せばいいか知っている方いましたら、コメントお願いします。
- Re: Change the world ( No.95 )
- 日時: 2018/05/22 20:59
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
第5章 (題名は考え中です)
47話 食材が…
「お、きたきた。遅かったな」
「まぁな」
扉の向こうは、飛空艇のリビングのような部屋だった。
リビング、と言ってもキッチンが付いていてテーブルが中央に置かれているだけなのだが。
「お腹減った〜」
「そういえば朝から何にも食べてなかったな」
フレイとオリガがこちらを見る。
その目線からは『何か作ってくれ』という事が伝わってくる。
「わかった、昼飯作ってやるよ」
「やったー! でも、もう夜だけどね」
窓を見る。すると日の明かりではなく、月の明かりが僅かに入ってきていた。
ヴェルと別れた時はまだ朝だったはず。幻獣界には1時間ほどしかいなかったのにこの世界はもう夜なのだろうか。思考を巡らせてみる。記憶の奥底からとある本の内容が重い浮かび上がった。
それは『幻獣界は時の流れが違う』という事で、時差がどのくらいなのかは証明できていないという事。
その内容が本当ならば、この事のつじつまが合う。
「さて、作るか」
アイランドキッチンの後ろ側にある冷蔵庫の中を覗く。確かシルフ村などで買ったスノラ米やウリブーの肉などの食材があるはずだ。すべて組み合わせれば、カレーが作れるだろう。
ーーー誰もいじっていなければ。
「なんだと……」
「どーしたんだ?」
冷蔵庫、冷凍庫、野菜室の中に食材が1つもない。
予想しなかった展開に少々戸惑いを覚える。
いったい誰が……
「誰が… やったんだ?」
皆顔を横に振る。誰も嘘をついているようには思えなかった。
「なぁ、これは?」
ジュリィが一枚のメモ書きらしきものを見つけた。
きっと食材がない事と関係があるはず。そう信じてその紙を見せてもらった。
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食材があの場所になさそうだから、ここから取っていくぞ。
国の復興のためにって動いてるが、腹が減っちゃ何もやる気がでねぇだろ?
全員分作らなきゃいけねぇから、一応全部持ってっとく。
材料見た感じ、カレーが作れそうだな。
ちびっ子どもが喜びそうだ。
…なぜここに食材があるかわかったてか? 妖精がきっとここに来るよう仕向けたんだろ。きっと
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前は書いていなかったが最後の言い訳に『妖精』を使っている事から、材料を持ち出した犯人がわかった。
「リベロ、アンタかよ……」
そういえばあの戦いが終わった後、元孤児院、反乱軍アジトで昼飯作りに手伝わされた。
その時に作ったのはカレーだったはず。きっとその時使った食材がここにあったものなのだろう。
「勝手に使うなよ」と言いたいが、俺も調理を手伝ったため「自分で使っただろ」と言われてしまう。
完全にはめられた。
「なんか他にないの〜」
「記憶の限りない。食べに行ったほうが早そうだな」
食べに行くならメェ〜村が一番お手頃だろうが、今の時間はやっていないだろう。
そうすると行く場所が限られてくる。
「フー吉亭ならきっと今でも食べさせてくれるだろう。いや、食べさせてもらおう」
「どーしたんだよ、急に熱くなって」
この件のお詫びのような形で料理を食べさせてもらおう。
そういえば、このメンバーであそこへ行くのは初めてのはずだ。少しワクワクする。
「シド、フー吉亭まで頼む」
「了解だよ」
「来る前に事前に連絡をいれろ」と言われていたこと思い出す。
自分の育った家に予約を入れるのは不思議な感覚だった。
- Re: Change the world ( No.96 )
- 日時: 2018/05/30 14:43
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
48話 夕食
緑の国から川を挟んで北のエノースゥ大平原の真ん中にあるフー吉亭。
だいたいメェ〜村と灯火の街の間にあるのだが、どちらの地域にも属さない。
旅人ぐらいしか通らない場所にあるのになぜ飲食業を続けられるのか。
ーーーそれは安心と安全を第一にしているから。
前に野菜はサウス大陸の気候で育てられる物なら裏の畑で農薬不使用で作られていて、どこかから輸入、買うときは現地へ行き直接見て選んでいたり、生産者の方に詳しく聞いてみたり、食中毒や体に害をなす症状についても勉強し、管理方法を工夫したりなどをしているとリベロが言っていた。
「あたりまえのことだ」という感じに軽く喋っていたが、それはかなり大変な事だろう。移動費やら何やら考えるとあの料金では赤字になりそうな気がする。しかし、今のところ赤字になったという事は聞いていない。逆に売上絶好調らしい。
リベロは「妖精のおかげだ」と言っているが、実際は安心と安全を第一にするために努力し、客の信頼を得ているからだろう。
カランカランと扉を開けると鈴の音が響いた。
「いらっしゃい…… ってか、おかえりか」
「あんたに『おかえり』って言われたことないぞ」
ずっと変わらない厨房とつながっているカウンターに4人席の配置、美味しそうな匂い。
あの頃と同じように俺を出迎えてくれる。
「ワゥ」
「きゃぷぅ」
オリガの方を飛び降りたフーがフー吉の所へ向かう。カウンターの端へ行き、尻をつけて座ってなにか話している。ワゥワゥ言っているようにしか聞こえないが。
「好きなとこ座ったら、呼んでくれ」
席の都合上、シドとジュリィはカウンター席で食べる事にした。そこでシドが頼んだのは野菜たっぷり塩ラーメン、ジュリィが頼んだのは山ベリーのパンケーキ。ジュリィにもスイーツ好きという女心が一応あるみたいだ。
ーーー山ベリーのパンケーキか。そういえば、ジンがここへ来るたびに必ず食べていた。しかも朝から。
「注文、頼む」
「はいよ!」
フー吉が自分の身の丈ほどあるメモ帳を背負い、こちらへやってきた。頼む時はフー吉が持ってきた紙に直接メニュー名と席番号を書き入れるのがここのルール。
俺が頼んだのは塩焼きそば。ここで目覚めた時、試作品だと言われて食べた物の改良版だ。フレイはウリヴィ肉をサイコロステーキにし、カレーに入れたゴロゴロカレー。フレイヤはソルト草が具材のむすび定食。オリガは具材たっぷりホットサンド。オリガ、ジュリィの物はどれも夕食ではなく、朝食向きのものだった。
「へい、注文の品」
もちろん、食べ物を運ぶのはリベロだ。
「そんなんでたりるのか?」
「ど〜してもこれが食べたかったからさ」
オリガは至福のひと時を楽しむかのように美味しそうにホットサンドを食べている。
「なんか疲れが取れたような気がする……」
「そん中には疲労を回復する効果があるファントム・パンプキンが入っているからな」
「なるほどね」と呟くように言ったオリガは再びホットサンドを口にする。
ーーーそういえば、オリガは料理が上手になったのだろうか。
昔に孤児院の中から料理本を見つけたためか、料理に興味を持ったらしい。「ちょっと作ってみたいものがある」との事なので緑の国へ院長と買い出しに行き材料を買い、オリガに調理を任せてみた。
その時に出てきたのはウリヴィ丼。ウリヴィと呼ばれる猪のようなモンスターの肉を使った丼。
湯気が立ち、とろ〜りとしたタレが肉と合わさって輝き、見た目だけでもは美味しそうに見えた。
食欲を増進させる香りに誘われ、ウリヴィ丼の一部を口に運ぶ。
野生の動物特有の鍛えられた肉の弾力、甘さと辛さが混じり合ったタレ、ホカホカのご飯が口の中で絶妙なハーモニーを奏で、とても美味しい、と思って入られたのは味を知る前だけだった。
肉の火加減、ご飯のふっくら具合はとてもよかった。しかし、タレが異常なほどにまずい。ドロッとした何か−−−−例えるならスライムのような物を口にしている感覚だった。味が何とも言えなかった。
何を入れたのか聞いてみると、「もしかしたら調味料入れ間違えたかも。まいっか」と軽くなかったことにしようとしていた。
あの料理の味は悪い意味で忘れられなかった。
「オリガ」
「ん? なに」
「お前、料理上手くなったのか?」
「ま、まぁ、上手くなったはずだよ」
挙動不審すぎるだろう。それに『はず』とはなんだ。
「そういえば、オリガは普通の家庭料理ならできるようになったんだって〜」
「フレイヤ、ナイスカバー」
小声で言ったのだろうが、隣に座っているがゆえにまる聞こえだった。
でも、フレイヤが言うには本当のことだろう。家庭料理さえできれば一応だいたいは生きて行ける。
「ま、よかったな」
「なんか初めてレオンに褒められたような気がする……」
そんな会話を聞いていたのか、ジュリィが少し笑っているのが背中から伝わる。
ジュリィもあの丼の被害者だったからだろうか。
「ゲホッ、ゲホッ」
「だ、大丈夫かい……?」
「変などごろに、入っだみだいだ」
ジュリィは笑っていたせいか、パンケーキが自分ではよくわからない変なところに入ってしまったらしい。
そのせいかさっきから咳が止まらず、ずっと噎せている。隣に座っているシドがジュリィの背中をさする。
「へい、水」
「ありが、どう」
た行の発音に濁点がついてしまっているのも変なところに入ってしまったからだろう。
リベロから水を受け取り、一気に飲み干すとフーが「どんまいワン」とでも言うかのようにジュリィの腕にポンッと前足をおく。
「ワゥ」
「フー…… どうしたんだ?」
「きゃっぷ〜」
どうやらパンケーキが食べたいだけだったらしい。
ジュリィはフーのサイズに切られたパンケーキをフーへ渡すと、フーは人間がおにぎりを食べる動きと同じように前足を使ってパンケーキを少しずつ食べていった。
「きゃぷ」
「どうした、フー吉」
「きゃぷ」
フー吉がリベロのスマホの前で鳴いたとたん、リベロのスマホがプルルルルと鳴り出した。
まさかフー吉、お前に予知能力がッ……と思ってしまうが実際のところ、リベロに構って欲しかっただけなのだろう。
「もしもし、あぁ? ……そりゃ大変だな、どっちもよ。だからこっちから有能なやつを送る。……大丈夫だ、いろいろできるやつだからよぉ」
画面をスライドし、電話を切る。
「おいレオン、なんか用事入ってるか? 明日」
「特にないが、やる事は…」
「そうか、なら竜牙村に向かってくれ」
「はぁ?なぜ俺た…」
「いいから! とりあえず村もここも未来が無くなるかもしれねぇんだ。いいな?」
「だからなぜお…」
「村長に言っちまったから、言ってくれよ」
「……わかった」
話を最後まで聞け。
でも、任された仕事はやるしかない。
「だが、今日は夜遅いから明日行く。それでいいな。あと」
皆食べ終わっていた。ならば会計にしたいのだが、ちょっと今日はお金を払う前に決着をつけたい話がある。
「いいかげん俺が買った食材勝手に使うのやめろよ」
これだけは、これこそは今日こそ決着を決めたい。
いつもは言われっぱなしだったが今回こそは。
- Re: Change the world ( No.97 )
- 日時: 2018/05/30 15:22
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
49話 トーゲ・ンガへ
朝日が世界を照らし始めてから何時間かたったコックピットの中。
俺は運転席の左側の席に座って外の景色を眺めていた。
世界地図の真ん中にある中央海からみて東にあるイースト大陸。
その大陸の南の方に位置する竜牙村へ向かっていた。
イースト大陸へ来るのは何時ぶりだろう。
前に来たのは、イフリートの魔石を取りにきた時だっただろう。
そういえばアイヤは無事生活していけているだろうか。別れた時はじいちゃんを目の前で亡くしたショックで立ち直れていなかったはずだ。それに身寄りをなくしたことで1人になってしまっていたと聞いた。周りの人が優しいといいのだが……
「そういえばさ」
「ん?」
コーヒーを片手に本を読むシドが隣の席ーーー運転席から話しかけてきた。
コーヒーが本にかかり読めなくなるという事は考えていないのだろうか。
「リベロさんとの決着、ついた?」
「アレか…… どちらも寝落ちでつかなかった」
「寝落ちだったんだ……」
昨晩の事だ。
みんなが飛空艇のマイルームへ戻ったあともリベロとずっと話していた。
今日こそ決着をつける。そう決めたのに溜まりに溜まった疲労や時間が遅かった事から、どちらも途中で寝てしまったのだった。
「次こそは必ず決着をつける。そう約束してきたんだ」
「決まるといいね」
今朝、ちゃんと約束した。次こそ、次会う時にはと。
ーーーあれが会うのが最後だったらどうする?
不意にそんな考えが浮かぶ。次会うのが戦いの後だったら俺は消えてしまっているかもしれない。
もちろん、消えない可能性があるという事はわかっている。しかし、輸血の時に起きた問題を考えると消えてしまう可能性の方が高い気がする。
約束。する時はとても簡単なのに、果たそうとする事を考えると嫌になってくる。
あの時なぜ、この事を考えなかったのだろう……
「いろいろ、考えているみたいだね」
「……まぁな」
いろいろ考えている、か。
オーディンに会えば何事もスッキリ解決できると思っていたが、悩みが増えてしまった。
誰にも言えない、自分自身の悩みが。
この悩みがなくなるのはきっと……
なんとなく前を向く。すると目の前に活発な火山が見えてきた。
確かその火山の麓に位置するのがムスペルヘイムだったはずだ。ということは
「火山が見えてきたって事は、そろそろ着くって事だよな」
「そうだよ、さて降りますか。ん?」
「どうした?」
「遠回りしてもいいかい?」
「俺は構わんが」
シドが下にある竜牙村を見て、何かに気づいたらしい。
飛空艇の高度を下げるのではなく、右に旋回させムスペルヘイムの方へ行くように仕向けた。
「ムスペルヘイムから竜牙村まで、歩いて行く事になるかも」
「かなり距離があるんじゃないか?」
「飛空艇発着場が村にないからしょうがないさ」
ムスペルヘイムから、竜牙村まで歩く……だと。
つまり、トーゲ・ンガを超える必要があるという事だ。
ーーートーゲ・ンガ。その名を聞くと誰もが坂道を思い出すほど坂道だらけのカラフルな道。
建物がちゃんとあるが、人の住んでいる痕跡がないのだが、特産物のカラフルな煉瓦が注文すれば作って送ってくれる事から誰かしらはいると言われている。
「そろそろ降りるよ」
今度こそ高度を下げる。
ムスペルヘイムに着陸した。
「相変わらず暑いなぁ、ここは」
「火山もありますし、何と言っても……」
「温泉街!今度こそ入れるといいな……」
前にイフリート関連でここへ来た時は探索も観光をせずに帰ってしまった。
また、帝国の属国という事もあったためすぐ帰ってしまった。しかし、ここは観光地という事もあってか帝国の管理は甘く、ムスペルヘイム事態で管理している独立国のようになっているため、あまり警戒せずに過ごしていても大丈夫そうだ。
「あれ、お兄さん達ですか?」
「ん?」
後ろを振り向くと、10歳ほどの少年が立っていた。
アイヤだった。前よりも少し身長が伸びた気がする。
「そうだぜ…… ってアイヤか?」
「そうですが…… どうしましたか?」
「大きくなったな、身長」
「成長期ってやつですよ。それに」
アイヤが後ろを振り向く。遠くから白い女性がこちらへ来ているのがわかる。
色白の肌にシルクのように白く輝く長い髪をなびかせ、童顔に見える。
こんな日差しのムスペルヘイムとは場違いとも思わせる格好に姿。
只者ではないような雰囲気を纏っている。
「シルクさん、この人たちが言った人だよ」
「あら、そうなの。初めまして、この子の付添人のシルクです」
「初めまして、アイヤの話からして私達の事はわかっているようですね」
「……えっと、なんでしたっけ? 忘れちゃった……」
「えぇ!?」
「すいませんねお兄さん達。シルクさん、天然というか、馬鹿というか…… 不思議な人なんで」
シルクさん、やはり只者ではなかった。
アイヤとの関係は付添人という事しかわからないが、アイヤは大丈夫なのだろうか。
ーーーまぁ元気そうで良かった。
「あ、そろそろ電車の時間だわ。行くわよ、アイヤ」
「ホントだ、お兄さん達またどこかで」
シルクさんに連れられアイヤが駅の方へ俺達に手を振りながら向かっていく。
それを見届け、俺達もトーゲ・ンガの方向へ向かった。
- Re: Change the world ( No.98 )
- 日時: 2018/06/03 15:32
- 名前: 和花 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
8月から書き始めたCTW。もう9カ月も経っているとは…
そして閲覧数があと少しで2000。募集スレは1000を超えました。
みなさま、ありがとうございます。
それでは、50話を。
50話 トーゲ・ンガ
「暑さの次はカラフルな坂か……」
目の前に広がる光景を見てフレイが呟く。
未だに謎の多いイースト大陸。この大陸を領地としている国、ソエルは特殊な気候のレイン・コールが晴れないと入れない。それに情報が記された書物、伝説などが全くないためどのような場所なのかもわからない。
また、トーゲ・ンガのように坂道が多かったり火山があったりとなぜこのような地形となったのかもわからない。よく研究の対象にされるが、解き明かされていない事が多い。
「誰もいないのかな?」
家や八百屋のような建物が道の両端に立ち並ぶ。
窓から中を伺えるが、住んでいるような痕跡はない。
噂話は本当のようだ。
「ここに今いるのはあたしだけですよ」
「!?」
突然声を掛けられた。
さっきまで誰もいなかったはずの後ろに女性が立っていた。
見た感じだと、俺達より少し年上。グレープ色のショートヘアが似合っている。
エプロン姿という事は……
「もしかして、特産物の煉瓦を作っている…」
「そう、あたしはセナ。ここを統治している者よ」
セナと名乗った女性は、両手を広げて「ここ全てを統治している」と表した。
人の姿を見かけないため統治するのは簡単そうに思える。
「そういえば、なんでここに人がいないの〜?」
「それはここが住む場所ではなくて職場だから。あたしの両親がここ統治している時は村みたいなものだったよ。でも今はここをカラフルな煉瓦を作るためだけの場所にしているの」
「なぜ?」
「実は、あたしぐらいの子はみんな都会に憧れて、レヴェリーとかに行っちゃたんだ。それで残っていたのは高齢の方ばかり。ここは坂ばっかりでキツイし、近くの店に行くのも大変だから住民会でムスペルヘイムへ引っ越して、ここを職場体験場にしてみたらと提案したら大当たり。ということ」
セナさんは高齢の方のために提案したのだろうが、見方を変えたら追い出したという事になってしまう。
だが、大当たりという事は皆賛成したという事。職場体験場にしたとはいえ、現実はどうなのだろうか。
──そんな時、プルルルルとセナさんの携帯が鳴った。
「はい、トーゲ・ンガ煉瓦作り体験教室です。……えっと来月から開始で予約入っているので再来月になってしまいそうです。……あ、わかりました。ありがとうございます」
ピッと電話を切る。
「来月から体験教室を始めるんだけど、予約がかなり入ってきているの。準備とかしないといけないからあたしはこのぐらいで」
セナさんは走って俺達とは逆の方向に走っていく。
煉瓦作り体験、どんなことをするのか少し気になる。俺ぐらいでもできるのだろうか。
──できるならば、やってみたい。
「さて、僕達も行こうか」
シドに続いて歩っていく。まだ何個も坂があるみたいだ。
周りを見渡すと……
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