ダーク・ファンタジー小説
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- Change the World 【カキコ版・旧】
- 日時: 2019/03/27 13:31
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
削除の理由は【大切なお知らせ】を参照。
(大会入賞は削除対象外のようです。こちらはカキコ版として残しておきます)
2017年の小説大会で銅賞を受賞しました。
・見直しをサボっているため、最初と今で地名や内容が異なる場合があります。
発見次第、直していく予定です。*ただいま修整中
・小説家になろう でも連載開始しました。
これは、人と幻獣の絆の物語。
悪逆非道な帝国により離ればなれになってしまった少年少女たち。
だが、長い時がたち再会する。
──そんな時だった。
あの帝国が再び動き出したのだった。
少年少女たちはそれぞれの思いを持ち旅立つ。
帝国を止める事を
これ以上悲しむ人を増やさない事を目的にしながら……
そして知ることとなる。宿敵の目的、幻獣の覚悟を。
以上、あらすじです。
ーお知らせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始しました
連載が少し遅れ気味です。
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メインキャラクター
レオン・ハイレゾ
主人公。17歳。武器は剣。魔法の属性は無。乗り物に酔いやすい。
小動物に好かれやすい。髪色は黒い。姿は簡単にいうと、少女漫画で出てくるクールなイケメン。白いTシャツに黒いライダースジャケットを羽織り、チャックは前回。暗めの色のジーンズをはいている。料理好き。
ミント・グリーンティー
みんなのお姉さん的存在。17歳。武器は鞭。魔法の属性は風。
髪色は薄緑。ポニーテールでまとめている。デニムシャツワンピースの中に黒色のロゴが入った白いTシャツを着て、ミニスカぐらいの丈のデニムをはいている。
オリガ・ハイウィンド
頭にうさ耳に縛りをしたバンダナをつけている。16歳。武器は槍。
魔法の属性は氷。レオンに片想い。髪色は空色(水色)で肩までのショートカット。カーキ色のミリタリーシャツの下に白いレースのシャツ。それにショートデニムをはいている。(踝辺りまでのスパッツも)フーの世話役(一応このメンバーの中では飼い主となっている)
フレイ・ウォーリア
緑の国の現国王。フレイヤとは双子の兄。17歳。武器は己の拳。魔法の属性は火。
やる時はやる男。ボケる時はボケる。金髪で前髪を上にあげているためソフトリーゼント風。動きやすさを求めた服装で、ゆとりのある白いハーフパンツ(膝丈)に白いタンクトップ。その上に目に優しいくらいの紅色の半袖のジャケット(ロゴ付き)を着ている。
フレイヤ・ウォーリア
なぜか森の中で暮らしていた。フレイの双子の妹。17歳。武器は銃。魔法の属性は土。
兄に突っ込みを入れたり(蹴る、殴るなど)など止め役。金髪で長い髪を肩辺りでツインテールにしている。(おさげに入るのかな?)白いワンピースに腰辺りにベルトをしている。ベルトについているのは武器の銃。黒いスパッツをはいている。
シド・メロ
元帝国ラーミナ特殊部隊の一員。追放されて雪の国へ。19歳。一応医者。武器は双剣。魔法の属性は雷。
髪色は銀髪でストレート。服装は脛まである白衣着て、中には薄緑のシャツにネクタイをしている。ズボンは茶色。白衣を脱げば学生のような格好。飛空艇の基礎プログラムや部品にとても詳しい。
ジュリィ・ティーク
さすらいのギャンブラー(一応踊り子)。妹がいる。19歳。魔法の属性は水。
武器はタロットカード。髪色は茶色で長く、毛先は鋭い。服装は白い肩出しガウチョ風のシャツに赤茶色っぽい膝下まであるスカートのような物をはいている。(長い布を履く物にした感じのやつ)くるりと回るとスカートのような物が綺麗に舞い広がる。
こんな感じで頑張ります!
初投稿のため、少し物足りないと思います。
目次
一気に読みたい方>>1-
第1章 良くも悪くも再会 >>2-15 (途中コメントもあり)←ありがとうです!
1話>>2 2話>>3 3話>>6 3.5話>>7 4話>>8 4.5話>>9 5話>>15
第2章 皇帝の野望を知れ>>16-25
6話>>16 7話>>17 7.5話>>19 8話>>20 9話>>21 9.5話>>22 10話>>23 >>25
第3章 真実>>26-38
11話>>26 12話>>27 13話>>28 14話>>29 15話>>31 16話>>32 17話>>33 18話>>36
19話>>37 20話>>38
第4章 それぞれの思い>>39-94
20.5話>>39 21話>>41 22話>>42 23話>>43 24話>>44-45 25話>>46 26話>>47 27話>>48
28話>>49 >>51 29話>>55 29.5話>>56 30話>>58 31話>>65 32話>>66-69 (とても長いです…)
33話>>71 >>74 34話>>75-76 35話>>77 36話>>78 37話>>79 38話>>82 39話>>83
40話>>84 41話>>85 42話>>86-87 43話>>88-89 44話>>92 45話>>93 46話>>94
第5章 恩返し(仮題名)
47話>>95
第4章から、章の区切り方を変えました。(今までは『再会編』など1つの編で1章。今は3つぐらいの編が合わさって1章。)
もしかしたら、フィルタリング機能でこの小説が書けなくなるかもしれません。
ですが、かけるだで書きます。
コメントはバシバシしていいですよ! (してくれた方が嬉しいです…)
返信を必ずしますのでお気軽にどうぞ
☆この小説の歴史☆
2017.8.26 開始
8.28 番外編を別スレで開始(URLで行けます)
8.28 閲覧数100突破。
8.29 第2章開幕。
8.31 キャラ情報更新
9.11 閲覧数150突破。
9.24 第3章開幕。
9.25 閲覧数200突破。
10.16 閲覧数250突破。
11.1 リク依頼・相談掲示板にて『CTWいろいろ募集』を開始。
11.2 閲覧数が気がついたら300突破
11.3 もう閲覧数350突破。更新できなくていつもすみません…
11.7 閲覧数400突破。
11. 16閲覧数450突破。
12.7閲覧数550突破。
12.18閲覧数600突破。今更だけど第4章開幕(書き忘れてた)
12.27閲覧数650突破。
12.30閲覧数700突破。
12.31キャラクター投票開始
1. 1閲覧数750突破! 今年もよろしくお願いします
1.13閲覧数800突破!
1.22閲覧数900突破
2. 5閲覧数1000突破!!
2. 6 2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞
5.22第5章開幕
6. 5閲覧数2000突破!物語も折り返し地点へ
8.3小説家になろうで連載開始
- Re: Change the world ( No.84 )
- 日時: 2018/04/07 01:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
39話、実は3500字オーバーしています。重かったらすみません。
40話 オリガの思い
「お〜い」
声が聞こえる。俺を呼んでいる…?
夢だったりしないだろうか。
「お〜い、起きてよ」
この声はオリガなのか? そろそろエリア1へ行くのだろうか。
…でも、まだ寝ていたい。
「…起きないと、ふふっ」
まずい。現実だ。このままじゃ何をされるかわからない。
「…悪かったな」
目を覚ますと、目の前にオリガがいた。目が合うとオリガはニコッと笑い、横に座った。
目の前に見える景色は、石レンガの地面に柵。そして遠くに水平線に沈む太陽。
もうこんなに時間が経っていたのか。寝てる間に何も盗まれていないといいが…
誰もベンチから動き出さない。オリガは何が目的でここへ来たのだろうか。
「…何しにきたんだ?」
「休憩。いっぱい乗ったから疲れちゃってさ。あと、フレイにレオンの様子見てきてくれっていわれてさ〜 …まさかだけど、ずっと寝てた?」
「あたりだ。ここ、懐かしく感じるんだ… だから」
「なんとな〜く、わかるかも」
立ち上がり、柵の方へ向かう。柵に海を見ながら寄りかかる。
周りにはこの時間のせいか誰もいない。…つまり、2人っきりだ。
フレイ達も残ったアトラクションに乗っているらしく、当分来ないだろう。
今がチャンスかもしれない。
「なぁ」
「ん?」
「俺… 前に『いろいろ聞かせてくれ』って言ったよな」
「うん、私を助けてくれた時にね」
「今でも… いいか?」
「誰もいないから… いいよ」
落ち着け、俺。
何に緊張しているんだ。素直になるって決めただろう。
…きっと、これは緊張じゃない。きっと。
こんなふうに思っていること、バレないでくれ…
相手は現役諜報部員。声のトーンとかで分かってしまうかもしれない。
「ルミルから裏で聞いたんだ。『あの刻印は刻印を押される事を受け身が願ってくれないと、あんな風に押されたことにならない』って。…本当か?」
それは、皆に内緒でルミルから言われたこと。
ストレートに聞いてしまったがいいのだろうか。よく、『女の子の心は繊細だ』と言うが…
「……本当、だよ。私、願ったの。刻印は力がアップするって聞いたし、その他の事、全部聞いた。自分が自分じゃなくなるかもしれなかったけど、克服して利用しちゃえばいいやって思ったの。でも、あんな事になるなんてね… 私の考えが甘かったよね。 …本当にごめんなさい…」
「そんな謝るなよ。結果的に無事だったんだ。だから、な? でさ、なんで…」
「強くなりたかったの。みんなに追いつきたかったし、足手まといになりたくなかった。それに…」
オリガの目が潤い輝く。あ… 俺、言いすぎたみたいだ。と感じた。
オリガが泣くことなど、滅多に見たことがない。遠い昔に「涙は人の前で見せるものじゃないもん」と言っていた。もしかして、ずっと考えたり、悩んだりしていたのだろうか。1人で抱え込んでいたのだろうか。フレイがパーティーの時に言っていたかもしれない『オリガはよく1人で抱え込んでしまう』的なことを、今改めて思う。
「それに… 嫌だったから… 戦いとか終わったら、誰かが、いなくなるのが… 嫌だった、から…」
震える声で微かに言ったのが聞こえた。表情は下を向いていて髪に隠れているためわからない。
「嫌だ」などと素直に他人へ自分の気持ちが言えない、気持ちの晴れない今の社会。それがこんなにも重りになっていることがよく伝わる。
たとえ憎しみや恨みのある帝国相手でも、’’戦えない状態’’ つまり生きているが戦闘はできない状態にし、敵を死なさないように掟を守って戦っていた俺達反乱軍。でも、帝国… その他諸々の敵となった者… 立ち向かってくる者達はそのような掟などない。そのため、本気でかかってくるので身近かな人がいなくなってしまうということはたくさんあった。たとえ戦いが終わっても、いなくなってしまった人々は戻らない。共に過ごすことなどできない。それがオリガにとっては嫌だったらしい。
「つまり、自分がもっと強くなって誰もいなくならない結末にしたかったんだな」
オリガは静かに頷く。軍に入ってから… いやもしかしたら孤児院が襲われた時から考え、悩んでいたのだろう。ずっと、誰にも話さないで1人で抱え込んでいたのだろう。そして、1人で解決しようとしたのだろう。オリガの苦しみは俺達にはきっとわかりきれない。だがそれに気付き、手を差し伸べることができたと思う。だって俺達は信頼できる仲間… 切っても切れない絆で繋がっている仲間のはずだから。
「1人で抱え込むのやめろよ… 俺達… いや、言いにくかったら俺だけでいいから… 何かしら言ってくれよ。もう嫌なんだ… 何もできないで終わるのは…」
何もできないで終わる。守りたいものとか守れないで終わる、戦えたのに何もできず失って終わる。そういう事が俺の人生で悔いとして残っている。ジンとの最期とか、本当によくしてもらっていたのに俺は何もできなかった。それがただ悔しくてしょうがなかった。
せめて、大切な人だけは何もしないで終わりたくはない。こんなふうにオリガは言ってくれた。だから助け船を出して綺麗さっぱり、スッキリと解決したい。
「それに、力とかなんて関係ない。大切なのは… 思うことだ。」
かたい思いあえあれば、人は前へ進められる。いや、何かしらの思いがあれば行動できる。
守りたいとか、救いたいとか思っていれば自然と体が動く。きっとミントはそのような思いがあったからあのような結末を選んだのだろう。オリガだって、誰かがいなくなるのが嫌という思いでそのような行動をしたのだろう。だからこそ大切なのは、思うことなんだ。
今の俺がオリガにできること… それは…
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泣いちゃった。こんなふうに自分の気持ちを言うなんてこと、初めてだったから。
「涙は人の前で見せるものじゃない」それがモットーの私だったけど、今回ぐらいはいいや。
まさかレオンにこんなふうにしてもらうなんて思いもしなかった。
「俺を頼ってくれ」だなんてみたいな事自分から言い出したのもそうだけど、今みたいに優しく暖かく抱きしめてくれるなんて…いつもとの姿とのギャップがあってちょっと戸惑っちゃうなぁ。
でも今は、その暖かさを感じていたい。悩んでいる事とか全部包んでくれそうな暖かさをずっと…
永遠に片想いで終わっちゃうかと思ったけど、無事? 出会えたし両想いにもなれるなんて。
やっぱりレオンはかっこいいよ。その姿、思い、優しさは。
私もいつかなれるかな…? 自分に子供ができたときとかに。
この人に出会えて本当に良かった。運命って… 不思議なものだなぁ
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それは、オリガをいろんな意味で支えてあげること。
俺は、いつの間にかオリガの笑顔とかに惹かれ、好きになっていたのだろう。
最初にフレイに言われた時は完全に否定したが、今なら認めてやってもいい。
約束、まだ覚え… あ!
「なぁ…」
「何…?」
「約束の場所、こわれっちまったよな…?」
「うん。今、決めなおそう」
元通り、柵に寄りかかる。
なにか待ち合わせにいい場所あっただろうか。
俺の記憶を探る限りはない。
「なんかいい場所あったかな〜」
オリガが頭をぽりぽり書きながら呟く。
さっきまで潤っていた目も、今では元通りだ。
「似たようなところ思いついたの。」
少し間を空けて小さな声で呟く。
「城の玉座の後ろのテラス。ほら、私ら2人だけに女王さまが許可取ってくれたでしょ? 夜、星空の下で待てっるから」
「『待ってるから』? なぜ俺が遅れる前提なんだよ」
「いい間違えだよ! もう、そんなこと突っ込まなくていいの!でも、来なかったら私ずっと待ってるから。どこにも行かないから、安心してよ」
「フッ、どうせ途中で飯食べたりするのにどこか行くだろ?」
「笑わないで! 星空の下って聞こえなかった? 私が待つのは夜限定ですよ〜」
笑いがあふれる。こんなふうにいつまでも笑っていられたらどんなに人生楽しいだろう。
ん?
オリガのスマホの着信音がなる。
「はいはーい、ん? あ、了解」
「なんだって?」
「全部のスタンプ貰ったからエリア1の事務所へ来いだって」
「さて、行くか」
俺達は、歩き始めた。
- Re: Change the world ( No.85 )
- 日時: 2018/04/15 20:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
41話 関係
「お疲れ様です。約束通り差し上げますね。ついてきてください」
スタンプがすべてうまり、事務室へ戻った俺達。
タンドさんは誰も見ていないことを確認すると奥の本棚を動かした。
どかした本棚のあった場所には、先が暗く、どこまであるかわからないほどの地下へと続く階段があった。
まさか、このような場所に秘宝の眠る場所があったとは。
少し降りると、後ろの方で本棚が動く音がした。
「出口、なくなっちゃったけどいいの?」
「大丈夫。別の方法がありますし、あっちではニョーがうまくやってくれているはずですから」
さらに降りると、部屋があった。
壁には松明が飾られ、辺りを照らしている。その壁に描かれていたのは…
「これは… 幻獣の壁画?」
土で作ってあると思われるレンガの壁に描かれていたのは幻獣の絵。
少し消えかけて色が薄くなったりとしているが、だいたい何が描かれているのかわかる。
「そうです。ここに描かれているのはそれぞれの属性を司る神とその使い… 幻獣の絵です。昔、私の祖先が描いたとされています。」
どの方向にも壁画がある。中心には人… 神がおりその隣に幻獣がいる。幻獣の背後には建物らしきものが描かれていた。それについて聞くと、「その建物は魔石のありかです」とタンドさんは教えてくれた。
確かに、今まで魔石を求めて行った建物に似ている。ここを見ればどこに何があるかすぐわかりそうだ。
「守一族と神と召喚士と幻獣の関係、わかりますか?」
「常識ってカンジで覚えたけど、あんまり理解できてないぜ。俺は」
それでいいのか国王。
先が思いやられる…
「では、説明しましょう。うまくできるかわかりませんが…」
その後、タンドさんは壁画を使って説明してくれた。
「この世に魔法などの属性が出来た時、同時にそれを司る神が生まれた。
神は魔力が強く、特に自分の司る属性の魔法の威力は計り知れないものだった。
ある時神は人々に魔法を教えた。すると文明は栄えていった。
文明が栄えることで人は力を持ち、互いに力を求めて争うようになった。
そのうち、神の力をも求めるようになっていき、神は自分を守るための使い…幻獣を生み出した。
力を求める人、自分を守るために生み出された戦うための幻獣は戦うようになっていった。」
「だからバハムートはあんなふうに言っていたんだ〜」
「バハムートにあっているんですね。さっき言った戦いでその力が危険視されバハムートは魔石とされてしまったんです。だからそう言ったんだと思います。」
タンドさんは説明を続けた。
「だが状況はずっと変わらず、どちらも犠牲をうむばかりだった。
そんな時、世界を創造したとされる神… 創造神が皆の前に現れこう言った。『争いを止め、共に手を取り合いなさい。』と。そこで神は魔力の強い人間を選び、契約させ力を与えた。それが私達守一族です。
しかし戦うために生み出された幻獣は危険なものばかりだった。そのため神は幻獣をバハムートのように魔石に変え世界の様々な場所へ安置した。
ある日、幻獣はそれぞれの主へこう言った。『これでは、存在する意味… 生きる意味がない』と。
神にはもう、戦う理由がなかったため幻獣は必要なかった。消してしまってもいいと思った。神にとって幻獣は自分を守るための道具にすぎないのだから。でも幻獣にはそれぞれの感情…心ができてしまっていた。戦いのおかげで道具ではなく、1つの生き物となっていた。だからと言って、巨大な力を持つ生き物を自由に野放しにするわけにはいかなかった。
そんな時、神と契約した守一族の者が『我らが作り上げた召喚魔法で幻獣を呼び出し、共に協力して生きていく事を望む者が我が一族にはいる』と言い出した。
神は思いもよらぬ言葉に驚いたが、それなら安全だと思った。
なぜなら、創造神の言った『共に手を取り合う』という事ができ、幻獣を手放すことができたからだ。
そして、『共に協力して生きていく事を望むもの達』はそれぞれの幻獣を従えるために守一族と離れ、神との契約を無きものとし幻獣と契約した。離れた者達は後に召喚士と呼ばれて言った。
…という感じですかね」
守一族と神と召喚士と幻獣の関係。それは古の頃から続くものだった。
「さて、秘宝についても説明しますね。この『他世界への鍵』は、その名の通り別の世界へ行くための鍵です。
この鍵が対応している扉は世界には3つあります。しかし私が把握しているのは幻獣界への扉のみです。」
「どこにあるんだ?」
「この大陸の北側にある『召喚士の里』の下です。私は守一族の者なので詳しくはわかりませんが…」
「ありがとう、タンドさん。あとは私達に任せて」
タンドさんがオリガを見て何かに気付く。すると、何か安心したようだった。
「任せますね。では、これを」
宝石のように輝く石… 『他世界への鍵』を貰った。
「…どうやってここから出るんですか?」
誰もが思った事をシドが聞いた。
ここへ来る途中に、別の方法があるとは聞いたが…
「私が今から私以外の者を対象にして転送魔法を唱えます。行き先は、召喚士の里の入り口です」
「ありがとうございます。 …飛空艇もですか?」
「はい。戻ってくるのも大変でしょうし」
タンドさんは瞬時に詠唱を終えた。
辺りが光に包まれ、その眩しさに俺は目を閉じた。
- Re: Change the world ( No.86 )
- 日時: 2018/04/17 21:38
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
42話 里の案内人
召喚士の里。それは、十数年前に廃墟となってしまった里。
そして、ミントの本当の故郷。
その場所に俺達は今立っている。
木々の隙間から漏れる星や月の光で辺りはなんとなくわかる。
家は屋根が崩れていたり、半壊していたりと様々。壁には蔦が生えていたりもする。
道は石レンガで作られているようだが、苔が生え隙間から雑草が溢れていて歩きにくそうだった。
奥にある広場であったであろう場所にある噴水の水は枯れ、人気が全く感じられない
はずだった。
「動いた…?」
シドが壁が少し崩れている家の方を見る。
目を凝らしてよく見ると、茶色い尻尾が見える。
「とりあえず、行ってみようよ〜」
モンスターかもしれないため、慎重に近寄っていく。
歩くと雑草が音を立て揺れてしまった。それに気づいたのか尻尾が動き、顔が見えた。
子供のような外見で、金髪の右側を編み込みにしたストレート。耳が尖っている。
…目が合ってしまった。
「!?」
「あ…」
尻尾を持つ子供はすぐに剣を取り出し構えた。
子供のような外見に尻尾… クロエルだ。
クロエルが一歩こちらへ踏み出そうとした時、フレイヤが前に飛び出し叫んだ。
「ちょっと待った〜!」
クロエルが驚く。
「私達は敵意ありません! ほら、構えてないでしょ」
クロエルが俺達を見る。
そして、手にあった剣が姿を消した。
「ここに何しに来たの?」
クロエルが初めて喋った。その声はまさに子供の声だった。
「幻獣界へ行くためにここにやって来たの。あと、個人的な話になっちゃうけど、帰郷ってところかな」
オリガにも召喚士の血が流れており、遠い昔に祖父母に会いに家族でここへ来たことがあると前に話していたことを思い出す。
本当の故郷に帰る…ってどんな気持ちなんだ?
俺は幻獣界の民だと書かれていた。しかし、正直なところ孤児院へ来る前の記憶が無い為本当なのかわからない。でも、もうじき幻獣界へ行く。そこの王のオーディンなら俺の事がわかるかもしれない。わずかな希望を抱く。
「敵じゃない?」
「最初っからそうさ。お前から仕掛けたんだろうが…」
「ごめんなさい、おばさん。ここへ来る人間達、いつも襲ってくるから…」
「あ、アタシが… おばさん…」
19歳にとってその言葉は衝撃的なものだっただろう。
…俺もそう言われたらさすがにショックだ。
「ま、それは置いといて。どこか休める場所はないかい?」
「それなら、ここ。他、危ないから」
それは、クロエルが隠れていた家だった。
中に入り、転がっていたランタンに火を灯しそれを囲むように壁に寄りかかり座る。
クロエルの名はヴェルと言うらしい。
年は外見よりももっと上で、俺達よりも700歳ぐらい上らしい。
さすがモンスター。長生きなヤツはほんと長生きだ。
それを聞いてジュリィは「お前の方がよっぽどおばさんだろう」と思ったであろう。
…しかし、外見だとヴェルの方が若く見える。 …外見だと。
「『他世界への鍵』を持ってるって言ったね」
「幻獣界へ行くには、必要だからな」
「それを持っていて輝きを失ってないなら、幻獣界へ行けるよ」
ヴェルがジロジロと『他世界への鍵』を見つめる。
珍しいものなのだろうか… 他の宝石と変わらないような気がするが。
「力、取り戻した方がいいかもね」
「力?」
「そう。輝きがあっても鍵の力がなければ行けないよ。狭間に行っちゃうかもしれないからね」
「どこで力を?」
「今日は疲れたから明日。案内してあげる。ヴェルはここの案内人だから」
とりあえず、幻獣界へ行くのは後になりそうだった。
ランタンの火を消し、眠りにつく。
今日1日だけで、いろんな事があった。この旅はあとどのぐらい続くのだろうか。
世界の平和を願うのなら早く終わってしまった方がいいかもしれない。だが、この旅が終わったら皆それぞれの道へと歩んでしまう。せっかく会えたのだからまだ一緒に話したり遊んだりしていたい。
まだ、旅が続くことを願って俺は眠ることにした。
- Re: Change the world ( No.87 )
- 日時: 2018/04/20 18:54
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
42.5話 シドとジュリィの思い
正直なところ、僕はこの場所で深い眠りにつくことはできなかった。
静かで月光が綺麗な場所なのに何でだろう。座っているから?
とりあえず、歩いて体でも伸ばしてリラックスしよう。
眠りを妨げないように静かに立つ。崩れた壁から外に出てみた。
石レンガの道を歩いていく。雑草が生えているため少し歩きにくい。
石レンガの道に沿って建てられている家は、人が住めるような物ではないぐらい崩れたり、壊れたりしている。
なんとか壁が崩れているぐらいの程度の家もあり、休み所ぐらいならできそうな場所もあった。しかし、安全の保証はできそうにない。
壊れ具合から見て、この里は植物などの生き物を除いて滅びた当時のままに近いようだ。
でも、生き残った人がいた様な形跡がない。もしかして滅びた時に全員… あるいは…
『私が孤児院に来る前… 院長に助けられた時、私以外、里に人がいなかったって聞いたことがある』とミントが前に言っていた。
里の者はいったいどこへ…?
そうこう考えているうちに、大きな木のある場所に辿り着いていた。
ここだけは他と違い、雑草は生えていなく、壊れて危険な場所もない。
森に囲まれた草原は月光により輝き、夜とは思えないほど明るい。
その草原の真ん中に里を見守っているかのようにたたずむ巨大な神木。葉の一つ一つが風で揺れ、様々な個性を引き出していた。まるで、人間かのように。
「大きい…」
「そうだな」
「う、うわっ!?」
急にかけられた声に驚く。
後ろを向くと、ジュリィが立っていた。
「そんなに驚くことしたか…? アタシ…」
「背後に急に立たないでくださいよ…」
「急に? …ずっとついてきていたんだが」
「ま、まぁ、ともかく! ジュリィは何しにここへ?」
「目ぇ開けてみたら、シドがどっか行くのが見えてな、気になったからついて来ただけさ。…アンタこそなんでここに?」
「ただ探索していただけです。眠れないので…」
「へぇ〜」
ジュリィが神木を背に地面へドサッと座る。
すると光の粒が少し舞い上がる。
「この光… なるほどね」
ジュリィはボソッと呟く。何かわかるのだろうか。
「なぁ」
「なんだい?」
「アンタはどーいう目的で旅してんの? 敵は母国なんだろ?」
どういう目的? それは…
「……」
「フクザツなんだな、アタシは10代最後ってことで楽しむって目的で旅してっけど。
…と言うのは表向き。裏は、アイツらが心配だから見守るっていうかサポートするつもりで旅してんだ。親友との約束だから。」
初めてジュリィの本当の思いが聞けたような気がする。
レオンに聞いたところ、ジュリィと孤児院メンバーは小さい頃から家族同然の付き合いらしい。
「小さい頃はみんな純粋で可愛かったのにな…」とジュリィが呟いたのを聞き逃さなかった。
小さい頃から接してきていた彼女には、『年上』という立場だからこそのいろいろな思いがあるのだろう。
それは、責任とも言えるかもしれない。
…責任か。
「うまく言葉にできませんが、僕は、帝国を止めるつもりで旅をしているんだと思います。あそこまで技術を進歩させたのは僕ですし、実は… 僕の母は皇帝と再従らしいんです。それに、皇族の血を引いて今生きているのはいるのは僕と皇帝のみ。でも皇帝は操り人形同然。だから、同じ皇族の血を引くものとして、皇帝を楽にしてあげたいんです。だって本当は皇帝は… もうこの世の者ではないんですから。」
「なんかいろいろありすぎて、頭パンクしそう… とりあえず、アンタも責任ってもの、感じてるんだな」
「レオン達が孤児となってしまう原因を作ったのは帝国ですし、もう僕以外の帝国府関係者はパナソのものとなってしまっていますから。あ、僕の後輩はまだ本当の事を知っていませんが。だから帝国を正しい道へと戻すことができるのは、本当のことを知っている僕しかいないかと思いまして」
リガンにシトリー… みんな同期で昔はワイワイやっていた。仲が本当に良かった。
時に皇帝… いや、パナソが残虐な進軍命令や任務を下すことがあった。いくらその命令が国のためとなろうと僕達は反論して中止するように求めた。いくら特殊部隊でも罪なき人々の命を奪うのは心が痛む。
でも、ジンが帝国を抜けたあたりからみんな人が変わったかのように任務を遂行するようになった。会話も減って合う機会も少なくなった。きっとこれにはパナソが関わっているのだろう。
もう、僕しか帝国を正しき道へ戻すことができないかもしれない。
だから、レオン達と共に帝国を止めるために旅をしているのだろう。
「重いもん背負ってんのは一緒なんだな」
「ですね」
「でもさ、こーいうのできんのあんまないよね。未来なんてどうなるかもわかんないし。ただ… 今を全力で楽しんで生きないと、さ」
未来の保証なんて誰にもできない。後のことなんてどうなるかわからない。
それだからこそやることややりたいこと全てやって全力で楽しんで生きる。
それがジュリィの思い。そして覚悟。
僕だって半端な覚悟や思いでここまでやってきたわけではない。
でも、全力でやるまでもしていなかった。
なぜなら、全力でやった結果が、今の帝国なのだから。
…僕は恐れていたのかもしれない。
未来が悪い方向に行ってしまうかもしれなくて、思いっきり全力でやることを。
…このままじゃいけない。
みんな、平和な未来を望んで、これ以上悲しむ者が出ないようにするためにここまでやっている。僕も平和な未来を望んでここまでやってきたんだ。
「決めました」
「…何を?」
「全力でやることをです」
「…ふ〜ん。深くは聞かないけど、固まっているんだな」
ジュリィは全てお見通しだったかのような態度だった。
これで僕の悩みは晴れた。すっきり前へ歩いていけそうだ。
…そうすれば、きっと…
「さて、戻りましょうか」
「戻ったらヴェルとか起きてそうだな」
気がつけばもう、朝日が昇る時間帯だった。
草原の輝きは失せていない。まるで、人々が抱く希望のように。
結局、眠れなかったけどいっか。
こうして全力でやっていくのは、あの頃のように楽しいから。
- Re: Change the world ( No.88 )
- 日時: 2018/04/23 21:22
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
43話 懐かしい音色
「ヴェルは迷わないし、1人でも大丈夫… 行くよ」
ヴェルに俺達はついて行く。
見た目は俺達よりもずっと子供に見えるが、豊富な知恵、常識などからずっと年上だと改めて感じる。
しかし、『1人でも大丈夫』という言葉から少しの寂しさも感じる。
その寂しさは、俺がここにいる誰よりも知っているものだろう。
「何かあったら僕達に言ってくださいね」
シドの言葉にヴェルはこちらに振り向く。
「ヴェルは本当に大丈夫なんだから! そんなこと言っていられるのも今のうちだからね」
「後ろ… 」
「え? うぎゃっ」
傾いている木の枝に前を向いたヴェルがおでこをぶつける。
…全然大丈夫じゃないだろう。
「うぅ… いてて…」
木の枝が太かったため、よほど痛かったのだろう。若干涙目になっている。
それに気づいたフレイヤはヴェルに近づきぶつけた所を撫でて
「痛いの痛いの飛んでけ〜」
と言いつつ傷薬を塗る。
少し赤みを持っていたおでこが元の色に戻り始めた。
「少しスースーする…」
「緑の国産なおし草の傷薬だよ〜 少しスースーするけど、それが消えたら痛いの消えるから」
「…ありがとう」
お礼を言うとすぐ前へ向き直り、進む。
ヴェルは痛みには弱いらしい。
少し歩くと、道と同じ石レンガで造られた小屋のようなものについた。
小屋は4方位が入り口となっており北側のずっと先には大きな神木があるのがわかる。また真ん中に祭壇のようなものがあって祭壇の天井だけ屋根がない。
お昼12時ごろになれば太陽が、夜0時ごろになればちょうど月の光が入る設計となっているのだろう。
「ここだよ、ちょっと待ってね」
ヴェルが背負っていたミニリュックから何かを取り出す。
その何かは3つに分かれた金の細長いもので、組み立てると
「フルート?」
木管楽器に分類されるが今は金属で作られている楽器… フルートだった。
「そうだよ。これでとある曲を吹くの」
「銀メッキじゃないのか?」
「フルートは銀以外に、銅、金、プラチナなどがあって素材が変わると音が変わるの。この里でずっと使われてきたのは金色なの」
そう言うとヴェルは「音出ししてくる」と言ってどこかへ行ってしまった。
「最近吹いてねぇな…」
フレイがボソッと言い放つ。
孤児院にいた頃、フレイはよく緑の国に住む人々の手伝いをしていた。
働き者な性格のせいかわからないが手伝いはすぐ終わってしまい、暇だと俺によく言ってきていた。
それを見た院長はフレイにある楽器を買って与え、教えていたのをよく覚えている。
時に変な音が聞こえて笑っていたら怒られたっけ。
「なんだっけ、お兄ちゃんが吹いてたの」
「サックス。まぁ、オレが吹いていたのはサックスの中で2番目に音が高いアルトサックスだけどな」
「よく変な音鳴ってたよな…」
「リードミスはしょうがねぇんだってば! 木管楽器なら誰でもなっちまうさ」
「フルートはなっていないっぽいけど…」
「あれはエアリード式つって、アイスの棒みたいなの使ってないからなんないんだ。使ってないぶん難しいらしいけどな…」
フルートの音色が聞こえなくなった。
「お待たせ。きっと大丈夫だから吹くね」
ヴェルは祭壇に立ち、北側を向き吹き始めた。
暗くも明るくもないなんだか懐かしく感じるメロディ。俺は… 聞いた事ある…?
なめらかでビブラートのかかったその音が里中に響く。ただ、フルートの音色だけが。
最後の1音の余韻が消えたと同時に、地下へと続く階段が音を立てて現れた。
「じゃあ、行こう」
ヴェルはフルートを片付け、再び俺達を案内してくれた。
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