二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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オリバト1
日時: 2010/06/24 18:05
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

これからオリバトを書きます。
内容はとても残酷なので注意してください。

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Re: オリバト1 ( No.46 )
日時: 2010/07/11 16:10
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

ずっと、このままなんだと思った。
私は愛されないままだと痛いぐらい感じた。
でも違った。
やっと、私と同じことを思っていた人を見つけたのに。
一緒に生きようと決めたのに。



ねえ、どうして貴方は死んでしまったのですか。



「梢ちゃん…」
「足立さん……」


井山健太(男子2番)と愛野由唯(女子1番)はたった今息絶えた足立梢(女子13番)を思い悔やんだ。もう少し守っていれば梢は死ななかったのだと。



「足立…さ…ん…」



由唯は目を見開いて涙を流した。勿論それは自分のためでもあったけど、彼女のためでもあった。痛いほどに分かった、彼女の傷みを。そして。さっき息絶えてしまった、安藤学(男子1番)のためにも。思い出した。




「俺ね、愛野さんのこと好きなんだ」





「好きだから。愛してるから」





もうさっきのことのように思えてきた貴方の言葉。
信じてもいいんですか。



由唯は梢が握っていたグロック19を握って素早く駆け出した。雅子に向かって構えて撃つ。



「赤井さん、貴方って酷いわ…!」
「…あなたも人の事、言えないと思うわよ?」
「な…何を言ってるの?!」
「愛野さんだって殺してるでしょ?可哀相にね」
「違う…!」
「何が違うの。私と同じでしょ?」
「違う!!」
「同じ仲間だと思ってたのに、残念」






違うの。
気付いてなかっただけなんだよ。




「いやああああ!!」



どうしてこんなことになるの?
足立さんは何も悪くないのに。私と同じなのに。
どうして、私より足立さんが先に死ななければならないの?



私が、死ぬべきなのに。


罪人の私が裁かれるべきなのに。




気付かなかった、私が悪いのに。




「由唯ちゃん、ダメだ!!」



健太の声が聞こえたと同時に銃弾が由唯の肩を貫通した。あまりの激痛に耐えられず銃を放した。次の瞬間銃声が聞こえたことを最後にして由唯の命もまた散った。



【残り4人】
女子01番愛野由唯 死亡

Re: オリバト1 ( No.47 )
日時: 2010/07/11 16:15
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

例えばこんな歌がありました。
それは僕も初めて聴いた歌です。
生きること、その上で得る苦労と悲しみ、そして希望。
こんなに伝わる歌は初めてでした。
だからこそ、伝えたいのです。



僕が見てきた絶望と希望を、貴方達に。



「充君、よかったね!みんな凄いって言ってくれたよ!」
「…そう、だね」
「これからも伝わればいいね!」
「うん」


ふと篠塚充の携帯に呼び出しがあった。不思議に思った充は携帯を取り出し通話を押した。


「もしもし?」
『……アンタが、篠塚充か?』
「そうだけど、君、誰?」
『アタシは、阿久津雪奈。今プログラム中』
「…そう。それで、僕になんか用?」
『アンタは、どんな絶望を見た?』
「……え?」
『たった今、放送があった。もうアタシの大切な人は死んでしまった。その人のために、アタシは人を殺した。でもいない。もうアタシを含めて四人しかいないんだ』
「…四人…?」
『アタシと、井山と、赤井と、園崎』
「……そっか。近藤さんは、もう死んでしまったんだね?」
『ああ。でも、近藤はね。なんか幸せそうだよ』
「…………」
『篠塚充』
「………何?」
『人ってあっけなく死んでしまうものなの?』



携帯の向こうに銃声のようなものが聞こえた。その時通話が切れてもう繋がらなくなった。


たとえば、こんな歌がありました。
守るはずだった、大切な人を失った悲しみを歌った歌。


【残り3人】
女子08番阿久津雪奈 死亡

Re: オリバト1 ( No.48 )
日時: 2010/07/11 16:28
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

もう少しで終わるところに、邪魔が入るってどんな時だったんだろう。
自分をもう少しで認めることができるとやっと思えたとき?
自分の親友がやっと分かってくれたとき?
それとも。


大切な何かをもう失わないと迷わなかった時?



終わった。
何もかも終わった。
俺の役目はもう終わったんだ。



井山健太(男子2番)は呆然と愛野由唯(女子1番)の死体を見つめていた。
あの時確かに健太は言った。「梢ちゃんや、由唯ちゃんを助ける」と。それをできなかったことにも、赤井雅子(女子6番)に対しても、もう何もぶつけるものはなかった。残されたのはただ悲しみと悔しさだけ。何よりもっと悲しいのは想いを未だ抱いていた、足立梢の死だった。あの時梢は言っていた。





「ありがとう。今度はもう、誰にも否定されないよね」




最初は否定されず、幸せに友達と話して笑いあったりできたのに、ひょんなことから、絶望に堕とされて、否定されて、何も感じられなくなってしまった。彼女は、最後まで否定されながらも生きて、死んでしまったのだ。



なんてことになったんだ。
結局、何もしてあげられてないだけだったんじゃないのか俺は。



「…御免なさい、井山君」
「………………」
「足立さん、好きなんでしょ。なら、すぐ逝かせてあげます」


次の瞬間、健太はキッと雅子を睨みつけ、グロック19を相手に向けた。雅子は驚いていたようだが、そんなにってほどではなかった。





殺してやる。
梢ちゃんや、由唯ちゃんの命や人生を奪った。
こいつが、奪ったんだ。
殺す。

殺してやる!!




「うわああああ!!」



頭を狙い、撃とうとしたが、カチッと間抜けな音が響いた。それが何を指していたのか、健太には分からなかった。----何でだ?どうして弾が出ない?!殺させろよ、殺人鬼をやらなきゃいけねえんだよ!



「井山君。学習能力がないんですね」
「な……に…?!」
「それ弾切れですよ?」


理解出来た。すぐ弾を取り替えようとしたが間に合わなかった。雅子もまた健太に向かって撃った。一発、二発が、健太の腹部を捉えた。



「ぐ……!」


反動で、家のドアの前に転がり、グロック19を放してしまう。もう一度握ろうとしたが、雅子に奪われてしまう。もう終わりだと思った途端、雅子からこう言われた。




「井山君さ。何でそんなに人を思いやれるのかな?私にはわからない。多分このクラスが、悪すぎたからかな。人を思いやるってことをそんなにみんながみんな、持っていたわけじゃないし、現に問題が次から次へと起きた。いじめも暴力も、何もかも。希望もあったもんじゃない。足立さんにはそういうの思い知ってほしかったし、丁度いいのかなって。でも朝倉達はやりすぎだろうけど。人権を害する行為ってとんでもないことなんですよ。このプログラムは、そんな人たちのためってみたいなんだよね。私にとって。だから、井山君はもういいんだよ。あなたの役目は終わったんだから。だからこれでお終い。ついでに歌ってあげます。あなた達が知ってるような歌を」




泣かないで 目の前にある
大切なものは微笑んでいるだろう
行かないで そう呟いても
戻ってこないのが現実さ


涙が溢れすぎて 涙で前が見えない
けれど思い切り泣いて笑ってしまえばいい
戻ってはくれないけど 覚えていてやることが
何よりの救いさ


生きて 生きて そう言ってくれるだろう
だから もっと 生きて歩き続ける


泣かないで 目の前にある
大切なものは微笑んでいるだろう
行かないで そう呟いても
戻ってこないのが現実さ


涙を思い切り流して 枯れるまで ずっと
泣き続けることが 何よりの救いだから


歌を、歌って。
貴方の存在を忘れてしまわぬように



もう終わるんだ。
だから歌おう。




「井山君、さよなら」



銃口を健太の頭に押し付け、撃とうとした途端、頭にトラックに撥ねられたような衝撃を受けた。何事かと思ったその時はもう視界が何も見えなくなった。



分かってたのは銃を構えていた園崎葵(男子13番)がいたこと。


【残り2人】
女子06番赤井雅子 死亡

Re: オリバト1 ( No.49 )
日時: 2010/07/11 16:36
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

ある日、少年達は目に染みるような夕陽を見ました。
それはそれはとても綺麗でいつかは消えてもまたいつかは来るような夕陽。



「井山…酷い怪我じゃないか!」
「葵ー…やっと起きたかー…」
「起きたか、じゃねえよ!何で起こしてくれなかったんだよ!気がついたら愛野も、足立も、みんなみんな、死んでるじゃないか!何があったんだよ!」
「赤井さん、がさ…みんなやったんだ」
「………っ、井山も、やられたのか?」
「こんな所に自分で撃つような馬鹿はいねえだろー?」



井山健太(男子2番)は園崎葵(男子13番)と話し、笑っていた。だがそれももう、すぐ終わる。視界がぼやけて見えるし、目の前にはっきりと映るはずの、葵の姿が全くはっきり見えないのだ。




もう、終わる。
何も見たくないのだから。




「葵ー…俺はもうダメみたいだ。すぐ離れろー。俺が死ぬのは見たくないだろ?」
「な…死ぬなんてとんでもない!生きろって!」
「でもなー…動けないんだな、これが。だから葵、生きろよ」
「は……?」
「俺のことは忘れてもいいから、精一杯笑って明るく生きて…そんで、兄弟を安心させてやれよ…な?」
「ちょ…ちょっと待……」



「あばよ…。俺にとって…お前は最高の友だ…ち…だ…た…」




夕陽が綺麗でした。



「………馬鹿野郎ー!!!」







それから翌日。


「会おう」と約束した待ち合わせ場所に美織はいた。
午後5時のこと。昨日のことを思い出してみた。



アイツを殺す、と目が死んでいた朝露霞。
変わり果てた姿で死んでいた鈴木悠斗。
演奏が綺麗だった穴山琴音。
殺しあいはしないで、と訴えた姉崎美穂。
愛されないなんて嫌だと不愉快そうな顔をしていた愛野由唯。
弟思いだった近藤大輔。
何でも覚悟をしていた津田高貴。
穏やかな顔をしていた足立梢。
どんな時でも、笑わせていた井山健太。



彼らはもう死んでしまった。そしてもう会うことは二度とないだろう。
自分がそっちに行かない限り。



「こんにちは。君が園崎葵君?」



待ち合わせをしていた相手が来た。テレビで見た、水色の髪の少年。
篠塚充は葵に向かって微笑んだ。彼の場合前回の優勝者で、つまり彼の方が、先輩なのだ。よく分からないけど羽田が礼儀正しくしろと言ってたのは間違いなかった。


「あ……どうも。園崎葵です」
「そんなに礼儀正しくしなくてもいいけど。君の方が、年齢上だし。とはいえ、僕も敬語使ってないけどいいよね?」
「は…、あ、うん」
「それで、本題に入るけど、足立梢さんが書いた詩を、歌にして今日のついさっきまでのコンサートで歌わせてもらったよ。アカペラで歌ったから、適当な歌だったけど、結構評判だった。中の一人が叫んでたんだよ。「どうしてこんな素晴らしい詩を書ける彼女は死ななければならないのか」って。…僕も思ったんだ。足立さん、気の毒だったね」
「………はあ…」
「でも、最後は幸せそうな顔をしてて死んでたんでしょ。ならそれでよかったんだと思うな。最後によかったと思い、死ぬのはそれは安らかなことだから。君もそう思ったんでしょ」
「……ああ。でも」
「ん?」
「これからどうしていいのか分からなくて…兄弟たちは俺が生きててよかったって泣き叫んでて。でも近いうちに遠くの何処かに引っ越すことになってて。正直どうしようと思ったんだ。あいつらには友達がいて俺のせいで、友達と離れ離れになるっていうのは凄く嫌で…なるべく携帯買ってあげて、んで連絡取り合うよう言ったけど…」
「……本当、君は優しいね」
「……それが、俺にできることだから」
「それでいいよ。じゃあ、時間だから。またね」
「…ああ」



もう、見るしかないんだ。



目の前に絶望があっても。



【残り1人:ゲーム終了:日吉中学校2年A組プログラム実施本部選手確認モニタより】

Re: オリバト1 ( No.50 )
日時: 2010/07/11 16:51
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

以上OBR1完結です。

そのうちOBR2も書きます。
ではまた


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