二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ
- 日時: 2011/04/04 17:39
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
初めて投稿させていただきます。燕と申す者です。
銀魂で二次小説投下します。
主人公の設定は下記をどうぞ。オリキャラは増えていくかもしれません。
※軽い流血表現、かるーい恋愛含むかもしれません。
※登場人物(特に攘夷ズ)の過去などは捏造過多でございます。
*
棗(ナツメ)
女性/165・48/18歳
鬼兵隊の一員で、高杉のお気に入り。
紅一点のまた子とは違って、鬼兵隊の闇として名を馳せている。通称“黒い引き金”。
*
壱、嘘をかぶりて斜に歌舞く >>41
弐、crocodile's tears >>42
銀魂×つっこ/イメソン紹介と見せかけた妄想 >>26
参、古語をしましょ >>43
銀魂×バクホン/イメソンと高杉の話 >>52
肆、鬼が笑う夜も泡沫の如く >>56
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- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.12 )
- 日時: 2011/02/28 17:55
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
繋がり繋がれ
道は幾つも分かれるのに、巡り会う偶然は偶然であり、其れ以上でも其れ以下でもなかった。
「あ」「・・・あ」
少しだけ遅れて私が音を紡ぐ。そいつは風船ガムを膨らましながら、振り向いた身体を元に直した。男が見ているのは死体だった。血は多くは流れていなかったが、其れの悲痛そうな顔が物語るのは恐ろしいものだった。
「お前が殺したアルか」
「・・・死んでねーよ、まだ」
倒れこんだ男と、目の前の男を交互に見る。栗色の髪の男は、男性というより少年だ。手に持った刀にべっとりと付いた血は、其の優しげな表情とは全くそぐわない。そして、破れた黒の制服から見える細腕からは、真新しい紅色が滴っていた。
「・・・手ェ」
「・・・・・・ん、あぁ、へーきだよこんぐれぇ」
ちっぽけな希望が湧き上がり、ズボンのポケットに手を突っ込んでみると、小奇麗に巻かれた小さな包帯に触れた。
其れを手に取り、奴の目の前に翳してみる。
「・・・馬鹿チャイナぁ。包帯だけじゃあ・・・」
「いいから使え、!」
私は其れを奴の顔面めがけてぶん投げた。其の男は「うぐっ」と抑えた声を上げて、少し解けた其れを受け取った。
「————どうも」
無表情。だけど其の眼は、死体を見つめるような眼ではなかったので、私は少しだけ笑うことが出来た。
「お前、血の匂い、するヨ」
「・・・返り血は浴びねえようにしたんだけどな」
「服とかじゃなくて、今日のオマエ自身から、すっごい匂ってくるアル」
軽蔑したように、聞こえたかな。だけども、其れが通常運転の腐れ縁。
「・・・別に、今日始まったことじゃあねえだろ」
小さな呟きが流れた。やがて微風に溶けゆく其の声は。何処か悟ったような諦めたような、馬鹿な少年の声だった。
「・・・血の匂いは嫌いヨ」
「・・・俺も、好きじゃねえな」
「そう、なら良かったアル」
殺されるのなら、血の匂いを全部揉み消して欲しい。殺すのなら、毒薬で静かに。
僅かな痛みを胸に抱き、少年は歩く。其の血も、此の血も、掻き回して混ぜ合わせて流せたなら。たったひとつの悲しみさえ、小さな身体で分け合うことが出来るのだろうか。
サド王子。お前と繋がるのなら、せめて天国で。首筋噛んで其の紅を全て飲み干して、伽藍堂のお前ならば、私は。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.13 )
- 日時: 2011/02/28 18:15
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
変わらないものがある。今も昔も。変わり続けるものがある。今も、昔も、莫迦みたいに。咲き続ける花がある。咲かない花もある。変わらない愛がある。其れは、今も、昔も。
失い続ける愛の果てに、何時も残っている何かがある。鈍く輝く鉛のように。重く苦しく時にせつなく此の胸に襲いかかる。手に入れた愛の中に、何時も馬鹿げた笑顔がある。其れはあの人のものなのか、其れとも。
アンダー・ザ・ローズ
広い屋敷は伽藍堂。歩む人々も、流れ込む小唄も、庭に佇む鮮やかな花さえ、水の音に溶けてしまいそうに儚く感じる。夢心地の雨音を聞きながら、不思議と懐かしく感じる、あの匂いを辿ってゆく。
「————随分と早いお帰りだ」
男は淡く掠れた声でわたしを誘う。優雅な音に溶け込むような、痺れそうな声を幾日かぶりに聞いたわたしは、少しだけ戸惑った。
「・・・・・・仕事の途中経過を伝えに来ただけだ」
「まだなんにもしてねえ癖に」
「五月蝿い。貴様の様な馬鹿と違って慎重なんだよ、わたしは」
「派手にやっちまうのが一番楽しいと思わねえか」
「・・・・・・、まあいい。———真選組の野郎共は存外に甘い。直ぐに潰してやるよ」
其れが、出来なくなる前に。心の内でそう思ったことが、奴にばれていないことを願う。其れもきっと無駄なこと。
「・・・クク、甘いのは手前だろお嬢さん。棗、もう手前には奴らを斬ることなど出来まい」
「何を。貴様は根拠の無いことばかりを、」
「根拠?そんなのは手前の眼の色だけじゃ足りねえか」
「・・・・・・」
此の男は人の弱いところを見つめることが好きだ。自分でも解る。わたしは、迷いはじめているのだ。
「・・・・・・貴様は、わたしが裏切ったら如何する」
甘い戯言だけが、わたしの心を蝕んでゆく。解っている。解っている、奴は甘いものを何より嫌う。
それなのに。
「たった一度だけ、手前を愛してやろう」
甘い囁きを弾き返された。わたしは眼を見開いた。
「何処かで聞いたような科白だな」
小さく呟いた。あの男も、そう言った。真選組局長、近藤勲。嗚呼、この男は、高杉は、何とも狡い。わたしは張り裂けそうなくらいに開いた眼をすっと細めた。
「俺ァお前みたいに真面目ぶった女は大ッ嫌いだ。だからお前に裏切られるのは悪くねえと思う。棗、情に溺れた惨めな女を愛してやろう」
「・・・・・・結構だ。わたしのような女を愛したって楽しくなど無い。わたしを女扱いするのは止めろと言った筈だ」
「ああ、悪ぃな。そういうところが好きだ」
「戯言にも程がある。いい加減にしろ」
わたしが軽く睨んでも、高杉は動じるどころか気付いていない。
「戯言か。悪くねえなあ」
返す言葉も無かった。
「高杉、答えてくれよ。わたしはどうすればいいんだ」
「・・・馬鹿じゃねえの。・・・・・・お前が裏切る?出来る筈ねえだろ」
わたしは少しだけ唖然としてしまった。
「・・・・・・有難う、高杉。礼を言う」
ぎこちなく微笑を作る。わたしの任務はひとつだけ。わたしの願いは、わたしの夢は、わたしの希望は。今も、昔も。
そして夜の街に、再び潜り込む。甘過ぎるほどに痛みを伴う密会だった。酷く無様で、色褪せて尚輝きを求める。蛾なんぞ可愛いものだ。狂おしい夢はまだ醒めず。もう少しだけ、光るものを求めていよう。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.14 )
- 日時: 2011/02/28 20:29
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
さよならか抱擁か、そのどちらかを君に
少しずつ浄化される雫たちを纏いながら、夜を抱いて仮初めの籠へ戻る。心地よい冷たさが心さえ冷やしてゆくから、冷静さを保っていられる。天秤にかけてみても答えは出ないから、いっそ我武者羅に壊してしまおうか。ああ、此れの何処が冷静であろうか。
しとしとと、足音さえも湿り気を纏う。真っ暗の廊下でゆらゆらと昇る紫煙を見つけて、小さく息をつく。
「・・・こんな時間に散歩ですか」
「お互い様だろーが」
怪しまれている。敵意剥き出しの眼が、暗闇に鈍く光った。少しだけ、あの男が醸し出す不可思議な空気を感じた。
真夜中に籠から抜け出す。嘘もつく。そうして平気で笑っている。それが、人間だ。
「明日仕事あんだろ。早く寝ろよ」
土方は其れだけ残して、立ち尽くすわたしを追い抜かしてゆく。此の男は、何時でも素っ気無い。其の癖に身に纏う隠し切れない獣のにおいに、何故だか寄り添っていたくなるのだ。わたしの戻る場所は、其処だから。虚勢ではなく。
「・・・・・・副長は、何してたんだ?夜遊びか、それとも女でも買って来たか」
「馬鹿言うんじゃねーよ。明日働くエネルギーそんなことに使わねえ。・・・・・・外の景色が見たくなったもんで。雨のにおいがするだろ」
「わたしはあまり鼻が効かないが・・・そうだな、雨のにおいだ」
雨のにおいは、懐かしい。戦場に降る雨は、血の臭いを煽る。窓外の穏やかな雨は、時に涙を誘う。狂おしいあの頃の熱を、静かに静かに蘇らせる。
「———鬼の副長ともあろうお方が、ロマンティックに雨を眺める。其れもまた、美しい」
「何言ってんだテメー」
「哀しくなったら、抱かせてやっても構わないぞ」
「・・・・・・は?・・・・いや、は?」
こういうロマン溢れる情景の中で、ひとつやふたつ冗談を交えて男と話すのも、なかなか面白い。認めたくないが、わたしは高杉に似てきていると最近思う。
「手前みたいな腐った女は嫌だ」
「はは」
不意打ちの罵り。其れさえ、哀しく聞こえる。奴が抱くべき女を、わたしは知っている。先日沖田に教えてもらったばかりだ。此の雨が、土方にとってどんなものなのか、わたしには見当もつかなかった。
懐に収めた凶器を、何時取り出そうか。恐れが募るばかりで、手を伸ばすことさえ出来やしない。心臓を掴める距離で、胸の高鳴りを抑えることしか出来やしない。大馬鹿者は、死ぬことさえ出来ない。
わたしは、また、苦しむ。
土方は困ったような顔をして、「じゃあな」と横を通り過ぎた。今だ。今だ。奴の背中を、此の短刀で、
「俺は天国で手前を抱きたい」
斬れ、斬れ。
鳴り響く鼓動が、告げる呪いの言葉。男の甘い囁き。左様ならば今から参りませう、天国でわたしを幸せにして。
静かに落つるは一滴の雨。そして今宵の闇は紅に染まる。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.15 )
- 日時: 2011/03/01 16:37
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
愛憎
「————トシっ、トシ!!」「副長ッ!」
悲痛な叫びが聞こえた。幾つも幾つも、頭上で煩わしい程の声を聴いた。
重い目蓋を開ければ、鈍い痛みを腹部に感じた。腕に畳のあとがくっきりと浮かんでいる。自分が何故、こんな場所で寝ていて、何故皆が自分を必死で呼んでいたのか。其れに気付いたと共に、俺の傷がまた喚く。
「・・・・・・トシ、気付いたか」
「こん、どー・・・さん、」
上手く声が出ない。絞り出すように男の名を呼んだ。
「トシ、誰にやられた?山崎が、廊下で腹を刺されたお前を見つけたんだ」
「・・・腹?」
疑問符をそのまま自分の腹部にぶつけてみる。確かに、腹を刺されている。ぐるぐる巻きの包帯の下。
あの女、俺を殺さなかったのか?
「土方さん、あんたが敵に背中を見せるたぁな」
呆れたように笑う沖田。
「・・・そういやぁ、棗は?」
「昨晩から見ていません。・・・局長、まさかあの女、」
「・・・・・・やめろ。棗のことは、とりあえず置いておこう。今は、トシを刺した犯人を」
「———そいつだ」
俺は掠れ気味の声を精一杯に震わせた。
「・・・・・・トシ?」
「夜中の・・・三時ぐらい、だ。俺ァあの女と廊下で話した。・・・で、別れ際に、背後から、」
「馬鹿言ってんじゃねえよ!」
「うるせえ!・・・・俺のことはいいからテメーら早く仕事しろ」
「トシ、」
「俺が全部悪い。・・・油断してた。あの女は敵だ」
信じて貰えなくて結構だ。敗者の傷に触れることはタブー。何も話したくなかった。棗は、怪しいと思っていた。けれど斬ることを躊躇った。何故か。女だから?——否。
あいつを殺さなかったのは、俺だ。
「・・・正直、俺も棗は怪しいと思ってやしたよ。とりあえずするべきことは、棗を探すことだと思いまさァ」
「・・・・・・」
部屋は静まり返る。全員が棗を疑っている。思えば最初から、皆信じていなかった筈なのに。あの女のことなど。だけど今は誰もが、棗の罪を認めたくなかった。
「・・・そうだな。よし、お前ら、棗を探せェ!」
近藤が痛ましげに指示を下す。俺は、立ち上がることも出来ない。プライドをへし折られたことよりも、辛いものがある。
「はい、局長ォォ!!」
隊士たちは鴉のように散り散りに街へ飛び出した。
「———トシよ、棗にやられたってのは、真実か?」
近藤の問いに、俺は暫く返答を躊躇した。
「・・・・・・・・・、そう、だ」
か細い声が、情けない声が、心の奥底からするりと抜けた。目の前の男は何も言わない。
「・・・・・・近藤さん、いっそ俺を斬ってしまうか」
「・・・何を言っている」
情に流される此の俺を。背から貫かれた惨めな傷を持つ、此の俺を。
「まァた、二の舞じゃねえか。・・・・・・俺の所為で、な」
「・・・・・・いい加減にしろ」
其の眼は一切の濁りを吸収し、浄化する。俺は男の言葉を、鼻で笑って返した。
ひとつだけ、いや、たくさん、気になることがある。あの女は、どんな顔で俺の腹を抉ったのだろうか。どんな思いがあって、俺の心臓を貫かなかったのだろうか。何故、俺を殺さなかったのか。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.16 )
- 日時: 2011/03/02 19:53
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
涙の雨を枯らして、幾千の夢を
朝が来れば碧空は涙を落とすのをやめた。露に濡れた木の枝が淡く輝いている。染井吉野は蕾を宿し始め、まだ冷たい風の中で其れを抱いていた。
「銀さーん、何時まで寝てんすか。ちょっと、其処どいてくださいよ。掃除するんで」
「寝ちゃいねえよ、っるせえなぁ。・・・っ痛ェ!ジャンプの角を頭に突き刺すのはやめよう!?ね、ぱっつぁん!」
しっとりした空気にそぐわない五月蝿い声を押しのけるように、束にされた数冊のジャンプを持ち上げる。銀時は頭を掻きつつ外に出た。階段を下りてゆく掴めないリズムを聞きながら、埃をゆっくりと箒で掃いてやった。
軽い掃除を終えると、僕は何時も銀時が寝そべるソファに身を委ねてみた。軋む音と共に、背が少しだけ沈んだ。
「・・・・・・静かだなぁ、」
神楽は姉上の元へ出かけているし、銀時は先刻家を出たので、珍しくも此の家に独りきりとなった。
ひとりでいると、三人のときよりもずっと五感が正常に働くような感じがする。眼鏡の度数は変わらないのに、部屋の様子は鮮明に此の眼に移る。何時もよりも鼻が利く。銀時の気だるいような甘ったるいようなやる気のないにおいや、神楽の夏に咲く花のような、日を浴びたにおい(日の光を拒む身体なのに何故だろう)。其れらが全て呼吸と共に寄せ集められる。
ぼうっと虚空を眺めた後、籠に入れられた飴玉をひとつ口に放り込んだ。銀時の好きな甘味。懐かしい、褪せたような苺の味が口に広がって、眼を細める。
窓の外からは切り取られた景色が淡く見える。覗く青空は昨夜の雨の色を少しだけ残して、控えめに輝いている。
「・・・銀さん、何処行ったんだろ」
銀時は偶にぶらりと外の世界へ飛び出す。何を考えているのかは知れないが、帰ってくるときは何時も機嫌がいい。以前そんなことがあったとき、何をしてたのかを聞くと、何でもいいじゃんと言われた。誰かと会っていたのかと聞けば、
「天然ボケともじゃ毛とちび助」
そんな単語の連なりを空言のように呟かれた。誰のことなのか、全く解らない。本名を言ってくれないのは、言いたくないからなのかもしれない。そう思ってそれ以上は追求しなかった。ただ、悪い人じゃないんだろうなと、心の何処かで感じるのだ。
此のままソファで寝てしまおうか。気まぐれに考えて、眼鏡を外し机にそっと置いた。瞳を閉じればゆるやかな銀色が目蓋の裏を掠めた。其の色は酷く穏やかで、あの男のものとはかけ離れていた。だけど、間の抜けた鼻歌を歌う男の中にも、漂白されたような褪せた銀が潜んでいるのかもしれない。そう思うと可笑しくて、声を上げないように笑みだけ作って、静かに果てない夢へこの身を預けた。
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