二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ
- 日時: 2011/04/04 17:39
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
初めて投稿させていただきます。燕と申す者です。
銀魂で二次小説投下します。
主人公の設定は下記をどうぞ。オリキャラは増えていくかもしれません。
※軽い流血表現、かるーい恋愛含むかもしれません。
※登場人物(特に攘夷ズ)の過去などは捏造過多でございます。
*
棗(ナツメ)
女性/165・48/18歳
鬼兵隊の一員で、高杉のお気に入り。
紅一点のまた子とは違って、鬼兵隊の闇として名を馳せている。通称“黒い引き金”。
*
壱、嘘をかぶりて斜に歌舞く >>41
弐、crocodile's tears >>42
銀魂×つっこ/イメソン紹介と見せかけた妄想 >>26
参、古語をしましょ >>43
銀魂×バクホン/イメソンと高杉の話 >>52
肆、鬼が笑う夜も泡沫の如く >>56
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- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.27 )
- 日時: 2011/03/11 23:57
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
花は落ちて心を覆って
胡散臭く古ぼけた村塾に小さき魂は集う。てんでばらばらに散りばめられた魂が見つめるものは一筋の光だった。其の光は淡く漂白していて、決して眩しくはない。如何してだか其れを求めて皆笑顔を振りまく。
春真っ盛りの草原。只立ち竦む俺だけ時間が止まったままのように、誰もが走り回ってはしゃいで生きていた。ひときわ目立つ其の男はそんな俺の髪をふわりと撫でた。
「———世界は馬鹿げていると思いますか?」
酷く穏やかな声が高いところから聞こえて、俺は睨むようにその優しげな男の瞳を見上げた。
「死んでしまいたいと、思いますか?」
こんな餓鬼に、難しい質問をするな。と俺は奴を見上げる双眸にいっそう力を込めた。
「孤独は酷く哀しい。貴方は血に塗れた世界に独りきりで、寂しかったでしょう」
「・・・・・・べつに。此処に居る方が、よっぽど落ち着かねえ」
不貞腐れたように言ってやると、男はくすりと笑って草の上に腰を下ろした。目線が重なる。其の瞳が優しすぎて、思わず逸らした。
下を向いていると、頭に何かが刺さった。痛い。顔を上げると、はらりと紙飛行機が草の上に落ちた。
「・・・・・・わりー」
黒髪のちび助が傍に駆け寄って、小さく頭を下げた。長い黒髪を結った女のような男も続いて、
「大丈夫か?悪かった。・・・・・・一緒に遊ぼう?」
微笑が降り注ぐ。隣で抑えた笑い声がするのを忌々しげに聞いていた。
「・・・・・・・・・いい。此処で寝てる」
こんな穏やかな春の日は、寝転がって眩しい太陽を見ていたい。血みどろの俺には降り注ぐことのなかった陽の光を。俺は首を緩く振った。
「・・・そうか。じゃあ俺もそうしよう。ほら、高杉も」
長髪の男はそう言って俺の隣に寝転ぶ。高杉と呼ばれた男も渋々というように同じようにした。
俺は何故だか胸の奥底が熱くなって、逃げ出したいような衝動に駆られて、立ち上がろうとした。だけど手を掴まれて其れに失敗する。
「何処に行くんですか。春の陽は穏やかで気持ちいいんでしょう。仲良く屍の振りでもしていましょう」
男が言う。不謹慎だなあと思った。だが其の屍を椅子代わりに盗んだ飯を喰らう餓鬼のほうが、よっぽど最低だと思った。
「———松陽先生、船が飛んでる」
「そうですね。天人の船です。巡り巡って人々は血を流す。・・・・・・もしも、お前たちのちっぽけな勇気で救える世界があるとするなら、お前は如何しますか?」
小太郎と呼ばれた男は、憂うような瞳で空を泳いでゆく船をなぞった。
「・・・此の勇気で救えるならば、剣を振りたい、です」
小さな言葉が紡がれる。下らない。興味ねえな、と思った。
「先生は戦わないんですか?」
高杉が視線を空に向けたまま尋ねた。
「私の剣では斬れませんよ」
男は弱々しく笑った。俺たちに斬れて、奴に斬れないもの。私の剣では。俺が腰に携えるものは其の男の剣だ。
訳も解らず俺は舌打ちを放った。高杉がじろりと俺を睨む。気にせずに閉じた目蓋は日差しを浴びて乾いた心を癒してゆく。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.28 )
- 日時: 2011/03/11 21:23
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
寝る時は百数えて鬼を隠そう
其の白は白かと思っていたら白くなかった。白濁を溶かしたような銀色。初めて其れを見たとき、淡い色に散った紅が、恐ろしくも綺麗だった。
松陽先生はお人好しだ。何時も俺たちは口をそろえて言う。解っているけれど。あの人はそんなんじゃない。そんな言葉では言い表せない。其の人は俺たちの光だった。
銀時。色素の抜けた淡い色合いの少年の名。先生の手と繋がれた小さな手は、悲しみを纏っていた。俺たちは何故そんな奴を連れてきたのかとは言えなかった。其の垢抜けない(俺たちが言えることではないが)顔立ちの中で鋭く光るものを俺は見た。多分、皆も。其れは俺たちの覚悟よりもずっと強く哀しく、孤独を背負っていた。
散りばめられた星屑はきらきらと輝いている。月は雲に隠れて、顔を覗かせて、また隠れた。もうとっくに丑三つ時を過ぎただろうが、俺は眠ることが出来なかった。銀時が此処に来てから少し経つが、其のときからずっと、眠りが浅くなった。戦慄を漂わせる其の風貌が恐ろしくてならなかった。そして、何より綺麗なのだ。双眸は赤色。澄み切ってはいない。濁っていた。本物の血のように。
指先を強く噛めば、血が流れた。其の血は浅く淡い。彼の背負ってきた赤色は、こんなものではない。流れ出た血を、俺は愛おしく舐めた。
厠へ行き、部屋に戻って、また庭へ出た。変わらず空は満天。月は雲の切れ間から光を差している。
ふと辺りを見ると、人影を見つけた。縁側の傍へ立ち尽くす、白い人影。
———銀時だった。
其の横顔は相変わらずの哀愁を振りまいて、赤の瞳は空を仰いでいる。俺は一歩、一歩と其の男に近づいていく。砂利の擦れる音に、銀時は此方へ視線を落とした。
「————眠れないのか?」
俺はひとつ、如何でもいいような問いを弱く投げてみた。
「・・・・・・・・・寝たくねえっつんだよ、こんな綺麗な夜に」
其の銀色は不機嫌そうに答えた。だけど、言葉を返してくれたことが嬉しかった。今まで碌な会話もしていなかったからだ。奴の瞳は何時もよりも暗さを重ねて、大層強そうな色だった。
「戦場の空は哀しいんだろうな」
「・・・・・・ああ」
俺の呟きに、銀時は小さく答えた。今宵はやけに優しいな。心の内で感じた。
「・・・・・・夜ってな、寝るもんじゃねえんだよ」
「———?」
「心を研ぎ澄ませて、目ん玉見開いて、夜の戦場を見張るときなんだ」
「・・・・・・ああ・・・そうだな」
此の男は強い。そして強いようで、弱い。優しさやぬくもりに飢えた獣なのだ。
「・・・先生はお前を鬼と呼んだ。だけど俺はそうは思わない」
「どうだっていいよ。ンなこと」
「良くない。・・・・・・お前は血を知りすぎた。俺は、俺たちは、只お前と馴れ合いたいんだ」
「反吐が出るほど気色悪ぃ」
銀時は放り投げるように言った。其の目は変わらぬ血の色で、変わらぬ悲しみが込められている。
「・・・・・・お前は只の捨て猫だよ、銀時。俺たちだってそうだ。此処に居る者は皆、人間でも鬼でも神でも、ないんだ。だから、少しだけ愛を交わさないか」
銀時は俺の眼をじっと見た。俺は続ける。
「皆、愛されなかっただけの獣だ。そして此処は戦場じゃないんだ。只の薄汚い村塾だ。瞳を閉じればいいんだ。安らぎを覚えればいいんだ」
俺は其の瞳をじっと見据えた。そいつは目を逸らした。
「さあ、銀時。今宵の輝かしい月光を拝め。戦場には、降り注ぐことのない、此の光の下———」
月は其の顔を静かに見せた。照らされた顔は、少しだけ綻んで見えた。
「———愛を知る為の儀式を開こう」
差し出した手のひらに、弱々しく冷たい手が重ねられた。
俺はにこりと微笑を浮かべた。月の光の下で、銀時の瞳が輝いた。
冷たい其の手に力が込められた。嬉しくなって俺も強く強く握った。
「いてえ」
もう片方の手が拳を作り、俺の額にぶつけられた。俺も同じように「いたい」と笑った。
出来るなら出会わなければ良かった。何時の日か思うことだろう。だけど今だけは重ね合わせたかった。乾ききった己の心と、血に塗れて穢れた君の心を。そして俺たちは始まってゆく。終わってゆくときが、静かにはじまりの鐘を鳴らした。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.29 )
- 日時: 2011/03/12 00:53
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
甘い匂いが此の名を呼ぶ
淡い陽の光が眩い。きらきらと心地の良い初夏の空が銀時の赤い眼に映っていて不思議なコントラストを奏でている。大樹の下、疎らに出来た影を探して皆涼んでいた。生温い風が風車をゆるりと押す。ひらひらと軽く回るそれは風流で美しい。
銀時が来てから初めての夏だった。白髪天パーは見てるだけで暑苦しくなるからなるべく視界に入れないようにしてたのに、そいつは馴れ馴れしく話しかけてきやがった。
「晋ちゃん何食べてるの」
品のない風貌にやる気の感じられない双眸。汗ひとつ流していないそいつは何故だか余計に暑苦しい。俺は額に感じる汗にいらつきつつ答える。
「晋ちゃんとか言うな」
「・・・・・・上の名前なんだっけ」
「・・・言わねー」
えー、と銀時は拗ねる。何でこいつ、名字だけ知らねんだと苛立ちは募ってゆく。俺は仕方なく手に握った飴玉を奴に渡した。
「何これ、可愛いね」
晋ちゃんに似合わねえと笑いながら、其れを口に放り込む。舌で転がしながら、俺はじっと見つめられて目を逸らした。
「————んんんめえッッ!!」
力を振り絞って出された其の声に驚いた。周りで汗を流す奴らも驚いた。一番驚いているのは当の本人だった。
「えっえっ何これ甘い!甘い!美味い!苺味じゃんっ!」
「何これってお前、飴だろ」
「飴?・・・・・・俺、はじめて」
「マジ?」
二度目の吃驚。まあ確かに、天涯孤独で屍から何もかも盗んでた奴が、こんな甘いものを知る筈がない。其の口からがりがりと飴玉を噛み砕く音が聞こえた。
「噛むなっつの。舐めんだよ。勿体ねえだろ」
「舐めるだけじゃ我慢できねえもん」
そう言って銀時は飴玉を嚥下し、俺に手のひらを差し出した。
「もいっこ」
「やだ」
「ケチ。ちび助」
「うるせー銀パー」
「なんだよ銀パーって」
銀時は小さく呆れ笑いを零して、俺の頭をぽんと叩く。
「ありがと」
晋ちゃん、と御丁寧に付け加えて、奴は松陽先生の元へ駆け寄って行こうとする。俺は其の腕を掴んだ。
「なによ」
意外そうに其の銀色が問う。俺は何で掴んでしまったんだろうと不思議な気持ちになった。無意識だった。何故だろう。繰り返し考え、気付いた。
こいつの笑ったとこ、はじめて見た。
もっと見たい、って思ったのか。俺が?馬鹿馬鹿しい。俺は掴んだ手を放す。
「・・・・・・なんでもねー、」
歯切れの悪い声が自分の口から吐き捨てられた。銀時は頭上にハテナマークを浮かべてそうな頭の悪い(元からだが)顔を俺に見せ、柔く笑った。
不意打ちだったので、俺はまたもや驚いた。夏だから可笑しくなったのかな。俺も、銀時も。今日は何度も、此のくるくるパーに驚かされる。俺は其れが少しだけ楽しかった。
樹の向こう側では松陽先生とヅラがくすくすと笑っていたので、大きく舌打ちを放つ。銀時は相変わらずの阿呆面で、また小さく笑った。
「な、晋ちゃん。俺の名前知ってる?」
赤い瞳に覗き込まれ、びくりとした。其の赤が血のようで。恐ろしく、美しい血の色で。
俺は其の銀色の名を小さく呼んだ。
男は今日一番の笑みを俺に放った。決して満面の笑みではない。気だるそうな其の微笑が、俺の心を緩く解いた。
俺もお前の名前知ってるよ、と銀時は俺の名を呼んだ。
「名字知ってんじゃん」
「おう」
誇らしげに言うそいつの馬鹿面が可笑しくて、俺は久々に笑った。こんな馬鹿と馬鹿な会話をしたのは初めてで、存外に楽しく思っていることが不愉快だ。
紡ぎ合った名前の数だけ笑顔が咲く。太陽はじりじりとこの身を照らすけど、此の甘い男だけはゆるやかに俺を包み込む。
草の上に置いた飴玉をもうひとつ手に握って、目の前の男に差し出した。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.30 )
- 日時: 2011/03/14 22:03
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
慶びと混沌は紙一重
窓を拭く高杉の捲られた腕からぽたり、と透明な滴が落ちた。其の白い顔にも汗が光っている。べたつく手に握った雑巾をぎゅっと握りなおして、俺も窓に擦りつけた。後方では鬱陶しい銀髪パーマ。雑巾を洗う振りをして手ばかりを冷やしている。
「・・・おい、銀時。真面目にやらんか」
俺は溜息混じりにそいつを窘める。怒る気力なんて微塵も失せて、溜息だけが残った。
「おいヅラぁ何処見てんだ手前?俺ァ手前らみてーにきたねえ雑巾で窓拭く気はねえの。こーやって綺麗にしてから・・・」
「うるせえ」
力説の銀時を横目で睨む高杉。軽く唇を尖らせる少年。
銀時が此処に来て今、夏が天上へ向かっている。昇る昇る太陽の熱はじりじりと屋敷を焦がすよう。其の銀髪の少年は、やたら饒舌で毒舌で、馬鹿で阿呆だった。初めの頃のあの、殺戮を醸し出す眼の色は穏やかに褪せてゆき、今では此の萩の空気にすっかり馴染んだ。
そして奴の登場により、先生が一段と楽しそうなのだ。幾ら銀時がうざったくとも先生の笑顔を見るなり文句のひとつも窄んでしまう。其の笑顔に手を引かれる高杉も俺も、自然と顔が綻ぶのを感じた。
掃除を終えると先生は俺たちを外へ連れ出した。お馴染みの樹の下だけれど、前に来たときよりも夏のにおいを感じた。太陽の下、太陽のような鮮やかな色がたくさん咲いている。
「・・・・・・ご存知ですか?」
先生の穏やかな声に振り向けば、銀時が不思議そうに其の花を眺めていた。
「いや、知らねえ」
首を振ればふわふわと銀髪が揺れる。先生は優しく笑って、扇子をぱたぱたと泳がせて俺と高杉を見た。其の生温い風に誘われて、俺たちは駆け寄る。
「此の花の名は?晋助」
先生は高杉に問う。
「———向日葵」
高杉は呟くように其の太陽の名を呼んだ。同時にさわさわと吹いた風が花を揺らした。
銀時は暫く向日葵を見つめていた。其の興味深々な姿が面白くて、高杉と共にばれないようにくすくす笑った。振り返れば先生も笑っていた。
「・・・思い入れでもあんのかよ。ずーっと見てんぜ」
高杉が声を届ければ、銀時はこちらを向いてふ、と笑みを零す。其の穏やかな顔に息を呑んだ。向けられた瞳に少しだけ戸惑い、そして高杉も同じように微笑んだ。俺もつられて笑った。
「忌々しいなーっつって」
ふと銀時が漏らした。此方ではなく、向日葵に向けて。
「こいつ、太陽に向かって伸びてんぜ。焦げもしねえできらきらしやがって」
俺は其の言葉の意味が解らなかった。確かに陽に導かれるように伸びているけれど、何の罪もない美しき花を忌々しく思う銀時が不思議で仕方なかった。
「———ああ、わかるな」
隣で高杉が呟いた。
「・・・・・・俺には、解らない、」
輝く其の花は眩く美しい。太陽を求めて太陽のように育った其の花は、只優しい。其れだけだった。俺にとっては。
「・・・先生は、如何思いますか」
銀時の後ろで微笑む人に尋ねれば、彼もまた、笑うだけだった。
其の姿は太陽のようで。向日葵のようで。
俺はくらくらと眩暈を覚えた。
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.31 )
- 日時: 2011/03/16 13:26
- 名前: 李珀 (ID: 7Ptch8W6)
すばらしいです!えーと私は銀魂小説書かせてもらっている李珀というものです。わたしも高杉さん大好きなんです。がんばってください!
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