二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ヴィンテルドロップ
日時: 2012/08/04 20:31
名前: めた (ID: UcmONG3e)

さあおいで。

昔話をしてあげる。

だれも知らないお話だよ。

それは冬の終わりのお話だよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お母さんお話して!」

というと、ほとんどの親はこのお話しをする。

ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。

このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。

『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
 建国したときからどの季節もふゆでした。
 なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
 そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
 真上で太陽と月が喧嘩した。
 それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
 けれど、このときからばらばらになりました。
 そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
 うけとると、それは太陽と月の涙でした。
 片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
 女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
 冬は消え去りました。
 そして3つの季節が出来上がったのです。』

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Re: ヴィンテルドロップ ( No.35 )
日時: 2012/08/24 02:17
名前: めた (ID: UcmONG3e)

ドゴオンという爆発音がして、金庫全体が揺れた。

暗闇にひとりぽつんといたクローロスは飛び上がった。

「っ!!」

そして震えながら出口(だとおもわれる)方を向いた。

黒い手袋の中にある宝石は相変わらず美しく輝いている。

「今のは、何?」

声が震えている。

「防音のはずなのに、外の音が聞こえるはずは…」

いったい外で何が起こっているのだろう。

爆弾テロ?

考えられるけど、ちがいそう。

そもそもヴィンテル王国は貧富の差が余りない。

たしかに王族貴族は豪華な暮らしをしているのだが、国民の中での貧しいものが余りいないのだ。

税金も高すぎず、政治もしっかりとしている。

不満要素はないはず。

(じゃあいったい何?)

クローロスは顔をしかめた。

と、また轟音がして金庫が揺れる。

床に伏せた彼女は、耳をふさいだ。

今度のは大きい。

先ほどの3倍だろうか?

みしりみしり、ばきんと不吉な音がする。

目を開けると、ぱっとまぶしい光が片目を直撃する。

「んっ?!」

光から逃れるために顔を抑えると、疑問が浮かんでくる。

Q,なぜ、金庫の中に光が進入してきたのだろう?

A,金庫が破られたから。

それしか考えられない。

と、光がさえぎられた。

麻痺していない片目で見上げると、逆光の中人が立っている。

クローロスを見て少し動きを止めたが、さっと金庫の残骸を飛び、台座に近寄る。

「あなた…なにをっ?!」

聞かなくてもわかった。

茶髪の男は赤い手袋のまま、磁力で浮き上がった宝石をわしずかむ。

その手をクローロスが掴む。

驚く男。

「だめ…、それは大事なっ!」

クローロスが叫ぶと、男は身をかがめて彼女を見た。

片目の網膜がまだ閃光で麻痺しているため、よく見えないが23、4の青年だ。

茶色の髪はくしゃくしゃで全身真っ赤な服だった。

「わるいね、お嬢さん。少し眠っていて」

言い終わらないうちにクローロスは催眠ガスを吹き付けられていた。

手が緩み、男に支えられて地面に横たわると、すべての像音と景色が消えた。









Re: ヴィンテルドロップ ( No.36 )
日時: 2012/08/24 02:39
名前: めた (ID: UcmONG3e)

クローロスが目を覚ましたのはその事件の3時間後だった。

黄緑色の目を開くと、ベットの天蓋が見えた。

天蓋というのは、ベットの上部に取り付けられているカーテンのようなもので、日よけにも音除けにもなる。

彼女が目を覚ましたときは、天蓋は開け放たれていた。

なので、隣の部屋から母であるイオーデス女王の声が聞こえた。

「それがあなたの見たこと全部ですね?」

尋問するような声だ。

クローロスは何度か瞬きをしてから、ベットを降りてイオーデスの元に向かった。

隣の部屋にはイオーデスとジャックル、数人の兵士と小間使いがいた。

「お母様…」

クローロスがつぶやくと、イオーデスはすかさず振り返った。

無事な様子を見て、表情が優しくなる。

「気分はどうです、クローロス?おまえにも聞きたいことが」

そういうと、兵士と小間使いに出て行くよう指示を出した。

ジャックルはそのまま、何も言われないので残っている。

クローロスとしては、兄も兵士たちと一緒に出て行ってほしかった。

なんだか今日は特に兄の視線が怖いのだ。

「ジャックルの話では、金庫におまえはいたそうね」

こくんとクローロスは頷く。

「その現場を話してくれないかしら」

クローロスは記憶をたどり、自分が金庫に閉じ込められたこと、轟音、茶髪の男が宝石をワシ掴んだこと、さらに男に眠らされたことを話した。

「ジャックル、おまえも話してあげなさい。おまえが気絶している間の話です」

窓から赤い集団が見えたので剣を抜いたこと、駆けつけたら爆発で金庫が破られていたこと、金庫から男が出てきたこと、そして全員に逃げられたことをジャックルが話す。

その様子はものすごく悔しそうだった。

「あの、宝石は…」

「ぬすまれたわ。我が王家に代々伝わるあの宝石が…」

はあ、と急に老け込んだイオーデスが両手で顔を覆った。

心なしか、豪奢な金髪に白髪が見えた気がした。

(そんなはずない。お母様はもうじき60だけれど、不思議なくらいふけないのだから!)

「くそぅ!!」

突然ジャックルがさけんでテーブルをこぶしで叩いた。

机上の花瓶と、紅茶が音を立てる。

「おやめなさい」

弱弱しい声でイオーデスがつぶやいた。

「宝石が盗まれて落胆するのはわかります。…盗まれそうになり剣を抜いたあなたは立派でしたよ。さぁ、もうお下がりなさい」

久しぶりに母に褒められたジャックルは戸惑い顔で部屋を後にした。


Re: ヴィンテルドロップ ( No.37 )
日時: 2012/08/24 18:45
名前: めた (ID: UcmONG3e)

「クローロス。どうすればよいかしら」

イオーデスはひどく落胆した声で言った。

イオーデスは女王だ。

なので、あの涙の宝石が祖先のイリジウム女王の大切な宝石だということをしっている。

なのに、まもれずに盗まれてしまった。

「お母様、諦めてはいけません」

クローロスは母を元気付けた。

「確かお兄様は赤い衣の集団といっていましたね。そのような珍しい集団であれば、取り返すことだってきっとで来ます」

しかし、女王は力なくそうねと言っただけだった。

「お母様」

クローロスは不安げにつぶやいた。

ははがどんどん力をなくしているように感じた。

Re: ヴィンテルドロップ ( No.38 )
日時: 2012/08/24 18:57
名前: めた (ID: UcmONG3e)

その日の午後、すぐにクローロスはさまざまな依頼書を書きとめていた。

一番信頼出るひと、ブランドと共に依頼できるところには全部赤い衣の集団について情報をくれと手紙を送った。

大量の手紙を投函した帰り道、ブランドはため息をついた。

クローロスは時期女王という座なので外に出たら大変なことになるので留守番だ。

ブランドも求婚者にたかられるのだが、クローロスと母のため、変装して出かけていた。

神殿に着くと、伊達めがねとひげをむしりとる。

こんな間抜けな姿、親戚達に見られたくない。

部屋に戻ると、クローロスがもう一度変装してくれとねだったが拒否した。

彼女の手の中にカメラがあるのを知っていたので。



「ルクリス」

ジャックルは自室にて撃沈していた。

そばには弟のルクリスがいた。

二人して撃沈してる。

「俺はどうしたらいい。宝石は盗まれた」

すると、ルクリスは椅子から立ち上がった。

「ちょどいい」

ジャックルは不審げにベットから身を起こした。

「計画を続けよう」

ジャックルは不審げにまたルクリスをみた。

(コイツ、頭がおかしいのか?)

「暗殺団に追加命令を出すんだ。動機はある。そう、クローロスは盗賊団の顔を見た。それで正体を知られないように殺した、とね」

ジャックルはぞっとした。

いままでの彼ならば、即座に賛成しただろうが、今は何故だかぞっとした。

善良だった弟が、妹を殺すのを協力しようとしている。

「どうだ、にいさん。完璧だろ」

早速手紙を書くね、と机を占領するルクリス。

ジャックルはただ無言で金庫から依頼料の札束を取り出しに行った。

Re: ヴィンテルドロップ ( No.39 )
日時: 2012/08/24 19:13
名前: めた (ID: UcmONG3e)

ジャックルの暗殺団に対する追加依頼も無事に届けられた、二日後、クローロスの元に返事が来ていた。

5通きており、ブランド兄さんと共に、内容を見ていた。

「赤の盗賊団というみたい」

ほぼ全部にこの名前が出てきている。

もう一つ赤さそり団という軍隊の名も出てきていたのだが、これは砂漠の地方での盗賊団だったのでちがう。

すべてに共通するのは、赤い衣、オオカミ、爆弾、盗賊だ。

まさに二日前とぴったり同じだった。

「もっと詳しく知りたいね」

兄相手だと敬語はやめている。

「さらに詳しい情報を求めようか」

それぞれにもう一度手紙を送る。

それは各部屋に行って行うことにした。

すると、兄が出て行った後、一通手紙がきた。

読むと、詳しく書かれた手紙だった。

『赤の盗賊団はヴィンテル王国の辺境の地にあります。オオカミと共に、盗賊集団がいると調査されていますが、極寒の地ゆえ確認できません。そこには暗殺団というものが設置されてもいます。これらの団は依頼により盗賊活動をしています。そして敵対する盗賊団があります』

そこで手紙は終わっていた。

クローロスはこの手紙を怖くて誰にも見せたくなかった。

依頼されて盗む集団だとすれば、宝石を盗むように命じたものがいるのだ。

そしてこっそり返事を書いた。

「敵対する盗賊団の名と、その場所を教えてください。詳しい住所も、わかれば送ってください」




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