二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.60 )
- 日時: 2012/09/07 17:10
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
夕食を終えて、寝台に向かうと即座に眠りについた。
終点が目的地なので、乗り過ごすことはない。
そのまま、二段ベットに乗り込んで停車するまでのんびり眠るのだ。
「おやすみなさい兄さん」
上の段よりクローロスの声が聞こえる。
それに答えてほぼ同時に眠りにつく。
次に起きたとき、窓の外は真っ暗であった。
窓の外に、明るいライトと駅があり、汽笛が控えめに鳴らされている。
もたもたしていると、乗務員がやってきて終点ですよと告げまわっている。
7時から睡眠していた二人には、あまりつらい目覚めではなかったが、起きたとき外が真っ暗度というのは変な感じがした。
完全に目の下にクマのある駅員に切符を手渡し、改札を出る。
駅だけが明かりをつけていて、酒場でさえも灯りを消していた。
街灯のランプのみが道を一定期間ずつ照らしている。
そのまっすぐ行ったところに、目指す大学があるのだ。
「夜分にお邪魔して平気でしょうか?教授か友人、いるの?」
あまり眠そうではないクローロスが兄を見上げた。
兄はうんと頷く。
説明では、緑をふんだんに使った大きな大学であるらしい。
「さぁ、まっすぐいけばすぐだよ」
二人は見事に暗い道を歩いていった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.61 )
- 日時: 2012/09/08 19:23
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
大学に着いたのはそれから数十分後、そこで手続きをして、研究所に案内される。
内装は綺麗でもちろん、睡眠施設もちゃんとあるし、宿舎も豊富にある。
書庫を物色していたクローロスは、このままずっとここにいたいと願い始めた。
詳しく書かれた書物、最古の現物資料、装飾本の写本、なかには有名な歴史書が原本のままであったりもした。
けれど翌朝にはクローロスはこのすばらしい研究施設を後にしなくてはならない。
「仕方ありませんね。これもすべて宝石のため」
そういうと、再び書庫あさりを始めた。
出発する前に数冊分を頭に叩き込んで置こうと思ったのだ。
そして朝になる—。
「ここからそう、遠くないところに行ってくるだけです」
クローロスの言葉を聴いて、ブランドは一人で行かせるのを認めた。
本当はついていってクローロスの代わりに働きたいところだったが、そうも出来ない。
でっち上げた研究を進めなくてはいけない。
休日を過ごすために大学にいることは出来ない。
なにかしら研究しないと、大学にいる意味がない。
「気をつけるんだよ、毎日安否の手紙を送ること、いいね?」
「わかっていますよ、兄さん」
しつこいほど行った対話を別れの間際、再び言い合った。
そして、クローロスは本当に少ない荷物を持って、手にはハト入りの籠をぶら下げて夢のようにすばらしい大学を後にした。
「ウウィントさん、手紙の口調からして男性。それも兄さんと同じくらいの年齢かしら」
住所を訪ね歩いていたクローロスはふと言葉を漏らした。
幸いなことに、黒の旅団は有名らしくどの人に聞いても明確な地を教えてくれた。
「この様子だと、迷うことのほうが難しそう」
非常によい状態である建物にたどりついた。
見上げるようにしてつぶやく。
頭上には何百羽というさまざまな色のハトが舞っている。
「ここが黒の旅団本拠地…」
言った途端、手元の籠が荒れ狂うように揺れた。
思わず手を滑らせて籠を落としてしまうと、中から程よい体系のハトが踊るように飛び出し、屋根の上に消えた。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.62 )
- 日時: 2012/09/08 19:54
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
その同時刻、ウウィントはヴィンテルの手紙を受け取ったときと同じくはとと戯れていた。
ハトに餌をやるのは、別に彼の仕事ではない。
ただ、なぜか彼の日課になっていた。
今日もいつもと同じようにハトに餌をやっていると灰色のハトがどこからともなく表れ、彼の帽子に飛び乗った。
よじよじとよじ登るハトをイラつきながらむしりとると、そのハトがヴィンテル王国の次期女王様に向けて飛ばしたやつだと気づく。
その足のピッケルには手紙がない。
「なーんだ、返事なし、か」
予想通りの展開に、ちょっと残念がって灰色のはとをねぎらってやる。
しかし、ピーッと指笛の音が聞こえたと思うと、ウウィントの足元にいた鳩すべてが一斉に飛び立った。
「ちょっ、なに?だれが集合なんて号令かけてっ」
その指笛こそはとを誘導する合図。
今のは数あるうちの、集合と言う合図だ。
どこの間抜けがそんなことやったのかと飛んでいく方向を見れば、沢山のはとに囲まれてあわあわする塊がいた。
「ったく、誰だろ」
言って、身軽に屋根から飛び降りる。
華麗に着地を決めて、その塊に歩み寄る。どんなやつがやったのか、顔を見たいと思ったのだ。
はとの塊を突っ切り、中央ではとにしがみつかれている人に近寄る。
「そこの、何故はとに集合なんて命令を—」
と、言葉が詰まった。つかつかと近寄ると、その人物がかなり小柄であるということ、ハトの合間に見える髪が長めであることを発見したからだ。
無言ではとを引っぺがし始めると、見えてくるのは必死に顔をつつかれないように帽子で顔を隠す少女。
その帽子の両手をつかんで取ってしまえば、まだ幼そうな少女がいた。
手を掴んだまま無言でじーっとその顔を見ていると、瞳が黄緑色であることに気づく。
15くらいだろうか、その状態のまま品定めをしているとその視線に嫌そうに後ずさる。
手を振りほどいて、怯えたような目でこちらを見つめる。
ウウィントが女性に対する浮気言葉をかける寸前に、クローロスは目当てのはとを引っつかむと、苦虫を噛み潰したような顔をした。
数歩ずつこわごわ後ずさると、失礼いたしました、とそういった。
そして、ウウィントを迂回するように回りこみ、黒の旅団のドアを礼儀正しくノックする。
ドアが開くとすぐに、逃げ込むように消えていった。
「おまえ相当嫌がられてたな」
笑いながら言う仲間にウウィントは目をぱちくりする。
嫌がられるようなこと、した覚えはないのだけどなぁ、と。
「と言うか今の娘、ハト持ってちゃったよ」
仕様がないので、少女の後を追いかけることにした。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.63 )
- 日時: 2012/09/08 20:12
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ウウィントが本部に入ると、少女の姿はなかった。
同じようなつくりの部屋を一つ一つ当たれば、軽く息を呑む音が聞こえた。
丸テーブルに腰掛けて、はとをなでていた彼女はウウィントの登場に心底嫌そうな顔をする。
「やあ」
声をかけると、恐怖感いっぱいの顔で「おはようございます」と答える。
「そのハトを返してくれるかい」
言って手を伸ばせば、少女がびくっと飛び上がった。
思わず手を引っ込めると、完全に怯えきった少女は首を振った。
「これは大事なハトなのです。ある人に渡さなければいけませんから、あなたに渡すことは出来ません」
きっぱりとした態度で、少女が言う。
ウウィントは首をかしげた。
「ある人って?旅団の人?」
言えば、うんと頷く。
「俺も旅団の一員なんだ、その人呼んできてやるから名前を教えてよ」
「いいです。案内してくれた人が、もう呼んできくれますので」
これまたきっぱりと断られ、なんとなく心が折れそうになる。
しかも、少女の神秘的な瞳からは、一人にしてくれないかなぁというオーラがマックスで出ている。
そんな嫌われるようなこと、したっけかなぁ?
と、ドアが開いて仲間が入ってくる。
途端に安堵感で包まれる少女を見て、案内したのはコイツだなとさとる。
その年取った仲間のマグと呼ばれる男が、ウウィントにこういう。
「ああ、ここにいたのか。探したよウウィント」
その瞬間、少女の表情が凍りついたのがわかった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.64 )
- 日時: 2012/09/10 22:56
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「あなたが…ウウィントさんでしたか」
マグが消えてしまうと、クローロスはつぶやいた。
「ああ、そうさ」
「はじめまして、わたくしはクローロス・ヴィンテルです」
ウウィントも挨拶するが、苗字は言わなかった。
それよりも、気になることがあった。
居心地悪そうにしているクローロスにたずねてみる。
「ところで次期女王さんがここに来たわけは…」
「手紙の通り、手下としてきました」
クローロスが言うと、ウウィントはそうかぁという顔をする。
まいたなぁとつぶやくウウィント。
「実は本当に宝石を取り戻したいのか試したんだ。返事の手紙が着たら、来る必要は無いとおくれたんだけど…」
両手を組んだウウィントに、クローロスは申し訳なさそうに手にしていたハトを差し出す。
「実ははとに餌を与えてしまいまして…手紙が遅れてはいけないと、こうして来たのですが…」
受け取ったハトは確かにずんぐりとした腹を持っていた。
ハトは幸せそうにぐるぐると鳴いている。
「その、つまり報酬は別でほしかったのですね?」
「そうだな、でもまだ明確にはほしいものは決まってない。その間、おまえは手下として働いてもらうぞ」
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