二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.50 )
- 日時: 2012/08/30 13:36
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
クローロスはすぐに考えをまとめた。
鳩のように飛んではいけないので、早く出発しなければ五日後には間に合わない。
そもそもいつから数えて五日後なのだ?
調度よいことに、旅団の住所はしっており、それを元に地図で調べる。
詳しい地形はわからないが、それほど険しくない側の山脈の奥にあり、点々とつづく街の列車に乗ればつくだろう。
最短時間ともっとも遅い時間を調べる。
うまくいけば三日、遅くても六日。
幸い、ここヴィンテル王国の王都には列車や馬車がふんだんにある。
一番旅団本部行きに近い王都の駅はそれほど時間がかからないで着けるだろう。
けれど問題はどうやって言い訳するかだ。
もし本当のことを言えば、即座に却下される。
留学でもするといおうか?
けれど王室関係のものは王城内でまなぶため、学校とか関係ない。
やはり、ここは誰かと相談するしかないか。
その人とはもちろん兄、ブランドであった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.51 )
- 日時: 2012/08/31 13:28
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
クローロスは早速行動に移った。
兄の部屋にまで下りて行き、そしてその扉をノックする。
茶色のチョコレートのような木の扉は、長い間沈黙のままだ。
けれど、辛抱強くノックを続けると、のそのそと近づいてくる足音が聞こえ、控えめに開いた。
扉の隙間から兄ブランドが顔をのぞかせる。
「兄さん、すこし相談が」
そういうと、妹の姿を認めたブランドは扉をもう少し開いた。
ちょうどクローロスが滑り込める広さだ。
「それで、こんな朝早くどうしたんだ?」
扉にロックをかけながら、兄は妹を振り返った。
クローロスは脇に抱えていた小箱を取り出す。
黙ったまま箱を窓辺の丸机においたので、ブランドも近づく。
クローロスがふたを開けると、首をもたげたのは不機嫌そうな太った鳩。
まん丸の黒目は迷惑そうに光り、口を利けたのならまぶしいから閉めろといいそうだった。
とにかく、鳩は先ほどまで眠っていたらしい。
「この鳩、伝書鳩なの」
そういうと、クローロスはピッケルの手紙を兄に手渡した。
ブランドは黙ってその手紙を読んでいる。
反対しないでくれるとありがたいが…。
鳩がうるさく鳴くので、箱は閉めておいた。
「…つまりは、僕にどうしてほしいんだ」
手紙を机の上において、グランドはクローロスに言った。
少し複雑そうな顔をしている。
兄として止めるべきか、王家を思って送り出すべきか。
「どうにかして、私がここに行っても疑われない方法を考えてください。そして、協力してほしい」
言えば、ブランドは頷いた。
どうやら協力してくれるのだろう。
「どうだろう」
数分間互いにアイディアをあげていった。
留学、旅行、脱走、訪問…。
いろいろあったが、ブランドがいいアイディアを思いついたようだった。
「季節の研究ということにして、行くと言うのはどうだろう。調度、あっちには大学の知り合いがいるから、共同研究ということにすればいい」
ブランドも勉強が好きな子なので、王家の勉強機関だけではものたりず、大学にいっていた。
「兄さんもついてきてくれます?」
「そうしなければ、心配屋の母さんが許すはずないだろ。クローロスはつらいだろうけど、がんばってほしい。僕も手伝えればいいけれど。研究のほうを進めておくことしか出来ないかもしれないな」
これできまった。
早速、ざっと季節の研究論文や知りたいことをかきあげて、っ派イオーデスの元へ二人していく。
母はまだ、部屋にいた。
いつもならば謁見の間を陣取り、玉座に腰をすえて来刻者にお辞儀されているのに。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.52 )
- 日時: 2012/08/31 14:04
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「おはいりなさい」
ノックすると、つかれきった声が聞こえてくる。
声にはいつもの覇気がない。
すっかり、年齢相応の声になっている。
二人して顔を見合わせた。
このまま母が死んでしまうんじゃないか、と心配になった。
「失礼します」
そして兄妹そろって部屋に入る。
イオーデスは肘掛け椅子に腰掛けていた。
ただ、元気がない。
豪奢な金髪も、色があせたようだ。
「お母様、実は私研究のために城を空けたいと思っているのです」
一気に言うと、イオーデスは一瞬目に光りを宿した。
そんなこといけません!といつものように言うのだろう。
クローロスがどんなに賢くても、国一番の大学に入りたいといっても城を空けることを許さなかった。
特に大学に入りたいといったときはひどかった。
『おまえが賢いのは十分わかっています!おまえは城の教育でそこまで育ってきた。なので大学になど行かずとも、もっと賢くなれるでしょう。それに、おまえがどうしてもいきたいというならば、大学もろともこの王城に引き込んでやるから安心なさい!教授も博士も研究施設でもなんでも、この城に持ってきてしまえばいい!』
凄い剣幕だった。
苦労して手に入れた娘を手放すのがそれほど惜しいのか。
兄には許しても娘にはそれを許さなかった。
そうして今は、大学の教授が数名か犠牲になり、王城に教師としている。
「季節の研究は現地に行かなければ意味がないのです。この研究は僕のかよう大学でおこなわれていて、向こうにも知り合いがいます」
いつもなら、だからなんです?と言う母だったが、つかれきった母は黙って頷いた。
始祖の誇りと思い出の詰まった忘れ形見を奪われた今、次期女王の娘など眼中にないのだろう。
ましてや王位継承のない長男やその他の息子について、なんとも思っていなかった。
ここでバジル王が出てくると必ず反対されるので、素早く行動した。
出発はその日の午後。
すぐに大学に連絡の手紙を送り、列車で秋の街を目指すのだ。
自室に戻った兄妹はすぐさま荷造りを開始した。
ブランドはトランク二つと背負い方のリュックに必要なものありったけつめた。
クローロスはトランク一つ。
洋服は余りつめず、身の回りの必要なものをつめた。
余りにもがら空きなのでリュックに変更したほどだった。
そして手には鳩の入ったケース。
鳩についての本はきっちりと持ち物に入れておいた。
「このたびの間、勉強が出来ないと思うと…」
本棚を見回して、ため息をつくクローロス。
だが大学によったら勉強出るだろう。
雑用の合間にも出来るかもしれない。
「いってまいります」と母にだけ別れを告げる。
いつもとは違うふんわりとした白いブラウス姿の彼女は、相変わらず黒手袋をしており金髪を隠すように帽子をかぶっている。
ブランドは手紙を投函したときの変装をして、馬車に乗り込む。
駅馬車は王家のものではなく公共のものだ。
これから三十分で駅に着き、列車に乗るのだ。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.53 )
- 日時: 2012/09/02 16:58
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
帽子を目深にかぶっているクローロスと、へんなおじさんの格好をするブランド。
妙なコンビは馬車の三列ある座席の一番後ろを陣取っていた。
6頭の馬が引く馬車はけっこう広いが、トランク二つと妙な雰囲気のコンビが座っている一番後ろにはスペースが開いてるにもかかわらず誰も座ろうとしない。
馬車に乗り込んでくる人は、一番後ろの席に目を向けると一瞬表情が固まり、何事もなかったように関係のない席に座り込む。
大方、いかれた連中とでも思っているのだろう。
もしかしたらマフィアなどと思っているかもしれない。
マフィアと言うのは武器密輸や薬物取引など行う組織の人の名称だ。
ここヴィンテルではそういうものは存在していないのだが、国境を越えてやってきた人ならばその平和さに驚くことだろう。
たいていの国はそういった組織が住み着いており、違法行為を警察の目を盗んでひっそりと行っているのだ。
「兄さん、起きてくださいよ」
うとうとしていたブランドは妹の不安げな声で意識を取り戻した。
眠気でがくがくする頭をクローロスのほうへ向ける。
「なんだい」
聞けばクローロスは不安気に窓の外を横目で見ている。
「寝ていたら乗り過ごすかもしれません」
不安になるとクローロスは兄でさえ敬語を使ってくる。
その癖をわかっているブランドは軽く微笑んだ。
次期女王は、結婚しないとめったに外へは出してくれないからな。
おまけに人との会話も最小限に抑えられているし…。
見分不相応のものと結婚しないように、このような箱入り制度が出来てしまったのだ。
「大丈夫。駅馬車の目的地は駅なんだから…。乗り過ごすことはないさ」
聡明な妹は、このような常識を知っていない。
すべては箱入り制度のためだ。
神殿を含まない街への遠出は、したことなどないのではないか?
外と同じように広大な王城と広い庭のような神殿しか、行ったことないのだろう。
「そうなんですか。安心した」
早速敬語が解除され、不安は吹き飛んだようだ。
なので、ブランドはもう一度転寝(うたたね)を再開した。
「」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.54 )
- 日時: 2012/09/02 17:07
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「兄さん、つきましたよ!」
変装が落ちないほどの勢いでゆすぶられる。
メガネをかけなおし、あわててみると駅が遠目で確認できるところだった。
「まだついてないじゃないか」
言いながらここまでの運賃を探る。
クローロスの分もとりだして、その手のひらに押し付ける。
「あわてないで、それを渡せばいいのさ」
はじめて馬車に乗るものだけがわかる不安と緊張感。
ああ、駅に着いた。
どうしよう。
無事にお金渡せるかなぁと乗車時から握り締めるお金を確かめる。
初々しいものだ。
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